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二章『新しい生活』
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しおりを挟むそれから暫く二人での楽しい『買い物』が続き、時間的にお昼前には大体の物を買い終えていた。
そしてその後は街中を暫くブラブラとして、今現在、少し時間は遅いがお昼ご飯に出店の様な所で購入したホットドックに似た食べ物を公園のベンチに腰かけて二人で食べている所だ。
買った物は殆ど私の為に買って頂いたっぽい。
石鹸や手拭い、歯ブラシ等の洗面用具を筆頭に、後は今日の朝食を作成した事を踏まえてかどうかは解らないが、エプロンまで買ってもらった。
非常に可愛らしい感じの青いエプロンだが、まぁ自分の体に合ったエプロンは動きやすいので有難い。
きちんと『ありがとう』とは伝えているが、やはり何時かはお返しをしなければ。
しかし、それにしても、今現在の状況は何だか私的にはデートと言いたい状況ではあるが、それはまぁ無いのは解っているので、そんな妄想は置いておいて。
こうして二人で買い物をして、公園のベンチに腰かけてホットドックを食べているという初体験。
非常に友達同士の休日イベントの上位に入ってきそうなイベントじゃないですか?
これは着実にアリスと友達としての階段を登っている気がするのは気のせいでは無いだろう。
まぁ実際にはお金は全部アリス持ちという心苦しい物があるので、客観的に見るとまた違うのかもしれないが……。初めに出かけた時に考察した通り、保護者と子供か、あるいは姉と妹みたいな……。
まぁそれは取り合えず置いておこう。
今はこの楽しい時間を胸に刻み込むのだ。何れ金銭的に余裕を持つ事が出来た時に、今日と同じ様なイベントが起こればそれはもう保護者と子供ではなくなっているはずだ!そこには夢の友達デートが待っているのだ!
それにしてもこのホットドックはすごくおいしい。
ケチャップもマスタードも無いのに、このパンに挟んでいるウィンナーの味がしっかりとしている為か、シンプルながらもウィンナーの濃い味とパンの質素な味がベストマッチで賞。
一心不乱に食べていると、横から視線を感じ、そちらを見るとアリスが微笑まし気に私の食べる様子を眺めていた。
食い意地が張ってるみたいでちょっと恥ずかしい。
『ふふふ、おいしいか?ここの出店の食べ物はどれもおいしいが、それが一番おすすめだ。小腹が空いた時には持ってこいだ』
「んぐんぐ……、おいしいっ!!」
『そうかそうか、おいしいか。よしよし』
おいしいかどうか聞く様な感じの言葉があったのでおいしいと伝えると、アリスがニコリとした笑みを返してくれる。
それから暫く集中してホットドックにかぶり付き、食べ終えた所で一息つく。
「ふぅ……」
『本当においしそうに食べたなぁ。気に入ったのか?……そ、そうだな、アシュリー、さっき食べたやつは、好きか?』
「???」
アリスが何かを私に聞いた。
さっきの言葉を少し反芻した所で、どうやら先の服屋や他のお店でも偶に聞いて来ていた言葉が含まれていた様だ。
今回の買い物で私はまた少し言葉を覚えた。
『はい』『いいえ』や、恐らく好みとかそう言った感じの言葉だと思われる『好き』と『嫌い』。
そして先の言葉の中には私に対して何かを聞く様な感じで『好き』と言う言葉が含まれていた様に思う。
恐らく私が美味しそうに食べていたので、さっきのホットドックが好きになったかどうかを聞いたのだろう。
それは勿論、非常に気にいりましたとも。
「好き!!」
『そ、そうか!それは良かった』
恐らくこの言葉は以前の世界で言う好きという言葉に似通った物だろう。
多分ライクの意味だと思う。
笑みを浮かべて『好き』だと言うと頭を撫でられた。
