異世界ライフは前途洋々

くるくる

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22.ご対面

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 この世界における教会は、婚姻の誓いを立てる他に神に祈りを捧げて称号を授かる場所でもある。称号は多数存在し全てに効力があると言われているが、内容も程度も実に様々だ。もちろん誰もがホイホイ貰える訳では無い。条件と思われるものをクリアしても皆が必ず得られるとは限らず、その理由は未だに不明。

  それでも大抵の人は半年に一度、年に一度の割合で教会を訪れて祈る。




  ヘルプを終えたところで、教会があったらお祈りしようとしていたのを思い出した。ハイミルにもあったかもしれないがすっかり忘れていた。

  教会は想像していたよりずっと大きな建物だった。地球にあったものと雰囲気は多少似ていたが十字架などはない。


 「もしかして、教会初めて?」
 「はい、初めてです」

  建物を見上げているとエヴァさんに聞かれた。称号を得られるのは成人である20才からなので初めてでも不思議はないはず。

 「そうか、ならやっぱり違う道を来て正解だったよ。ね?レオン」
 「ああ、そうだな」
 「…ありがとうございます」
 「礼を言うほどの事じゃねえ」
 「寄って行こうか?オレ達も暫く祈ってないし」
 「ああ」
 「あの、お祈りの作法とか分からないんですけど」
 「別に特別なものは無い。跪いて祈るだけだ」
 「そうなんですか」

  エヴァさんの提案で寄っていく事になったんだけど…レオンさんが祈る姿を想像出来ないのは私だけでしょうか?




  教会の扉を開けた時、空気が変わった気がした。静謐で、穏やかで不思議と安心する。中は吹き抜けの広いホールといった感じで、正面に像があり手前のスペースに木製の長椅子が並んでいる。上にある窓から光が注がれて明るく暖かい。

  祈る人はまばらでシスターらしき女性は1人だけ端に立っていた。像の前へ進み、跪いてお祈りを始める。

  神様、そして神弟子様、

  そう心で呼びかけた時、頭の中に大声が響いた。

 『キターーーッ!!』
 「ーッ!?」

  びっくりして叫びそうになった口を咄嗟に手で押さえたが、体がビクン!と反応してしまった。両隣に居た2人が不審に思って顔を上げる。

 『待ってたよ!さあおいで!』

  頭の中の声がそう言った次の瞬間―――――私は知らない場所に居た。1人ではなくレオンさんとエヴァさんまで一緒に。




  そこは無機質な空間。目の前には白い布を纏った1人の男性と宙に浮いた大きな液晶画面。画面には教会で祈るが映っていた。

 「………あれ…彼女だけ呼んだつもりが………まあいいか」

  ………え、呼んだ?彼が私を呼んだの?どういうこと?

  あまりの出来事に暫し呆けるが男性の言葉で覚醒する。両隣の2人を見るとまだ呆然としていた。私もどうしたら良いか分からず戸惑っていると、男性が言った。

 「意識がある状態では初めまして、だな。おま…君が来るのを待ってたよ、キラ」

  意識がある状態では?こんな訳の分からない場所でそのセリフ…思い当たる事などひとつしかない。まさか…

「…あの…もしかして…神弟子様、でしょうか?」
 「ああ、そうだよ。おれ…わたしが君を異世界へ転移させた神の弟子だ」

  やっぱり!!

 「……異世界?…転移?それに…神の弟子、だと?どういう事だ?」
 「…説明していただけますか?神弟子様とやら」

  2人も漸く言葉を発した。というか、何故2人まで一緒なのか?

 「あの、何故2人までここへ呼ばれたのですか?それにここは…」
 「いや、キラだけ呼んだつもりが…」
 「修行不足じゃよ」

  質問する私に答えかけた神弟子様を遮ったのは老人だった。ギョッとして目を見開くも、すぐさま襟を正す神弟子様。この状況からして考えられる老人の正体は…

「キラよ、そして巻き込まれし者達よ、我が不肖の弟子が驚かせてしまってスマンの。ここは神界と地上の狭間じゃ」

  …的中。

 「…神様、ですか?」
 「そうじゃよ、キラ。儂がこの世界の神じゃ」
 「「神…」」

  また言葉を無くす2人に心の中で謝りながら尋ねる。

 「神様、ご説明頂けませんか?」
 「うむ、答えよう」

  神様は静かに語り始めた。




  輪廻転生。肉体が滅びても魂は消滅せず、転生を繰り返す。だが転生先は生前と同じ世界と決まっているわけではない。特に地球は人口が増えすぎて異世界への転生が増加している。弟子は転生の手続き作業を行っていた。

