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17.自覚した想い
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今私はオーナーの私室のお風呂に入っている。結論から言おう。
最高!!
女湯の倍はあるだろう広いバスルームは、床や壁、バスタブまで大理石のような綺麗な石で統一されている。バスタブは大人2人が一緒に入っても余裕がありそうな大きさ。入浴剤があるなんて聞いた事がないけど、張られたお湯は乳白色のにごり湯でとても気持ち良い。もちろんシャワー付き。オーナーが使ってるであろうソープは柑橘系の爽やかな香りがした。・・使ってないですよ?
そしてバスタブの横にドリンクを置く台と小さな窓口。ここで何か飲みながら浸かるのかな?いいな~。素敵。
もっと入っていたいがここはオーナーのお風呂。マスターも入るんだし早く出なきゃね。
手早く服を着てバスルームを出た。
「オーナー、ありがとうございました。マスター、お先してすみません」
ソファーに座っていた2人に声を掛ける。
「いえ、いいんですよ。レディファーストです。では、私もいただいてきますね」
マスターはそう言ってバスルームへ消えた。が、オーナーは何も言わない。
「オーナー?」
近くへ行って顔を窺う。
あ、むくれてる。
あれから名前を呼ぶのを避けていたら、レドと呼ばないと返事してくれなくなった。大きな子供みたいな人だ、と思ったりするがそんな失礼な事考えるのは私くらいだろう。
「レド…?」
今は誰も聞いていないので思い切って呼ぶ。するとパッと顔が戻る。この変わりよう・・・。
「早かったな」
促されて隣に座る。
「凄く素敵なバスルームでした。オーナ…レド、お風呂好きですか?」
「ああ、好きだな。湯が白かっただろ?最近出回り始めた物なんだが、どうだった?」
「私は好きです」
「そうか、ならまた仕入れておく」
「そんな、わざわざ…」
「俺も気に入ったからだ」
そう言われると何も言えない。
オーナーは立ち上がってワインとグラスを2つ持ってくると、注いで1つを私に渡してくれた。小さくグラスを合わせてから頂く。
「美味しい~…」
久しぶりなのもあるがやはり質が違う。私の飲み慣れた安いワインとは明らかな差があった。まあ、あれはあれで好きだったけど。
「フッ、ワイン好きなんだな」
グラスを片手にこちらを見るオーナー。
「そうですね、好きです」
「他に好きな物は?」
「…お風呂とコーヒーです」
言おうか迷いながらも答える。
「そうか、なら今度は豆も良いのを用意しておく」
「…ありがとうございます」
ああ・・・釣られてる。完璧に物に釣られてる・・・。私こんなだっけ?
ふと、オーナーが私の髪にふれる。少し掬い取って質感を確かめながら弄ぶ。
「…肌も白くて綺麗だが、髪も綺麗だな。色もさわり心地もイイ」
低く響くイイ声が情欲を含んで私を誘う。漆黒の瞳に見つめられながら髪に口づけられてゾクッとする。
「オーナー…」
「…レド」
「レ、ド」
ゆっくりとオーナーの顔が近づいてくる。心臓が高鳴り、お風呂とワインでほんのり染まっていた肌も赤みを増す。強引なキスの時のような嫌な感じは全くない。それどころか・・・・
「ソニア…」
ガタン。
バスルームから音がしてパッと離れる。オーナーはいかにも不服そうな表情だけど。
マスターが出てくる。
「ご、ごちそうさまでした!お2人とも、おやすみなさい!」
私は逃げるようにオーナーの私室を後にした。
・・・マスターが出てこなかったら、きっと受け入れてた。物に誘われたと思っていた。でも違った。私、オーナーに誘われたんだ。私、オーナーが・・・スキ、なんだ。
気持ちをはっきりと自覚した夜、私はなかなか寝付けなかった。
◇
「「・・・・」」
沈黙。
「もしかして、いい感じでした?」
とルーカス。
「ああ、かなり」
とレドモンド。
「ふふ、それはすみません」
「…タイミング測って出てきただろう」
「すみませんね、今度は私がいない所で存分にどうぞ」
最高!!
