86 / 185
86話、ミスリア湖畔で自作サンドイッチ
しおりを挟む
「おおー、これがクロエが言ってた湖なんだ」
目にうつるのは絶景だった。
透き通った湖が昼時の太陽光をキラキラと反射し、思わずため息が漏れるほどに美しい。
ここはミスリア湖畔。透明度の高い青色の水が美しい、ミスリア湖のほとり。
今日の朝、名残惜しみつつクロエと別れた私とライラは、また自由気ままな二人旅へと戻っていた。
当てもない適当な旅を再開して、まず先にここへ訪れたのは、件のクロエが別れ際におすすめしてきたからだ。
「そういえばこの近くにミスリア湖というのがあるらしい。有名な観光地だから一度行ってみたら?」
クロエにそう言われた私たちは興味を抱き、昼時まで歩き続けてようやくミスリア湖にたどりついたのだ。
そうしてミスリア湖を一望してみると、その美しさと雄大さに圧倒される。
ミスリア湖は、大きな町数個分はありそうなくらい広い湖だったのだ。
観光地というだけあって、このミスリア湖には面する町がある。ミスリア湖の周囲をそって遊歩道も整備されていて、そこを歩くだけでミスリア湖を楽しめるのだ。
ならば緑に欠けているかと言えば、そうでもない。遊歩道周りには街路樹も植えられており、ミスリア湖の向こう側、つまり町の対面側には山があり、青色の水に山の緑色がうつりこむほどだ。
「風も涼しいし、良いところね」
ライラがそう零すほど、ミスリア湖付近は清涼感に溢れている。綺麗な遊歩道が並び、近くに町もあり、まるでリゾート地のようだ。
というより、ここはその通りリゾート地なのかもしれない。遊歩道は現地の人か観光客か区別がつかないほどたくさんの人が往来し、湖には観光用の木製手漕ぎ船が浮かんでいた。
モニカやクロエと別れたばかりで、次の目的地も決まってない今、このリゾート地でしばらくゆっくりするのもいいかもしれない。
遊歩道をしばらく歩きながらミスリア湖を眺めていた私たちは、途中にあった屋根と柱だけで作られた休憩所を見つけ、そこのベンチに座った。
「そろそろお昼時だし、何か軽く食べようか」
近くに町はあるのだが、まだ買い置きの保存食などが残っていた。
むしろ今日から町へ滞在できるので、余分な荷物を減らす意味でも持ってる食材をできるだけ使ってしまうのがよさそうだ。
「今日のお昼は何を食べるの?」
バッグを開いて中を漁っていると、ライラが私の周囲を飛びながらそう問いかけてくる。
「そうだね……簡単にサンドイッチでも作ろうかな」
とはいえ日持ちしない柔らかいパンは今回持ってなく、長期保存が効く固焼きパンしかないのだけど。
固焼きパンは結構地域によって特色あり、とても一口で言えるほどシンプルなものでもない。
今回私が持っているのは、バゲットを輪切りにしたような、数口で食べられるサイズの丸い固焼きパンだ。これなら切る必要もない。
後必要なのは、間に挟む食材だけ。
固焼きパンは水分量が少ないのが当然だ。物によっては簡素なクッキーのようなサクっとした食感だったりもするが、今回のはパサパサとしている。
となると、新鮮な野菜のようなみずみずしい食材を挟みたくなるが……あいにくそんなのは持ってない。
新鮮な野菜は傷むのが早いから、旅に持っていくのは難しい。炒ったりした物なら日持ちするだろうが、それだと野菜のみずみずしさは無くなってしまう。
となると、次はできるだけ油分のある食材が候補となるのだが……これは意外と持っている。
私はバッグから手の平サイズの塊チーズと塩漬け肉を取り出した。
チーズはもちろんの事、塩漬け肉も意外と油が含まれている。水分こそ塩で少なくなっているが、その分肉の油が凝縮されている感じ。
小型ナイフで簡単にチーズと塩漬け肉をスライスし、固焼きパンの上に乗せる。そしてもう一つの固焼きパンを乗せて挟めば……。
「完成? サンドイッチだからこれ以上する事ないものね」
ライラに言われて、少し考え込む。
確かにサンドイッチにこれ以上の手間は無い。食材をパンに挟んで簡単に作れるのが魅力でもあるし。
でも多分、これをそのまま食べてもまとまりが無さそうなんだよな。パンは硬くて、チーズとお肉の油がそれを中和するみたいな感じで。
「……軽くあぶってみよっか」
このままだとぱっとしないサンドイッチなので、いっその事熱を通してみるのもいいかもしれない。塩漬け肉やチーズも火が通ると旨みが増すだろうし。
思い立った私はベンチから立ち上がり、休憩所の外に出て魔術で小さな火を起こした。
そして軽くサンドイッチをあぶり、すぐに火を消す。
軽く火であぶったことで、固焼きパンは香ばしくなっていた。塩漬け肉もパチパチと油が弾ける音がして、照りが増している。
チーズは軽くとろけ、なんだか見た目はぐっとおいしそうになった。
「いい感じじゃない?」
「そうね、見た目はかなり良くなったわ」
サンドイッチを一つライラに渡し、早速二人一緒に食べてみることに。
「んっ……うん、これは中々」
