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第6章
162.Lovers flower
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ガコン、ガコン――――
仰々しい音を立てながらモニターのカウントダウンが進んでいく。
さっきまでライブのロゴを示していたモニターが暗転と同時にカウントダウンを始め、この場の云万人もの観客が固唾を飲んで見守っている。
50――――
40――――
30――――
刻々と時が近づいていく。
また、比例するように会場のボルテージが上がり、1の位が0を示すたびに歓声が聞こえてくる。
「くるよくるよっ……!!」
隣の紗也が袖を引いて目を輝かせている。
あと少し、もうほんの少しだと。
その抑えきれない感情がどんどんと会場全てを占めていくようだった。
あと10秒――――
最後の一桁。この湧き上がってくるボルテージが自然と声に出たのか誰しもが一緒にカウントダウンを始める。
まるで1分をも超えるのではないかというほど長く感じる10秒。俺も彼女らの登場を今か今かと待ちわび、自然と前のめりになっていることに気がついた。
「慎也君――――」
本来ならばカウントダウンにかき消されてまったく聞こえないほどの声量。
けれど何故かピンポイントに、俺を呼ぶ声が聞こえた。
声の発信源に顔を向けると、さっきまで目を輝かせていた美代さんがしっかりとした眼差しでこちらを見つめていた。その空いた右手はこちらへと掌を向けている。
「……うん」
俺も呼応するように自らの手をを重ね、残り5秒となったモニターへと一緒に向き直った。
5……4……3……2……1…………。
ついにカウントが0となり、パリン!とガラスの割れるようなエフェクトがモニターに広がったと思えば噴出する火花。
今度は会場だ。すぐ目の前にはそこかしこで火花が立ち上る。
それはこれから祭りの開催を宣言するかのように、はたまた会場中の熱気を表すかのように。
けれどそんな美しい火花に見惚れるのもつかの間、すぐにガコンと大きな音が聞こえ、それ以上の歓声が会場中から湧き上がった。
「みんな~~!!! 今日はありがと~~~~!!!」
突如、火花と一緒にステージの床下から飛び出てくるのはリオ、エレナ、アイさんの三人。
彼女たちは床の跳ね上がりによって一瞬だけ宙に浮くも難なく着地し、リオの掛け声とともに観客が呼応した。
「今日は最高の一日にするわよ~~!! みんなも準備いいでしょうね~!?」
エレナがマイクを客席に向けることで地面が揺れる。
この一日を一生の思い出にするために。それは彼女たちも観客も、全員共通の願い。
「それじゃあ、早速一曲目いくね~! みんなも歌って~! Lovers flower!!」
アイさんの掛け声でギターの音が鳴り出してメロディーが作られる。
Lovers flower。それは彼女らのデビュー曲。軽快なポップスに、ストレートに告白をするような甘い歌詞。
その曲とともに神鳥さんの会社のCMでデビューを果たし、一躍有名人となったのだ。
そんなはじまりの歌を皮切りに、彼女らは華麗なステップを織り交ぜて飛び跳ねる。
最も前に出るのは最後までセンターを譲ることのなかったリオだ。
その姿は赤色を基調としたお姫様のように横に広がったチュールスカートに、タンクトップのシャツ、先だけが赤色の前立てフリルシャツに同色のリボンが結わえられたつけ襟といった格好だった。
本当に絵に書いたようなアイドル衣装。彼女がクルンと回った時ミニスカートが翻ってギョッとしたがその下にはペチコートを履いて一安心する。
彼女は自身のソロパート終了間際にチラリとこちらへ視線を映して小さくウインクをして入れ替わるように後ろへ下がった。
続いて出てきたのはエレナ。
彼女は最も目立つその金髪をサイドテールにし、リオに代わって一歩前に立つ。
その服装はリオと同様のもので、エレナらしい黄色のデザインだった。
そんな彼女がサビを歌い上げると同時に指で銃の構えを見せ、俺の方向へと放つ仕草をする。
