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二章『新しい生活』
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しおりを挟むその日はどうやらエルも同じく出掛ける予定だったようで、午前中の内に二人共を見送る事になった。
何処に行くのかは解らないが、エルは結構大荷物だったので暫く帰ってこないのかもしれない。
ローレルの方は結構軽装だったように思う為、ひょっとすると今夜とかにでも戻ってくるのかも。
まぁどっちにしても詳しくは解らないので、そこ等辺は成り行きに任せるしかないだろう。
アリスは変わらずこの家にいるみたいなので、全く問題無い。
そして現在、ローレルとエルを見送った私達は、街を歩いている。
行先は解らないが、アリスに聞いた所によると『買い物』とやらに出かけるという話だ。
未だそれが何なのか解らないが、付いて行けば自然と解るだろう。
アリスが機嫌が良い様なので、私も楽しい。
手を繋いで街を歩いていると何だかデートみたいじゃないかと、出掛けた当初はドキドキとしたのだが、よくよく私達の姿を客観的に見てみると何だか違う様な気がする。
かなりの希望的観測をしてようやく友達同士?普通に見ると、姉妹でお出かけか……。
流石に子供連れとまで言ってしまうと、アリスの若さを考えると無いと思う。思いたい。
まぁアリスの実際の年齢は知らないんだけども。
まぁアリスとお出掛けならどこでもついて行きますとも。
閑話休題。
暫く街中を歩いた所で、どうやら目的地に着いた様だ。
何だかすごくファンシーな雰囲気の、お店なのだろうか。
ピンク色の外観に、酷く丸みを帯びた文字で書かれた派手な看板が、この街の中で一際浮いている様な気がする。
『これはまた……、派手な店だな……。昨日エルに教えてもらったのだが、ここに一人で入る勇気は私には無いな。アシュリーと一緒なら大丈夫だが……』
「む??」
『あぁ、いや、何でもないぞ。さてここに入るぞ』
何やら名前を呼ばれた気がして横に居るアリスを見上げるが、何でもない様だ。
首を振って前の店?を指さし、どうやらここに入ると言っているらしい。
アリスと一緒なら大丈夫だけど、この店に私一人で入る勇気は、まぁ、無いな。
そして二人で連れ立ってその店へと入る。
木製のドアを開いて閉めるとカランカランと来客を告げるベルの音が店内へと響いた。
『いらっしゃいませぇー』
声がした方を見ると、若い女性店員さんが接客スマイルを此方へと向けていたので取り合えずお辞儀をして置く事にする。
さて、お店の中はまぁ兎に角派手な感じで、棚やそこかしこに並ぶのは服服服。兎に角服。
しかもどうやら女性の服がメインに置いてある様だ。
ここである程度の合点がいった。『買い物』とはどうやら買い物に行くという事だった様だ。
恐らく、着た切り雀の私を見かねてと言った所だろう。
しかし、私がお金を持っていないのは知っていると思われるので、恐らく多分買って頂けるという事なのだろうか。
凄く申し訳ない。
『はぁ~、なんとも色々あるものだな。目移りしてしまうが……、アシュリー、どうだ?どれか気になるモノはあるか?』
私へと視線を下げて何かを聞いている様だ。恐らくどれがいいかという所だろうか。
折角なので好意に甘えようとは思っているが、何れ何かしらの方法でこの恩は返さなければならないだろう。
まぁ私の子供の容姿では、どれだけお金を稼げるようになったとしても、お金をそのまま受け取ってもらえるとは思えないので、何か物で返そうかな。美味しい物食べてもらったり、冒険者という職業柄色々と必要な物品等もあるだろう。そう言うのを用意すればいいのだ。
まぁそれはそれとして、私は取り合えずキョロキョロと店内の商品を見渡しつつ、ある場所に目を付けた。
その一角は他と比べても幾分か地味な部類に入りそうな感じだったのだ。
それに安そうだしねっ。