固焼きパンは硬いままだ。火であぶって香ばしさを増したが、やはりパサパサとした食感。
でも熱が入り油を出し始めた塩漬け肉と、とろけたチーズが中々いい塩梅。パサっとした食感を包み込んでくれる。
それにパン自体はパサパサしているが、肉とチーズに触れている面は油が染み込んで柔らかくなっていた。
「あぶったのは正解ね。チーズとお肉の油が増して大分食べやすいわ」
「そうだね。うん……でも」
私とライラは、もぐもぐ咀嚼しながら顔を見合わせた。
「こんなもんだよね」
「こんなものよね」
二人頷きながら、妙に納得し合う。
簡単な工程に見合った、それなりの味だ。もちろんおいしいにはおいしいのだけど。
なんというか、素朴で悪くないサンドイッチ。そこまで印象には残らないのに、たまになぜか食べたくなる。そんな感じの味だ。
ぺろりとたいらげた私たちは、食後の時間をまったり過ごしながらミスリア湖を眺めた。
透き通った青色の湖はやはり美しく、どれだけ見ても飽きはしない。
きっと、このような素朴な手作りサンドイッチをまた食べた時、この風景をふと思い出してしまうのだろう。
私とライラはしばらく無言で、ただ湖を眺めつづけた。
目にうつるのは絶景だった。
透き通った湖が昼時の太陽光をキラキラと反射し、思わずため息が漏れるほどに美しい。
ここはミスリア湖畔。透明度の高い青色の水が美しい、ミスリア湖のほとり。
今日の朝、名残惜しみつつクロエと別れた私とライラは、また自由気ままな二人旅へと戻っていた。
当てもない適当な旅を再開して、まず先にここへ訪れたのは、件のクロエが別れ際におすすめしてきたからだ。
「そういえばこの近くにミスリア湖というのがあるらしい。有名な観光地だから一度行ってみたら?」
クロエにそう言われた私たちは興味を抱き、昼時まで歩き続けてようやくミスリア湖にたどりついたのだ。
そうしてミスリア湖を一望してみると、その美しさと雄大さに圧倒される。
ミスリア湖は、大きな町数個分はありそうなくらい広い湖だったのだ。
観光地というだけあって、このミスリア湖には面する町がある。ミスリア湖の周囲をそって遊歩道も整備されていて、そこを歩くだけでミスリア湖を楽しめるのだ。
ならば緑に欠けているかと言えば、そうでもない。遊歩道周りには街路樹も植えられており、ミスリア湖の向こう側、つまり町の対面側には山があり、青色の水に山の緑色がうつりこむほどだ。
「風も涼しいし、良いところね」
ライラがそう零すほど、ミスリア湖付近は清涼感に溢れている。綺麗な遊歩道が並び、近くに町もあり、まるでリゾート地のようだ。
というより、ここはその通りリゾート地なのかもしれない。遊歩道は現地の人か観光客か区別がつかないほどたくさんの人が往来し、湖には観光用の木製手漕ぎ船が浮かんでいた。
モニカやクロエと別れたばかりで、次の目的地も決まってない今、このリゾート地でしばらくゆっくりするのもいいかもしれない。
遊歩道をしばらく歩きながらミスリア湖を眺めていた私たちは、途中にあった屋根と柱だけで作られた休憩所を見つけ、そこのベンチに座った。
「そろそろお昼時だし、何か軽く食べようか」
近くに町はあるのだが、まだ買い置きの保存食などが残っていた。
むしろ今日から町へ滞在できるので、余分な荷物を減らす意味でも持ってる食材をできるだけ使ってしまうのがよさそうだ。
「今日のお昼は何を食べるの?」
バッグを開いて中を漁っていると、ライラが私の周囲を飛びながらそう問いかけてくる。
「そうだね……簡単にサンドイッチでも作ろうかな」
とはいえ日持ちしない柔らかいパンは今回持ってなく、長期保存が効く固焼きパンしかないのだけど。
固焼きパンは結構地域によって特色あり、とても一口で言えるほどシンプルなものでもない。
今回私が持っているのは、バゲットを輪切りにしたような、数口で食べられるサイズの丸い固焼きパンだ。これなら切る必要もない。
後必要なのは、間に挟む食材だけ。
固焼きパンは水分量が少ないのが当然だ。物によっては簡素なクッキーのようなサクっとした食感だったりもするが、今回のはパサパサとしている。
となると、新鮮な野菜のようなみずみずしい食材を挟みたくなるが……あいにくそんなのは持ってない。
新鮮な野菜は傷むのが早いから、旅に持っていくのは難しい。炒ったりした物なら日持ちするだろうが、それだと野菜のみずみずしさは無くなってしまう。
となると、次はできるだけ油分のある食材が候補となるのだが……これは意外と持っている。
私はバッグから手の平サイズの塊チーズと塩漬け肉を取り出した。
チーズはもちろんの事、塩漬け肉も意外と油が含まれている。水分こそ塩で少なくなっているが、その分肉の油が凝縮されている感じ。
小型ナイフで簡単にチーズと塩漬け肉をスライスし、固焼きパンの上に乗せる。そしてもう一つの固焼きパンを乗せて挟めば……。
「完成? サンドイッチだからこれ以上する事ないものね」