あまりに直接的な行動に俺の心臓も高鳴ったが、フェンスの向こうにはカメラらしきものが。きっとそちらに向けて撃ったのだろう。それにしては視線がこちらに向いていたが。
Cメロのタイミングでセンターがリオに移り、サビに入るところで最後に出てきたのはアイさん。
彼女は青色を基調とした服。で二人ほどダンスはアクロバティックではないもののその歌声は突出していた。
さすが業界でもトップクラスというほどだろう。透き通るような声なのに明るいポップスの音楽がマッチしていて、何人をも聞き惚れさせるものだった。
そんなサビを歌い上げた彼女も最後にはこちらに視線を移し、誤魔化す素振りすら見せずにこちらに笑いながら手を振ってくる。
そのストレートな動作に撃ち抜かれた俺も彼女の笑みに見惚れ、隣の紗也に肘で突かれてしまった。
そうしてラストサビまで完璧に踊り切る彼女たち。
ずっと側で応援していたから知っている。そんな最後の立ち位置や動きまでも綿密に、何度も練習してきたのだろう。
最後まで完璧に、理想的に踊り切ると観客から天を衝くほどの歓声が湧き上がる。一曲目からそれほどまでのエネルギーだったのだ。
俺も最後には呼吸すら忘れていたようで音楽が止むと同時に息切れをする。
「みんな~! 改めて今日は来てくれてありがとね~!」
会場から男女問わず三人を呼ぶ声が聞こえてくる。
それはさん付けだったり様だったり。明確に決められていないからか統一性もなくバラバラだ。けれど三人もどれも気にすることなく手を振って返していく。
「すっごぉい歓声!! こんなにお客さんが来てくれて嬉しい!しかも今回はライブ配信もあるんだよ!」
「そうね。 配信のみんな!家だからって遠慮せず、今日はとことん騒ぐわよ!!」
「ちょっとエレナ! 家で騒いだらご近所様に迷惑じゃない!!」
「そのご近所様もきっと見てくれてるから問題ないわ! そうよね!みんな!!」
リオ、エレナ、アイと。場を盛り上げるために会話劇を繰り広げていく。
どんどんと天井知らずに上がっていく会場のボルテージ。そんな熱をリオが察知したのか、二人して漫才のようなトークをするエレナとアイさんを止め、プログラムを進行させていく。
「二人とも~! 漫才はそこらへんにして次にいくよ~!」
「え~、もう~?」
「エレナは止めないと朝まで話しちゃうじゃない! ほら、アイも準備準備!!」
普段の様相とはまったく面影のないリオが手際よくライブを進めていく。
きっとそういう手はずなのだろう。エレナも渋々といった顔をしつつもしっかりと次へ進む準備をしている。
「それじゃあ次も盛り上がっていくよ~!! みんなサビで手を振ってね~!」
そんなリオの掛け声とともに次の曲が始まる。
俺たちは次々と繰り広げられる曲とトークに笑い、そして一ファンとしてレスポンスをしていった――――
―――――――――――――――――
―――――――――――
―――――――
「あっ!もうこんな時間! ごめんね~!! そろそろ最後の曲になっちゃうんだ~!」
「「「え~~~!!!!」」」
そんなリオの言葉に観客の惜しむ声が聞こえてくる。
あれから彼女らは今までリリースしたほぼ全ての曲を放出していった。
活動すること3年弱。その中で出した20をも超える楽曲。
夏祭りの曲ももちろん出し、残された曲はもう殆ど残っていないはず。俺は次は何の曲かとリオの言葉を待つ。
「最後はぁ……このライブだけの、リリースする予定のない新曲! その曲の名前は…………『愛すべきあなたへ』」
唐突に、俺さえも聞いたことないリズムが静かになった会場に響き渡る。
バイオリンから入るしっとりとしたメロディー。バラードだ。彼女らの最後に選んだ曲はバラードだ。
それは、3つの視点からなる歌詞だった。
1つは昔交わした約束、そして嵐の中の運命的な出会い、最後に恐怖をも乗り越えた先にある愛という3つの視点の詩。
その歌詞だけで彼女らが自ら考え、作詞した曲だということがわかった。その上宛先は…………俺。
