異世界ライフは前途洋々

くるくる

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23.事情説明

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「神様、神弟子様、ありがとうございました。確かに最初は大変でしたが、役立つスキルや強力な装備を賜ったおかげでここまでこられました。魂になった私を記憶を持ったまま転移させていただいた事に、今は感謝しております。これからは、この異世界で精一杯生きていこうと思います」

  最後に私がお礼と決意を述べると、神様たちは微笑んで答えてくださった。

 「…うむ。そなたの魔力は強く、柔らかで温かい。魔力というのは人柄が如実に現れるもの、キラは皆に愛される存在となるであろう。精進するが良い」
 「そうですね、師匠の仰る通りです。……という事で、渡し損ねていたものを授けようと思います」
 「…実は儂も準備しておいたものがあるんじゃが…貰ってくれるかの?」
 「……師匠、彼女はわたしが転移させたのです。ですから、わたしが先です」
 「…儂は師匠じゃぞ?儂が先じゃ」
 「わたしです」
 「儂じゃ」

  さっきまでの威厳はどこに…?

 「あの、今のままで充分ですから…」

  そう言ってみるも聞き入れられず、神様たちはお祈り体勢だった私の手を交互に握り、アレもコレもソレもあげようと競い始める。

  私がため息を吐くと、両隣りにいたレオンさんとエヴァさんも呆れたように息を吐いた。




  挨拶をして地上へ帰してもらうはずが…狭間の空間の滞在時間が思わぬ事で延びてしまいました。結局ひとつずつ頂く事になり、私は神様から何かのタマゴ、神弟子様から好きなスキルを選べと言われて薬師というスキルを。巻き込んだお詫びという事で、レオンさんとエヴァさんもそれぞれスキルを頂いた。

  ちなみに、固有スキルと魔力は魂に刻まれていたものなので神弟子様の采配ではないという事が判明しました。驚きです。











 気がつくと教会に戻っていた。体勢も祈っていた時のままだ。周囲の様子からしてここではあまり時間が経っていないようだ。

 「さ、行こうか」
 「ああ」
 「キラちゃんからも話聞きたいな」
 「…はい」

  私たちは教会を出て彼らの家へ向かった。




  店に入ると促されてカウンターに座る。エヴァさんが3人分のコーヒーを淹れてカウンターに置き、私はまた2人に挟まれる形になった。

 「お前の口から聞かせてくれ」
 「はい…まずは…巻き込んでしまってすみませんでした」

  最初に頭を下げ、それから話を始めた。

  異世界の森の中で目覚めてから今までの事、全てを。

  この世界に生まれて育ってきた彼らはどう思うだろう。自らの努力なくしてS級スキルや神剣を手にしてここまできた私を。他の人にどう思われようが構わないが、彼らには嫌われたくない。それが今の正直な気持ちだった。




 「転移人が稀に現れるのは聞いた事あるが…まさかキラがそうだとはな…」
 「うん、びっくりだよ。…大変だったね。ねぇ…キラちゃんさ、これから謝るの禁止」
 「…え?」
 「何も悪くないのにすぐ謝るから」
 「で、でも…」
 「迷惑かけるのは申し訳ない、だろ?だ聞き飽きたぜ。俺らは迷惑だなんて思った事ねえし言った覚えもねえ」
 「ね、逆に考えてみて。自分がしてあげたくてした事に対して、相手はいつも申し訳なさそうにする。それって何だか寂しくない?却って迷惑かけてるかな、とか、本当は嫌なのかな、とか考えてしまわない?」
 「…エヴァさん…」

  …ずっとひとりが好きだって思ってた。他人に迷惑かけずに生きていければ良いって。いつの間にひとりが好き、からひとりで大丈夫、になったのだろう。

  異世界に来てから、自分の事だけに必死で…親切にしてくれる彼らの気持ちを疎かにしてた。

 「…ごめんなさい…私…自分の事ばかり考えてて…」

  謝るの禁止、そう言われたそばからもう破ってしまった。だけどこればかりは本当に申し訳なくて、自分の至らなさに腹が立つ。

 「ああ~ごめん。責めるつもりで言ったんじゃないんだ。話を聞いてみて、キラちゃんは1人で頑張りすぎだと思ってさ」
 「それこそ謝る必要はない。全く知らない世界に放り込まれたんだ、頼る相手もなく必死になるのも当然だ。だが、俺らに対してはもう気を張るな」
 「そうだよ。もっと気を楽にして、もっと我が儘になって?」

  落ち込んでしまった私を気遣ってくれる2人。申し訳ない以上に嬉しくて、でも不思議で。

 「…どうしてお二人は会ったばかりの私にそんなに親切にしてくれるんですか?」

  その質問に顔を見合わせる2人。答えたのはエヴァさん。

 「キラちゃんが気に入ったから。もっと近づいてみたいから。ね?レオン」
 「ああ、その通りだ」
 「下心満載だよ」
 「…言っておくが、俺が先だ」
 「こういうのに後先は関係ないと思うな」
 「関係あるに決まってんだろ」
 「「…」」

  睨み合う2人。でも全然険悪じゃなくって、寧ろ楽しそう。私は彼らの率直な言葉たちに心が温まるのを感じていた。

 「ふふ…ありがとうございます」
 「…やっと笑ったな」
 「え?」
 「キラちゃん、ずっと沈んだ表情だったから」
 「あ…もしかして、元気付ける為に…」

  わざと言ってくれたのかと思ったら即否定される。

 「違う違う、本当だよ。そこは疑わないで欲しいな」
 「そんな嘘吐くわけねえだろ」
 「そ、そうですか…」

  好きだと明確に言われた訳ではないが、そこには確かに好意があってそれは素直に嬉しかった。そう自覚したら今更恥ずかしくなってきて顔に熱が集まってしまう。赤くなったであろう顔を隠すように下を向くと、2人が一瞬無言に。

 「「…」」
 「可愛い反応するね…キラちゃんは」
 「…全くだ」

  うぅ…そうハッキリ言われるとどうしていいか分かりません。

  こうして、照れる私を2人が見つめる、という謎の時間が発生したのでした。




  謎の時間の後、結局今日も夕食をご馳走になる事になってしまった。せめて何か手伝おうと思い…

「あの、何かお手伝……っ!」
 「ッ!おい!」

  立ち上ったつもりが身体に力が入らずにふらついた。レオンさんが支えてくれて倒れずに済んだが…何だか…頭まで…ぼうっとして…

「キラ!お前…」

  レオンさんが何か言ったけど、聞き終える前に私の意識は闇へと落ちてしまった。

 
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