ライラに言われて、少し考え込む。
確かにサンドイッチにこれ以上の手間は無い。食材をパンに挟んで簡単に作れるのが魅力でもあるし。
でも多分、これをそのまま食べてもまとまりが無さそうなんだよな。パンは硬くて、チーズとお肉の油がそれを中和するみたいな感じで。
「……軽くあぶってみよっか」
このままだとぱっとしないサンドイッチなので、いっその事熱を通してみるのもいいかもしれない。塩漬け肉やチーズも火が通ると旨みが増すだろうし。
思い立った私はベンチから立ち上がり、休憩所の外に出て魔術で小さな火を起こした。
そして軽くサンドイッチをあぶり、すぐに火を消す。
軽く火であぶったことで、固焼きパンは香ばしくなっていた。塩漬け肉もパチパチと油が弾ける音がして、照りが増している。
チーズは軽くとろけ、なんだか見た目はぐっとおいしそうになった。
「いい感じじゃない?」
「そうね、見た目はかなり良くなったわ」
サンドイッチを一つライラに渡し、早速二人一緒に食べてみることに。
「んっ……うん、これは中々」
固焼きパンは硬いままだ。火であぶって香ばしさを増したが、やはりパサパサとした食感。
でも熱が入り油を出し始めた塩漬け肉と、とろけたチーズが中々いい塩梅。パサっとした食感を包み込んでくれる。
それにパン自体はパサパサしているが、肉とチーズに触れている面は油が染み込んで柔らかくなっていた。
「あぶったのは正解ね。チーズとお肉の油が増して大分食べやすいわ」
「そうだね。うん……でも」
私とライラは、もぐもぐ咀嚼しながら顔を見合わせた。
「こんなもんだよね」
「こんなものよね」
二人頷きながら、妙に納得し合う。
簡単な工程に見合った、それなりの味だ。もちろんおいしいにはおいしいのだけど。
なんというか、素朴で悪くないサンドイッチ。そこまで印象には残らないのに、たまになぜか食べたくなる。そんな感じの味だ。
ぺろりとたいらげた私たちは、食後の時間をまったり過ごしながらミスリア湖を眺めた。
透き通った青色の湖はやはり美しく、どれだけ見ても飽きはしない。
きっと、このような素朴な手作りサンドイッチをまた食べた時、この風景をふと思い出してしまうのだろう。
私とライラはしばらく無言で、ただ湖を眺めつづけた。
0
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます
今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。
アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて……
表紙 チルヲさん
出てくる料理は架空のものです
造語もあります11/9
参考にしている本
中世ヨーロッパの農村の生活
中世ヨーロッパを生きる
中世ヨーロッパの都市の生活
中世ヨーロッパの暮らし
中世ヨーロッパのレシピ
wikipediaなど
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話
yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。
知らない生物、知らない植物、知らない言語。
何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。
臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。
いや、変わらなければならない。
ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。
彼女は後にこう呼ばれることになる。
「ドラゴンの魔女」と。
※この物語はフィクションです。
実在の人物・団体とは一切関係ありません。
スローライフ 転生したら竜騎士に?
梨香
ファンタジー
『田舎でスローライフをしたい』バカップルの死神に前世の記憶を消去ミスされて赤ちゃんとして転生したユーリは竜を見て異世界だと知る。農家の娘としての生活に不満は無かったが、両親には秘密がありそうだ。魔法が存在する世界だが、普通の農民は狼と話したりしないし、農家の女将さんは植物に働きかけない。ユーリは両親から魔力を受け継いでいた。竜のイリスと絆を結んだユーリは竜騎士を目指す。竜騎士修行や前世の知識を生かして物を売り出したり、忙しいユーリは恋には奥手。スローライフとはかけ離れた人生をおくります。
魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした
たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。
死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる