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第2章 前世を思い出す前
12.美少女の猛攻
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アニカはウルフと喧嘩して以来、なんだか気まずくて孤児院に行っていなかった。そんなわけでザンドラに会いたいときは、家に来てもらっていた。
「ねぇ、アニカ、薔薇祭にウルフを誘った?」
「ば、薔薇祭?!そ、そんなわけないじゃん!ウルフが来るわけないよ!」
恋愛に鈍いアニカでも、薔薇祭が恋人達のイベント目白押しということは知っていて、つい声が上ずってしまった。
「そんな風に決めつけてると、モニカがウルフを薔薇祭にさらっていくよ」
「そんなことしたら誘拐じゃん!」
ところがどっこい、モニカはちゃっかりウルフを薔薇祭に誘っていた。もちろん彼がロマンチックなことに興味なさそうことはわかっていたし、2人で行こうと誘ったら断られるのはわかっていたので、孤児院の仲間と一緒に行こうと誘った。
ウルフはそれなら行くと返事した。その中にはもちろんザンドラは入っていない。モニカと仲の良い友達か、アニカと距離をとっている子達か、その両方に当てはまる子達しか来ない。そして偶然にもその子達はモニカとウルフ2人とはぐれることになっているのだ!
そしていよいよ薔薇祭1日目――
モニカは上機嫌だった。邪魔者達が一緒とはいえ、ウルフと薔薇祭に行けるのだ!その邪魔者達も途中でどこかへ行くように示し合せている。モニカは笑いが止まらなかった。
モニカ達は屋台が並ぶメインストリートに来ていた。ここからは王宮の庭園も歩いて数分だ。
「あ!見て見て!おいしそう!」
モニカ達の中の誰かが揚げ菓子の屋台を見てお小遣いが足りるかどうか悩んでいると、他の女の子は薔薇をモチーフにした髪飾りやペンダントを売っている屋台に吸い寄せられて行く。男の子達は射的の屋台のほうを見て行きたそうにしている。モニカが示し合せていなくてもグループはすぐにバラバラになりそうだった。
モニカが一番仲のよい女の子に目線で合図すると、その女の子はさりげなく他の子達を庭園とは反対方向へ誘導していった。まもなく人ごみの中でモニカとウルフは他の子達を見失った。
「おい、モニカ。俺達以外、いないぞ。どこに行ったんだろう?」
「見失った時は、王宮の庭園の薔薇のトンネルのところで会おうって約束してるの。庭園へ行こう」
2人が庭園に着くと、メインストリートと変わらないぐらい見物客がたくさんいた。
「こりゃ、見つからないんじゃないか?」
「トンネルはここじゃないからね。こっち来て」
モニカはウルフの腕を掴んでぐいぐい引っ張っていった。ウルフは人ごみの中ではぐれたらいけないと思っているのか、それに抵抗しなかった。
「ほら、これが薔薇のトンネル。綺麗だよね」
「うん、綺麗だけど…人がたくさんいすぎて人酔いしそう」
「来て。皆、こっちにいるかも」
モニカはトンネルの中に入ると、ウルフの手首をつかんでいた手をウルフの手のほうに動かしていった。ウルフは、人ごみの中に孤児院の他の子達がいないかキョロキョロ見回していて、モニカが自分の手を掴んでいることに気付いていないみたいだった。それをいいことにモニカはウルフの指の間に自分の指を差し込んで恋人繋ぎをしようとした。
「なんだよ?そんな風に手を繋がなくたって見失わないよ」
流石にウルフも違和感を覚えてモニカの手を振り払った。
「ウルフ、ひどい!しっかり手を繋いでいたほうがはぐれる心配ないでしょ?」
モニカは上目遣いで目をウルウルさせながら、ウルフに訴えた。モニカの経験上、美少女の上目遣いのお願いは、たいていの男に通じる。
だけど、鈍感ウルフにはモニカの武器も使い物にならなかった。
「じゃあ、俺がお前の手首を掴んでやるよ。これではぐれないだろ?」
「うん…」
(はぁーっ!ウルフの鈍感!)
2人は人ごみが動く流れに沿ってノロノロと薔薇のトンネルの出口に向かって行った。
「見て、ウルフ!この像はね、愛の天使像っていうの。リボンに名前を書いて柵に結びつけると願いが叶うんだよ」
(そう、私とウルフが結ばれる願いが叶うの!)
「ふーん」
「ほら、ウルフ、ここに名前書いて!」
モニカは自分の名前が書かれたリボンを見せた。
「これ、お前のだろ?お前の願いをこめたリボンに他の奴の名前を書いちゃダメだろ?早く柵に結んでこいよ――あっ!あそこ、空きそうだぞ!早く!」
(あーあ!ほんとにウルフは鈍感すぎるよ!)
モニカの気持ちなど露知らず、ウルフはモニカの背中を押して柵の方へ近寄って行った。
「ねぇ、アニカ、薔薇祭にウルフを誘った?」
「ば、薔薇祭?!そ、そんなわけないじゃん!ウルフが来るわけないよ!」
恋愛に鈍いアニカでも、薔薇祭が恋人達のイベント目白押しということは知っていて、つい声が上ずってしまった。
「そんな風に決めつけてると、モニカがウルフを薔薇祭にさらっていくよ」
「そんなことしたら誘拐じゃん!」
ところがどっこい、モニカはちゃっかりウルフを薔薇祭に誘っていた。もちろん彼がロマンチックなことに興味なさそうことはわかっていたし、2人で行こうと誘ったら断られるのはわかっていたので、孤児院の仲間と一緒に行こうと誘った。
ウルフはそれなら行くと返事した。その中にはもちろんザンドラは入っていない。モニカと仲の良い友達か、アニカと距離をとっている子達か、その両方に当てはまる子達しか来ない。そして偶然にもその子達はモニカとウルフ2人とはぐれることになっているのだ!
そしていよいよ薔薇祭1日目――
モニカは上機嫌だった。邪魔者達が一緒とはいえ、ウルフと薔薇祭に行けるのだ!その邪魔者達も途中でどこかへ行くように示し合せている。モニカは笑いが止まらなかった。
モニカ達は屋台が並ぶメインストリートに来ていた。ここからは王宮の庭園も歩いて数分だ。
「あ!見て見て!おいしそう!」
モニカ達の中の誰かが揚げ菓子の屋台を見てお小遣いが足りるかどうか悩んでいると、他の女の子は薔薇をモチーフにした髪飾りやペンダントを売っている屋台に吸い寄せられて行く。男の子達は射的の屋台のほうを見て行きたそうにしている。モニカが示し合せていなくてもグループはすぐにバラバラになりそうだった。
モニカが一番仲のよい女の子に目線で合図すると、その女の子はさりげなく他の子達を庭園とは反対方向へ誘導していった。まもなく人ごみの中でモニカとウルフは他の子達を見失った。
「おい、モニカ。俺達以外、いないぞ。どこに行ったんだろう?」
「見失った時は、王宮の庭園の薔薇のトンネルのところで会おうって約束してるの。庭園へ行こう」
2人が庭園に着くと、メインストリートと変わらないぐらい見物客がたくさんいた。
「こりゃ、見つからないんじゃないか?」
「トンネルはここじゃないからね。こっち来て」
モニカはウルフの腕を掴んでぐいぐい引っ張っていった。ウルフは人ごみの中ではぐれたらいけないと思っているのか、それに抵抗しなかった。
「ほら、これが薔薇のトンネル。綺麗だよね」
「うん、綺麗だけど…人がたくさんいすぎて人酔いしそう」
「来て。皆、こっちにいるかも」
モニカはトンネルの中に入ると、ウルフの手首をつかんでいた手をウルフの手のほうに動かしていった。ウルフは、人ごみの中に孤児院の他の子達がいないかキョロキョロ見回していて、モニカが自分の手を掴んでいることに気付いていないみたいだった。それをいいことにモニカはウルフの指の間に自分の指を差し込んで恋人繋ぎをしようとした。
「なんだよ?そんな風に手を繋がなくたって見失わないよ」
流石にウルフも違和感を覚えてモニカの手を振り払った。
「ウルフ、ひどい!しっかり手を繋いでいたほうがはぐれる心配ないでしょ?」
モニカは上目遣いで目をウルウルさせながら、ウルフに訴えた。モニカの経験上、美少女の上目遣いのお願いは、たいていの男に通じる。
だけど、鈍感ウルフにはモニカの武器も使い物にならなかった。
「じゃあ、俺がお前の手首を掴んでやるよ。これではぐれないだろ?」
「うん…」
(はぁーっ!ウルフの鈍感!)
2人は人ごみが動く流れに沿ってノロノロと薔薇のトンネルの出口に向かって行った。
「見て、ウルフ!この像はね、愛の天使像っていうの。リボンに名前を書いて柵に結びつけると願いが叶うんだよ」
(そう、私とウルフが結ばれる願いが叶うの!)
「ふーん」
「ほら、ウルフ、ここに名前書いて!」
モニカは自分の名前が書かれたリボンを見せた。
「これ、お前のだろ?お前の願いをこめたリボンに他の奴の名前を書いちゃダメだろ?早く柵に結んでこいよ――あっ!あそこ、空きそうだぞ!早く!」
(あーあ!ほんとにウルフは鈍感すぎるよ!)
モニカの気持ちなど露知らず、ウルフはモニカの背中を押して柵の方へ近寄って行った。
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