AメロからCメロまでその3編で構成され、最後のサビにそのものに対する純粋な愛を説いた詩に、俺はいつしか涙がこぼれていた。
ストレートで純真な、俺だけに向けている曲。
それを自覚した瞬間、瞳からはとめどなく涙が溢れるのであった。
「慎也君…………」
ふとその声に気づくと、彼女も気づいたのか美代さんがポケットからハンカチを取り出してくれていた。
俺はありがたく受け取って目元を拭う。ここまで一心に愛されてる俺は幸せものだと。そんな思いがこの胸を暖かく、熱く焦がしていた。
「――――。みんな~! ありがとね~!!」
溢れる涙が止まることには曲も終わり、いつの間にか彼女が掃ける頃だった。
「行かないで~!」「やめちゃいや~!」という声に反応することなく足早に袖へと去っていく三人。
きっと様式美なんだろうか。彼女らが消えてからも観客は手拍子を止めることなく、いつしかデビュー曲のサビを歌い始めていた。
「美代さん、これは?」
「アンコール、だよ。 慎也君大丈夫?」
「うん、ありがと」
ようやく涙の止まった顔を美代さんに見せつけると、彼女はホッと一安心するかのように息を吐く。
そっか、アンコールか……だから足早に去っていったのか。
俺も観客に合わせて曲を歌い続けること10分ほど。
シャーン!と一つのシンバルの音によって歌声は止み、代わりに歓声が湧き上がる。
歓声に包まれて舞台袖から姿を表したのは店頭で売っていたシャツに身を包んだ、ラフな格好の彼女たち。
両手で手を振りステージ中央にたどり着く頃には、自然と歓声も止まってシンとした空間が出来上がる。
「みんな……最後の最後までアンコールしてくれて、ありがとう」
「……三人で話し合ったの。最後は悲しい曲じゃなくって、元気な曲でお別れしたいって」
「私たちがアイドルを辞めても、生きているしまた何処かで会える日が来るかもしれないわ。 その時が来たら……また今日みたいにはしゃぎましょう!!」
リオ、アイさん、エレナと言葉を連ねていき、流れるのはあの夏の日に撮影したCMの音楽。
彼女らは、最後の最後まで疲れのカケラすら見せることなく、笑顔で歌いきって見せるのであった――――。
仰々しい音を立てながらモニターのカウントダウンが進んでいく。
さっきまでライブのロゴを示していたモニターが暗転と同時にカウントダウンを始め、この場の云万人もの観客が固唾を飲んで見守っている。
50――――
40――――
30――――
刻々と時が近づいていく。
また、比例するように会場のボルテージが上がり、1の位が0を示すたびに歓声が聞こえてくる。
「くるよくるよっ……!!」
隣の紗也が袖を引いて目を輝かせている。
あと少し、もうほんの少しだと。
その抑えきれない感情がどんどんと会場全てを占めていくようだった。
あと10秒――――
最後の一桁。この湧き上がってくるボルテージが自然と声に出たのか誰しもが一緒にカウントダウンを始める。
まるで1分をも超えるのではないかというほど長く感じる10秒。俺も彼女らの登場を今か今かと待ちわび、自然と前のめりになっていることに気がついた。
「慎也君――――」
本来ならばカウントダウンにかき消されてまったく聞こえないほどの声量。
けれど何故かピンポイントに、俺を呼ぶ声が聞こえた。
声の発信源に顔を向けると、さっきまで目を輝かせていた美代さんがしっかりとした眼差しでこちらを見つめていた。その空いた右手はこちらへと掌を向けている。
「……うん」
俺も呼応するように自らの手をを重ね、残り5秒となったモニターへと一緒に向き直った。
5……4……3……2……1…………。
ついにカウントが0となり、パリン!とガラスの割れるようなエフェクトがモニターに広がったと思えば噴出する火花。
今度は会場だ。すぐ目の前にはそこかしこで火花が立ち上る。
それはこれから祭りの開催を宣言するかのように、はたまた会場中の熱気を表すかのように。
けれどそんな美しい火花に見惚れるのもつかの間、すぐにガコンと大きな音が聞こえ、それ以上の歓声が会場中から湧き上がった。
「みんな~~!!! 今日はありがと~~~~!!!」
