144 / 418
誘拐されたレジィリアンス
塔の上の攻防
しおりを挟む
ざざざざざっ!!!
やっと木々の途切れた草地で、案内役のラステル配下は馬を必死に止める。
テリュスは抜き去った途端気づき、慌てて馬を止めた。
次に飛び込んで来た案内役の男は直ぐ気づき、横に馬を避けて止める。
が、後続のエリューンは。
少し遅れて来たので気づかず、駆け抜けてテリュスを追い抜いた後、慌てて馬を止め。
デルデロッテも併走して先に皆の姿が無いのに気づき、手綱を思い切り引いて、馬を止める。
テリュスが振り向くと、案内役の男は上空を…空を、見つめていた。
テリュスも顔を上げる。
月明かりの夜空に、籠が遙か上空を滑って行き、そのかなり後からなんとか。
小さな黒い人影が。
ロープらしき細い綱を、滑って行くのが見えた。
「…こちらだ!!!」
案内役の男は着地先の塔に見当付け、咄嗟手綱を回し叫ぶ。
直ぐ、もう一人の案内役も併走し、二人が言葉を交わしながら、道を草原に向けて駆け始め、テリュスは一気に上がる速度に、追随して拍車かける。
二人の案内役は、上空の滑る籠と速度を競うように疾走し、テリュスも必死に馬と共に駆け続けた。
エリューンは先の皆が、どういう訳で急いでるかに気づく。
“レジィが見つかった?!”
先を猛烈に急ぎかけた矢先、併走するデルデロッテが上空へと視線を促す。
エリューンはデルデロッテを二度見し、けど二度とも首を僅かに振られて上に促され、やっと顔を上げて夜空を見上げた。
籠が夜空を滑って行き、その先の…あまり高さの無い、小さな塔の屋上へと。
到達しようとしていた。
エリューンはあの籠に、レジィが乗っているからこそ。
皆が必死に馬を急かしてるのだと理解する。
とうとう籠は塔の屋上に到達し、草地の向こうにそびえ立つ、荒廃した石の瓦礫のような塔が見え始める。
エリューンは気づくとも無く馬を猛烈に、駆けさせた。
籠が、がくん!!!
と大きく揺れ、レジィは籠から飛び出しそうになって、籠の縁に手を伸ばす。
けれどレガートにきつく抱き寄せられ、もがいた。
腰を掴む腕を、押そうとするのに…。
まるで力が入らず、レジィは愕然とした。
喉が渇いてた時。
喉に注がれた水に、薬が混ぜられてたのだと、突然気づく。
レガートの、きつく抱く腕の力が緩んでも。
床についた足は力が抜けきっていて、ロクに立つ事すらままならない…!
突然。
腰に回された腕が解かれ、レジィは転がりそうになって、籠の縁に手を伸ばす。
が、掴む事も出来ず、籠の縁に体ごと倒れかかり、転ぶのは何とか防げた。
顔を上げると、籠から飛び降りたレガートは、今滑ってきた方向を見つめながらナイフを取り出していた。
視線を落とすと、石床の端に鉄の大きな輪が埋め込まれていて、その鉄の輪に、ロープの先が括られている。
レジィはロープの先を目で追った。
その先に、滑ってくる…人影が見えた。
かなり遠くだけど、どんどん近く…大きくなって来る!!!
“エウロペ…!!!”
確信出来た。
心の中で叫んだ途端、ロープを伝ってこちらに滑ってくる黒い人影は、一瞬輝くように見えたから。
懐かしい…暖かく強く、大きな瞬き。
けれどレジィは、その時不安を感じ、レガートに振り向く。
レガートは遮二無二ロープを…エウロペがこの屋根に辿り着く、その前に!
斬り落とそうとしている!!!
レジィは籠の縁を掴み、どすん!!!と音立て、籠から落ちた。
痛みも感じなかった。
立ち上がろうとしても、足が利かない。
けれどレジィは自分を叱咤し、必死で立ち上がる。
…おぼつかない足どりで、ヨロめきながらも歩を進める。
“レガートのナイフの動きを、止めなくちゃ!!!”
視線を向けると、今や太いロープの半分まで切れていて、レガートはエウロペが辿り着く前に切り落とせると確信し、笑みを浮かべながらナイフを引いている。
「…ダメ…っ!!!」
レジィはヨロめきながら、レガートの動く腕に手を伸ばす。
肘にレジィの手が絡んだ途端、レガートは思いっきり腕を振った。
ザンッ!!!
吹っ飛ばされ、レジィは床に転がる。
けれど…エウロペはもう直、ここに着く!
もしその前に、ロープが切れたら…!!!
気が気でなくて、レジィは必死に立ち上がり、再びレガートの腕に飛びついた。
「…邪魔だ!」
また、思いっきり振り払われる。
けど今度レジィは、必死にナイフを引くレガートの腕にしがみつき、離れなかった。
「ダメ…っ!!!
