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本編
9.懐がピンチ!
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真理はミス甲北になった後、いくつか誘いのあった中から今のモデルエージェンシーを選んで登録した。当初は特別に約束してもらった仕事保証の甲斐もあって需要があったのだが、保証が切れる半年もすると引き合いがなくなってしまった。真理は確かに美人でスタイルもいいが、モデルエージェンシーに登録している女性は皆ハイレベルだ。わがままで使いにくい真理は次第に仕事に呼ばれなくなってしまった。今の所を辞めて別のエージェンシーに登録しようとしても、悪い評判が業界で流れていて採用されない。でも真理はその原因が自分にあるとわかっていなかった。
モデルエージェンシーでは個人事業主として登録して仕事を仲介してもらう形なので、仕事がなければ当然収入ゼロ。真理がミス甲北に選ばれた当初、タレント事務所からも勧誘されたのだが、専属契約で給料は駆け出しタレント扱いで微々たるもの。熱心に勧誘をかけてきたモデルエージェンシ―のスカウトが登録後半年これだけの仕事を保証しますと言ったのを当てにして目先のお金に目がくらみ、真理は今のエージェンシーを選んだ。
両親は、大学在学中は勉強が本分、そんな仕事せずにお小遣いで我慢しておきなさいと反対したが、真理は押し切った。それなら確定申告が面倒だから、専属契約してくれる事務所にしなさいと両親が言ったのだが、それも真理は無視。結局確定申告締め切り間際になって親に泣きつき、母親は突き放したが、娘に甘い父親が確定申告を助けてしまった。
仕事保証期間中、予想よりも収入があり、元々おしゃれが大好きな真理は化粧品や洋服、靴、バッグを買いあさった。なので、報酬は全く残っていない。それどころか、毎月のクレジット残高を返すのにひーひー言っている始末。モデルエージェンシーに登録した時にお小遣いはなくされてしまったが、母親に内緒でしょっちゅう父親に泣きついている。それももう限界だった。
同じエージェンシ―に登録していてやはり鳴かず飛ばずの子とちょっと仲良くなったが、彼女はそれでもいつも違う洋服を着て違うバッグを持っている。
「ねぇ、これ、ルイヴィトンの新作じゃん。羽振りいいね。最近仕事あるの?」
「どっちの?」
「どっちってどういうこと?モデルに決まってるでしょ?」
「モデルエージェンシーは箔がつくから登録してるだけ。馬鹿な金持ちエロ親父をひっかけるのにちょうどいいの」
「えっ?!パパ活してるの?!」
「しーっ!声が大きいよ!真理もやりたいなら、私のパパのお友達を紹介してあげようか。合コンする?」
「えー…オヤジと合コンなんてヤダよ。イケメンとなら合コンしたいけど」
「甘っちょろいね。クレジットカードの返済どうするの?」
「えっ?!どうしてそれを…?!」
「わかるよ、そのぐらい。パパのこと、好きじゃなくてもテクがすごい人なら気持ちよくしてもらえてお金ももらえるんだよ。一石二鳥じゃん」
「もういい。じゃあね」
真理は流石にパパ活したくなかった。
(今月ほんとにヤバイ…パパには先月が最後って言われちゃったしどうしよう…そうだ!悠に借りよう!アイツならバイト代貯めこんでるハズ!それに最悪、返さなくたって文句言わないハズ!)
真理は次に悠を見かけた時、さっそく話しかけた。
「悠!ちょっと相談があるの」
真理は目をウルウルさせて下から悠を見上げた。
(ゲッ!この表情の時は碌なことがない!)
悠は、こういう時の真理の『相談』には散々な目に遭わされてきた。
「最近ね…エージェンシーが私に仕事紹介してくれないの。他のモデルが私に嫉妬して意地悪してわざと悪い評判を広めてるの」
「ふーん。で?」
「『で?』って何?!ひどいじゃない!幼馴染が困ってるのよ」
「でも俺、モデル業界のことなんて何も知らないから何もできないよ」
「悠にもできることがあるよ。お金貸してくれない?」
「ヤダよ。どうせ返してくれないだろ?俺だってタダで働いてるわけじゃないんだよ」
「返すに決まってるでしょ!」
「いや、真理は返さないね」
「私が返せなくなったらパパが返してくれるよ」
「だったらおじさんに頼めばいいだろ?」
「うっ…」
「おじさんにもう頼めないんだろ?なら、俺がバイトしてる居酒屋でバイトするのはどう?ちょうど人探してるとこだし」
「なんで私が居酒屋なんかでバイトしなきゃいけないのよっ!」
「あ、そう。ならいいけど。同じミス甲北でも佐藤さんは居酒屋でバイトしてるよ」
「えっ?!佐藤さん、まさか悠と同じ居酒屋でバイトしてるってことないよね?」
真理は焦って悠に聞いた。自分でもなぜ焦っているのかよくわからない。大体、悠は自分のことを勝手に好きなだけ、好きでいさせてあげてもいいけど、私はイケメンのほうが好き--真理は自分にそう言い聞かせた。
「そのまさかだよ。来週から始めるとこ。中野さんも一緒だよ。2人とも意地悪する人じゃないから、お金欲しけりゃうちの店でバイトしなよ」
「居酒屋なんかでバイトしない!私にはもっと似合うバイトがあるハズ!」
「あ、そう。なら話はお仕舞い」
「あ、ちょっと!悠!待ってよ!」
悠はスタスタと去って行く。真理は不安と悔しさの入り混じった複雑な感情でその背中を見送った。