突如、火花と一緒にステージの床下から飛び出てくるのはリオ、エレナ、アイさんの三人。
彼女たちは床の跳ね上がりによって一瞬だけ宙に浮くも難なく着地し、リオの掛け声とともに観客が呼応した。
「今日は最高の一日にするわよ~~!! みんなも準備いいでしょうね~!?」
エレナがマイクを客席に向けることで地面が揺れる。
この一日を一生の思い出にするために。それは彼女たちも観客も、全員共通の願い。
「それじゃあ、早速一曲目いくね~! みんなも歌って~! Lovers flower!!」
アイさんの掛け声でギターの音が鳴り出してメロディーが作られる。
Lovers flower。それは彼女らのデビュー曲。軽快なポップスに、ストレートに告白をするような甘い歌詞。
その曲とともに神鳥さんの会社のCMでデビューを果たし、一躍有名人となったのだ。
そんなはじまりの歌を皮切りに、彼女らは華麗なステップを織り交ぜて飛び跳ねる。
最も前に出るのは最後までセンターを譲ることのなかったリオだ。
その姿は赤色を基調としたお姫様のように横に広がったチュールスカートに、タンクトップのシャツ、先だけが赤色の前立てフリルシャツに同色のリボンが結わえられたつけ襟といった格好だった。
本当に絵に書いたようなアイドル衣装。彼女がクルンと回った時ミニスカートが翻ってギョッとしたがその下にはペチコートを履いて一安心する。
彼女は自身のソロパート終了間際にチラリとこちらへ視線を映して小さくウインクをして入れ替わるように後ろへ下がった。
続いて出てきたのはエレナ。
彼女は最も目立つその金髪をサイドテールにし、リオに代わって一歩前に立つ。
その服装はリオと同様のもので、エレナらしい黄色のデザインだった。
そんな彼女がサビを歌い上げると同時に指で銃の構えを見せ、俺の方向へと放つ仕草をする。
あまりに直接的な行動に俺の心臓も高鳴ったが、フェンスの向こうにはカメラらしきものが。きっとそちらに向けて撃ったのだろう。それにしては視線がこちらに向いていたが。
Cメロのタイミングでセンターがリオに移り、サビに入るところで最後に出てきたのはアイさん。
彼女は青色を基調とした服。で二人ほどダンスはアクロバティックではないもののその歌声は突出していた。
さすが業界でもトップクラスというほどだろう。透き通るような声なのに明るいポップスの音楽がマッチしていて、何人をも聞き惚れさせるものだった。
そんなサビを歌い上げた彼女も最後にはこちらに視線を移し、誤魔化す素振りすら見せずにこちらに笑いながら手を振ってくる。
そのストレートな動作に撃ち抜かれた俺も彼女の笑みに見惚れ、隣の紗也に肘で突かれてしまった。
そうしてラストサビまで完璧に踊り切る彼女たち。
ずっと側で応援していたから知っている。そんな最後の立ち位置や動きまでも綿密に、何度も練習してきたのだろう。
最後まで完璧に、理想的に踊り切ると観客から天を衝くほどの歓声が湧き上がる。一曲目からそれほどまでのエネルギーだったのだ。
俺も最後には呼吸すら忘れていたようで音楽が止むと同時に息切れをする。
「みんな~! 改めて今日は来てくれてありがとね~!」
会場から男女問わず三人を呼ぶ声が聞こえてくる。
それはさん付けだったり様だったり。明確に決められていないからか統一性もなくバラバラだ。けれど三人もどれも気にすることなく手を振って返していく。
「すっごぉい歓声!! こんなにお客さんが来てくれて嬉しい!しかも今回はライブ配信もあるんだよ!」
「そうね。 配信のみんな!家だからって遠慮せず、今日はとことん騒ぐわよ!!」
「ちょっとエレナ! 家で騒いだらご近所様に迷惑じゃない!!」
「そのご近所様もきっと見てくれてるから問題ないわ! そうよね!みんな!!」
リオ、エレナ、アイと。場を盛り上げるために会話劇を繰り広げていく。
どんどんと天井知らずに上がっていく会場のボルテージ。そんな熱をリオが察知したのか、二人して漫才のようなトークをするエレナとアイさんを止め、プログラムを進行させていく。
「二人とも~! 漫才はそこらへんにして次にいくよ~!」
「え~、もう~?」
