7 / 35
一章『出会い』
1-5
しおりを挟むポニーテール女子とエルフのお姉さんが並んで先頭を歩き、私と女騎士さんがその後ろから付いていくという形で、4人で森の中を歩いて暫く。
どうやら目的地としていたのは、前を歩く二人の間から前方に覗き見える川だと当たりを付けた。
まぁ私の姿を見れば、先ずは奇麗にと考えるのは納得できる。
この3人のパーティーがどう言った移動手段でここまでを進んできたのか解らないが、長期間旅をするには3人の荷物は聊か軽装が過ぎる。
という事は、森から出た直ぐ傍に村や街があるのか、それとも荷馬車の様な物があるのであれば森の入り口に待たせているのかもしれない。
この森は足場も悪く、荷馬車は勿論の事、こう木々が立ち並んでいると馬に乗って移動するのも大変そうだ。
まぁ話を聞く事が出来ないので、想像の範疇を出る事は無いが、このまま一緒について行っていいのならそう遠くない未来に知る事が出来るだろう。
まぁもし荷馬車があり、それに私も同乗させて貰えるのであれば、この汚れた状態では少し厳しいか。
そんな事を考えながら歩いていると、ふと自分の匂いが気になり、少しシャツを引っ張って匂いを嗅いでみる。
臭い。
獣臭いのと泥臭いのと、返り血で生臭いのとで、もう何と言っていいか解らない。
余りの臭さに顔を顰めていると、ふと隣から視線を感じ、横を向いて顔を上げると、女騎士さんと目が合った。
少し顔が笑っている所を見ると、私が自分の匂いを嗅いで顔を顰めていたのを見ていたのだろう。
何だか恥ずかしさが募り、赤くなっているだろう顔を少し伏せて、半歩程横に距離を取る。
匂ってるかもしれないし……。
『ふふ、長い事森で暮らしていたならある程度は仕方ない。あんまり気にするな。
そうだな……川に着いたら私が洗ってやろう』
私が半歩程離れた距離を直ぐに縮めて、何故か微笑みながら頭をポンポンと撫でられた。
何と言ったのかは解らないが、まぁ恐らく、匂わないから気にするなと言う事だろうか。
それならまぁ、いいかな……。
そらからまた少し黙々と歩き、川へと辿り着いた。
一応私もこの川は見つけていて、数ヵ月前からはずっとこの川を下りながら、周囲を探索していた。
流れを下っていけば人里があるかもしれないという考えと、川の周囲にひょっとしたら村等があるかもしれないと思ったからだ。
森で暮らしている種族とかも居るかもしれないし。
まぁ全て空振りに終わり、人っ子一人居なかった訳だが……。
しかし、彼女達に会えたと言う事は、川を下っていたのは正解だったのかもしれない。
さて、じゃぁ私はあの岩の影で体を洗ってきますので、待ってて下さいネ。
と心の中で告げて、イソイソと3人から離れようとしたところで、ガシッと腕を掴まれた。
「むっ!?」
『コラ、どこ行くんだ。服もちょっと洗ってやるからここで脱いでけ』
「????」
ポニーテール女子に腕を掴まれて服の裾をチョイチョイと引っ張られている。
どういう事だ。
良く解らずに首を傾げてクエスチョンマークを浮かべていると、徐に装備していた皮の胸当ての留め具を外された。
あぁ、成程防具だけ預けていく感じですか?
メンテナンスでもしてくれるのかな。もう結構ボロボロで、黒っぽく変色しちゃってるんですけど……、大丈夫ですか?
されるがままに皮の胸当てを外して、ポニーテール女子に手渡し、じゃぁ私はこれで、とまた歩き出そうとした所でまた腕を掴まれた。
「えぇっ!?」
『あぁもうめんどくさい! 脱がしてやるからこっちこいっ!』
何故服まで脱がそうとしてるの!
恥ずかしいからやめてっ!
服の裾を持って脱がそうとしてくるポニーテール女子に対して、裾を下に引っ張って抵抗する事数秒。
見かねた様に女騎士さんが間に入ってくれたのでその後ろに即座に隠れる事にする。
何か苦手だ。ポニーテール女子。
『コラコラ、エル! そんなに無理矢理してどうする。怯えてるだろう! 言葉が通じてないんだ。優しくしてやれ』
『あ、あぁ、そっか……スマンスマン、つい……』
どうやら女騎士さんがポニーテール女子を叱ってくれた様だ。
女騎士さんの後ろからポニーテール女子を見ると、少し申し訳なさそうに頭を下げている。
まぁ、解ってくれればいいのだよ。
さて、じゃぁ私はこれで。
と、また歩き出そうとしていた所で、今度は女騎士さんに腕を掴まれた。
何故っ!?