女湯の倍はあるだろう広いバスルームは、床や壁、バスタブまで大理石のような綺麗な石で統一されている。バスタブは大人2人が一緒に入っても余裕がありそうな大きさ。入浴剤があるなんて聞いた事がないけど、張られたお湯は乳白色のにごり湯でとても気持ち良い。もちろんシャワー付き。オーナーが使ってるであろうソープは柑橘系の爽やかな香りがした。・・使ってないですよ?
そしてバスタブの横にドリンクを置く台と小さな窓口。ここで何か飲みながら浸かるのかな?いいな~。素敵。
もっと入っていたいがここはオーナーのお風呂。マスターも入るんだし早く出なきゃね。
手早く服を着てバスルームを出た。
「オーナー、ありがとうございました。マスター、お先してすみません」
ソファーに座っていた2人に声を掛ける。
「いえ、いいんですよ。レディファーストです。では、私もいただいてきますね」
マスターはそう言ってバスルームへ消えた。が、オーナーは何も言わない。
「オーナー?」
近くへ行って顔を窺う。
あ、むくれてる。
あれから名前を呼ぶのを避けていたら、レドと呼ばないと返事してくれなくなった。大きな子供みたいな人だ、と思ったりするがそんな失礼な事考えるのは私くらいだろう。
「レド…?」
今は誰も聞いていないので思い切って呼ぶ。するとパッと顔が戻る。この変わりよう・・・。
「早かったな」
促されて隣に座る。
「凄く素敵なバスルームでした。オーナ…レド、お風呂好きですか?」
「ああ、好きだな。湯が白かっただろ?最近出回り始めた物なんだが、どうだった?」
「私は好きです」
「そうか、ならまた仕入れておく」
「そんな、わざわざ…」
「俺も気に入ったからだ」
そう言われると何も言えない。
オーナーは立ち上がってワインとグラスを2つ持ってくると、注いで1つを私に渡してくれた。小さくグラスを合わせてから頂く。
「美味しい~…」
久しぶりなのもあるがやはり質が違う。私の飲み慣れた安いワインとは明らかな差があった。まあ、あれはあれで好きだったけど。
「フッ、ワイン好きなんだな」
グラスを片手にこちらを見るオーナー。
「そうですね、好きです」
「他に好きな物は?」
「…お風呂とコーヒーです」
言おうか迷いながらも答える。
「そうか、なら今度は豆も良いのを用意しておく」
「…ありがとうございます」
ああ・・・釣られてる。完璧に物に釣られてる・・・。私こんなだっけ?
ふと、オーナーが私の髪にふれる。少し掬い取って質感を確かめながら弄ぶ。
「…肌も白くて綺麗だが、髪も綺麗だな。色もさわり心地もイイ」
低く響くイイ声が情欲を含んで私を誘う。漆黒の瞳に見つめられながら髪に口づけられてゾクッとする。
「オーナー…」
「…レド」
「レ、ド」
ゆっくりとオーナーの顔が近づいてくる。心臓が高鳴り、お風呂とワインでほんのり染まっていた肌も赤みを増す。強引なキスの時のような嫌な感じは全くない。それどころか・・・・
「ソニア…」
ガタン。
バスルームから音がしてパッと離れる。オーナーはいかにも不服そうな表情だけど。
マスターが出てくる。
「ご、ごちそうさまでした!お2人とも、おやすみなさい!」
私は逃げるようにオーナーの私室を後にした。
・・・マスターが出てこなかったら、きっと受け入れてた。物に誘われたと思っていた。でも違った。私、オーナーに誘われたんだ。私、オーナーが・・・スキ、なんだ。
気持ちをはっきりと自覚した夜、私はなかなか寝付けなかった。
◇
「「・・・・」」
沈黙。
「もしかして、いい感じでした?」
とルーカス。
「ああ、かなり」
とレドモンド。
「ふふ、それはすみません」
「…タイミング測って出てきただろう」
「すみませんね、今度は私がいない所で存分にどうぞ」
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