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真理は現実が分かってなくて未だに幼馴染が言うことを聞く子分だと思ってます。イタイですね。
真理はパパにクレジットカードの返済を助けてもらいましたが、この『パパ』は本当の父親です。
モデルエージェンシーでは個人事業主として登録して仕事を仲介してもらう形なので、仕事がなければ当然収入ゼロ。真理がミス甲北に選ばれた当初、タレント事務所からも勧誘されたのだが、専属契約で給料は駆け出しタレント扱いで微々たるもの。熱心に勧誘をかけてきたモデルエージェンシ―のスカウトが登録後半年これだけの仕事を保証しますと言ったのを当てにして目先のお金に目がくらみ、真理は今のエージェンシーを選んだ。
両親は、大学在学中は勉強が本分、そんな仕事せずにお小遣いで我慢しておきなさいと反対したが、真理は押し切った。それなら確定申告が面倒だから、専属契約してくれる事務所にしなさいと両親が言ったのだが、それも真理は無視。結局確定申告締め切り間際になって親に泣きつき、母親は突き放したが、娘に甘い父親が確定申告を助けてしまった。
仕事保証期間中、予想よりも収入があり、元々おしゃれが大好きな真理は化粧品や洋服、靴、バッグを買いあさった。なので、報酬は全く残っていない。それどころか、毎月のクレジット残高を返すのにひーひー言っている始末。モデルエージェンシーに登録した時にお小遣いはなくされてしまったが、母親に内緒でしょっちゅう父親に泣きついている。それももう限界だった。
同じエージェンシ―に登録していてやはり鳴かず飛ばずの子とちょっと仲良くなったが、彼女はそれでもいつも違う洋服を着て違うバッグを持っている。
「ねぇ、これ、ルイヴィトンの新作じゃん。羽振りいいね。最近仕事あるの?」
「どっちの?」
「どっちってどういうこと?モデルに決まってるでしょ?」
「モデルエージェンシーは箔がつくから登録してるだけ。馬鹿な金持ちエロ親父をひっかけるのにちょうどいいの」
「えっ?!パパ活してるの?!」
「しーっ!声が大きいよ!真理もやりたいなら、私のパパのお友達を紹介してあげようか。合コンする?」
「えー…オヤジと合コンなんてヤダよ。イケメンとなら合コンしたいけど」
「甘っちょろいね。クレジットカードの返済どうするの?」
「えっ?!どうしてそれを…?!」
「わかるよ、そのぐらい。パパのこと、好きじゃなくてもテクがすごい人なら気持ちよくしてもらえてお金ももらえるんだよ。一石二鳥じゃん」
「もういい。じゃあね」
真理は流石にパパ活したくなかった。
(今月ほんとにヤバイ…パパには先月が最後って言われちゃったしどうしよう…そうだ!悠に借りよう!アイツならバイト代貯めこんでるハズ!それに最悪、返さなくたって文句言わないハズ!)
真理は次に悠を見かけた時、さっそく話しかけた。
「悠!ちょっと相談があるの」
真理は目をウルウルさせて下から悠を見上げた。
(ゲッ!この表情の時は碌なことがない!)
悠は、こういう時の真理の『相談』には散々な目に遭わされてきた。
「最近ね…エージェンシーが私に仕事紹介してくれないの。他のモデルが私に嫉妬して意地悪してわざと悪い評判を広めてるの」
「ふーん。で?」
「『で?』って何?!ひどいじゃない!幼馴染が困ってるのよ」
「でも俺、モデル業界のことなんて何も知らないから何もできないよ」
「悠にもできることがあるよ。お金貸してくれない?」
「ヤダよ。どうせ返してくれないだろ?俺だってタダで働いてるわけじゃないんだよ」
「返すに決まってるでしょ!」
「いや、真理は返さないね」
「私が返せなくなったらパパが返してくれるよ」
「だったらおじさんに頼めばいいだろ?」
「うっ…」
「おじさんにもう頼めないんだろ?なら、俺がバイトしてる居酒屋でバイトするのはどう?ちょうど人探してるとこだし」
「なんで私が居酒屋なんかでバイトしなきゃいけないのよっ!」
「あ、そう。ならいいけど。同じミス甲北でも佐藤さんは居酒屋でバイトしてるよ」
「えっ?!佐藤さん、まさか悠と同じ居酒屋でバイトしてるってことないよね?」
真理は焦って悠に聞いた。自分でもなぜ焦っているのかよくわからない。大体、悠は自分のことを勝手に好きなだけ、好きでいさせてあげてもいいけど、私はイケメンのほうが好き--真理は自分にそう言い聞かせた。
「そのまさかだよ。来週から始めるとこ。中野さんも一緒だよ。2人とも意地悪する人じゃないから、お金欲しけりゃうちの店でバイトしなよ」
「居酒屋なんかでバイトしない!私にはもっと似合うバイトがあるハズ!」
「あ、そう。なら話はお仕舞い」
「あ、ちょっと!悠!待ってよ!」
悠はスタスタと去って行く。真理は不安と悔しさの入り混じった複雑な感情でその背中を見送った。
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真理は現実が分かってなくて未だに幼馴染が言うことを聞く子分だと思ってます。イタイですね。
真理はパパにクレジットカードの返済を助けてもらいましたが、この『パパ』は本当の父親です。
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