まぁあんまり力は入ってないので振りほどこうと思えば振りほどけるが、女騎士さんに対してはそんな事はしたくない。
一体どういう事かと女騎士さんの顔を見上げると、スッとその場でしゃがみ込んで私と目線を合わせ、何かを言いながらジェスチャーをしている。
『いいか? この子が服を洗ってくれるから、ここで脱いで行くんだ。解るか? ぬ、ぐ。あ、ら、う』
私の服を指さして、肩から降ろす様なジェスチャーと、後ろに居るポニーテール女子を指さして、手を合わせて擦る様なジェスチャー。
服を脱ぐと、ポニーテール女子が洗う?
服を洗ってくれるって事かな?
だからここで脱いでいけと、ここで、脱いで、行けと?
まぁそう言うなら、仕方ない、のか?
仕方ない。
恥ずかしいが脱ごう。幸い?私は今少女の姿だ。
同性同士だからどうってことは無い。恥ずかしいけど。
まぁ水の中に入れば体は隠れる。
そして、私は仕方なく服を全て脱ぎ、汚れ物の塊を女騎士さんに渡した。
申し訳無いが、お願いしよう。
『では、私はこっちで焚火でも起こしておきますよ。服を少しでも乾かさないといけないでしょうし』
『あぁ、ローレル、頼んだ。あ、そうだ、手洗い用の石鹸を借りていくぞ』
『しっかし、擦っただけで落ちるかな? コレ……』
エルフのお姉さんが何かを告げて離れた後、女騎士さんへと渡した汚れ物はポニーテール女子へと手渡された。その様子を横目に手で体を申し訳程度に隠しながら川へと向かう事にする。
そして、その後ろを何故か女騎士さんが付いて来ている。
子供だから危ないとかそういう感じだろうか。
これでも中身は大人なのだ。一人でも気を付けますよ?
まぁこの姿なら仕方ないか。
その点は早々に諦める事にして、ようやく水の付近まで辿り着いた私は、しゃがみ込んで水を掬い、体へとかけていく。
少し冷たいが、今は昼間で天気もいいのでポカポカと温かい気温だ。
パシャパシャと水を体に掛け、冷たさにもある程度慣れた所で川の中に入る。
余り深い所では無かった様で、水深は膝下ぐらいまでしかない為、体を隠す事は出来ないが仕方ない。
その場でまたしゃがみこんでパシャパシャと水を頭からかけながら手でゴシゴシと洗い、頭の汚れがある程度落ちた所で、岸辺に居る女騎士さんの声が聞こえたので其方を見る。
すると、手ぬぐいの様な物と何やら青い固形物を手に持った女騎士さんが私に向かって声を掛けながら手招きしているのが目に入った。
手招きしているという事は来いという事だ。
近づいて行くと、どうやらこの世界にも石鹸の様な物があった様で、既に手ぬぐいはアワアワとしていた。
有難い。しかも態々泡立てて頂いて、至れり尽くせりとはこの事か。
ペコリとお辞儀をして、女騎士さんが手に持っている手拭いに手を伸ばすと、スッと引っ込められた。
首を傾げると、微笑みを浮かべながら何事かを私に向かって喋りながら更に手招きしている。
もっと近くに来いって事?
『ほら、洗ってやるから、もっとこっちに近づいてくれ』
手招きされるがままに近づくと、ガシッと手を握られてそのままゴシゴシと私の腕を洗い始める女騎士さん。
いやいやいやいやっ!そこまでしなくても大丈夫ですっ!至れり尽くせりが極まっちゃってますからっ!
直ぐに体を離して手拭いに手を伸ばす私に対し、手拭いを後ろに引いて首を横に振る女騎士さん。
『こらっ! だめだったら! 私がちゃんと奇麗にしてやるから! ほら! こっちに来るんだっ!』
何か怒っている様な口調に、有無を言わさない態度で手招きされる。
私は女騎士さんにだけは嫌われたくない。なら、言う事を聞くしかない……。
別に嫌という訳じゃないが、こんな事をされたことが無いのでどうすればいいのやら……。
恐る恐る近づくと、また微笑みを浮かべて頭を撫でられ、体を洗うのを再開された。
『よーしよし、いい子だ。ちゃんと奇麗にしてやるからな。じっとしてるんだぞ?』
「うぅ……」
優し気な声色から察するに、機嫌は直ったようで少しホッっとする。
くすぐったいやら恥ずかしいやらで、顔が火照って行くのが解るが、水が冷たいのがせめてもの救いか。
そうして暫しゴシゴシと洗われるのに身を任せる。
『うん、ある程度は奇麗になったな。しかし、汚れが落ちたらそんなに可愛い顔をしていたんだな……。しかし、髪が少し痛んでいるか……森で暮らしていたのなら仕方ないが、勿体ないな……。よし、砦に付いたらお風呂に入れてもっと奇麗にしてやるからな』
何かを私に言っているのであろう女騎士さんの言葉を聞きながら、されるがままに体を洗われる私であった……。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる