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54.儀式
しおりを挟む遥か昔、月の満ち欠けと魔力は密接に関係していると信じられていた。その頃から執り行われてきた儀式は、それが迷信だと解明された今も変わらず受け継がれている。魔人同士の結婚になくてはならないもの。
シャハールを一望できる高台。青と黄、2つの満月の月明かりが淡く3人を照らしている。
レドモンドがソニアのブラウスのボタンを外し、胸元を開く。男2人も上半身裸になり、3人向かい合って魔人の印を互いに晒す。
レドモンドは左胸、ルーカスは右胸、ソニアは真ん中。胸に集まった印、これは偶然か、それとも運命か。
小さなナイフを取り出し、レドモンドが指先を切る。そして流れた血を一滴、ソニアの印に垂らす。
と。
胸の谷間にある淡いピンクの印が光りだし、ヴェールのようにソニアを包んだ。その幻想的な光景は数秒間で終わり、もとに戻った。
次にソニアが血を一滴、レドモンドの印に垂らす。すると同じように光に包まれ、すぐに収まった。
2人は抱き合い、短い口づけを交わす。
そして今度はルーカスが血を一滴、ソニアの印に垂らす。光のヴェールが消えると彼女もルーカスの印に血を一滴垂らした。
ルーカスと抱き合い、短い口づけを交わす。
最後にレドモンドとルーカスが、互いの印に血を垂らした。光が月明かりにとけるようになくなる。
3人は互いに手を取り、穏やかに微笑みあった。ソニアの瞳からひとすじの涙が頬を伝っておちた。
他人の血を自分の印に垂らす。それは魔人にとって相手への絶対的な信頼の証。
これは――――悠久ともいえる時を共に生きることを誓い、深淵の絆を得るための儀式。他にも恩恵があると言われているが、詳しい文献などは一切残っていない。真実は当事者のみぞ知ること。
わたしは儀式を終えた瞬間から涙が止まらなくなってしまった。2人との強い絆を感じ、本当の意味でひとつになれたんだとわかって・・・愛しさと嬉しさが溢れてどうしようもなくなった。
只々涙するわたしをレドとルーカスの優しい眼差しが包む。そしていつものように左右から頬にキスし、その舌で拭ってくれた。
「「ソニア…愛してる」」
「レド…ルーカス…わたしも愛してる」
3人で愛を囁き、唇をあわせた。
こんなに急に儀式を行うことになったのはシェストや盗賊の一件があったから。前々から準備だけは進めていたが出来るかどうかとても微妙だった為、わたしには言わなかったのだとか。年に一度しかないからこの夜を逃せば1年後だ。延期になったらわたしが悲しむかもしれないと思った、と後から聞かされた。
・・・ああ、こんなところにも愛が溢れてる。彼らにの優しさがしみて幸せがまた膨らんだ。
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