ヒロインは悪役令嬢の笑顔をみるために奮闘する

富原あすか

文字の大きさ
12 / 12
彼女のと私のはじまり

9、保健室にて②

しおりを挟む
「そういえば誰か人を呼んでたみたいだけど、何か用でもあったの?」
「あっ!」
 そう言われてハッとする。ついついフィンに体調の事を聞かれ本来の目的を忘れるところだった。
「あの、私ちょっと今の時間が知りたくて……」
「時間?えーと、今は14時を少し過ぎたところだよ」
「14時……。もうそんな時間なんですね」
 リリーが階段から落ちたのはケイトの授業が始まる前だったので、計算するとかれこれ3時間はたっていることになる。
「後1時間くらいで今日の授業は終わるし、確か殿下が迎えに来るんでしょ?もう少しここで休んでたらいいんじゃない?」
 良かったねと言わんばかりに話すフィンにリリーは少々気まずくなる。確かに迎えに来るのがマリアであったなら有難く受ける提案だが、クラウスとなると話は別だ。
「いえ、 殿下はそう言って下さいましたが申し訳ないのでやっぱり私の方からお会いしようかと……」
 本当は余計なトラブルに巻き込まれたくないからだが、フィンにわざわざ話すことでもないしこれで大丈夫だろう。それにまだ授業が終わっていないという事はクラウスもここには向かってないはずだから、すれ違う心配もない。
 授業が終わる前に目が覚めて良かったと安堵するリリーとは違い、フィンの眉間にはシワがよる。
「君の気持ちも分かるけど、危ない目にあったばかりなのだから迎えを待った方がいいと思うな」
「それは……そうなんですけど……」
 少し咎めるようなフィンの口調に段々と声が小さくなっていってしまう。
 でも、とリリーが口を開く前にフィンが被せるように話し出す。
「犯人もまだ捕まってないんだ。解決もしていない以上ここで君が1人になるのは危険だと思うけど」
 再度釘を刺すように言われ、最もな意見にリリーは思わず下を向いてしまう。
「俺も君がまた危険な目に会うのは色々と困るんだ。……だからここに居てくれる?」
 口説かれているような甘い言い方にリリーは思わず顔を上げるが、フィンの顔を見て固まった。先程まで優しく話していた彼と、今リリーの目の前で微笑んでいる彼は、同じように笑っているばずなのにリリーを見る目は氷のように冷たい。
「せ、先生、あの……」
 まるで憎い相手を見るかのようで、声が震える。フィンの目を見ていられなくなって、俯きながら何か返事を返そうと思うがなかなか言葉が出てこない。
(私の行動が軽率だから怒ってる……?いや、でもあの目は怒っているというよりも嫌いな相手を見るような──)
「イーストンさん?」
「は、はい!すみません!」
「いや、そんなに勢いよく謝らなくてもいいけど……」
 苦笑いで言われ、リリーは恐る恐るフィンの表情を確認する。
(あれ?戻ってる……?)
 そこにはあの氷のような目は嘘だったかのようにこちらを見ているフィンが居た。
「イーストンさん?本当にどうしたの?」
「いえ……」
 さっきまでの表情などなかったかのように話され、見間違えのような気さえしてくる。確かにそこまで嫌われるほどフィンと接点があった訳でもないし、一瞬のことではあったのでリリーの勘違いとした方が納得できる。
 過剰に反応してしまった事に申し訳なく思いながらリリーは先程の問に答えた。
「さっきは軽はずみな発言をしてしまってすみません……。友人にさらに心配をかける訳にもいけないですし、ここで待ってます」
 さっきまでは周りから誤解を受けないようにと過敏になって焦っていたが、改めて今の状況を他人の口から聞くといかに自分が軽率だったか実感する。細かい事を何も知らされてない今、何に気をつければいいかも分からないのでは同じ目に会う確率も高い。
「そう、それなら良かった。殿下が来たらまた声をかけるからそれまでゆっくりお休み」
「はい、ありがとうございます」
 もう一度ベッドに潜り目をつぶる。
 改めて考えるとわかるような事を何故行おうとしたのかと自分の行動に違和感を感じながら──
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

嫁ぎ先は悪役令嬢推しの転生者一家でした〜攻略対象者のはずの夫がヒロインそっちのけで溺愛してくるのですが、私が悪役令嬢って本当ですか?〜

As-me.com
恋愛
 事業の失敗により借金で没落寸前のルーゼルク侯爵家。その侯爵家の一人娘であるエトランゼは侯爵家を救うお金の為に格下のセノーデン伯爵家に嫁入りすることになってしまった。  金で買われた花嫁。政略結婚は貴族の常とはいえ、侯爵令嬢が伯爵家に買われた事実はすぐに社交界にも知れ渡ってしまう。 「きっと、辛い生活が待っているわ」  これまでルーゼルク侯爵家は周りの下位貴族にかなりの尊大な態度をとってきた。もちろん、自分たちより下であるセノーデン伯爵にもだ。そんな伯爵家がわざわざ借金の肩代わりを申し出てまでエトランゼの嫁入りを望むなんて、裏があるに決まっている。エトランゼは、覚悟を決めて伯爵家にやってきたのだが────。 義母「まぁぁあ!やっぱり本物は違うわぁ!」 義妹「素敵、素敵、素敵!!最推しが生きて動いてるなんてぇっ!美しすぎて眼福ものですわぁ!」 義父「アクスタを集めるためにコンビニをはしごしたのが昨日のことのようだ……!(感涙)」  なぜか私を大歓喜で迎え入れてくれる伯爵家の面々。混乱する私に優しく微笑んだのは夫となる人物だった。 「うちの家族は、みんな君の大ファンなんです。悪役令嬢エトランゼのね────」  実はこの世界が乙女ゲームの世界で、私が悪役令嬢ですって?!  ────えーと、まず、悪役令嬢ってなんなんですか……?

勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる

千環
恋愛
 第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。  なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を助けようとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

悪役の烙印を押された令嬢は、危険な騎士に囚われて…

甘寧
恋愛
ある時、目が覚めたら知らない世界で、断罪の真っ最中だった。 牢に入れられた所で、ヒロインを名乗るアイリーンにここは乙女ゲームの世界だと言われ、自分が悪役令嬢のセレーナだと教えられた。 断罪後の悪役令嬢の末路なんてろくなもんじゃない。そんな時、団長であるラウルによって牢から出られる事に…しかし、解放された所で、家なし金なし仕事なしのセレーナ。そんなセレーナに声をかけたのがラウルだった。 ラウルもヒロインに好意を持つ一人。そんな相手にとってセレーナは敵。その証拠にセレーナを見る目はいつも冷たく憎しみが込められていた。…はずなのに? ※7/13 タイトル変更させて頂きました┏○))ペコリ

「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。

パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、 クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。 「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。 完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、 “何も持たずに”去ったその先にあったものとは。 これは誰かのために生きることをやめ、 「私自身の幸せ」を選びなおした、 ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。

処理中です...