R18、アブナイ異世界ライフ

くるくる

文字の大きさ
60 / 113

56.結婚指輪

しおりを挟む

 馬車は遠回りしてジュエリーショップへ到着した。うさ耳も無事に引っ込んで一安心・・・でもないです。実はこの馬車、一目でレドとルーカスのものだと分かるようになっているらしい。それが今ここに停まっている、それだけで注目を集めていた。

  まずはルーカスが馬車を出た。続いてわたしが席を立つとレドが止めて先に降りてしまった。

  そして・・・

「「ソニア」」

  左右に分かれた2人がそれぞれ手を差し出して待っている。これは結構勇気がいりますよ?・・・よし、女は度胸!わたしは思い切って2つの大きな手に自分のものを重ねた。




  ソニアが導かれて馬車を降りると、周囲で野次馬していた人たちが騒めく。レドモンドとの噂はすっかり街人に周知されているが、彼女がハーフである事とそこへルーカスが加わった事を知る者はまだ少ない。グラベットのNo.2までがボスの妻をエスコートしている目を疑うような光景に、驚嘆の声が上がった。

  彼女は歌い手としてもシャハールで名が広まっている。その歌声と凛々しくも可憐な容姿から、すでに“歌姫”と呼ばれていた。明るくてサッパリとした性格が酒場の常連たちから伝わり、密かな女性ファンも増え始めている。




  手を借りて馬車を降りると、レドに肩を、ルーカスに腰を抱かれてジュエリーショップへ入った。周囲の騒めきも視線も気にはなったし恥ずかしさもあったが、一度思い切ってしまったら不思議と大丈夫になる。それに2人が一緒なのだ、これ以上心強い事があるだろうか。

  ショップ内は上品で高級感のある雰囲気に溢れていた。床も壁もシャンデリアも、全て綺麗に磨かれ、塵ひとつ落ちていない。

  オーナーらしき男性が出迎えてくれた。

 「お待ちしておりました。ボス、ルーカス様。…そちらの方が?」
 「ああ、ソニアだ」

  レドが紹介してくれる。

  ・・・ちょっと待った。今なんと?ボス?ボスって言った?・・・もしかしてここもレドの・・・?

  唖然としながらも挨拶だけは済ませ、奥へ通される。

  そこはいわゆるVIPルーム。ビロードのように滑らかな深紅の絨毯、エレガントな家具、そこへ素敵な2人の男性にエスコートされてくるわたし・・・。

  ・・・前世とのあまりの違いに眩暈すらしますよ。

 「…どうした?ぼんやりして」
 「気分でも悪いですか?」

  飲み物が出され、店長の男性が準備の為部屋を出て3人だけになると、2人がさっきから一言も発しないわたしを心配そうに覗き込む。

 「そうじゃないの、大丈夫。…ねえ、ここもレドがオーナーなの?」
 「ああ、一応な。だがここはルーカスに任せてる」
 「ルーカスに?」
 「ええ。レドがオーナーの店はかなりの数ですからね、私も幾つか任されていますよ」
 「そうなんだ…」
 「ふふ…もしかして、また驚いてました?」
 「…うん」
 「フフッ、まあ、俺とアクセサリーは連想しにくいかもな」

  手に入れた装飾品を捌くにも、魔石で装飾品を創るにも、こういう店があると便利なのだとレドが笑いながら教えてくれた。

  そんな話をしているうちに店長が戻ってきた。前もって事情を聞いていたらしい彼は、お祝いを述べてから様々なアクセサリーを見本として並べた。結婚の証に重要なのは魔石がついているかどうかで、ピアスだろうがアンクレットだろうが構わないそうだ。中には旦那さんが腕輪で奥さんがネックレス、という夫婦もいるという。

 「ソニアの希望は?」
 「わたし?」
 「ええ、私達はソニアに合わせます。あなたと揃いならどれでもいいので」
 「選んでいいの?」
 「ああ、好きなのを選べ」

  好きに選んでいいのなら、当然決まっている。

 「なら指輪が良い」

  わたしの希望で指輪に決定し、デザインや他の素材も選び、終了。

  するかと思いきや、まだ序の口でした。テーブルいっぱいにジュエリーを広げ、始まってしまいました。ショッピングが。例の如くお前も選べ、と言われるも値段が全く分からず決められない。そんなわたしに次々ジュエリーをあてがって恐ろしいスピードで決めていく2人。

 「このアンクレット、可愛いですね。きっとソニアに似合いますよ?今からの季節は素足が多いですし」
 「この宝石いし、お前の瞳と同じ色だな。…ピアスもあるか?」
 「はい、ございます」

  ここにある品の正確な価格が分からなくとも、安物じゃないことくらい分かる。それをこんな勢いで・・・こんなにたくさん・・・ちょっとコワイですよ。

 「ねえ、こんなにたくさんは…」
 「「ソニア」」

  さすがに買い過ぎ、と言おうとしたが左右から咎めるような目で見られる。

 「はい…?」
 「お前はいつもそうやって俺たちの楽しみを阻止したがるな」
 「え、あの…」
 「夫が妻に贈り物をするのがいけませんか?」
 「いや、そうじゃなくて…」

  贈り物の範疇超えてるよね?なんで買い過ぎを止めようとして怒られるかな・・・?

 「結婚記念と3人初デート記念、といったところです」
 「ああ、そんな感じだ」

  まさか記念日のたびにこんなに買わないよね?今日だけだよね?

 「…記念?今日だけ?」
 「ああ、今日だけ、今日だけ」

  いかにもテキトーに言うレド。・・・ゼッタイチガウ!

 「…いいから、黙って贈られろ」
 「あなたが着飾った姿を見たいだけですから。ね?」
 「…ん、ありがとう…嬉しい」

  2人の旦那さまの愛のこもった微笑みと声に、結局は頷く。

  嬉しいに決まってる。でも怖いんですよ。この状況に慣れてきている自分が!これが当たり前になったらダメ人間まっしぐらな気がしてならない・・・。


しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました

春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。 名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。 誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。 ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、 あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。 「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」 「……もう限界だ」 私は知らなかった。 宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて―― ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。

処理中です...