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記憶を取り戻したレジィ
心の内を吐き出すレジィリアンス
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テリュスはどうしても…レジィに質問したいと思った。
エルデリオンにされた事をどう思ったのか。
いつでも、どんな時でも戦って護ってきた。
けれど今度の敵、エルデリオンは大国の王子。
いつものように、弓では殺せない…。
けれどレジィはロットバルトに抱きしめられて、少しずつ落ち着きを取り戻す。
「…僕…エルデリオンがどうしてあんな事するのか。
分からなかった…。
けど、分かった事もあった。
エウロペは付いてきてくれたけど…エルデリオンはもっと強い。
父様よりも。
だから…逆らえないんだって…。
僕…僕もっと分かってたら叫んでたのに…。
エウロペを呼んでもいいって。
嫌だ!って思い切り暴れてもいい…って…。
でもエルデリオンが…花嫁だから…拒まないで。
って…。
僕…“花嫁”って…何されても拒めないって知らなかった。
僕嫌だったのに…エルデリオン、止めない…!
どうしても止めないの…!」
ロットバルトはもっとレジィを、ぎゅっ!とした。
レジィはそれで、勇気を貰ったみたいに、言葉を綴る。
「でもエウロペやエリューンやテリュスが居なくなるの、もっと嫌…。
エルデリオンに“嫌”って言って…父様より強いエルデリオンが…エウロペ達を僕から遠ざけたら…どうしようって。
僕…僕それ考えただけで…怖くて。
怖くて…凄く怖くて…嫌だったのに叫べなかった………」
レジィはやっと、顔を上げてロットバルトに叫んだ。
「絶対、エウロペは僕が叫んだら来てくれた!
そしてエルデリオンと…貴方やデルデロッテ達と戦ってでも…僕を助けてくれた!
けどそれをしたらエウロペは…罪人になっちゃう………」
レジィもぽろぽろ涙を流したけど。
テリュスも目が潤んだ。
「それで…………」
言った後、レジィは俯いて思い出す。
「でも貴方もデルデロッテも、優しかった…。
エウロペに代わって、エルデリオンに怒ってくれた。
僕…嬉しかったけど、心配だった。
二人とも…後で居なくなるんじゃ無いか…って…。
護衛から外されて…。
でもラステルが。
凄く明るい笑顔を僕に向けてくれた時。
僕…どうしてだか、“大丈夫”って思って…。
その、通りになった………」
レジィはやっと、顔を上げた。
「ラステルはエウロペに似てる。
“大丈夫”って言うと、その通りになるんだ………」
ロットバルトはまた、微笑んで頷く。
レジィはその後突然。
本当に突然。
思い出したのか、叫びだした。
「ここ…どこ?!
どうして誰も居ないの?!
エウロペもテリュスもエリューンも居ない!
さっきまで居たのに!!!
直ぐ側に居たのに!!!
…どうして僕、…手が動かせないの?!
上で縛られたまま…降ろせない!!!
足も…枷がはまって動くと足首が痛い…!!!
エルデリオンより酷い!!!
エルデリオンより酷い!!!
エルデリオンより………!!!」
取り乱しきって暴れるレジィを。
ロットバルトはしっかり抱きしめる。
レジィはロットバルトの温かさを感じ、頬に涙を滴らせた。
テリュスはそんなレジィを見つめた。
可愛い弟みたいにずっと一緒に居たのに…。
囚われた体験で、今は色香と艶を増し、別の存在に感じ、隔てられたように感じて、悲しかった。
言いたかった。
“ごめんな。
そいつら全部、直ぐ行って殺せなくて、ごめんな…”
ロットバルトはチラ…と顔を下げてる、テリュスを見る。
その時、ノックが聞こえ、エウロペが顔を出した。
ロットバルトが頷き、エウロペはロットバルトと場所を代わってレジィを優しく腕に抱きしめる。
「…思い出した?」
レジィはロットバルトの温もりが離れて行き、よく知ったエウロペの胸に抱かれると。
突然思い出す。
「…エウロペ…落ちてない…?
あいつ、怪我した!!!
肩から血を流して…!!!
僕…僕、エウロペのロープが切れて、落ちて死んだらどうしようって…!!!」
「大丈夫。
テリュスが矢で射た。
いつものように。
悪い奴を射たんだ」
エウロペの素早い言葉に、テリュスが振り向く。
レジィは強ばった表情がほぐれるように、微笑んだ。
「…ホント?
