TS少女総受けファンタジー~拾われたTS少女は流されやすい~

熊と猫

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二章『新しい生活』

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 「ふぁふ……」

 朝早く、隣で寝ているアリスを起こさない様に布団から這い出した私は、欠伸を噛み殺しながらアリスの部屋を出て階段を降りていく。

 今日は抱き枕状態になっていなかった為、簡単に抜け出すことが出来たので、その点は良かった。
 階段を降りてトイレを済ませた後、洗面所で顔等を洗いながらふと昨日の事を思い出す。

 結果として私はどうやらここに暫く置いてくれる事は間違いないと思われる。
 昨日ご飯を食べた後、ソファーやカーペットの上で寛いでいた三人にポーチに入っていた宝石を取り出して差し出した。
 最初、驚いた様な顔をして、何やら会話をしながらその宝石を手に取って調べていたのだが、暫くしてポーチの中にまた仕舞って私に渡して来た。
 まぁいきなり渡されたので、子供が自慢気に見せて来たのかと思ったのだろう。
 直ぐに私は首を左右に振って考えていたジェスチャーゲームを開始する。
 まずは宝石を差し出して、この家を指さし、手を合わせて顔の横に持っていて首をコテンと傾げて目を瞑る。
 宝石を上げるので、この家で、寝泊まりさせてください。

 伝わりそうじゃないですか?結構いい感じだと自画自賛してるんだけど……。
 まぁその後も色々と繰り返してなんとか伝わったと思う。
 最後には宝石は取り合えず持っててもらって、その宝石の入ったポーチを指さして腕を交差させてバツを作り、私と同じように寝るジェスチャーの後に腕で円を作って丸を作ってくれた。
 という事は、宝石は要らないけど、寝泊まりするのはオッケーって事だ!

 取り合えず第一目標は達成したので、これからは第二の作戦として、三人の為に出来る事を率先してやっていこう作戦だ。
 今日早起きしたのもその一環で、今日は朝ご飯を作るよ!
 このためにキッチンの使い方を昨日ローレルの料理姿を見て覚えていたのだ。

 早速手を洗って、エプロンは取り合えずローレルのを借りよう。
 ちょっと大きいけど引きずる程じゃないので大丈夫。

 さてではメニューを決めよう。冷蔵庫の中を拝見。
 勝手にしちゃっていいのかなぁという不安もあるが、今日だけでも作って怒られたら明日からはやめようかな。うん。

 まず目につくのは卵か。あとベーコンみたいなお肉もある。
 後は野菜が少々。
 スープもつけたい所だ。
 昨日のローレルが作っている所を見た感じ、コンソメスープの素の様な物があった。
 それで味付けを行っていたので間違いないと思う。昨日のスープの味もまんまコンソメスープだった。
 キッチンに置いてあるツボの中身の粉末状のやつだ。
 調味料が揃っているのは本当に有難い。
 でも醤油やマヨネーズやケチャップ何かは無いんだよね。
 卵を見た時オムレツを作ろうかと思ったが、ケチャップが無いなら却下かな。
 無難にスクランブルエッグと、ベーコンを焼いて、後は野菜のコンソメスープとパンで良いかな。
 これはバターっぽいからそうかなと思ってちょっと舐めてみたらそうだったので、スクランブルエッグの味付けに使おう。
 あとは塩コショウでオーケー。
 スープも並行して作りたいからまずは野菜を切ろう。さて、クッキング開始だ!


 さてさて、完成しましたよー。
 我ながら上出来だ。
 人の為に作る料理ってこんなに楽しいんだなぁ。以前の世界では自分の為にしか作って無かったし、気合が入るという物だ。これで『おいしい』と言ってくれたらうれしいんだけど……。
 ベーコンのちょっと焦げちゃったやつは自分が食べる所に置いて……と。

 さて、朝ご飯は完成したものの、どうする私。
 起こしに行った方がいいのか、それとも起きてくるのを待つべきなのか。
 どっちでもいいよという言葉が聞こえてきそうだが……。

 と、取り合えずアリスだけ起こしに行こう、そうしよう。
 アリスが起きて朝ご飯が出来ている事を知れば他の皆も起こしてくれそうだしね。

 そうと決まれば早く起こしに行こう。
 エプロンを外して椅子に掛けて、階段を上がり、アリスの自室へ。

 「あ、アリス?」
 『んー……?』

 私の小声にちょっと反応したが、起きる気配がない。
 ちょっと布団を引っ張りつつもう一度名前を呼ぶと、漸くその眠そうな瞳が開いた。

 『んー……まだ早いぞアシュリー。ほら、こっちに来てもうちょっと寝ろー……』
 「あ、アリス! おはよう!」
 『うーん……アシュリー。おいでー……』

 ね、寝惚けていらっしゃる?
 アリスの目はまだトロンとしていて、体は横になったまま私へと向かって手招きしている。
 仕方なく肩でも揺すろうかと少し近づくと、その腕が伸びてきて、私の腕をがっしりと掴んで引っ張られ、私はなすすべもなくそのままベットへと倒れ込み、ぎゅっとアリスの体に抱き留められた。

 「うぁっ!?」
 『んっふっふ、捕まえたぞ。アシュリー……』
 「あ、アリス、おはようっ」
 『すんっ……ん?んー、何だかアシュリーから良い匂いがするぞ……』

 アリスさん、顔が近いです。
 首元に鼻を付けられて匂いを嗅がれ、何かを言いながら訝し気に首を傾げてその顔を上げた時、私の顔とアリスの顔は目と鼻の先という状態だった。
 暫く固まっていると、アリスが人差し指を立てて口元をチョンチョンと触っているのが目に入った。
 何だろうと首を傾げる。

 『ここに何かついてるぞアシュリー。ん?解らないのか? うーん、食べ物の欠片の様だが……、何時の間に食べたんだ……? ふむ、ふふふ、じっとしているんだぞ』
 「んっ……!?」
 『ちゅっ……』

 一瞬の出来事だった。一瞬の出来事だったけど、今、ちゅーしました?
 口からはちょっとずれていたような、いやでも当たってた様な……。
 目を見開いて驚きに固まっていると、目の前のアリスが何かを私に言っている。

 『んー? 卵か? これは……ふふ、つまみ食いでもしてたのか?』
 「お、おはよう」
 『ん? あぁ、おはようアシュリー。さて、私もそろそろ起きよう。二人を起こしていくからアシュリーは先に行っててくれ』

 下の階を指さすアリスに、コクコクと頷いて、やっとその手から解放された私は少し早足でドアへと向かい、もう一度振り向いて、昨日覚えた言葉をアリスに向かって言った。

 「ご、ごはん!」
 『ん? ご飯? あ、あぁ、朝ご飯にしような。ん? なんだか下の階からいい香りが……』

 何か言っている様だが、私はそそくさと下の階へと降りていく。
 あれはきっと不慮の事故だ。きっと私の口に何かが付いていたんだろう。
 恐らく多分ね。味見した時のナニカだきっと。
 三人が降りてくる前に顔でも洗って顔の火照りを冷やそう、そうしよう。
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