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三章『お留守番』
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しおりを挟むさて、エルのお土産である髪留めで三つ編みにして貰った後、暫く二人で抱き合っていたのだが、ようやくエルの腕から解放された所でもう一度ソファーに座り直して一息つく事にする。
何だか頭の感覚が新鮮だ。
やはりこれからは動く時は髪を結う様にしようかな。
とても動きやすそうでグッドです。
本当に良い物を貰ってしまった。
余りにも嬉しいので、上司のお土産をカウントしない事にして、今回のこれが私の初お土産ってことにする。
ごめんね!田中さん!
まぁ上司の事は取り合えず置いておこう。
さて、少し冷めてしまったミルクティーを飲み干した所で隣を見ると、どうやらエルも飲み終わった様だ。
おかわりいるかな。
「エル、おかわり?」
『お、じゃぁ、貰おうかな。ありがとう、アシュリー』
ふふふ、私の異世界語も日々上達しているな。
エルに対しては『おかわり』という単語は初めて使ったのだが、結構自然に頷いてお礼を言いつつカップを渡してくれた。
これはおかわりを貰うという事でいいのだろう。
カップを受け取った私は、キッチンへと向かい、今度はさっぱりとしたレモンティーを入れる事にする。
ミルクティーばかりだと口の中が甘いからね。
それにしても、調味料が豊富にあって本当に良かったと心から思う。
これで塩や砂糖なんかが貴重な物だったりしたら、こういった紅茶何かを入れる時に使いづらいし。
まぁストレートティーも好きだけどね!
そういえば、砂糖があってパンを作る為の小麦粉があるなら、お菓子も普通に作れるよね。
というかお店に普通にクッキーとか色々並んでいた。
という事は、普通に手作りでお菓子作れちゃうよね。このキッチン、コンロの下にちゃんとオーブンもあったりするし。
誕生日等を祝う文化があるのなら、三人の誕生日ケーキとか作っちゃおうかな……。
誕生日をまずは調べないとだけど、しかし、いきなり手作りケーキとかちょっと引かれちゃうとアレだなぁ……。
ここはある程度手作りのお菓子の反応を見てから考えよう。うん。
閑話休題。
さて、おかわりのレモンティーを入れ終えたのでエルの元に持っていこう。
『おぉ、今度は種類が違うのか?ズズッ……、んん、おいしい!ありがとうな、アシュリー!』
「ふへへ」
テーブルにおかわりのレモンティーを置くと、おいしいとお礼を言って頭を撫でてもらえた。
未だ少し作業が残っているのか、エルは私の頭を撫でた後はまたゴソゴソと荷物を漁りだしたので、私は邪魔をしないように隣に静かに腰かけてレモンティーを啜る。
うん、おいしい。
もう一口飲みつつ、チラリとエルを覗き見る。
そういえば、荷物の整理なんていつもなら自室でしていそうだけど、ひょっとすると私が居るからリビングでしているのかな。
そう思い至ると何だか少し……、うれしいな。
「ふへへ……」
『ん?なんだ?ふふふ、今日は機嫌が良いのか?もう少しで終わるからちょっと待っててくれよ』
不意に漏れた笑みに反応したエルが此方を向いて、優し気に微笑んで頭を撫でて何かを言ってくれた。
そしてまた作業に戻るエルを横目に、まったりとお茶を啜る私であった。
それから暫くして、どうやら作業が終わった様で軽く伸びをしたエルが、私に向かって何か言っている。
手に持っているのは、何やら薄い本の様だ。
『ん~、終わった終わったぁ……。さって、アシュリー、これなーんだ!』
「????」
『っても解らないか、ふふふ、お土産の第二弾だぞ!』
先程から二人でソファーに腰かけていたが、邪魔にならない様に少し離れていた所に座っていた私の方に体を寄せて、手に持った本を私に見える様に広げて見せてくれた。
何やら絵本の様な感じだが、ストーリーがある様な風ではない。
簡易的だがどこか可愛らしい絵柄に、その絵の近くに短い言葉が乗っている様な感じだ。
見た感じでは、以前の世界で言う子供向けの教本や図鑑の様な雰囲気だろうか。
ひょっとすると言葉を覚える為の本なのかもしれない!
これはひょっとして、ひょっとしなくても、私の為に買ってきてくれたんだよね……。
エル、すごい優しい!
