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紅の騎士は白き花を抱く
19.こんなの、知らない、から、怖い。*
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「ぁ」
間をおかずに、熱い彼がゆっくりと入ってきてびくりとする。
リシェーナが痛くないように、気持ちよくなれるように、ジオークがとても気を遣ってくれているのが、わかる。
こんなふうに、ゆっくり優しくされたことなど、なかった。
信じられないことに、入ってくる彼がリシェーナと擦れる感覚に、いちいち反応せずにはいられない。
まだ、挿入されているだけなのに、自分のなかがジオークに吸いついて、締め上げているのがわかる。
驚くくらいに気持ちが良くて、リシェーナは詰めていた息を我慢できなくなる。
気持ちが良すぎて、怖い。
空気を求めて口を開いたときに、一緒に声を上擦らせた。
「っ…! ま、待ってっ…!」
意図せず出た、制止の声に驚いたのは、リシェーナだけではなかったようだ。
ジオークの動きが、一度止まる。
いっぱいいっぱいのリシェーナがジオークを見上げると、彼は少し考えるような表情になった。
かと思えば、体勢を変えてゆっくりと、彼の身体が覆いかぶさって来る。
ジオークの腕が、リシェーナの身体の脇に置かれて、まるでジオークの腕の中に護られているようだ、と思った。
間近に見つめてくるジオークの瞳が優しくて、綺麗で、リシェーナがその眼の引力に引き込まれそうになっていると、ジオークの唇が動く。
「…痛い?」
痛そうな感じじゃ、なかったんだけど、とジオークが言うから、リシェーナは頬を染めてしどろもどろになる。
「ち、ちがう。 違うの、でもっ…」
ジオークと身体を重ねるのが、嫌なわけではない。
むしろ、望んでいた。
ジオークのことが大好きだから、大好きなひとと結ばれたい、以前誰かに愛されていたことをジオークに塗り替えてほしいと思っていた。
けれど、この行為が、こんなに強烈なものだというのは想定外だった。
少なくとも、リシェーナは、キュビスとの行為で、こんなふうに感じたことはなかった。
触れたところから、重なったところから、気持ちよくなって溶けてしまいそうに熱くなる。 なんて。
「知らない。 こんなの、知らない、から、怖い」
聞き分けのない子どものようだと情けなく恥ずかしくもなるが、未知のものに対する不安と怖れを、消せない。
少しの興味は、不安と怖れに打ち勝てなかったのだ。
申し訳なくて、リシェーナが目を伏せると、鼻の頭がぬるりとした。
反射的に目を開くと、舌を出したジオークが目と鼻の先にいる。
ということは、今、ジオークは、リシェーナの鼻の頭を舐めたのか? 何のために?
リシェーナが混乱していると、ジオークはふっと笑ってリシェーナの頬に頬を擦り寄せた。
その行動に、リシェーナは目を丸くする。
ジオークは、愛情表現がいちいち――といってはあれだが――可愛すぎやしないだろうか。
「リシェを大切にするって言ったおれが、リシェが怖いことをするはずないでしょ? 怖いって思うのは知らないからだよ。 知ったら怖くなくなるから、安心して、委ねて」
言いながら、ジオークは器用に腰を押し進め、リシェーナをゆっくりと拓いていく。
繋がった部分が、ジオークに吸いつき、締め上げるのを止められない。
その度にリシェーナにもびりびりと快感が走るのだ。
「…ぁっ…へん、に、なる…」
時たま襲う、浮遊感。
それだけでなく、嵐にどこかに攫われてしまいそうな恐怖も感じたリシェーナは、縋るものを求めて手を伸ばす。
ジオークの首に縋り付けば、ジオークはリシェーナの耳を軽く食みながら、甘く囁いた。
「…なって」
「っ…!」
その声と、耳への刺激に、身体の力が抜けたような錯覚を味わう。
そして、気づいた。 もしかしたら、腰が抜けたのかもしれない。
ジオークの首にリシェーナの手が回されたことを、ジオークは許可だと受け取ったのだろう。
そして、リシェーナの身体から力が抜けたのも、同じように受け取ったらしい。
リシェーナの上に身体を重ねたままで、器用に腰を遣って自身を押し込んできた。
「っぁ、なたっ…」
リシェーナは、ジオークのことを呼んで、震える。
彼の首に回した手には、自然と力が入った。
相手はジオークではなかったが、今まで何度となく身体を重ねてきたはずだった。
けれど、こんなふうに組み敷かれたのは初めてのこと。 こんなふうに縋り付くのも、初めてのこと。
慈しむように、愛おしむように重ねられた肌に胸がきゅううと締めつけられる感じがする。
こんなふうに感じることも、初めてだ。
痛くはない。 もう、怖くもない。
けれど、気持ちが、よすぎて。 おかしくなって、しまいそう。
彼も、同じ気持ちでいてくれたら、いい。
そう思って視線を上げると、ジオークはうっすらと汗ばんで見える顔に穏やかな表情を浮べてリシェーナを見つめていた。
「っ…リ、シェ…。 …おれが…リシェの中にいるの、わかる…?」
ジオークは動かずにいてくれて、しっかりとした男らしい手が、リシェーナの頬を撫でる。
そんなこと、そんな顔で、そんな声で問わないでほしい。
胸が、苦しくて、目が潤む。
わからない、はずがない。
リシェーナのそこは、ずっとジオークに吸いついたままなのだ。
ジオークにぴったりと吸いついて、ちゅうちゅうとしゃぶるような、吸い込むような動きを繰り返している。
自分の意思に反しているとはいえ、堪らなく恥ずかしく、なのに気持ちいい。
