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三章『お留守番』
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しおりを挟むアリスに続いて、ローレルも仲良くなった矢先に出掛けてしまった。
一緒に行けないか一応聞いてみたのだが、やはりまだ私は一緒には行けないらしい。
どうしても無理なのであれば、残念だが仕方ないと諦めるしかない。
しかし、アリスに続いてローレルにまで唇にキスされてしまった。
ファーストキスは間違いなくアリスだが、こんなに早々にセカンドキッスまで経験する事になるとは、人生何があるか解らないね。まぁセカンドキスなんて言葉があるのかどうかは知らないけども。
二人にとってあのキスは一体どういう意味を持つのか良く解らないが、異世界文化を未だ良く解っていないので考えても答えは出そうにない。
友愛の延長線上にあの行為はあるのか、それとも……。まぁそれは無いかな……、無い、のかな?
まぁ私からすれば、好きな二人からキスされる事は嫌な訳は無いので、良く解らない事は取り合えず保留だ!
閑話休題。
そして、ローレルと入れ替わりでエルが帰って来た。
現在はお昼ご飯を食べて、二人で食器を洗い終えた所だ。
エルは現在ソファーに座って荷物を片している様なので、私は食後のお茶を入れよう。
そして、最早勝手知ったるキッチンでミルクティーを入れて、ソファーの前のテーブルに二人分を置き、私もソファーに腰かけて一息ついた。
『おぉ、お茶入れてくれたのか、ありがとうアシュリー。ほんとにいい嫁さんになりそうだよな、アシュリーって……』
「ふへへ」
頭を撫でられつつお礼の言葉も聞こえたので自然と笑みが漏れる。
ローレルは出掛けてしまったが、今日からはエルと一緒だ。寂しさはあるが、一人では無いので大丈夫。
『そうだそうだ。……ふふふ、お土産があるぞ!アシュリー』
「???」
何やら意味深な笑みを浮かべつつ、自分の荷物に手を突っ込んで取り出したのは、何やら小さい紙袋の様な物。
それをホイッと手渡され、首を傾げつつエルを見ると、それを指さして開ける様なジェスチャーをしている。
も、もしかして、これはお土産というやつではっ!?
ちょっと待てよ。
私って今まで誰かにお土産なんて貰った事あったっけ……。
記憶を遡る事数秒。
うん。そういえば会社で上司が休暇に、家族でワイハに行ったという話で、職場に持ってきたお土産を貰った覚えがあるぞ。
確か、チョコレートを一粒。
…………。
何だか、上司には悪いけど、あれとこれを一緒にはしたくないな。
こっちのほうが断然嬉しさが大きいから。
取り合えず、感動に浸るのはそこそこにして、折角だから開けてみよう。
何だかエルも私の様子を伺いつつソワソワしているし……。
ガサガサッとな。
中から取り出したるは、髪留めだった!
黒い小さなリボンがついたのと、白い花の飾りがついたやつ。
二つとも見覚えがある。色は違うがポニーテールにしているエルがつけていたやつと同じやつだね。
以前の世界では短髪だったので、現在の長髪が家事何かをするときにちょっと邪魔だと思ってた所だ。
リボンのやつはちょっと付けるのに勇気がいるけど、花のやつはシンプルだ。
ありがたい!
「エル!ありがとうっ!ふへへへ」
『お、おぉ!どういたしまして!(気に入ってもらえるか不安だったけど嬉しそうで良かった……)』
初めてのお土産。天井のライトに翳して眺める。
これはかなり嬉しい。
暫しの間、エルに貰ったお土産を眺めつつニマニマしていると、不意にエルに肩を叩かれたので其方をみるとその二つを指さした後に髪を指さしている。
ひょっとすると付けてくれるという事かも知れない。
確かに髪なんて結った事等ある筈も無い。ここはお言葉に甘えて今回だけでもつけてもらっちゃおうかな。
『折角だから早速付けてみるか?アシュリーは、どっちの髪留めがいい?』
「んっ!」
二つを交互に何度か指さしているので、どっちがいいのかを聞いているのだろうと当たりを付け、花の方を手渡した。
『お、アシュリ-はこっちが気に入ったのか?よしよし、任せなさい。さて、どんな髪型にするか……。わ、私と一緒とか、ど、どうだ?だめか?』
「???」
手渡した後に背中をエルに向けると、私の髪に手櫛を通しつつ、何かを私に尋ねている様な雰囲気だったので、後ろのエルの方を見ると、彼女が自分の髪型を指さしている。
恐らく髪型をどうするか聞いているのだろうか。
と言っても簡単な髪型しか私は知らない。そこまで種類があるのかどうかも解らないが、私の頭の中にある髪型は、ポニーテールとツインテールに三つ編みぐらいか?
それかシンプルに唯一つに束ねるだけとか?
うーむ、と悩む事数秒。
折角だし、ちょっと興味もあるので……、ローレルと一緒の髪型とか、どうだろう。
三つ編みってどうやって完成するんだろう。という好奇心も少し手伝ってはいる。
ひょっとしたら少しめんどくさいかもしれないので、エルがダメだというのなら諦めよう。
取り合えず聞いてみる事にする。
「ローレル、一緒。だめ?」
『ん?ローレルと一緒?んー、あぁ!三つ編みか?そ、そっか、ローレルと一緒がいいのか……』
「だ、だめ?」
『ん!いやいや!ダメじゃない、ダメじゃないぞ!ま、まかせろって!三つ編みだろ?こう見えて手先は器用なんだからな!』
恐らく伝わった事は伝わったのだろうが、どこか寂しそうなというか、ちょっと不安になる声色が聞こえたので気になる。
ひょっとしたらめちゃくちゃ面倒臭いか、難しいのかもしれない。
悪い事をしちゃった様な気になりながらも、どうやら既にもう作業が始まっている様で、エルの手が私の髪を弄りながら淀みなくセカセカと動いている。
最早、やっぱ無し!とは言えない状況だ。
完成したら最大限にお礼を伝えよう……。
そして、ジッとして待つ事暫く。どうやら完成したのか、エルの手が止まった。
『うっし、出来たぞー。うん、我ながら上出来だな。待ってろ、手鏡があるからな……』
三つ編みはどうやって作られるのかという私の疑問は大凡解決されたが……、これ自分で出来るの?
まぁ慣れれば後ろ手に出来そうな感はあるが……。
自分なりに不器用じゃないとは思ってるけど、これ正直、面倒臭いよね……。
これは今回だけか、もしくは誰かが髪を結ってくれるという時だけにしようかな……。
さて、取り合えずエルが持っていた手鏡を前に出してくれたので、私の三つ編み姿とご対面!
「おお~……」
『どうだ?上出来だろ?』
何だろう。ローレルは桃色な髪色なのに対して、私は金髪。髪を束ねた事で尖った耳が外に完全に出ている為に、すごくエルフっぽさが増したね。
テンプレなエルフっぽい!
自分で言うのも何だけど、結構似合ってるかな……。
うん、面倒臭かっただろうに、エル、本当にありがとう!
『ふふふ、似合ってるなぁ。可愛いぞー、アシュリー。よしよし』
「ふへへ、ありがとう!エル!」
『んー!本当に可愛いな!おいでっ!アシュリー!』
「???」
頭を撫でられつつ、お礼を言った所で、結構至近距離にいるにも拘らず、『おいで』と言って腕を広げられている。
まぁおいでと言われたら行くしかないよね。
二歩も歩いたらぶつかっちゃう距離だけどね!
一歩足を踏み出した所で、私はエルに捕まり、ギュゥッと抱きしめられた。
エルにも結構抱きしめられる事が多い気がする。
何時もはしないけど、何だか今回は色々と嬉しい事もあったし、髪まで結って貰ったので出来る限り感情を表現してみよう。
抱きしめられつつ、私もエルの背中に手を回してギュッと抱き着く。
少し恥ずかしいが我慢だ。
「え、エル!ありがとっ!」
『おぉ、何だか初めてアシュリーから抱き返してもらった気がするぞっ!くぅ……、何だか感慨深い……、もうちょっとだけ、もうちょっとだけ……』
「ふへへ……」
今回は何時ものエルのセクハラ攻撃を受ける事無く、しかし、中々エルの腕が緩まる事が無かったので、暫くの間二人で抱き合っているのだった。
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