「おおっ!エル!ありがとっ!!」
『ふふふ、大体何なのか解ったのか?よしよし、じゃぁ私が読んで教えてやるからな!』
「ふへへへへ」
その絵本を手に取って、エルの心遣いと嬉しさにニヤニヤしていると、少し考える素振りをしたエルが私を呼んで手招きしているのが目に入った。
『そ、そうだな。隣に座って読むのも少し見にくいよな?あ、アシュリー!ほ、ほら、ここにおいで!私が本を読んでやるから、な?』
「ん???」
首を傾げつつエルの顔を見た後、視線を下にやると、エルは足を開いて、前に出来たスペースをポンポンと叩いている。
ひょっとしてそこに座れという事だろうか。恐らくそうだろう。
しかし、その開いた足が何と言うか……。日に焼けた小麦色の柔らかそうなフトモモ……。そしてその先には、ホットパンツ……。
足を広げた事によって魅惑のフトモモとホットパンツとの間に出来た空間につい目が行ってしまった。
そこから覗いた物と以前脱衣所で見かけた例のブツが重なり、カッと顔が熱くなった。
だ、だめだ!直ぐに邪念を払うのだ!少女の姿でもエッチなのはイケないよっ!
不必要にそんな所を凝視するなど、彼女の信頼を裏切る行為だっ。
私は頭を振ってスクリッと素早く立ち上がり、そこにそれ以上目が行かない様にしつつ、チラチラ見ちゃうけど……、促されるままにその領域を私のエロい視線から守るべく腰を降ろすのだ。
ふぅ……。
『ふふふ、よしよし。来たな~、どれ、じゃぁちょっと貸してくれー』
「ふ、ふへへ……」
視線はバレてないヨネ。エルは私の頭を軽く撫でた後、私が手に持っていた本を受け取って、私の前に広げてくれる。
後ろから両手を前に出して、まるで後ろから抱きついている様な感じなので密着度が半端無い。
しかし!私はローレルの天国を経験している猛者だ。
言っては悪いけど、アリスとローレルよりも少し控えめなエルなのでソコまで理性を刺激される事は無い!
『んー、あんまり本に近いと見辛いだろ?もっと後ろに寄れアシュリー。私にもたれ掛かってもいいぞ?』
「んんっ!!?」
フニュンッ。
と、先の愚かだった私を嘲笑うしかない。
エルは本を持ったままに、私の体を後ろに押してその背中を自分の体に密着させるように動かした。
そして背中に襲い来る天国の感触がっ。全ての神経が私の背中に凝縮されていくっ。
控えめとか言ってごめんない。ちゃんとありますからぁ、ちゃんと天国ですからぁ!
『んっ……、そ、そのままの体制でいいからな?読んでやるから、一緒に勉強しような?』
「!?!?」
少し変に背中に力が入ったので、力を抜こうと少し身を捩ったら背中越しにエルの妙にドキリとさせられるような声が聞こえた。
直ぐに平静な声色で私に何かを言っていたので、怒ってはいない様だ。
こ、ここはちゃんとジッとしていよう……。
それから暫くはエルと一緒に言葉のお勉強。
背中に少し神経を使う状況ではあったが、ちゃんと言葉は覚えたよっ。
本に描かれた絵を指さして、続いてエルがその近くに書かれた文字を指さして言葉にする。
エルが言った言葉を続いて私が言葉にする。
これの繰り返しだ。絵が載っているので解りやすくていいね。
単語としては、『お肉』『野菜』『お茶』等の食物系や、挨拶としては『おはよう』は既に覚えていたがそれ以外の言葉も覚えた。『おはよう』から始まって『おやすみ』まで網羅したと言えるだろう。
そして順調に言葉を覚えつつ、次のページに進む。
その次にページに描かれたのは、数人が手を繋いでいる人の絵だった。
両端に男性と女性の絵が描かれ、その間には二人と手を繋ぐ二人の女の子の絵が描かれている。
四人仲良く手を繋いだ微笑ましい絵だ。
見ただけで大体察しは付いた。これは家族の絵だろう。
両親と仲の良さそうな姉妹の絵と言う所だろうか。
暫し絵を眺めているが、エルの先程までの動きが無い。
先程までなら直ぐに絵を指さして言葉を教えてくれていたのだが……。
「エル?」
『ん、あ、あぁ!ごめんごめん、そうだ、次だな。これは、お父さん、お、と、う、さ、ん』
少し考え事でもしていたのだろうか。
まぁ、直ぐにまた始まったので問題は無さそうだ。
特に気にする事も無く、また気合を入れて勉強を再開するのだった。
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本当に、ありがとうございます。
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