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11話、きのこのリゾットとポテトのガレット
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お米が食べたい。
普段パン派の私だが、時たまお米を食べたくなる時がある。
そんな時よく食べるのがリゾットだった。
リゾットは、雑に言うとスープで生米を煮た料理だ。
多分正確には違うのだろうけど、私はそうとらえている。
ということで今日の夜ごはんはリゾットにしようと思う。
私は今、家庭的な料理をメインに出していると思わしき小さなお店にやってきていた。
テーブル席がいくつかあるこじんまりとした店内には、すでに数人先客がいた。
活気はないがどことなく落ち着いた雰囲気の中、私は店員に注文を告げる。
「きのこのリゾットとポテトのガレットをお願いします」
別にきのこのリゾットが特別好きだと言うわけではない。
メニューを見ていたら、たまたまそのリゾットが目についただけだ。
ポテトのガレットも同様。
リゾットだけだとちょっと寂しかったので、なにか付け合わせが欲しかっただけ。
ポテトのガレットとは、千切りにしたポテトを焼き固めたものだ。
私は料理が来るまで暇をつぶそうと、昼間適当に買っておいたこの周辺の地図を取り出した。
明日にはこのフェリクスの町から旅立とうと思っているので、今のうちに次はどこに向かうか決めておきたい。
弟子を取ってから数年ほど、この地域から出たことはない。
どうせ旅をするなら、色々と変な環境の村や町を訪れてみたい。
どこの村や町もフェリクスのように安定した気候ということはないはずだ。
例えば、フェリクスの町から西へずっと行くと湿地帯が続く地域があり、そこの更に一部の地域ではほぼ常に雨が降っているという。
対してフェリクスの町から東へずっと行くと砂漠地帯が広がり、更にその先は火山の活動が活発な熱い地域が広がっているという。
ずっと北に行けば万年雪が降っている環境があるらしく、南へ行けば広大な森が広がっている地域にお目にかかれる。
魔法薬の材料になる植物なんかは、こういう特殊な環境でしか育たない物も多い。
一応私は魔法薬を専門にする魔女だが、こういった特殊な環境地域に赴いたことは無かった。
だって……今の世の中、結構この手の植物って流通してるんだもん。
もともと出不精なこともあり、知識で知っていてもこの目で見たことがないという物はたくさんある。
この機会にそういった物を一つ一つ潰していくのもいいだろう。
「とりあえず西に行ってみようかな。リネットも確かその辺出身だったはずだし」
三番目の弟子リネットは、湿地帯周辺の町出身と聞いている。
どうやら湿地では結構お米が育つらしく、リネットはもっぱら主食はお米派だった。
パン派である私やエメラルダとお米派のリネットは、よく夕飯の内容で揉めていた気がする。
リネットは朝や昼はともかく夜はお米が良いらしい。そうじゃないと食べた気がしないとかなんとか。
ちなみにイヴァンナは別になんでもいいというスタンスだった。あんまりこだわりは無いらしい。
まあそんなこんなでお米は結構食べたことある。
特にリゾットは、最初の頃お米をあまり食べなれていない私やエメラルダに向けて、リネットがよく作ってくれてたのだ。
スープにパンをつけて食べる派の私だから、実質お米をスープで煮てるリゾットはすんなり受け入れられた。
……エメラルダはあんまりお気に召していなかったけども。
あの子はむしろ、普通に炊いたお米を適当なおかずで食べる方が抵抗なかったらしい。
やっぱりエメラルダはちょっと変。
と、そんな昔のことを思いだしていたら、注文した料理が並べられていった。
きのこのリゾットとポテトのガレットを目の前にして、一気に空腹を感じはじめる。
きのこのリゾットはしいたけやえのきの他、ベーコンも入っていておいしそうだ。
リゾットは見た目ドロッとしていて、もちろん食感もドロッとしているのだが、私はそれに抵抗はない。
エメラルダはこのドロッとした感じが苦手なようで、これなら普通に炊いたお米の方がいいとのことだ。
私はむしろ普通に炊いたお米はちょっとパサついているように感じて馴染めなかったりする。
ひとまずリゾットをスプーンですくって口に運ぶ。
ドロッとした食感の中に少し硬い感覚がある。
リゾットのお米は少し芯を残すのが普通らしい。それが独特の食感に繋がるのだ。
ブイヨンで煮られたお米はしっかりと味がついていて、きのことの相性はかなり良い。
家庭的な味わいで、大きな声でおいしいと言えるわけではないけど、どことなく落ち着くリゾットだ。
毎日食べるのなら、こういうほっと落ち着けるおいしさというのが好ましいのだろう。
続いてポテトのガレットを食べることにする。
ポテトのガレットは綺麗に焼き固められていて、食べやすいように切り分けられていた。
その形状は昼間に食べたピザを思い出させる三角形だ。
一口かじると、カリッとした音が小さく響く。
外側はカリカリに焼けているが、中はポテトのほくほくとした食感。
若干の塩気とポテトの優しい甘さがなんともいえない。
ケチャップをつけて食べると、酸味と甘みが更にプラスされておいしくなる。
これもきのこのリゾットのように、素朴ながらもおいしい料理だった。
フェリクスの町で食べるちゃんとした料理は、きっとこれが最後だろう。
どことなく名残惜しさを感じながら、私はリゾットとガレットを食べ終わる。
店外に出てみれば、外は暗闇が広がっていた。
夜空を見上げると、星々が小さくきらめいている。
