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第2章 前世を思い出す前
13.お嬢様の逆襲
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アニカは結局ウルフと話せず、薔薇祭に誘えなかった。でも薔薇祭1日目にザンドラと2人で出かけることになった。
「ザンドラ!せっかくだから薔薇のトンネルくぐってみようよ!」
「もう!どうしてウルフにそれを言わないの!」
「ら、来年誘うよ!」
「しょうがないねー!じゃあ行ってみようか!」
薔薇祭期間中だけ限定で公開されている王宮の庭園は、恋人達だけでなく、家族連れや友人同士など、色々な見物客でごった返していた。
「ザンドラ!こっち、こっち!」
アニカが薔薇のトンネルのほうへ手招きした。トンネルの中もたくさん人がいて恋人達のイベントという雰囲気ではなかった。
「すごい混んでるね。ロマンチックに手を繋いで薔薇のトンネルくぐるなんて無理そう」
「あれ?あれって…?」
2人は人ごみの向こうに見たことのある男女が見えたような気がした。
「あれってモニカとウルフ…?」
「ねぇ、ザンドラ、ウルフはモニカと2人きりで薔薇祭に行くって言ってた?」
「ウルフとは薔薇祭のことを話してないから知らないよ。でも別の子がモニカと皆で薔薇祭に行くって言ってた。モニカのことだから、ウルフも誘ったんじゃない?」
「そんなっ!」
あのモニカがウルフと2人きりになるチャンスを作らないとは思えない。そう想像しただけでアニカの胸はズキンとした。
「ねぇ、そんな顔するぐらいならどうして勇気出さなかったの?」
「うん…確かに…」
「あーあ……でもせっかくのお祭りなんだから、こんな話やめよう!アニカ、こっち来て!」
ザンドラはアニカの腕をとってぐいぐい薔薇のトンネルの出口のほうへ引っ張っていった。
愛の天使像の柵にリボンを結びつけようとする人達でトンネルの出口はごった返していた。
(あれ?!ウルフとモニカ!何?!リボンを結ぶの?!冗談じゃない!)
アニカはウルフとモニカを見つけると、かっとなって近寄ってウルフの腕を掴んだ。
「なんだよ!誰だ!」
いきなり腕を掴まれてウルフは驚き叫んで振り向いた。
「ア、アニカ!……ごめん!」
知らなかったとは言え、アニカに乱暴に怒鳴ってしまってウルフは後悔しつつも、彼女に触れられていると思うと赤面してしまった。それに気付いたモニカはもちろんおもしろくない。
「ちょっと、デートの邪魔しないでくれる?恋人達のお祭りに邪魔は無粋よ!」
「なっ!デートなんかじゃないだろ!俺達は孤児院の皆で来たんじゃないか!皆とはぐれただけだ!アニカ、本当だよ!信じて!」
「ウルフ…じゃあ私と薔薇のトンネルくぐってくれる?」
アニカは緑色の瞳をうるませて上目遣いでウルフにお願いした。
「あ、あ、あ、アニカ!も、も、もちろん!」
美少女モニカの上目遣いがウルフに効かなくても、アニカの上目遣いはウルフの心臓をドキュンと射抜いた。その様子を見てとったモニカは心底腹立たしくなった。
「ちょっと!何勝手言ってるのよ!私達は一緒に来たの!貴女達2人でトンネルくぐればいいでしょ!」
「モニカ、どこに皆いるの?探しに行こう!」
「ちょ、ちょっと!止めて!放しなさいよ!」
ザンドラは、ギャアギャア文句を言うモニカの腕を掴み、有無を言わさずぐいぐい引っ張ってウルフとアニカから離れて行った。
2人だけになったアニカとウルフは人ごみの中でしばらく動けずに立ち尽くしていた。
「……ウルフ、ごめんなさい」
「なんで謝るの?」
「この前、ウルフを無視しちゃったでしょ?」
「ああ、ショックだった。どうして無視したの?」
「だって、ウルフったら私のこと全然かまってくれないんだもん!」
