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第40話 メモ魔の記録
皆さま、昨日はたくさんの温かいお言葉、そしてエールをありがとうございました。
感想欄で承認不要ですと仰ってくださった方々にも、この場を借りてお礼申し上げます。
次男は「なんとか無事に……」とは言い切れませんが、
どうやら大事には至らなかったようです。
ご心配をおかけしてしまい、本当に申し訳ありません。
三ヶ月の完全休養のあと、遅れを取り戻そうと少し無理をして腰を酷使していたところに、昨日の“ぶっ飛び事故”が追い打ちとなってしまいました。
骨には異常がないものの、腰回りの筋肉や腱を痛めているようです。
これから試合はオフシーズンに入る時期ということもあり、「ここは焦らず、ゆっくり復帰しよう」という結論になりました。
お騒がせしてしまい、本当に申し訳ありませんでした。
そして、あたたかく見守ってくださり、ありがとうございます。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
今日は少し短めですが、本編に入ります。
◇◇◇◇◇◇
客間の扉が開き、アトラスが両腕にノートを抱えて戻ってきた。
「お待たせしました」
その姿を見て、エヴァリーンはほっと息をつき、深く頭を下げる。
「ありがとうございます、アトラス様」
カトリーヌが柔らかく声をかけた。
「どう? 何か、見つかったの?」
「はい。……ありました」
アトラスは頷き、テーブルにノートを広げる。
何冊かを重ね、そのうちの一冊を開いた。
「このあたりからです」
ページをめくり、指で一箇所を示す。
「ちょうど、春頃から――サリーナ様のお名前が出てきています」
エヴァリーンが息を呑む。
「最初は、エヴァリーン様のお名前ですね。
誰かが、“エヴァリーン様の秘密を聞けないか”と話し合っている、という記録があります」
「……それは」
「恐らくですが」
アトラスは少し考えてから続けた。
「ルーリーさんと、シスタン殿下……それに、バルド様やセドリック様だったと思います」
ページを進める。
「ここには、ルーリーさんが『おかしい、寝返るはずなのに』と、一人で癇癪を起こしている、と記録してあります」
「そして、その後、サリーナ様にしつこく付きまとってきたこと。それに対して、サリーナ様が強く怒っていた、とあります」
エヴァリーンは小さく唇を噛んだ。
「……彼女らしいわ」
アトラスはさらに別のノートを開く。
「それから……こちらは、夏前ですね。サリーナ様の婚約者、カルロス・レバス伯爵令息と、ルーリーさんが何度も話をしている、という記録があります」
アトラスは顔を上げた。
「夏前といえば……僕が、エヴァリーン様のお名前を頻繁に耳にし始めたのも、この頃です」
「……どうやら、エヴァリーン様とご友人を引き離そうとする動きがあったようです。この辺りの記録から、そう読み取れます」
エヴァリーンは、ゆっくりと頷いた。
「そうなの……私は、彼女と一緒にいることが多かったの。でも、体調を崩したと言って……お父上に、連れ戻されたのよ。私には、元気に見えたのだけど」
「なるほど……」
その様子を見て、カトリーヌが静かに尋ねる。
「領地に戻られた理由は、詳しく聞いていらっしゃるの?」
エヴァリーンは首を横に振った。
「はっきりとは聞いていません。ただ、体調を崩したと、あちらのお父上からお伺いしました。何度も手紙を送りましたが、返事もなくて……どうしたものかと、ずっと悩んでいました」
そして、少し声を落とす。
「そうしたら、この前……たった一言だけ、手紙が来たのです」
エヴァリーンは、ぎゅっと手を握った。
「――『助けて。婚約破棄に巻き込まれそう』と」
カトリーヌの表情が曇る。
「確か、サリーナ様……彼女のご実家は、かなり、女性に厳しい家ですわよね」
「はい」
エヴァリーンは頷いた。
「せめて、学園にいる間は楽しく過ごしたいと言っていたのに……領地に戻って、どうなっているのか……心配で」
「だから……どうにか助けられないかと……私の独断で、アトラス様にお願いしました」
しばしの沈黙。
やがて、アトラスが静かに口を開いた。
「わかりました」
二人の視線が向く。
「もしよろしければ、ここから先、サリーナ様に関する記録をすべて拾い出します」
「そして、それを整理して、まとめたものを、エヴァリーン様にお渡しする。その形で、よろしいでしょうか」
エヴァリーンの顔が、ぱっと明るくなる。
「……お願いできますか? 本当に、助かります」
「どこまで書いているかは分かりませんが……」
アトラスは少し照れたように言った。
「できる限り、頑張ります」
「ありがとうございます」
その時――
「エヴァリーン! 話は終わったぞ!」
勢いよく扉が開き、フォレスト公爵の声が響いた。
「帰るか!」
「はい」
エヴァリーンは立ち上がり、アトラスに向かって深く頭を下げる。
「では、アトラス様。どうぞ、よろしくお願いいたします」
嵐のように現れ、
そして嵐のように去っていくフォレスト公爵。
客間には、少しだけ静けさが戻った。
