前世で抑圧されてきた俺がドラ息子に転生したので、やりたい放題の生活をしていたらハーレムができました

春野 安芸

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064.大言壮語

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「……時間になりました。全員テストを開始してください」

 壇上から声が聞こえると同時に30近い人が一斉に目の前の紙をひっくり返してペンを取る。
 そこかしこから聞こえてくるペンが机を叩く音。必死に問題を問いていく生徒たちに混ざって俺も眼の前の問題に集中する。

 1問目は観察の問題。サイコロを転がした時に見える裏側を当てるもの。
 2問目は空間認識の問題。立方体で積まれたブロックの塊から使われた総数を推理するもの。
 3問目は特徴認識の問題。数十ある似たような絵から指定された特徴の絵を数えるもの。

 どれも見覚えがある……そうだ、全部入学前の課題で出された問題だ。
 さしずめこれは課題を自分でやったかどうかを確かめる実力テストのようなものだろう。

 テストと聞いた時には何事かと思ったがこれならば問題はない。元々自分の力で早々に課題を終わらせたのだ。短時間のテスト用にダウングレードされた問題たちは苦ではない。
 そもそも半年前まで日本で難関高校を受けるために猛勉強を重ねてきたのだ。この程度で躓いていたら先が思いやられる。

 4問、5問と確実に解いていき、特に苦もなく気づけば最後の問題に到達していた。
 全ての問題を終わらしてチラリと時計を見ればまだ終了時間まで半分ほど残っている。逆にこの学年の問題にしては随分手間取った。
 計算問題や記憶を問う問題なら10分程度で解ききったかもしれない。しかしそれらを一切排除した知恵を絞ったりイメージをふくらませる問題のお陰で時間がかかってしまった。特に最後なんてひっかけ問題だ。最後だけは課題にはなかった。課題で出た答えから更に一捻り加えた問題で、下手すれば俺でもやられていただろう。
 そんな出題者のイタズラ心さえも垣間見える少々難度の高い問題。ある意味中学のテストよりも難しい。万全を期して満点の自信を得てなお半分の時間が残ったのだから上出来と言えるだろう。そう自分を励ましながらペンを置く。

「…………」

 チラリと顔を上げればテストに向かう生徒たちの姿が目に入った。
 紙に向かうよう前のめりになり一人たりとて諦めるような姿はない。この真面目さはさすがは貴族というべきか。

 ザッと眺めるように見渡していくと、ふとある一点で俺の視線が止まった。
 ここから対角線上にある廊下側の前方付近。生徒たちの間を縫って見えるのは他の者々と同じく全力でテストに立ち向かう紫髪の少女だった。

 今からほんの少し前、俺に宣戦布告をしてきた少女、セーラ。
 彼女はおもむろに俺へとテストで勝負を仕掛けてきた。思い出されるはあの真剣な目。

 宣言しながら告げられたあの目には『絶対に負けるものか』と追い詰められたような真剣味を帯びていて俺も勝負を了承した。
 きっかけは昨日のことだろう。あの言葉にどんな思いが込められているか測りかねるが、追い詰められた時こそ人は力を発揮するのを俺は知っている。
 たかだかテスト、されどテスト。すっかり意識が薄くなった神山とはいえ簡単に”上”を譲るわけにはいかない。

 上げていた顔を再び落として問題の最初へ目を向ける。俺は残りの半分の時間、何度も何度も記載された問題を解き直して間違いがないかどうかを最後まで確かめていた。


 ―――――――――――――――――
 ―――――――――――
 ―――――――


「それではテストを返却します。アストンさん、ウィリスさん――――」

 時間いっぱいまでテストに費やしてから数時間。返却の時は思いの外早く訪れた。
 続々と呼ばれる生徒たち。まだ俺の番までは僅かながらに時間がある。手渡される点数が刻まれた解答用紙に一喜一憂する生徒たちをボーっと眺めていると、ふと頬杖ついていた俺の顔に影がかかる。

「ねぇ、スタン」
「……セーラ」
「ちゃんと約束は覚えてるわよね?」

 不意にやってきた視界の半分が隠れるほどの大きな影。それは近づいてきたセーラによるものだった。
 手を腰に当て自信満々な顔で見下ろすセーラの顔。それは今回のテストの自信がありありと見て取れた。
 勝利を確信するような笑みにとぼけてみせるよう肩を上下させる。