「ごめんな、アニカ…でも俺達が一緒になるために頑張ってるんだ。なるべく2人の時間をとるようにするから我慢してくれるか?」
「うん…」
ウルフはアニカの頬に触れ、そっと抱き寄せた。アニカは耳まで真っ赤になってしまった。雑踏の中で2人はしばらくそのまま抱き合っていた。
「……ウルフ、せっかくだからリボンを天使像の柵につけていこうよ」
「願いが叶うってやつ?モニカも俺と一緒にリボン結びたがってたな」
「えっ?!モニカも?!」
「なんでそんなに驚くの?祭の伝統だろ?」
「恋人達がリボンに名前を書いて右側の天使像の柵に結びつけると、結婚できるっていう言い伝えがあるんだよ」
「へっ?!モニカの奴、俺を騙したんだな!」
「よかった、ウルフがモニカとリボンを結んでなくて」
2人はしばらく順番を待ったが、名前をリボンに書いて右側の天使像の柵に無事に結べた。
「ねぇ、ウルフ。恋人達が結婚できるっていう言い伝えを完成させるためにもう一つしなきゃいけないことがあるの」
「け、け、け、結婚!」
「何、そんなに嫌なの?!ひどい!」
「違うよ!俺はそのためにが、が、頑張ってるんだ…ただ、アニカとけ、け、結婚するって考えたら、そ、それだけで…その、あの、天にも昇るような気持ちになるんだよ…ああっ、もうっ!アニカ!何を言わせるんだよぉ!」
「ウルフっ!」
アニカはうれしくなってウルフにばっと抱きついた。
「薔薇のトンネルを端から端まで手を繋いで歩いて、2人の名前を書いたリボンを右側の天使像の柵に結ぶの。そしたら2人は結ばれるって!」
「え?!もうリボン結んじゃったよ!」
「逆でも大丈夫じゃない?」
アニカとウルフは薔薇のトンネルへ手を繋ぎながら入って行った。
その頃――
「どうしてアンタなんかと一緒に恋人達の祭を見て回らないといけないのよ!」
「恋人達の邪魔をすると、愛の天使に怒られるわよ」
「誰と誰が恋人だっていうのよっ!」
モニカとザンドラは、恋人達の甘い雰囲気とはまーったく関係なく、ギャアギャア口論しながらメインストリートを歩き、モニカと一緒に来た孤児院の子供達を探していた。
「ザンドラ!せっかくだから薔薇のトンネルくぐってみようよ!」
「もう!どうしてウルフにそれを言わないの!」
「ら、来年誘うよ!」
「しょうがないねー!じゃあ行ってみようか!」
薔薇祭期間中だけ限定で公開されている王宮の庭園は、恋人達だけでなく、家族連れや友人同士など、色々な見物客でごった返していた。
「ザンドラ!こっち、こっち!」
アニカが薔薇のトンネルのほうへ手招きした。トンネルの中もたくさん人がいて恋人達のイベントという雰囲気ではなかった。
「すごい混んでるね。ロマンチックに手を繋いで薔薇のトンネルくぐるなんて無理そう」
「あれ?あれって…?」
2人は人ごみの向こうに見たことのある男女が見えたような気がした。
「あれってモニカとウルフ…?」
「ねぇ、ザンドラ、ウルフはモニカと2人きりで薔薇祭に行くって言ってた?」
「ウルフとは薔薇祭のことを話してないから知らないよ。でも別の子がモニカと皆で薔薇祭に行くって言ってた。モニカのことだから、ウルフも誘ったんじゃない?」
「そんなっ!」
あのモニカがウルフと2人きりになるチャンスを作らないとは思えない。そう想像しただけでアニカの胸はズキンとした。
「ねぇ、そんな顔するぐらいならどうして勇気出さなかったの?」
「うん…確かに…」
「あーあ……でもせっかくのお祭りなんだから、こんな話やめよう!アニカ、こっち来て!」
ザンドラはアニカの腕をとってぐいぐい薔薇のトンネルの出口のほうへ引っ張っていった。
愛の天使像の柵にリボンを結びつけようとする人達でトンネルの出口はごった返していた。
(あれ?!ウルフとモニカ!何?!リボンを結ぶの?!冗談じゃない!)
