World War Ⅲ

Primrose

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それぞれの傷

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 壮太達三人は、瓦礫が散らばった道を進んで、仲間たちの待つ秘密基地へ向かっていました。
 その途中、少年は瓦礫を軽々と動かしながら、軽く探索をしていました。
 ですが長い間探索を続けていた地域なので、あまり目立ったものは見つかることもありません。
「やっぱり、そろそろここを動くべきなのかね」
 少年は思案しながら、これからの事を考えて、基地の移動を考えていました。
 ですがそれは《グリード》に見つかって襲撃される可能性が高く、うかつには動けないのが現状なのです。
「ですが、移動するにも、神奈川周辺はあらかた捜しつくしてしまいましたよ? それに、東京はナノマシンの製造工場もある。北は猛吹雪で《グリード》すら近づかない。僕たちが西に進む以外に選択肢が無いのは、奴らも気づいているはずです」
 碧はその行動の危険性を説明して、少年を全力で止めています。
 対して壮太は、自分たちの現状を考えて、少年の意見を肯定します。
「でも、ここを動かなくても、その内食料が底を尽きてしまう。新しい場所を見つけるなら今の内だよ」
 少年は二人の意見を聞いたうえで、どちらが最善か考えていました。
「やはり、ここは移住するべきだな」
「・・・なんで俺たちの面倒を見るんですか? 隊長は
 壮太の言葉に、周りを探索していた隊長の手が止まりました。
「壮太、して‼」
 碧の制止も聞かず、壮太は隊長に聞き続けました。
「俺たちみたいに大部分が人間なら食料が必要になるけど、あなたはナノマシンの自己発電があれば一生生きていけるのに・・・」
「壮太‼」
 耐えかねた碧が無理やり止めるまで、壮太は隊長に聞き続けました。
 それを聞いた隊長は、暗い顔をしながら壮太に向き合い、そして答えました。
「俺の両親がよく言ってたんだ。周りの人を助けろ。お前の体は機械だが、心は人間のままなんだから、って」
 それを聞いた壮太は、申し訳なさそうな顔をしながら、気まずいのか隊長から顔をそらして歩いていました。
 それから数分すると、壮太が急に立ち止まって、辺りを見渡しながら言いました。
「早すぎる・・・一時方向から約二十機来ます‼」
 壮太の報告を聞いた二人は戦闘態勢を取り、隊長は上空へ飛翔しました。
 そして隊長も、上空から飛来する大量の《グリード》を確認します。
「討伐部隊か、奴ら本気だな。碧は援護、壮太は敵の観測を続けろ‼」
「「了解‼」」
 隊長の適格な指示の元、《グリード》を次々と打ち落とします。
「ビル街は本当に嫌いだ。本気を出したら周りも崩壊する」
「文句を言わずに、さっさと落としてください。こっちも援護で精いっぱいなんです」
 碧と隊長の射撃で、一機一機確実に撃墜していった。
「マズイ、《ケルベロス》だ‼」
 隊長は他よりも巨大な《グリード》を警戒しながら戦い続ける。
 《ケルベロス》は《グリード》三機が合体した機体で、他よりも強力な機体です。
 隊長が《ケルベロス》に対応したせいで、数機が碧も元に近づいていきました。
「マズイ、逃げろ‼」
「壮太‼」
 二人がよそ見をした隙に、敵は急接近して二人を捕らえてしまいました。
「は、離せよ‼ 離せ‼」
「苦し・・・いや、いや・・・」
 二人に触れた《グリード》は形を変えて、二人の体にまとわりついてしまいます。
 そして全身を包むと、グチャグチャと鈍い音を立てて《グリード》が元の形に戻ったかと思うと、今度はどんどん縮んでいき、二人の姿に変わっていきました。
「・・・っ‼ 遅かった・・・」
「あ、隊長、遅かったですね」
 碧の声と姿をした何かが、隊長に笑顔で話しかけます。
 壮太の姿をした《グリード》も、微笑みながら隊長を見ていました。
 《グリード》は人間やサイボーグを捕らえると、その人物を殺して細胞を模倣し、人に化けることが出来るのです。しかも相手がサイボーグなら、ナノマシンで強化された部位が更に強化されるのです。
「・・・ごめん、二人とも」
 隊長は覚悟を決めて、ナノマシンのリミッターを外して全力を出します。
 隊長の体中から銃器が生成され、無差別に射撃を開始します。
 《グリード》やビルを見境なく砕き、周囲の物体をすべて無に帰していきます。
 たった数秒で、周のビルが全て瓦礫に変わってしまいました。
 隊長は周りの瓦礫をどけながら起き上がると、周囲を見渡して言いました。
「・・・またか、またなのか・・・」
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