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第1章 伝説の始まり

26.地方領主・聖騎士連合軍との戦い 地上戦編

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【ジャック】

失敗したかもしれん。
カインの戦術力を侮っていた。
まさか、ここまで一方的になるとは。

このままでは、
前の歴史どおりに、
魔王は出てこないかもしれない。

ん?
あそこの浜辺から、
あの時の魔力を感じるぞ!

見つけたっ!
ここで、一気にケリをつける。
俺一人でだ!

遊撃隊として控えていたジャックは、
一人、走り出したのだった。


【グラン】
ん?
ジャックが動き出した。

やはり、一人で戦うつもりなのか!?
あのバカが!

何故、一人で戦おうとする!?

ぐっ、待っておれ!

司令部にいたグランも、
ジャックを追いかけて走り出したのだった。


【カイン】

『報告:魔王を感知しました。
ジャックとグランがそこに向かっています。』

な、なんだと!?

この戦争に魔王が乱入したのか…。

ハッと、気づく。
ジャックが話した言葉を思い出す。
(敵が襲ってきて、
バッサリさ!
卑怯な相手だろう?)

まさか、相手は魔王だったのか!?
だが、ここはジャックとグランに、
任せることしかできない。
まだ5000も敵はいるのだ。

司令部にグランが離れるのは痛いが、
もう敵は橋だけなので、
ここさえ崩れなければ問題ない。

「インパルス!
魔王が現れて、ジャックさんとグランさんが
向かっている!
こっちも早く決着をつけて、
加勢に向かうぞ!」

「なっ、魔王!?
分かった!早く片をつけよう!
作戦開始だ!」

「おう!」

俺たちの作戦はこうだ。
今、敵は霧の中にいる。
いつ敵に教われるか、
内心ドキドキしてるだろう。

そこに黄龍リュクレオンの威圧を含んだ咆哮だ!
間違いなく、相手はビビる!
相当、動揺するだろう。

そこを俺とインパルスが一気に攻め込む!
この世界の人から見れば、
俺たちは一騎当千!
あっという間に決着が着くはずだ。

そして、取りこぼした敵を
後ろの味方が叩く寸法だ。

「インパルス!
一人あたり2500人だ!
死ぬなよっ!」

「おう、お前もな!」

俺たちは互いにハッパをかけて、
気合いを入れた。

「よしっ。
黄龍リュクレオン!
やるぞっ!」

「おぅ、我にまかせよ!
久々だから、加減はできんぞ!
聞けっ、我が咆哮を!」

俺の中から、
黄龍リュクレオンが顕在化する!
それだけで、霧が晴れてしまった。
翼を羽ばたかせすぎだ。
まぁ、練習などできないから仕方がない。

黄龍リュクレオンは、
いったん全体を見回す。
そして、更に気合いを入れた。

「龍の咆哮!!」

グォーーーー!!!
あたりに、物凄い咆哮音と衝撃波が拡散していく。

一気に人が倒れた。
一気に敵がいなくなった。
一気に手持ちぶさたになった。

…。
……。
えっ?

『報告:今の咆哮で、4900人を倒しました。
全員、気絶してます。』

えっ!?
えーーー!!!!

「ふははははっ。
どうだ、我が咆哮は!
後は任せたぞ。
続きの漫画が気になって仕方がないのでな!」

黄龍リュクレオンは、
俺の中に戻っていった。

うん、霧が晴れて見渡しがいい。
うん、いい天気だ。
うん、当たりを見渡す限り、
敵が倒れている。
うん、遮るものが何もないから、
いい景色だなぁ。

『忠告:現実逃避には、
まだ早いかと。』

あっ、あと100人はいるのか。
でも一人で2500人ずつを相手にしようと、
気を張っていたのだ。

インパルスも同じ気持ちだったのだろう。
少し、気が緩んでしまうのは致し方ない。

「イ、インパルス。
とりあえず残りの100人を叩くぞ。
倒れてるやつらは、
後ろの兵に指示して、
捕虜にしてしまおう。」

「おっ、おう。」

残りの敵は、
後ろの方にいるようだ。
一気にそこまで走り出す。

敵が見えた。
あの一団、聖騎士か!

「インパルス、油断するなよ!
聖騎士だ!」

向こうもこちらに気づいたようだ。
剣を構えている。

「あなたたち、何でこんなことをするんですか!
皆殺しなんて、酷すぎます!
クロノスナンバー2、エリナの名において、
あなたたちを倒します。」

集団を率いる女性が話し掛けてきた。
相手は、クロノスナンバーか!

となると、龍の咆哮は、
何かの能力で味方ごと防いだんだな!

ってか、皆殺しなんて、してない!
みんな気絶しただけだ!
俺は少しすねた。
だが、とりあえず気合いを入れ直す。

「インパルス!
クロノスナンバーだ!
油断するなよ!」

「(カイン、
ワイはもうムリや。
逃げだしたい…。)」

ん?
急に日本語!?
逃げだしたいなんて、どうしたんだ!?
まさか、もう敵の何かの能力にかかったのか!?

「(あいつは、ワイの天敵!
学級委員長やっ!!)」

「はいっ?」



【敵歩兵隊】

「今回の戦、嫌な予感しかしない。」

「あぁ、分かる。」

「あの橋の入り口みたか?
きっと、この世でない所へ行くための
入り口ではないかと思う。」

「お、恐ろしいことを言うなよ。」

「こらっ、貴様ら!
無駄話をしてないで、
早く進め!」

歩き出す歩兵。
途中で霧が出てきた。

「ひっ!
もしかして、この世から、
離れていってるのではないか?」

「物語でも何でもそうだが、
別の世界に行く時に霧がかるのは、
よく聞くぞ!」

「ひ、引き返そう!」

「こ、こら貴様ら!
前に進まんか!」

ドゴーン!
ドゴーン!

「な、なんだ!?」

「ひ、人が出せる音じゃないぞ!」

「うわっ、ここは神のいる世界!?」

「だ、ダメだ…。
これ以上、恐ろしくて進めない!」

「お、お、お、お前ら!
は、早く進まんか!」

「そう言ったって、
隊長だって足が震えて、
動けてないじゃないですか!」

突然、黄龍リュクレオンが現れ、
一気に霧が晴れた。

!?!?

えっ?
り、龍!?
うぎゃーーーーーー!

ガクガクブルブル。
2450人が突然の出来事に、
驚きすぎて、倒れた。

黄龍リュクレオンが全体を見回した。

ひっ!
龍と目があった!
死ぬ!!

ガクガクブルブル。
うわぁーーーーー!

2450人が龍と目が合ったような気がする恐怖で、倒れた。

4900人は、ここでリタイヤした。

「龍の咆哮!!」
グォーーーー!!!
あたりに、物凄い咆哮音と衝撃波が拡散していく。

既に気絶していて、
地方領主軍は誰も聞いていない。

むしろ、その方が幸せだっただろう。
この状態で、
突然、龍の咆哮をくらっていれば、
驚きのあまり心臓が止まっても不思議ではない。

倒れゆく中で、
兵士は思う。

これから先、
二度と霧の中にいくもんか。
だって、龍だぜ!
突然、龍が出るんだぜ!
もう、霧が出たら、すぐ帰ろう。

全員、同じことを思ったのだった。

次回、『27.聖騎士となった学級委員長は、色欲まみれ?』へつづく。
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