「なんだっけ、セーラがコーヒー一気飲みするんだっけ?」
「なんであんな高くて苦いだけの飲み物をあたしが飲まなきゃならないのよ!……もしかして今回のテスト、自信なくて誤魔化したぁ?」
「………。『勝ったほうが相手の言う事を一つ聞く』でしょ?」

 わかりやすいセーラの挑発にムッとしながらテスト前に言われたことを復唱する。
 俺達はテスト前、一つの約束をした。それこそ『テストの点数で勝ったほうが相手の言う事を一つ聞く』というもの。
 最初は興味なくて歯牙にもかけなかったが、ちょうど彼女に命令したいことがあったためシエル・マティの静止を振り切って俺も了承した。
 更に今、それとは別件で彼女にはコーヒーの素晴らしさを布教せねばならないと心に決める。

「そっ!自信なくて『やっぱなし!』なんて泣き出さなくて安心したわぁ。さて、どんなお願いを聞いてもらおうかしら……」
「まだ確定してないのにその余裕……油断してると近いうちに足元すくわれるぞ」
「っ――――!」

 ニヤニヤと見下ろす彼女に軽くジャブを撃ってやると、思ったより入ったのかセーラは顔を見開いて俺をキッと睨みつける。

「……決めた。ちょっと大人気なかったかなって思ってたけど容赦しない。あたしが勝ったら今後一生あんたのこと召使いとして扱ってやるから」
「そんな大言壮語たいげんそうごなこと言って、実力も伴ってるといいけどね」
「それがあたしに対する人生最後の挑発になるでしょうから見逃してあげる。あんたがどれだけ悲惨な点数になるか楽しみね」

 いつの間にやら先生に呼ばれていたのだろう。それだけを言い残して踵を返すよう壇上へ向かうセーラ。
 道中すれ違うように座る生徒たちが怯え他様子で彼女から距離を取っていることから随分と怒りを露わにしているようだ。

「スタンさん……一生召使いって……」

 ふと聞こえてきた声に顔を向ければ不安げなシエルがこちらをジッと見ている。

「大丈夫だよシエル。負けるなんてことはないから」
「アンタ、いくら余裕だからってあんまり変なお願いすると後が大変よ。ただでさえあの子は首席で人望もあって親の力も強いんだから」

 シエルの頭を撫でると安心するように肩の力が抜けていく。
 そんなを落ち着かせながら聞こえてくきたのは後方からの忠告の声だった。
 彼女は彼女で俺が負けるとは微塵も心配していないようだ。休み中に課題を教えてもらった身として一定の評価を得ているのだろう。

「それも大丈夫……だと思うよ?」
「随分と曖昧な返事ね……。ま、アンタはあの王女様の願いをあんな形で消化したんだし、あたしは場外からノンビリと結果を見させてもらうわ」

 それは彼女なりの信頼の証。俺が勝つと確信してくれているのだろう。
 俺が彼女に願う内容はもう決めている。あとは受け取るだけだと二人の信頼を感じながら立ち上がろうとすると、突然前方から「ハァァァァ!?」と驚愕の声が教室中に響き渡った。

「あたしが95点!?なんでっ!?」
「セーラか……」

 大声を出した主。それはセーラだった。
 先生から受け取った解答用紙を食い入るように見つめている。

「オマリーさん、最後の問題をよく読んでください。ここからもう一段考えを深める必要があります」
「~~~~!!」

 グシャリと紙を握りしめながら憤慨するセーラ。
 最後はひっかけ問題だった。終わったと一安心しても更に考えを深めなければ答えにたどり着くことは叶わないだろう。
 怒りを露わにするのは一瞬のこと。すぐに落ち着きを取り戻すのはさすが首席といったところか。

「ま、まぁいいわ!スタンはこの点数さえも取れないでしょうしね!」
「…………カミングさん」
「はい」

 ”オマリー”の次は”カミング”。つまり俺の番だ。
 先生の横でふんぞり返るセーラをそこそこに、呼ばれて壇上に向かうも先生は俺にテストを返却することなくジッと俺の目を見つめ続ける。

「えと、先生?」
「カミングさん、随分と頑張ったようですね。このクラスで二人しかいない100点獲得者です。おめでとうございます」
「なっ…………!!」
「ありがとうございます」

 称賛の声とともに渡された紙には100という三桁の数字。
 どうやら何度も見返したお陰か、俺の目標は完璧という形で突破できたみたいだ。
 なんだかんだ不安だった俺はその結果にホッと胸を撫で下ろすのであった。
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