森と花の国の王子

あーす。

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記憶を無くしたレジィリアンス

激昂するエウロペ

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 コルテラフォール侯爵は喉を詰まらせかけ、手をエウロペの、胸ぐら掴んで持ち上げる手に触れる。

エウロペは少し、持ち上げる手を下げた。

コルテラフォール侯爵は少しほっとしつつ、一気に言葉を吐き出す。

「五つ向こうの、シャランネ夫人のコテージ…。
内々に、私が借りてる」

その言葉で、テリュスとエリューンの後からやって来たラステル配下らは。
もう駆け出して行った。

「…言った。
口を割った。
…だから…」
コルテラフォール侯爵は、まだ胸ぐら掴んでるエウロペの手に視線を送る。

が、エウロペは侯爵を見つめ、言い含めた。
「レジィが見つかるまで。
このままだ」

侯爵は、暗い表情で顔を下げる。
「…言えば…私は、事故に遭ったり死んだりせず。
ちゃんとこの国を、生きてエルドシュヴァン草原大国に帰れると。
確約してくれ」
エウロペは途端、眉間を寄せた。
「今言った場所に、レジィは居ないのか?!」

エウロペに鋭い緑の瞳を向けられ、侯爵は俯く。
「居るには………居るんだけど…。
見つけにくい場所に、隠したから」
「どこに!!!」
エウロペが再び、胸ぐら掴む手を引き上げ、喉を絞めようとした時。
侯爵は金切り声で叫ぶ。
「確約は?!私だって、命が惜しい!
言った途端、殺されたんじゃ…!」

まるでエウロペの見張りのようにその場に居続ける、ラステル配下二人は。
それを聞いて、顔を見合わせる。

「我らの上司、ラステル様に懇願すれば。
なんとかなるとは、思います…。
が、この場に居ないし」
もう一人も思案する。
「さっさと吐いて。
レジィリアンス様の無事を確認しない限り。
エウロペ殿は、納得しないと思います」
「…だよな」

背後からラステル配下の声がしてる間も、エウロペはどんどん侯爵の首を締め上げる。

「…すご…く、呼吸…が、ヤバ…いレベル…に……なっ…て…」
「言え!!!」
「すこ…し…緩め…」

やっと、エウロペは締める手を、少し下げる。
「けほっ!
けほけほっ!
き…君本気で、私を殺…し……に……」
ごたくの間、またエウロペに締め上げられ、侯爵は必死にエウロペの手を、ペチペチ叩く。

また、緩めて貰って、ようやく侯爵は言い放った。

「…半地下の、部屋に居る。
室内からは入れなくて…外の…凄く見えにくい茂みに、入り口がある」

エウロペは侯爵の胸ぐら掴んだまま、引きずり始めた。
「案内しろ」

侯爵は強引に引っ張られ、ヨロめきながらぼやく。
「こ…んな、首締められちゃ、歩けないよ!!!」

ラステル配下の一人が横に来て、侯爵の腕を掴むと
「お手伝い致します」
と言って、エウロペが引きずるのを、手助けした。

侯爵はエウロペに胸ぐらを引っ張られ、ラステル配下に腕を掴まれて引かれ、相変わらずヨロヨロしながら、庭を引きずられて行った。

隣の庭を連行されて行く間。
さっき無断で入ったコテージの召使いが、窓から顔を出して眺めるので、侯爵は愛想笑いをする。

背後から付いて来るもう一人のラステル配下は
「国王命令なので、通過を容認して貰う」
と告げた。

召使いは慌てて頷き、罪人さながらに引きずられる侯爵を、目を丸くして見た。

次の庭の柵も、エウロペは蹴って乱暴に開け、庭伝いに目的のコテージを目指す。
不法侵入する一行に、庭に出て来た伯爵夫人が叫ぶ。

「まあ、侯爵様!
いったい何事ですの?!」

ラステル配下がまた、国王命令を告げる。

「…こ…侯爵様…が、何か…罪……を…?」
伯爵夫人は目を丸くして尋ねるが、一行は返答せず。
さっさと通り過ぎて行き、その後からテリュスとエリューンが続く。

伯爵夫人が尋ねようと、二人を見つめながら口を開くが。
二人もさっさと通り過ぎた。

次の庭に来ると、侯爵が呻く。

「そこ…に地下道が…」

木の枝が垂れ下がり、エウロペが近寄って、枝を避けると入り口が。

「…ロマンチックだろ?
このコテージの主と、シャランネ夫人が逢い引き用に作った…」
侯爵が愛想笑って、そう告げる。
が、エウロペに強引に引っ張られ。
地下道の階段を、転びかけながら腕を掴むラステル配下に支えられ、降りる。

あまり深くない地下道で、紅蜥蜴ラ・ベッタらの地下洞窟とは違い、所々明かり取りの窓がある、小綺麗で壁に美しい彫刻の彫られた、お洒落な地下道だった。

階段を上がった先は、コテージの庭園。
その向こうには湖に続く道があり、反対側に建物があった。

「…ここか?」
エウロペに聞かれ、侯爵は頷く。
「庭から入るんだな?!」
エウロペに問い詰められた侯爵は、頷くと。
地下室の入り口の、茂みを指さす。
「そこから、入れる」

エウロペは屈み、茂みを退けて、扉を見つける。

扉を開け、狭い階段を先に降りると。
力尽くで、侯爵を引きずり下ろした。

「転…ぶ!
転ぶったら!」
喚く侯爵の腕を、後ろからラステル配下が掴み支え、階段を降りる。

降りた先は、高窓から陽の入る、石の通路。
その先に扉があり、エウロペはノブを掴んで開けた。
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