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記憶を無くしたレジィリアンス
二人の目撃者
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オレシニォンでは。
国務で忙しい王に代わって。
王妃が息子の様子を見に、訪れていた。
が、空の寝台を見て叫ぶ。
「あの子は?!
どこへ行ったの?!
どうして居ないの?!」
直ぐ、護衛の騎士らが駆けつけ、ラステル配下から報告を受けてる一人が囁く。
「レジィリアンス様のいらっしゃる、コテージに発ちました。
護衛は万全ですので、ご安心を」
王妃はほっ…と一息つく。
「…レジィリアンス様は、どうなの?
酷い扱いをされ、記憶が無いとか…」
そちらも報告を受けてる、騎士の一人が囁く。
「コーテジからの報告では。
レジィリアンス様は落ち着き、少しずつ記憶を取り戻しており。
今日の正午には、西のコテージに到着しますので」
王妃は頷く。
「私の事は…覚えて無いのね…。
ラステルは何と言ってるの?
お会いできる?」
「ラステル様はレジィリアンス殿の混乱を避けるため、賊に与えられた薬の効果が切れ、記憶が戻るまでは。
ゆっくり休ませたいと」
王妃は頬に手を添え、ため息を吐く。
「…そう…。
快方に、向かってるのね?
エルデリオンも一安心で…いてもたってもいられず、お会いに出かけたのかしら…」
護衛らは取り乱した王妃が、落ち着きを取り戻す様を見て、彼らの裏の上司ラステルの、細かい気配りと小まめな報告に、内心感謝した。
エルデリオンはコテージ前に、馬で駆け込む。
門は閉まっていて、開けろと叫ぼうとし…。
馬から滑り降りた。
鍵を、まだ持っていた。
秘密の通路の。
エルデリオンは横の茂みに覆われた、塀伝いに歩く。
やがて…石レンガ作りの壁に目前を塞がれると、扉を探す。
鉄の扉に鍵を差し込む。
かちゃ!
音と共に、扉を押すと開き…中に入る。
限られた者しか入れない…花園。
扉は閉まると自動で鍵がかかる。
エルデリオンはコテージの、厳重警護用の棟に続く扉を、再び鍵で開ける。
扉を押して…草が覆い茂るアーチを抜け、庭へと出た。
「…ん…っ…」
エウロペはレジィリアンス自身が。
デルデロッテの膝の上に乗り、自らを沈み込ませ、蕾にデルデの一物を、埋め込む様を、庭の茂みの奥から眺めた。
デルデロッテを信頼しきり…身を預け…そしてねだる。
デルデロッテはレジィリアンスから、羞恥を取り去り、賊らの扱いとは全く違う扱いを心がけ、レジィに恐怖を抱かせず、欲望の衝動を、吐き出させようとしていた。
それは…彼から見ても見事で。
「突いて!」
と叫び、デルデロッテにしがみつくレジィを見れば、一目瞭然。
が。
つい…エウロペの視線は、デルデロッテに吸い付く。
豊かな濃い栗色巻き毛を、肩に背に纏わり付かせ。
顔を少し傾けた、面長の美貌は、煌めくよう。
濃紺の瞳は理知的に輝き、男らしくも整いきった容貌は…とても美しかった。
「(…あんな男は、確かに滅多に居ない)」
悪戯っぽく快活。
それでいて…心の機微に敏感で、包み込むような頼り甲斐も、あの年で身に付けている。
「(…私より経験が少なく、未熟者に思えると…彼は言った。
が…。
明らかに。
彼の年ではありえない体験を、相当数こなしてきてるだろうと、推察出来る落ち着き)」
その時。
エウロペは自分と反対方向の茂みにエルデリオンの姿を見つけ、目を擦りそうになった。
宮廷内のコテージで、今後どんな態度をレジィに取り、どこを注意するか。
それを知りたくて、経過観察の為覗いてる自分と違い。
年若いエルデリオンは、明らかに…。
突き動かされる恋心から、熱烈に抱き合う二人を覗き見してる。
憔悴しきった、青ざめた顔色。
レジィリアンスがデルデロッテに口づけると…泣きそうに、眉を寄せた。
それは嫉妬と言うより…越えられない高い高い壁を、途方に暮れて見つめ…。
そして敗北を認める。
そんな、悲しげな表情だった。