  その中から稀に見つかる才能ある魂は、記憶をそのままにして転移という形で異世界へ招かれる事がある。理由は様々だが、異世界の才能を持った者はいつも新しい風を巻き起こし、人々を、そして世界を豊かにする。

  キラは地球からこの世界への転移人。今回の場合は弟子単独の判断によるもので全くのイレギュラーだった。ただキラの魂に才能を見い出したのは確かで、その事に関してはお手柄という他ない。

  しかし転移の場合、大抵は事情を話して本人の了承を得るのだが。




  ここまで説明して神様が神弟子様を見る。

 「申し訳ない事に、今回は弟子が勝手に行ってしまってのぅ…完璧に出来たの肉体だけであろう?」

  最後は神弟子様に向けて言い、話すよう促した。

 「はい。才能ある魂を見つけたのでつい……気合を入れて肉体を創造しました!」

  …はい?

 「おれ史上最高の女ですよ!顔、身体、装備、全てをおれ好みに!本当はもっとスキルを授けて、インベントリにも色々入れてやるつもりだったのに…師匠が抜き打ち訪問なぞなさるから中途半端になってしまったのです!」

  え、あの…こんな急に変わられても…って言うか、このカラダとビキニアーマーは神弟子様の趣味、だったんだ…はぁ。

 「コソコソやっとるからじゃ。やるなら儂に許可を取らんか」
 「いっつも途中で横取りされるからですよ!今度こそ全部自分でやりたかったんです!」
 「ムムム…」

  何だか跪いてるのがバカらしくなってきた。とか思っていたら、横から低い声が。

 「キラが転移人、か……で?今日は何でこんなトコまで呼ばれた?」

  おぉう…レオンさん、さすがにタメ口はどうかと。

 「…スマン、そうじゃった。今日呼び出したのは…………説明する為じゃ」
 「それとキラを間近で眺めるためだ」
 「コ、コラ!そういうのは黙っとくもんじゃ!」
 「どうせ師匠はおれの事覗き見してたんでしょう?なら師匠だってキラに会ってみたかったはずです!何せこんなに綺麗で可愛くて色気満載なんですから!」

  …これが神様と名のつく者の言う事だろうか。

 「いい加減にしてくれませんか?彼女が可愛いのは分かりますけど、神だというならもう少し威厳を持ってくださらないと敬う気が失せます」
 「……同感だ。確かにキラはいい女だが、あんたらが神ならシャキッとしてくれや」

  レオンさんとエヴァさんはついに立ち上がって文句を言ってしまった。

 「…ほお、儂らを神と信じるか。清浄な魔力を持っているだけあるのぅ」

  フッと場の空気が変わる。神様は突如として威厳に満ちた表情と声色で私たちに語りかけた。

 「…こんな強烈な気配、神以外ないだろうよ」
 「わざと気配を発してますよね?理解させるために」

  皺だらけの顔に深い笑みが浮かぶ。

 「…聡いのぅ。キラが教会を訪れたなら、弟子がここへ呼び寄せるであろうということは分かっておった。そなたらが一緒に引き寄せられたのは、確かに弟子の失敗であろう。じゃが儂は運命を感じる」

  私たちを見回してから続ける。

 「呼ばれたとて、ここへ来られるのは清く、強い心の持ち主のみ。それは稀有な存在である。そのような者が彼女の傍らにおった事を嬉しく思うぞ。……じゃが、様々な事を知ったからとて特別なことなどない。そなたらは、気持ちの向くまま素直に生きるが良い」

 「「…」」

  2人は神様の言葉に一瞬顔を見合わせ、黙って再び膝をついた。

  それを確認し、今度は私へ向き直った。

 「キラよ、そなたにはこの世界で好きに生きてほしい。それがこの世界の新たな風となり、自然と人々を豊かにする。すまなかったの、本来は最初に話すべき事じゃった。説明も無しに異世界へ放り込まれて大変だったであろうが、よくここまで来てくれた。儂はいつも天から見守っておるよ」

  目配せを受け、神弟子様が口を開く。

 「キラ、君の魂が目に止まったのは決して偶然じゃない。わたしには見えたんだ、内に秘めた才能が。その秘めたものが、わたしの創造した姿をより一層輝かせている。だから、自信を持って。どうか、この世界で幸せに。偶には教会へ寄ってくれ。…レオハーヴェン、エヴァント、巻き込んでしまって悪かった。未熟なわたしを許してほしい」

  そう言った神弟子様は、神様に劣らず荘厳に見えた。

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