明日にはこの町ともお別れだ。
私はすぐに宿に帰らず、もう少しだけこの町を見て回ることにした。
普段パン派の私だが、時たまお米を食べたくなる時がある。
そんな時よく食べるのがリゾットだった。
リゾットは、雑に言うとスープで生米を煮た料理だ。
多分正確には違うのだろうけど、私はそうとらえている。
ということで今日の夜ごはんはリゾットにしようと思う。
私は今、家庭的な料理をメインに出していると思わしき小さなお店にやってきていた。
テーブル席がいくつかあるこじんまりとした店内には、すでに数人先客がいた。
活気はないがどことなく落ち着いた雰囲気の中、私は店員に注文を告げる。
「きのこのリゾットとポテトのガレットをお願いします」
別にきのこのリゾットが特別好きだと言うわけではない。
メニューを見ていたら、たまたまそのリゾットが目についただけだ。
ポテトのガレットも同様。
リゾットだけだとちょっと寂しかったので、なにか付け合わせが欲しかっただけ。
ポテトのガレットとは、千切りにしたポテトを焼き固めたものだ。
私は料理が来るまで暇をつぶそうと、昼間適当に買っておいたこの周辺の地図を取り出した。
明日にはこのフェリクスの町から旅立とうと思っているので、今のうちに次はどこに向かうか決めておきたい。
弟子を取ってから数年ほど、この地域から出たことはない。
どうせ旅をするなら、色々と変な環境の村や町を訪れてみたい。
どこの村や町もフェリクスのように安定した気候ということはないはずだ。
例えば、フェリクスの町から西へずっと行くと湿地帯が続く地域があり、そこの更に一部の地域ではほぼ常に雨が降っているという。
対してフェリクスの町から東へずっと行くと砂漠地帯が広がり、更にその先は火山の活動が活発な熱い地域が広がっているという。
ずっと北に行けば万年雪が降っている環境があるらしく、南へ行けば広大な森が広がっている地域にお目にかかれる。
魔法薬の材料になる植物なんかは、こういう特殊な環境でしか育たない物も多い。
一応私は魔法薬を専門にする魔女だが、こういった特殊な環境地域に赴いたことは無かった。
だって……今の世の中、結構この手の植物って流通してるんだもん。
もともと出不精なこともあり、知識で知っていてもこの目で見たことがないという物はたくさんある。
この機会にそういった物を一つ一つ潰していくのもいいだろう。
「とりあえず西に行ってみようかな。リネットも確かその辺出身だったはずだし」
三番目の弟子リネットは、湿地帯周辺の町出身と聞いている。
どうやら湿地では結構お米が育つらしく、リネットはもっぱら主食はお米派だった。
パン派である私やエメラルダとお米派のリネットは、よく夕飯の内容で揉めていた気がする。
リネットは朝や昼はともかく夜はお米が良いらしい。そうじゃないと食べた気がしないとかなんとか。
ちなみにイヴァンナは別になんでもいいというスタンスだった。あんまりこだわりは無いらしい。
まあそんなこんなでお米は結構食べたことある。
特にリゾットは、最初の頃お米をあまり食べなれていない私やエメラルダに向けて、リネットがよく作ってくれてたのだ。
スープにパンをつけて食べる派の私だから、実質お米をスープで煮てるリゾットはすんなり受け入れられた。
……エメラルダはあんまりお気に召していなかったけども。
あの子はむしろ、普通に炊いたお米を適当なおかずで食べる方が抵抗なかったらしい。
やっぱりエメラルダはちょっと変。
と、そんな昔のことを思いだしていたら、注文した料理が並べられていった。
きのこのリゾットとポテトのガレットを目の前にして、一気に空腹を感じはじめる。
きのこのリゾットはしいたけやえのきの他、ベーコンも入っていておいしそうだ。
リゾットは見た目ドロッとしていて、もちろん食感もドロッとしているのだが、私はそれに抵抗はない。
エメラルダはこのドロッとした感じが苦手なようで、これなら普通に炊いたお米の方がいいとのことだ。
私はむしろ普通に炊いたお米はちょっとパサついているように感じて馴染めなかったりする。
ひとまずリゾットをスプーンですくって口に運ぶ。
ドロッとした食感の中に少し硬い感覚がある。
リゾットのお米は少し芯を残すのが普通らしい。それが独特の食感に繋がるのだ。
ブイヨンで煮られたお米はしっかりと味がついていて、きのことの相性はかなり良い。
家庭的な味わいで、大きな声でおいしいと言えるわけではないけど、どことなく落ち着くリゾットだ。
毎日食べるのなら、こういうほっと落ち着けるおいしさというのが好ましいのだろう。
続いてポテトのガレットを食べることにする。
ポテトのガレットは綺麗に焼き固められていて、食べやすいように切り分けられていた。
その形状は昼間に食べたピザを思い出させる三角形だ。
一口かじると、カリッとした音が小さく響く。
外側はカリカリに焼けているが、中はポテトのほくほくとした食感。
若干の塩気とポテトの優しい甘さがなんともいえない。
ケチャップをつけて食べると、酸味と甘みが更にプラスされておいしくなる。
これもきのこのリゾットのように、素朴ながらもおいしい料理だった。
フェリクスの町で食べるちゃんとした料理は、きっとこれが最後だろう。
どことなく名残惜しさを感じながら、私はリゾットとガレットを食べ終わる。
店外に出てみれば、外は暗闇が広がっていた。
夜空を見上げると、星々が小さくきらめいている。
明日にはこの町ともお別れだ。
私はすぐに宿に帰らず、もう少しだけこの町を見て回ることにした。
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