レジィリアンスがデルデロッテにしなだれかかり…二人は息を整え、ゆっくり湯から、上がって行く。
その時、茂みの奥に屈むエルデリオンは、ふうっ…と意識を無くすようにふらつき、今にも倒れそうで。
エウロペはデルデロッテが背を向けた隙に、素早く茂み伝いに反対側に居たエルデリオンの、背後に回る。
「…!」
エルデリオンが気を失ったように崩れ落ち、エウロペは慌てて、両腕広げて抱き止める。
音を立てないよう茂みの奥に少し引きずり、目を閉じるエルデリオンの、蒼白な顔を見た。
エルデリオンはヘイゼルの瞳を、瞬かせるように僅か開き、呟いた。
「…エウ…ロペ………」
けれど意識は取り戻さず、目を閉じ気絶した。
エウロペは抱き上げると、そっ…と体を軽く拭いてる、デルデロッテとレジィリアンスを見やる。
レジィは艶を纏い、輝くばかりに美しく見えた。
金の髪は蜂蜜色に輝き、赤い唇と赤い乳首は艶っぽく見えたけど。
青い瞳はきらきら輝き、笑顔は無邪気。
情事の後でも、デルデロッテは気さくに対し、レジィから笑顔を引き出すことを、忘れない様子。
エウロペは二人が、新しいガウンを羽織り寝室へ戻っていくのを見送り、エルデリオンを抱き上げ、内心ぼやく。
「(デルデロッテが女性なら…最高の、手ほどき相手なんだがな…)」
腕の中でぐったりするエルデリオンを見つめ、エウロペは自分達の部屋へと庭伝いに運び込み、長椅子に寝かせる。
その後、廊下に出ると隣部屋のラステルの部屋の、扉をノックした。
宛がわれた自室から、荷物の革袋を二つ、持って出て来たテリュスは。
そこに居る筈のエウロペの姿が無く。
代わりに長椅子に横たわる、眠るエルデリオンを見つめ、首捻った。
エリューンも荷物の入った革袋を肩に担ぎ、自室から出て来た途端、テリュスに問われる。
「お前、これ。
なんでか分かる?」
エリューンも首捻って囁く。
「…エウロペが…エルデリオンに変装してる?」
テリュスは呆けて、エリューンを見つめた。
「お前冗談、上手くなったなぁ!」
エリューンはため息吐く。
「だってテリュス。
私にそう言って欲しくて、わざわざ振ったんでしょう?」
テリュスは肩すくめる。
「変装は…思い浮かばなかったな!
流石の俺でも!」
エリューンはまた、ため息交じりにぼやいた。
「…褒められても、ちっとも嬉しくない事って、あるんですね」
テリュスに見つめられ、エリューンは思い切り、顔を背けた。
国務で忙しい王に代わって。
王妃が息子の様子を見に、訪れていた。
が、空の寝台を見て叫ぶ。
「あの子は?!
どこへ行ったの?!
どうして居ないの?!」
直ぐ、護衛の騎士らが駆けつけ、ラステル配下から報告を受けてる一人が囁く。
「レジィリアンス様のいらっしゃる、コテージに発ちました。
護衛は万全ですので、ご安心を」
王妃はほっ…と一息つく。
「…レジィリアンス様は、どうなの?
酷い扱いをされ、記憶が無いとか…」
そちらも報告を受けてる、騎士の一人が囁く。
「コーテジからの報告では。
レジィリアンス様は落ち着き、少しずつ記憶を取り戻しており。
今日の正午には、西のコテージに到着しますので」
王妃は頷く。
「私の事は…覚えて無いのね…。
ラステルは何と言ってるの?
お会いできる?」
「ラステル様はレジィリアンス殿の混乱を避けるため、賊に与えられた薬の効果が切れ、記憶が戻るまでは。
ゆっくり休ませたいと」
王妃は頬に手を添え、ため息を吐く。
「…そう…。
快方に、向かってるのね?
エルデリオンも一安心で…いてもたってもいられず、お会いに出かけたのかしら…」
護衛らは取り乱した王妃が、落ち着きを取り戻す様を見て、彼らの裏の上司ラステルの、細かい気配りと小まめな報告に、内心感謝した。
エルデリオンはコテージ前に、馬で駆け込む。
門は閉まっていて、開けろと叫ぼうとし…。
馬から滑り降りた。
鍵を、まだ持っていた。
秘密の通路の。
エルデリオンは横の茂みに覆われた、塀伝いに歩く。
やがて…石レンガ作りの壁に目前を塞がれると、扉を探す。
鉄の扉に鍵を差し込む。
かちゃ!