私がそちらへと歩いて行くと、その後ろをアリスも付いて来てくれる。
そして、ふと目に入ったそれを持ち上げてそれをアリスに見せる。
少年が履きそうな感じの黒いハーフパンツだ。地味だし動きやすそうだし、私的には良い感じ。
『んん?これがいいのか?しかし、これだけ色々あるのにこんな地味なのを選ぶとは……』
何かを言っている様だが、取り合えずそれがいいという意志を示してみたらすんなりと受け取って腕にかけている。どうやらオーケーらしい。
わーい。
あと上着もその近くにあったので、白い無地のシャツにしておこう。
それも広げて見せると、これもまたすんなりと受け取ってもらえた。
これもオーケー。
これでいいかな。
「ふへへ」
『ふふ、こういうのが好きなのか?まぁ私も動きやすそうでいいとは思うが……、しかし何だかローレルとエルが見たら小言を言われそうだな……。これは冒険者用の仕事着にしような?他の普段着は、折角だから私が選んでやろう。そうだ、下着も見ないとな……』
良い服を買ってもらえそうで上機嫌な私を見て、アリスが少し微笑み、何かを言った後店の中を別の場所へ歩いて行くのでついて行く事にする。
そして辿り着いたのは、如何にも少女が好みそうな雰囲気の服が並ぶコーナーだった。
もうその手に持っているやつだけでいいんですけどもっ。
しかし、私にはもうどれがいいのか聞く様な素振りは無く、アリスが色々と見ている。
どうやらアリスが選ぶ様だ。まぁ買って頂く側である私としては文句なんて持ってのほかなのは解ってます。けどあんまりフリフリなのはちょっと……。
真剣な表情で服を選んでいるアリスを横目に、少し不安な気持ちを抱きながらその様子を見守る事数分。
アリスが数着の服を持って私の前へとやって来た。
まず一つ目。
青いシンプルな感じのワンピースだった。
スカートはそこまで短くない点は私としてはポイントが高い。膝よりも下だろう。
『これなんかどうだ?だめか?』
「ダメ」と言う単語が聞こえたので、どうやらこれはだめか?とでも聞いたのだろう。
シンプルだし、アリスがそれがいいというのなら私はそれでいい。
単純な思考回路だ。コクリと頷く。
『お、気に入ったか!ならこれを買おう!こっちはどうだ?寝間着か部屋着に良さそうだろう?楽そうだ』
次に取り出したのは、ふわふわもこもことしたピンクのショートパンツ。ちょっと派手だが楽そうではある。スカートじゃないのは私としてはありがたいし、家の中で着る様な雰囲気かな?
そしてそれと合わせる様に取り出したのは、同じくピンクでもこもことしたフード付きで半袖の上着だった。どうやら上下セットっぽい。
これもコクリと頷くと、アリスは嬉しそうにじゃぁ次と見せて来たのは水色のキャミソールだ。
まぁこれも部屋着としては良いだろう。うん。
そして次に取り出したのは……。下着だった。
まぁ現在私は一つしか持っていないのでありがたいはありがたいのだが、その手に持ってるのはどうかなぁ……。
リボンとかついてるしなぁ……。その紐はちょっと……。
出来れば今私が履いている様なボクサーパンツの様なタイプとか……。
『うんうん。これでいいかな。しかしこっちは……、もうちょっとかわいいのがいいか』
うん。
何故か下着に至っては私にこれで良いかと言う風な問いかけが無い!
何故だ……。
いや、まぁ、アリスがそれがいいというのなら……、ちょっとは考えるけど、結局了承はするとは思うけど……、ちょっとぐらい私にこれでいいか聞いてくれても良いんじゃないかなぁ……?
次々と可愛らしい感じの下着を持って来ては私に合わせて頷いているアリスを見ながら、そんな事を思う。
が、まぁ、アリスがそれを私に履けというなら、喜んで履かせていただきますとも……。
単純な思考回路だ……。そう、アリスの言う通りにしておけば問題ないんだっ。きっとっ。
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