アニカはウルフとモニカを見つけると、かっとなって近寄ってウルフの腕を掴んだ。
「なんだよ!誰だ!」
いきなり腕を掴まれてウルフは驚き叫んで振り向いた。
「ア、アニカ!……ごめん!」
知らなかったとは言え、アニカに乱暴に怒鳴ってしまってウルフは後悔しつつも、彼女に触れられていると思うと赤面してしまった。それに気付いたモニカはもちろんおもしろくない。
「ちょっと、デートの邪魔しないでくれる?恋人達のお祭りに邪魔は無粋よ!」
「なっ!デートなんかじゃないだろ!俺達は孤児院の皆で来たんじゃないか!皆とはぐれただけだ!アニカ、本当だよ!信じて!」
「ウルフ…じゃあ私と薔薇のトンネルくぐってくれる?」
アニカは緑色の瞳をうるませて上目遣いでウルフにお願いした。
「あ、あ、あ、アニカ!も、も、もちろん!」
美少女モニカの上目遣いがウルフに効かなくても、アニカの上目遣いはウルフの心臓をドキュンと射抜いた。その様子を見てとったモニカは心底腹立たしくなった。
「ちょっと!何勝手言ってるのよ!私達は一緒に来たの!貴女達2人でトンネルくぐればいいでしょ!」
「モニカ、どこに皆いるの?探しに行こう!」
「ちょ、ちょっと!止めて!放しなさいよ!」
ザンドラは、ギャアギャア文句を言うモニカの腕を掴み、有無を言わさずぐいぐい引っ張ってウルフとアニカから離れて行った。
2人だけになったアニカとウルフは人ごみの中でしばらく動けずに立ち尽くしていた。
「……ウルフ、ごめんなさい」
「なんで謝るの?」
「この前、ウルフを無視しちゃったでしょ?」
「ああ、ショックだった。どうして無視したの?」
「だって、ウルフったら私のこと全然かまってくれないんだもん!」
「ごめんな、アニカ…でも俺達が一緒になるために頑張ってるんだ。なるべく2人の時間をとるようにするから我慢してくれるか?」
「うん…」
ウルフはアニカの頬に触れ、そっと抱き寄せた。アニカは耳まで真っ赤になってしまった。雑踏の中で2人はしばらくそのまま抱き合っていた。
「……ウルフ、せっかくだからリボンを天使像の柵につけていこうよ」
「願いが叶うってやつ?モニカも俺と一緒にリボン結びたがってたな」
「えっ?!モニカも?!」
「なんでそんなに驚くの?祭の伝統だろ?」
「恋人達がリボンに名前を書いて右側の天使像の柵に結びつけると、結婚できるっていう言い伝えがあるんだよ」
「へっ?!モニカの奴、俺を騙したんだな!」
「よかった、ウルフがモニカとリボンを結んでなくて」
2人はしばらく順番を待ったが、名前をリボンに書いて右側の天使像の柵に無事に結べた。
「ねぇ、ウルフ。恋人達が結婚できるっていう言い伝えを完成させるためにもう一つしなきゃいけないことがあるの」
「け、け、け、結婚!」
「何、そんなに嫌なの?!ひどい!」
「違うよ!俺はそのためにが、が、頑張ってるんだ…ただ、アニカとけ、け、結婚するって考えたら、そ、それだけで…その、あの、天にも昇るような気持ちになるんだよ…ああっ、もうっ!アニカ!何を言わせるんだよぉ!」
「ウルフっ!」
アニカはうれしくなってウルフにばっと抱きついた。
「薔薇のトンネルを端から端まで手を繋いで歩いて、2人の名前を書いたリボンを右側の天使像の柵に結ぶの。そしたら2人は結ばれるって!」
「え?!もうリボン結んじゃったよ!」
「逆でも大丈夫じゃない?」
アニカとウルフは薔薇のトンネルへ手を繋ぎながら入って行った。
その頃――
「どうしてアンタなんかと一緒に恋人達の祭を見て回らないといけないのよ!」
「恋人達の邪魔をすると、愛の天使に怒られるわよ」
「誰と誰が恋人だっていうのよっ!」
モニカとザンドラは、恋人達の甘い雰囲気とはまーったく関係なく、ギャアギャア口論しながらメインストリートを歩き、モニカと一緒に来た孤児院の子供達を探していた。
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