音と共に、扉を押すと開き…中に入る。
限られた者しか入れない…花園。
扉は閉まると自動で鍵がかかる。
エルデリオンはコテージの、厳重警護用の棟に続く扉を、再び鍵で開ける。
扉を押して…草が覆い茂るアーチを抜け、庭へと出た。
「…ん…っ…」
エウロペはレジィリアンス自身が。
デルデロッテの膝の上に乗り、自らを沈み込ませ、蕾にデルデの一物を、埋め込む様を、庭の茂みの奥から眺めた。
デルデロッテを信頼しきり…身を預け…そしてねだる。
デルデロッテはレジィリアンスから、羞恥を取り去り、賊らの扱いとは全く違う扱いを心がけ、レジィに恐怖を抱かせず、欲望の衝動を、吐き出させようとしていた。
それは…彼から見ても見事で。
「突いて!」
と叫び、デルデロッテにしがみつくレジィを見れば、一目瞭然。
が。
つい…エウロペの視線は、デルデロッテに吸い付く。
豊かな濃い栗色巻き毛を、肩に背に纏わり付かせ。
顔を少し傾けた、面長の美貌は、煌めくよう。
濃紺の瞳は理知的に輝き、男らしくも整いきった容貌は…とても美しかった。
「(…あんな男は、確かに滅多に居ない)」
悪戯っぽく快活。
それでいて…心の機微に敏感で、包み込むような頼り甲斐も、あの年で身に付けている。
「(…私より経験が少なく、未熟者に思えると…彼は言った。
が…。
明らかに。
彼の年ではありえない体験を、相当数こなしてきてるだろうと、推察出来る落ち着き)」
その時。
エウロペは自分と反対方向の茂みにエルデリオンの姿を見つけ、目を擦りそうになった。
宮廷内のコテージで、今後どんな態度をレジィに取り、どこを注意するか。
それを知りたくて、経過観察の為覗いてる自分と違い。
年若いエルデリオンは、明らかに…。
突き動かされる恋心から、熱烈に抱き合う二人を覗き見してる。
憔悴しきった、青ざめた顔色。
レジィリアンスがデルデロッテに口づけると…泣きそうに、眉を寄せた。
それは嫉妬と言うより…越えられない高い高い壁を、途方に暮れて見つめ…。
そして敗北を認める。
そんな、悲しげな表情だった。
レジィリアンスがデルデロッテにしなだれかかり…二人は息を整え、ゆっくり湯から、上がって行く。
その時、茂みの奥に屈むエルデリオンは、ふうっ…と意識を無くすようにふらつき、今にも倒れそうで。
エウロペはデルデロッテが背を向けた隙に、素早く茂み伝いに反対側に居たエルデリオンの、背後に回る。
「…!」
エルデリオンが気を失ったように崩れ落ち、エウロペは慌てて、両腕広げて抱き止める。
音を立てないよう茂みの奥に少し引きずり、目を閉じるエルデリオンの、蒼白な顔を見た。
エルデリオンはヘイゼルの瞳を、瞬かせるように僅か開き、呟いた。
「…エウ…ロペ………」
けれど意識は取り戻さず、目を閉じ気絶した。
エウロペは抱き上げると、そっ…と体を軽く拭いてる、デルデロッテとレジィリアンスを見やる。
レジィは艶を纏い、輝くばかりに美しく見えた。
金の髪は蜂蜜色に輝き、赤い唇と赤い乳首は艶っぽく見えたけど。
青い瞳はきらきら輝き、笑顔は無邪気。
情事の後でも、デルデロッテは気さくに対し、レジィから笑顔を引き出すことを、忘れない様子。
エウロペは二人が、新しいガウンを羽織り寝室へ戻っていくのを見送り、エルデリオンを抱き上げ、内心ぼやく。
「(デルデロッテが女性なら…最高の、手ほどき相手なんだがな…)」
腕の中でぐったりするエルデリオンを見つめ、エウロペは自分達の部屋へと庭伝いに運び込み、長椅子に寝かせる。
その後、廊下に出ると隣部屋のラステルの部屋の、扉をノックした。
宛がわれた自室から、荷物の革袋を二つ、持って出て来たテリュスは。
そこに居る筈のエウロペの姿が無く。
代わりに長椅子に横たわる、眠るエルデリオンを見つめ、首捻った。
エリューンも荷物の入った革袋を肩に担ぎ、自室から出て来た途端、テリュスに問われる。
「お前、これ。
なんでか分かる?」
エリューンも首捻って囁く。
「…エウロペが…エルデリオンに変装してる?」
テリュスは呆けて、エリューンを見つめた。
「お前冗談、上手くなったなぁ!」
エリューンはため息吐く。
「だってテリュス。
私にそう言って欲しくて、わざわざ振ったんでしょう?」
テリュスは肩すくめる。
「変装は…思い浮かばなかったな!
流石の俺でも!」
エリューンはまた、ため息交じりにぼやいた。
「…褒められても、ちっとも嬉しくない事って、あるんですね」
テリュスに見つめられ、エリューンは思い切り、顔を背けた。
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