「エレナは止めないと朝まで話しちゃうじゃない! ほら、アイも準備準備!!」
普段の様相とはまったく面影のないリオが手際よくライブを進めていく。
きっとそういう手はずなのだろう。エレナも渋々といった顔をしつつもしっかりと次へ進む準備をしている。
「それじゃあ次も盛り上がっていくよ~!! みんなサビで手を振ってね~!」
そんなリオの掛け声とともに次の曲が始まる。
俺たちは次々と繰り広げられる曲とトークに笑い、そして一ファンとしてレスポンスをしていった――――
―――――――――――――――――
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「あっ!もうこんな時間! ごめんね~!! そろそろ最後の曲になっちゃうんだ~!」
「「「え~~~!!!!」」」
そんなリオの言葉に観客の惜しむ声が聞こえてくる。
あれから彼女らは今までリリースしたほぼ全ての曲を放出していった。
活動すること3年弱。その中で出した20をも超える楽曲。
夏祭りの曲ももちろん出し、残された曲はもう殆ど残っていないはず。俺は次は何の曲かとリオの言葉を待つ。
「最後はぁ……このライブだけの、リリースする予定のない新曲! その曲の名前は…………『愛すべきあなたへ』」
唐突に、俺さえも聞いたことないリズムが静かになった会場に響き渡る。
バイオリンから入るしっとりとしたメロディー。バラードだ。彼女らの最後に選んだ曲はバラードだ。
それは、3つの視点からなる歌詞だった。
1つは昔交わした約束、そして嵐の中の運命的な出会い、最後に恐怖をも乗り越えた先にある愛という3つの視点の詩。
その歌詞だけで彼女らが自ら考え、作詞した曲だということがわかった。その上宛先は…………俺。
AメロからCメロまでその3編で構成され、最後のサビにそのものに対する純粋な愛を説いた詩に、俺はいつしか涙がこぼれていた。
ストレートで純真な、俺だけに向けている曲。
それを自覚した瞬間、瞳からはとめどなく涙が溢れるのであった。
「慎也君…………」
ふとその声に気づくと、彼女も気づいたのか美代さんがポケットからハンカチを取り出してくれていた。
俺はありがたく受け取って目元を拭う。ここまで一心に愛されてる俺は幸せものだと。そんな思いがこの胸を暖かく、熱く焦がしていた。
「――――。みんな~! ありがとね~!!」
溢れる涙が止まることには曲も終わり、いつの間にか彼女が掃ける頃だった。
「行かないで~!」「やめちゃいや~!」という声に反応することなく足早に袖へと去っていく三人。
きっと様式美なんだろうか。彼女らが消えてからも観客は手拍子を止めることなく、いつしかデビュー曲のサビを歌い始めていた。
「美代さん、これは?」
「アンコール、だよ。 慎也君大丈夫?」
「うん、ありがと」
ようやく涙の止まった顔を美代さんに見せつけると、彼女はホッと一安心するかのように息を吐く。
そっか、アンコールか……だから足早に去っていったのか。
俺も観客に合わせて曲を歌い続けること10分ほど。
シャーン!と一つのシンバルの音によって歌声は止み、代わりに歓声が湧き上がる。
歓声に包まれて舞台袖から姿を表したのは店頭で売っていたシャツに身を包んだ、ラフな格好の彼女たち。
両手で手を振りステージ中央にたどり着く頃には、自然と歓声も止まってシンとした空間が出来上がる。
「みんな……最後の最後までアンコールしてくれて、ありがとう」
「……三人で話し合ったの。最後は悲しい曲じゃなくって、元気な曲でお別れしたいって」
「私たちがアイドルを辞めても、生きているしまた何処かで会える日が来るかもしれないわ。 その時が来たら……また今日みたいにはしゃぎましょう!!」
リオ、アイさん、エレナと言葉を連ねていき、流れるのはあの夏の日に撮影したCMの音楽。
彼女らは、最後の最後まで疲れのカケラすら見せることなく、笑顔で歌いきって見せるのであった――――。
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