けれど、ジオークはそんなリシェーナを受け容れてくれている。
…大好きだ。
間をおかずに、熱い彼がゆっくりと入ってきてびくりとする。
リシェーナが痛くないように、気持ちよくなれるように、ジオークがとても気を遣ってくれているのが、わかる。
こんなふうに、ゆっくり優しくされたことなど、なかった。
信じられないことに、入ってくる彼がリシェーナと擦れる感覚に、いちいち反応せずにはいられない。
まだ、挿入されているだけなのに、自分のなかがジオークに吸いついて、締め上げているのがわかる。
驚くくらいに気持ちが良くて、リシェーナは詰めていた息を我慢できなくなる。
気持ちが良すぎて、怖い。
空気を求めて口を開いたときに、一緒に声を上擦らせた。
「っ…! ま、待ってっ…!」
意図せず出た、制止の声に驚いたのは、リシェーナだけではなかったようだ。
ジオークの動きが、一度止まる。
いっぱいいっぱいのリシェーナがジオークを見上げると、彼は少し考えるような表情になった。
かと思えば、体勢を変えてゆっくりと、彼の身体が覆いかぶさって来る。
ジオークの腕が、リシェーナの身体の脇に置かれて、まるでジオークの腕の中に護られているようだ、と思った。
間近に見つめてくるジオークの瞳が優しくて、綺麗で、リシェーナがその眼の引力に引き込まれそうになっていると、ジオークの唇が動く。
「…痛い?」
痛そうな感じじゃ、なかったんだけど、とジオークが言うから、リシェーナは頬を染めてしどろもどろになる。
「ち、ちがう。 違うの、でもっ…」
ジオークと身体を重ねるのが、嫌なわけではない。
むしろ、望んでいた。
ジオークのことが大好きだから、大好きなひとと結ばれたい、以前誰かに愛されていたことをジオークに塗り替えてほしいと思っていた。
けれど、この行為が、こんなに強烈なものだというのは想定外だった。
少なくとも、リシェーナは、キュビスとの行為で、こんなふうに感じたことはなかった。
触れたところから、重なったところから、気持ちよくなって溶けてしまいそうに熱くなる。 なんて。
「知らない。 こんなの、知らない、から、怖い」
聞き分けのない子どものようだと情けなく恥ずかしくもなるが、未知のものに対する不安と怖れを、消せない。
少しの興味は、不安と怖れに打ち勝てなかったのだ。
申し訳なくて、リシェーナが目を伏せると、鼻の頭がぬるりとした。
反射的に目を開くと、舌を出したジオークが目と鼻の先にいる。
ということは、今、ジオークは、リシェーナの鼻の頭を舐めたのか? 何のために?
リシェーナが混乱していると、ジオークはふっと笑ってリシェーナの頬に頬を擦り寄せた。
その行動に、リシェーナは目を丸くする。
ジオークは、愛情表現がいちいち――といってはあれだが――可愛すぎやしないだろうか。
「リシェを大切にするって言ったおれが、リシェが怖いことをするはずないでしょ? 怖いって思うのは知らないからだよ。 知ったら怖くなくなるから、安心して、委ねて」
言いながら、ジオークは器用に腰を押し進め、リシェーナをゆっくりと拓いていく。
繋がった部分が、ジオークに吸いつき、締め上げるのを止められない。
その度にリシェーナにもびりびりと快感が走るのだ。
「…ぁっ…へん、に、なる…」
時たま襲う、浮遊感。
それだけでなく、嵐にどこかに攫われてしまいそうな恐怖も感じたリシェーナは、縋るものを求めて手を伸ばす。
ジオークの首に縋り付けば、ジオークはリシェーナの耳を軽く食みながら、甘く囁いた。
「…なって」
「っ…!」
その声と、耳への刺激に、身体の力が抜けたような錯覚を味わう。
そして、気づいた。 もしかしたら、腰が抜けたのかもしれない。
ジオークの首にリシェーナの手が回されたことを、ジオークは許可だと受け取ったのだろう。
そして、リシェーナの身体から力が抜けたのも、同じように受け取ったらしい。
リシェーナの上に身体を重ねたままで、器用に腰を遣って自身を押し込んできた。
「っぁ、なたっ…」
リシェーナは、ジオークのことを呼んで、震える。
彼の首に回した手には、自然と力が入った。
相手はジオークではなかったが、今まで何度となく身体を重ねてきたはずだった。
けれど、こんなふうに組み敷かれたのは初めてのこと。 こんなふうに縋り付くのも、初めてのこと。
慈しむように、愛おしむように重ねられた肌に胸がきゅううと締めつけられる感じがする。
こんなふうに感じることも、初めてだ。
痛くはない。 もう、怖くもない。
けれど、気持ちが、よすぎて。 おかしくなって、しまいそう。
彼も、同じ気持ちでいてくれたら、いい。
そう思って視線を上げると、ジオークはうっすらと汗ばんで見える顔に穏やかな表情を浮べてリシェーナを見つめていた。
「っ…リ、シェ…。 …おれが…リシェの中にいるの、わかる…?」
ジオークは動かずにいてくれて、しっかりとした男らしい手が、リシェーナの頬を撫でる。
そんなこと、そんな顔で、そんな声で問わないでほしい。
胸が、苦しくて、目が潤む。
わからない、はずがない。
リシェーナのそこは、ずっとジオークに吸いついたままなのだ。
ジオークにぴったりと吸いついて、ちゅうちゅうとしゃぶるような、吸い込むような動きを繰り返している。
自分の意思に反しているとはいえ、堪らなく恥ずかしく、なのに気持ちいい。
けれど、ジオークはそんなリシェーナを受け容れてくれている。
…大好きだ。
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