絶対…ダメ!!!」
レガートは近づくエウロペを睨めつけ、振り払う時間も惜しみ、レジィを腕に巻き付けたまま、必死にナイフを引いた。
塔の近くにはもう、ラステル配下の男が二人、駆けつけて来ていて、案内役の男は馬から飛び降り、叫ぶ。
「入り口は…!」
「こっちだ!!!」
エリューンも馬から飛び降り、後に続こうとした。
が、テリュスは馬から降りた後、上空を見つめてる。
エリューンも視線を送るが、かなり遅れて小さな人影が。
ロープを滑って行くのが見えた。
「あれは…エウロペ…?!」
「先に行け!!!」
テリュスに言われ、エリューンは塔の入り口に駆ける、ラステル配下四人に視線を送る。
が、その時入り口から、賊らが続々と姿を見せ始め…剣を抜いて、塔の前に立ち塞がった。
やっと木々の途切れた草地で、案内役のラステル配下は馬を必死に止める。
テリュスは抜き去った途端気づき、慌てて馬を止めた。
次に飛び込んで来た案内役の男は直ぐ気づき、横に馬を避けて止める。
が、後続のエリューンは。
少し遅れて来たので気づかず、駆け抜けてテリュスを追い抜いた後、慌てて馬を止め。
デルデロッテも併走して先に皆の姿が無いのに気づき、手綱を思い切り引いて、馬を止める。
テリュスが振り向くと、案内役の男は上空を…空を、見つめていた。
テリュスも顔を上げる。
月明かりの夜空に、籠が遙か上空を滑って行き、そのかなり後からなんとか。
小さな黒い人影が。
ロープらしき細い綱を、滑って行くのが見えた。
「…こちらだ!!!」
案内役の男は着地先の塔に見当付け、咄嗟手綱を回し叫ぶ。
直ぐ、もう一人の案内役も併走し、二人が言葉を交わしながら、道を草原に向けて駆け始め、テリュスは一気に上がる速度に、追随して拍車かける。
二人の案内役は、上空の滑る籠と速度を競うように疾走し、テリュスも必死に馬と共に駆け続けた。
エリューンは先の皆が、どういう訳で急いでるかに気づく。
“レジィが見つかった?!”
先を猛烈に急ぎかけた矢先、併走するデルデロッテが上空へと視線を促す。
エリューンはデルデロッテを二度見し、けど二度とも首を僅かに振られて上に促され、やっと顔を上げて夜空を見上げた。
籠が夜空を滑って行き、その先の…あまり高さの無い、小さな塔の屋上へと。
到達しようとしていた。
エリューンはあの籠に、レジィが乗っているからこそ。
皆が必死に馬を急かしてるのだと理解する。
とうとう籠は塔の屋上に到達し、草地の向こうにそびえ立つ、荒廃した石の瓦礫のような塔が見え始める。
エリューンは気づくとも無く馬を猛烈に、駆けさせた。
籠が、がくん!!!
と大きく揺れ、レジィは籠から飛び出しそうになって、籠の縁に手を伸ばす。
けれどレガートにきつく抱き寄せられ、もがいた。
腰を掴む腕を、押そうとするのに…。
まるで力が入らず、レジィは愕然とした。
喉が渇いてた時。
喉に注がれた水に、薬が混ぜられてたのだと、突然気づく。
レガートの、きつく抱く腕の力が緩んでも。
床についた足は力が抜けきっていて、ロクに立つ事すらままならない…!
突然。
腰に回された腕が解かれ、レジィは転がりそうになって、籠の縁に手を伸ばす。
が、掴む事も出来ず、籠の縁に体ごと倒れかかり、転ぶのは何とか防げた。
顔を上げると、籠から飛び降りたレガートは、今滑ってきた方向を見つめながらナイフを取り出していた。
視線を落とすと、石床の端に鉄の大きな輪が埋め込まれていて、その鉄の輪に、ロープの先が括られている。
レジィはロープの先を目で追った。
その先に、滑ってくる…人影が見えた。
かなり遠くだけど、どんどん近く…大きくなって来る!!!
“エウロペ…!!!”
確信出来た。
心の中で叫んだ途端、ロープを伝ってこちらに滑ってくる黒い人影は、一瞬輝くように見えたから。
懐かしい…暖かく強く、大きな瞬き。
けれどレジィは、その時不安を感じ、レガートに振り向く。
レガートは遮二無二ロープを…エウロペがこの屋根に辿り着く、その前に!
斬り落とそうとしている!!!
レジィは籠の縁を掴み、どすん!!!と音立て、籠から落ちた。
痛みも感じなかった。
立ち上がろうとしても、足が利かない。
けれどレジィは自分を叱咤し、必死で立ち上がる。
…おぼつかない足どりで、ヨロめきながらも歩を進める。
“レガートのナイフの動きを、止めなくちゃ!!!”
視線を向けると、今や太いロープの半分まで切れていて、レガートはエウロペが辿り着く前に切り落とせると確信し、笑みを浮かべながらナイフを引いている。
「…ダメ…っ!!!」
レジィはヨロめきながら、レガートの動く腕に手を伸ばす。
肘にレジィの手が絡んだ途端、レガートは思いっきり腕を振った。
ザンッ!!!
吹っ飛ばされ、レジィは床に転がる。
けれど…エウロペはもう直、ここに着く!
もしその前に、ロープが切れたら…!!!
気が気でなくて、レジィは必死に立ち上がり、再びレガートの腕に飛びついた。
「…邪魔だ!」
また、思いっきり振り払われる。
けど今度レジィは、必死にナイフを引くレガートの腕にしがみつき、離れなかった。
「ダメ…っ!!!
絶対…ダメ!!!」
レガートは近づくエウロペを睨めつけ、振り払う時間も惜しみ、レジィを腕に巻き付けたまま、必死にナイフを引いた。
塔の近くにはもう、ラステル配下の男が二人、駆けつけて来ていて、案内役の男は馬から飛び降り、叫ぶ。
「入り口は…!」
「こっちだ!!!」
エリューンも馬から飛び降り、後に続こうとした。
が、テリュスは馬から降りた後、上空を見つめてる。
エリューンも視線を送るが、かなり遅れて小さな人影が。
ロープを滑って行くのが見えた。
「あれは…エウロペ…?!」
「先に行け!!!」
テリュスに言われ、エリューンは塔の入り口に駆ける、ラステル配下四人に視線を送る。
が、その時入り口から、賊らが続々と姿を見せ始め…剣を抜いて、塔の前に立ち塞がった。
0
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる