森と花の国の王子

あーす。

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誘拐されたレジィリアンス

塔の上の逃走

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 テリュスが、地下洞窟から屋敷に出た時。
そこにはラステルの配下が、そこら中に居て。
捕らえた賊に縄打って引きずり、一箇所に集めていた。

「ここはほぼ、制圧しました」
振り向いて説明するラステル配下に、詰め寄って叫ぶ。
「エウロペは?!」

尋ねると、案内役の配下二人も横にやって来て、説明を聞く。
「別の屋敷に通じる通路があるとかで。
現在、探索中。
エウロペ殿は、とっくに姿がない。
が、壁にチョークで印を残してくれた。
地下に、この先の塔に続く、洞窟があって。
トロッコに乗った様子」

テリュスは説明した男に告げる。
「案内してくれ!」

が、案内役の二人はテリュスに振り向き、提案する。
「エウロペ殿が行ったのは、かなり前。
地上から行った方が、早い…!」

テリュスが頷くと、案内役の二人は廊下を抜けて正面玄関へと駆け出す。

エリューンとデルデロッテは、追いついたと思ったらまた、皆が走り出すので。
顔を見合わせ、駆け去るテリュスの背を追った。

正面玄関を出た先で、案内役は馬に乗り込む。
屋敷に詰めてる配下の男に馬の手綱を手渡され、テリュスも乗り込んだ。

案内役の一人が、疾風のように馬を駆けさせる。
テリュスはぴたりと斜め後ろに馬を付け、月明かりの中、荒廃した庭園を駆け抜けた。

もう一人の案内役は、エリューンとデルデロッテが馬に乗り込むのを待って、馬を走らせ二人を先導する。

エリューンは遅れまいと必死に馬を急かし、デルデロッテは拍車かけて、一気に速度を上げた。


塔の上階では。
男が慌ただしく階段を駆け上がり様、叫ぶ。

「侵入者だ!」

階上には二部屋あるだけ。
その向かいの扉が開くと、お頭が顔を出す。
「…どこに?」
「す・す・す・直ぐ下に!」

お頭は室内に顔を向け、首を振る。
一気に賊らが、飛び出して来た。

エウロペは階段を駆け上がり、素早く身を壁の影に隠す。
賊らが大挙して、押し寄せて来ていた。

お頭は素早く調教部屋の扉を開ける。
レガートは、雇い入れた賊の頭が顔を出すのを見、直ぐ扉に寄る。
「…来ましたぜ」

レガートは一瞬、呆け…。
が、レジィの口と蕾に突っ込み、揺さぶってる男らに怒鳴る。
「布で巻け!!!」

男達は意味を図りかね、動きを止めるとレガートをぽかん。と見つめた。
レガートは意思の通じぬ男らを、突き飛ばす勢いで退しりぞけ、ぐったりしたレジィを抱き上げる。
お頭に布を手渡され、殆ど意識を無くすレジィの体を素早く包み、部屋の別の扉に駆け寄る。

重い鉄の扉を開けると外に通じ、数段ある石の階段を駆け上がった。
塔のてっぺんは、冷たい風が吹き抜け、衣服をはたく。

平坦な石のテラスを少し進むと。
鐘が吊り下げられてる塔の最上部に、太いロープが括り付けられ、ロープはその向こう。
別の塔との間を、繋ぐように張られていた。

ロープの下には、吊り籠が。
テラスの石床の上に、留め具で固定されていた。

レガートが、レジィを抱いたまま籠に乗り込む。


エウロペは向かい来る賊らに、小さな短剣を投げ続けた。
三人があっという間に喉に手をやり、崩れ落ちる。

後続の賊らは、三人が喉から血を吹き出し、倒れ伏すのを見、一気に警戒し、歩を止めた。
エウロペが進路を塞ぐ、賊らを睨めつける。
が、賊の二人は、エウロペの背後。
大きな崩れかけた窓の外に視線を向けていた。

エウロペが、瞬間振り向く。
塔の端に、吊りかご。
そして乗り込むレガートの腕の中に…レジィリアンスの姿!!!

月光に浮かぶ、白く美しいレジィの、仰向け目を閉じた顔を確認し、エウロペは一気に窓に駆け寄り、縁に手をかけ、飛び上がった。

籠の中のレガートは、窓に立ち上がるエウロペの姿を見つけ、目を見開く。
が、籠からその窓は、短い斜めの石の屋根が邪魔し、直ぐは飛んで来られない。

レガートは、不適に笑う。
レジィは蕾の奥の異物を感じず、口の中にも無くて…ぼんやり、目を開けた。
屋根を隔てた窓辺に立つ、エウロペの姿を見、涙を頬に伝わせる。

エウロペは瞬間、飛んで屋根にぶらさがる。
レガートは、体を揺らしながらも一気に屋根に飛び乗るエウロペを見、それでも笑った。

「出せ…!」

籠の横でレバーを持つお頭が、合図と同時。
一気にレバーを引き下げた。

しゅるるるるるるるるるるるるる…。

エウロペの目前で。
籠は別の塔へと繋がれたロープを滑り、一気に遠ざかって行く。

エウロペは歯がみし、屋根の上を駆けると、テラスへ身軽に飛び下りた。

しゅたっ!!!

レジィリアンスはレガートの腕の中で身もがき、手を、小さくなって行くエウロペへと、差し伸べる。

レガートはそれを見、嘲笑った。

お頭がレバーを手放し、遠ざかる吊り籠を見つめるエウロペの背に、飛びかかろうとした時。

エウロペは一気に手を口に持って行き、口笛を吹いた。

ピィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーー!!!

背後から襲いかかるお頭に、振り向きもせず肘を後ろに引き、ど突いてふっ飛ばす。
素早くベルトを外し、端を掴み、飛んで上のロープに先を投げる。

落ちてきたベルトの先を掴むと、両手でベルトの両端を固く握り、テラスの床を蹴って、一気にロープを滑り降り始めた。


両側が、木々で覆われた暗い細道を走るテリュスは。
響き渡る指笛を聞く。

一気に馬を急かすが、案内役の男は突然、横道へと馬の首を向けながら叫ぶ。
「こちらが近道!」

テリュスは茂みの中へ馬を進める案内役の男に続き、馬ごと突っ込んで行く。

ざざざざざざざさっ!!!

後続の案内役も、慌てて馬の首を道の横の茂みへと向け、突っ込み。
エリューンも歯を食い縛って馬の首を横に向け、デルデロッテは
「やれやれ…」
とぼやきながら、茂みの中へ突っ込んで、木々の小枝に顔や体をはたかれながら。
その先の細道へと、馬を走らせた。
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