異世界ライフは前途洋々

くるくる

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24.発熱

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「キラ!おい!…チッ」
「どうし…え、キラちゃん?」

  レオハーヴェンの焦った声を聞きつけてキッチンから出てきたエヴァントは、彼に支えられてぐったりしているキラを見て目を見開く。

 「凄え熱だ」
 「っ!」
 「俺の部屋に寝かせる」
 「分かった」

  レオハーヴェンが彼女を抱き上げると、エヴァントが奥へ通すべく扉を開けた。急いで部屋へ行ってベッドへ降ろし、交互にキラの額に手を置いて熱を診る。

 「何でこんな…いや、今は熱を下げるのが先決か」
 「レオン、解熱薬は?」
 「ああ、持ってる」
 「じゃあオレは冷やすものを準備するよ」
 「頼む」

  エヴァントが出ていくと、レオハーヴェンは自らのインベントリから解熱薬を取り出して口に含む。そしてキラの方へ屈み込み、唇を重ねる。少しずつ流し込み、飲み下している事に安堵しながら数回に分けて全てを飲ませ終えた。口の端から溢れた薬を拭った時、エヴァントが桶を持って戻ってくる。

  冷やした手拭いをキラの額に乗せ、毛布を掛ける。

 「いつから具合が悪かったんだろう…?全然気が付かなかった…」
 「…違う気はしたんだ。どこが、とも言えないが何となく。…だが、今日は色々あったしその所為かと…クソッ!」

  レオハーヴェンは悔しそうに頭を掻き毟る。

 「「…」」
 「…今のところ熱以外の症状はなさそうだし、朝まで様子をみよう」
 「…ああ…」

  短い沈黙の後そう決めた2人の表情は、さっきとは打って変わって暗いものだった。

  その夜、2人は深夜までこれからの事を話し合っていた。











 ぼんやりと意識が浮上する。瞼の裏の明るさがもう朝であることを示していて、起きなきゃいけないとは思うものの何故か目が開かない。体も怠くてまるで風邪を引いて寝込んだ時のようだ。

  それでも倦怠感と格闘して何とか重い瞼を開くと、イマイチ焦点の定まらない視界の中に誰かが入り込んできた。

 「…キラ?」

  …この声は…レオンさん…?

  朝一で好きな人の声を耳にして幸せな気分になる。何度か瞬きを繰り返すと、次第に彼の顔がハッキリ見えてきた。

 「…レ、オン、さ…」

  喉がカラカラで掠れた声しか出ない。するとレオンさんが一瞬視界から消え、戻ったと思ったら顔が迫って―――口に柔らかいものが押し当てられた。

 「…ん…」

  まだ頭が上手く回らなくて何が起きたのか分からない。でも口に冷たいものが流れてきて漸く水を飲ませてくれたのだと理解出来た。間近で見たレオンさんの瞳は、安堵と不安が入り混じっているような感じがした。

  水が喉を潤すとやっと少し楽になる。

 「…キラ…気分はどうだ?どこか痛むところはねえか?」
 「……痛く、ない、です…」
 「そうか…」

  答えを聞いて彼がホッと息を吐く。

 「覚えてるか?お前は昨夜熱を出して倒れたんだ」
 「熱……」
 「ああ…待ってろ、エヴァを呼んでくる」

  言うが早いか、パッと部屋を出て行ってしまった。1人残された私は、昨日の事を思い出そうとした。

  昨日……転移人である事が…2人にバレて…色々話して…夕食を……あれ…?食べたっけ…?

  考えてもモヤっとして分からない。そうしているうちにレオンさんがエヴァさんと一緒に戻ってきた。エヴァさんも私の顔を見て安心したように息を吐く。ベッドに座って頭を撫で、額に手を当てた。

 「…良かった…目が覚めて。でもまだ熱いね…これじゃあ食事はもう少し後かな…?」
 「…エヴァさん…お2人とも…すみません…ありがとうございます…」

  私の言葉に2人が顔を見合わせて苦笑する。

 「良いんだよ、気にしないで。ねぇ、言っておくけど、オレ達が許可するまでベッドから出ようなんて考えちゃダメだよ?」
 「…え…」

  …きょ、許可?