恐らく通じたのだろう。ふふふ、着実と言葉を色々と覚えている。
これはそう遠くない未来にアリス達の言葉をある程度理解出来るようになるぞ。とはまぁ、少し言い過ぎか。単語しか解らないし……。
そうして暫く撫でられていた所で、何やら少しソワソワしているアリスを不思議に思い、撫でられつつアリスの顔を見上げると目がバチリと合う。
暫し無言で見つめ合い、首を傾げると、アリスは撫でていた手を放して自分自身を指さした。
『ど、どうだ?アシュリーは私は、好きか……?』
「んん???」
ふむ。どうやら今度はアリスが自分を指さして私に『好き』かどうかを聞いている。
これは先の考察通り、ライクの『好き』で間違い無さそうだ。ふふふ、私の予想も案外捨てた物じゃないな。
勿論アリスの事は『好き』だ。しかしこの感情は多分ラブのほうだと思うが、この場合聞いているのはライクのほうだと思う。
ラブと言いたいが伝わらないだろう。今現在の関係性では伝える勇気も勿論無いし。
何れもっと仲良くなってちゃんと友達だと胸を張って言える様になれば伝えられるかな。
まぁ今は聞かれた事に答えなければ行けない。何だか返事を待っているアリスがソワソワとして落ち着きが無いし、これ以上待たせるのは悪い。
「アリス! 好き!」
『!?!? そ、そうかそうか! ふふふ、私もアシュリーが好きだぞっ! 大好きだ!』
『好き』だと伝えた瞬間、満面の笑みで私を抱き上げて膝の上に向かい合って乗せ、ぎゅっと抱きしめられた。
何だかベンチに座って向かい合って膝の上に座ってる姿ってちょっとマヌケに見える気がしないでもないけど、アリスが嬉しそうだからまぁいいか。
それにアリスも私の事を好きって言ってくれた。ライクだと解っていても嬉しいものがある。
こうして他人に面と向かって言われた事は皆無なので測り知れない感動があった。
「ふへへぇ、アリス、好き」
『うぐっ……可愛いやつめ!』
もう一度感情の発露に任せて口にした『好き』は、私にとっては限りなくラブに近い『好き』だった気がする。
まぁこの『好き』が同音異義語では無い可能性が高いので伝わらないだろうが……。
もう一度『好き』だと伝えた瞬間に、アリスの私を抱く腕の力が強まり、私もより一層ギュッとアリスの体にしがみ付く。
そして不意に、アリスが私の頬に今朝と同様のキスが炸裂した。
『アシュリー、私もお前が大好きだぞっ。ちゅっ……』
「っ!?!?」
慌てて顔を上げてキョロキョロと周りを伺う。どうやら誰も居ない様でホッと胸を撫で下した。
流石に人に見られるのは恥ずかしい。
だってこの世界ではちゅっとしたらちゅっと返さないと行けないような欧米風異世界なのだ。
もう一度キョロキョロと周りを見渡してからアリスの方を見ると少し首を傾げているのが目に移った。
まぁ人目を気にしていただけなので、挙動不審だったのはお気になさらず……。
さて、では意を決して気合を入れて、出陣だ。
やっぱり顔が近づくと照れるので、ある程度近づいて狙いを定めた後は目を瞑るしかない。
「ちゅっ……」
『おぉっ! まさかアシュリーもしてくれるようになるとは……ふふふ……。お返しだっ、ちゅっ!』
「!?!?!?」
え、これもう一回返さないと行けないの?
そしてキスを返す。それを3回程繰り返した所で、もう勘弁してくださいと顔を両の掌で隠す事にする。
恐らく耳まで赤くなっているのは見てもらえば解ると思います。
公衆の面前で、いくら周りに人が居ないとは言っても恥ずかしすぎます。
どれほどアリスが望んでもこれ以上は無理です。
顔を隠した私に何やらアリスの謝る声が聞こえて来た。
少しやり過ぎたと思ってくれたのだろうか。
嫌な訳じゃないのです。私のメンタルが弱いんですぅ……。
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