――そしてこの出来事が、のちに思わぬ縁へと繋がっていくことを、この時の彼らは、まだ知らなかった。
感想欄で承認不要ですと仰ってくださった方々にも、この場を借りてお礼申し上げます。
次男は「なんとか無事に……」とは言い切れませんが、
どうやら大事には至らなかったようです。
ご心配をおかけしてしまい、本当に申し訳ありません。
三ヶ月の完全休養のあと、遅れを取り戻そうと少し無理をして腰を酷使していたところに、昨日の“ぶっ飛び事故”が追い打ちとなってしまいました。
骨には異常がないものの、腰回りの筋肉や腱を痛めているようです。
これから試合はオフシーズンに入る時期ということもあり、「ここは焦らず、ゆっくり復帰しよう」という結論になりました。
お騒がせしてしまい、本当に申し訳ありませんでした。
そして、あたたかく見守ってくださり、ありがとうございます。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
今日は少し短めですが、本編に入ります。
◇◇◇◇◇◇
客間の扉が開き、アトラスが両腕にノートを抱えて戻ってきた。
「お待たせしました」
その姿を見て、エヴァリーンはほっと息をつき、深く頭を下げる。
「ありがとうございます、アトラス様」
カトリーヌが柔らかく声をかけた。
「どう? 何か、見つかったの?」
「はい。……ありました」
アトラスは頷き、テーブルにノートを広げる。
何冊かを重ね、そのうちの一冊を開いた。
「このあたりからです」
ページをめくり、指で一箇所を示す。
「ちょうど、春頃から――サリーナ様のお名前が出てきています」
エヴァリーンが息を呑む。
「最初は、エヴァリーン様のお名前ですね。
誰かが、“エヴァリーン様の秘密を聞けないか”と話し合っている、という記録があります」
「……それは」
「恐らくですが」
アトラスは少し考えてから続けた。
「ルーリーさんと、シスタン殿下……それに、バルド様やセドリック様だったと思います」
ページを進める。
「ここには、ルーリーさんが『おかしい、寝返るはずなのに』と、一人で癇癪を起こしている、と記録してあります」
「そして、その後、サリーナ様にしつこく付きまとってきたこと。それに対して、サリーナ様が強く怒っていた、とあります」
エヴァリーンは小さく唇を噛んだ。
「……彼女らしいわ」
アトラスはさらに別のノートを開く。
「それから……こちらは、夏前ですね。サリーナ様の婚約者、カルロス・レバス伯爵令息と、ルーリーさんが何度も話をしている、という記録があります」
アトラスは顔を上げた。
「夏前といえば……僕が、エヴァリーン様のお名前を頻繁に耳にし始めたのも、この頃です」
「……どうやら、エヴァリーン様とご友人を引き離そうとする動きがあったようです。この辺りの記録から、そう読み取れます」
エヴァリーンは、ゆっくりと頷いた。
「そうなの……私は、彼女と一緒にいることが多かったの。でも、体調を崩したと言って……お父上に、連れ戻されたのよ。私には、元気に見えたのだけど」
「なるほど……」
その様子を見て、カトリーヌが静かに尋ねる。
「領地に戻られた理由は、詳しく聞いていらっしゃるの?」
エヴァリーンは首を横に振った。
「はっきりとは聞いていません。ただ、体調を崩したと、あちらのお父上からお伺いしました。何度も手紙を送りましたが、返事もなくて……どうしたものかと、ずっと悩んでいました」
そして、少し声を落とす。
「そうしたら、この前……たった一言だけ、手紙が来たのです」
エヴァリーンは、ぎゅっと手を握った。
「――『助けて。婚約破棄に巻き込まれそう』と」
カトリーヌの表情が曇る。
「確か、サリーナ様……彼女のご実家は、かなり、女性に厳しい家ですわよね」
「はい」
エヴァリーンは頷いた。
「せめて、学園にいる間は楽しく過ごしたいと言っていたのに……領地に戻って、どうなっているのか……心配で」
「だから……どうにか助けられないかと……私の独断で、アトラス様にお願いしました」
しばしの沈黙。
やがて、アトラスが静かに口を開いた。
「わかりました」
二人の視線が向く。
「もしよろしければ、ここから先、サリーナ様に関する記録をすべて拾い出します」
「そして、それを整理して、まとめたものを、エヴァリーン様にお渡しする。その形で、よろしいでしょうか」
エヴァリーンの顔が、ぱっと明るくなる。
「……お願いできますか? 本当に、助かります」
「どこまで書いているかは分かりませんが……」
アトラスは少し照れたように言った。
「できる限り、頑張ります」
「ありがとうございます」
その時――
「エヴァリーン! 話は終わったぞ!」
勢いよく扉が開き、フォレスト公爵の声が響いた。
「帰るか!」
「はい」
エヴァリーンは立ち上がり、アトラスに向かって深く頭を下げる。
「では、アトラス様。どうぞ、よろしくお願いいたします」
嵐のように現れ、
そして嵐のように去っていくフォレスト公爵。
客間には、少しだけ静けさが戻った。
――そしてこの出来事が、のちに思わぬ縁へと繋がっていくことを、この時の彼らは、まだ知らなかった。
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