 「レオン、もう一度解熱薬飲ませたら?」
 「ああ、そうだな。薬が効けば昼過ぎには何か軽く食えるかもな」
 「だね、消化の良さそうな物を作っておくよ」
 「ああ、頼む」
 「了解。キラちゃん、良い子にしててね?」

  私が驚いているうちに2人はサッサと話を進め、エヴァさんはチュッと私の手の甲にキスして出て行った。

  良い子って、精神的には私の方が年上なんだけどな…っていうか、今手にキスしたよね?あまりに自然で恥ずかしいと思う隙がなかったよ…。

  とか思っていると、今度はレオンさんがそばに座る。手には青汁みたいな色の液体が入った瓶。それをグイッと口に含んで私に覆い被さり、止める間も無くまた口を塞がれた。頭がハッキリしてきたので喉を流れる苦い液体よりも彼の唇を意識してしまう。恥ずかしくて…嬉しくて、心地良い。頬に添えられた大きな手が撫でるように動き、ぴくっと身体が跳ねてしまった。

 「…っん」
 「…っふ、は…」

  彼の口から注がれる薬を何とか飲み下すと唇が離れた。だが顔は離れず、そのまま額をくっつけて熱を計る。

  ち、近い。いや、さっきまでキスしてたけど。いや、キスじゃないか。え~と、つまり…テンパってます。

 「…昨夜よりはだいぶマシだな。水分摂ったらもう少し寝ろ」
 「…はい…」

  彼は返事を聞いて笑顔になり…水を口に含んだ。

 「あ…自分で…飲めます…けど…んっ…」

  訴えは聞き入れられず、また、口移しで水を飲んだ。これじゃあいつまで経っても熱が下がらない気がします…。











 いつの間に眠ってしまったのか、目を覚ますと部屋には誰もいなかった。さっきより目覚めが良いし怠さも減ったのでそっと起き上がってみる。

 「…ん…ふう…」

  まだ多少ふらつく気がするが、それは寝てばかりいたからかもしれない。サイドテーブルにあった水差しから水を貰って飲み、首筋に張り付いた髪を避ける。

 「すごい汗…着替えようかな…」

  カットソーを脱ぐとブラまでしっとりと濡れていたので、これも変えてしまおうとブラも取った。

  その時。

  ガチャッ

 ドアが開いて2人が入ってきた。

 「「「……」」」

  急な出来事に暫し思考がストップする。が、レオンさんが一歩踏み出したのでハッとなる。

 「~~っ!!」

  …み、見られた!上半身裸のとこ、バッチリ見られた!

  慌てて毛布で隠すがもう遅い。

 「ご、ごめん…」
 「悪い…」
 「い、いえ…」

  大の大人が3人して照れる。真っ先に平常心に戻ったのはエヴァさん。

 「…ちょっと出てるね」
 「…は、はい」

  2人が一旦出て行き、私が着替え終えてから再度部屋へ。

 「起き上がって大丈夫?」
 「…はい、大丈夫です」
 「…本当か?」
 「ふらふらしなくなったし…怠いのも良くなりました」
 「「…」」

  あったとしても微熱だろうし、もう大丈夫だと思ってそう言ったのだけど…2人は渋い顔をする。

 「…?あの…?」
 「お前は具合悪くても大丈夫だと言いそうだからな、イマイチ信用ならねえ」
 「そうだね、高熱で倒れるまで何も言わないんだから」
 「あ…あの、それは…」

  グゥ~…

「「「…」」」

  …お、思いっきりお腹鳴っちゃった!!何で今なの!?聞かれちゃったよ!しかも音大きいし!!

  思わず毛布に顔を埋めると、くくっと笑い声が。

 「もう昼過ぎだからな、腹も減るわな」
 「フフ、そうだね。そういえば昨夜も食べてないし」

  2人して笑いながらベッドへ座る。

 「この分なら少しは飯食えそうだな」
 「うん、今持ってくるから待ってて」
 「うぅ~…はい…」

  …お恥ずかしいところをお見せして…いや、お聞かせしてしまいました。

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