だってうんと高くて…風だって強かったのに?」
「…だから、殺せなかった。
肩しか当てられなかった…。
テリュスはうんと、悔しかったと思う。
いつも…一発で殺すのに。
もし殺せたら…私がロープで辿り着いた時。
君を腕に抱けていた」
レジィはようやく…エウロペの腕の中から、テリュスに視線を送る。
テリュスは俯いていたけれど、振り向いてレジィと視線を合わせ、頷いた。
「…ごめんな。
殺せなくって」
レジィは両手広げ、テリュスに突進して抱きついた。
「…あんな所で肩だけでも中てられるの、凄いよ!!!
テリュス絶対凄い!!!」
ロットバルトが寝台の横に立ってると、背後からラステルが、顔出して言った。
「全くですよ!
優秀揃いの私の部下ですら、あそこで気づいて矢を放つ者は、誰一人居なかったんですから!
エウロペ殿は絶対了承しないと思いますけど。
私の部下にスカウトしたいぐらい。
当然、報酬も弾みますし、高位の爵位も、豊穣を約束出来る土地も付けます」
エウロペはそれを聞くなり眉をひそめ
「…褒めてるついでに、本気でスカウトしてないか?」
と聞いた。
ロットバルトが振り向くと、ラステルはちゃっかり笑って、肩をすくめた。
エルデリオンにされた事をどう思ったのか。
いつでも、どんな時でも戦って護ってきた。
けれど今度の敵、エルデリオンは大国の王子。
いつものように、弓では殺せない…。
けれどレジィはロットバルトに抱きしめられて、少しずつ落ち着きを取り戻す。
「…僕…エルデリオンがどうしてあんな事するのか。
分からなかった…。
けど、分かった事もあった。
エウロペは付いてきてくれたけど…エルデリオンはもっと強い。
父様よりも。
だから…逆らえないんだって…。
僕…僕もっと分かってたら叫んでたのに…。
エウロペを呼んでもいいって。
嫌だ!って思い切り暴れてもいい…って…。
でもエルデリオンが…花嫁だから…拒まないで。
って…。
僕…“花嫁”って…何されても拒めないって知らなかった。
僕嫌だったのに…エルデリオン、止めない…!
どうしても止めないの…!」
ロットバルトはもっとレジィを、ぎゅっ!とした。
レジィはそれで、勇気を貰ったみたいに、言葉を綴る。
「でもエウロペやエリューンやテリュスが居なくなるの、もっと嫌…。
エルデリオンに“嫌”って言って…父様より強いエルデリオンが…エウロペ達を僕から遠ざけたら…どうしようって。
僕…僕それ考えただけで…怖くて。
怖くて…凄く怖くて…嫌だったのに叫べなかった………」
レジィはやっと、顔を上げてロットバルトに叫んだ。
「絶対、エウロペは僕が叫んだら来てくれた!
そしてエルデリオンと…貴方やデルデロッテ達と戦ってでも…僕を助けてくれた!
けどそれをしたらエウロペは…罪人になっちゃう………」
レジィもぽろぽろ涙を流したけど。
テリュスも目が潤んだ。
「それで…………」
言った後、レジィは俯いて思い出す。
「でも貴方もデルデロッテも、優しかった…。
エウロペに代わって、エルデリオンに怒ってくれた。
僕…嬉しかったけど、心配だった。
二人とも…後で居なくなるんじゃ無いか…って…。
護衛から外されて…。
でもラステルが。
凄く明るい笑顔を僕に向けてくれた時。
僕…どうしてだか、“大丈夫”って思って…。
その、通りになった………」
レジィはやっと、顔を上げた。
「ラステルはエウロペに似てる。
“大丈夫”って言うと、その通りになるんだ………」
ロットバルトはまた、微笑んで頷く。
レジィはその後突然。
本当に突然。
思い出したのか、叫びだした。
「ここ…どこ?!
どうして誰も居ないの?!
エウロペもテリュスもエリューンも居ない!
さっきまで居たのに!!!
直ぐ側に居たのに!!!
…どうして僕、…手が動かせないの?!
上で縛られたまま…降ろせない!!!
足も…枷がはまって動くと足首が痛い…!!!
エルデリオンより酷い!!!
エルデリオンより酷い!!!
エルデリオンより………!!!」
取り乱しきって暴れるレジィを。
ロットバルトはしっかり抱きしめる。
レジィはロットバルトの温かさを感じ、頬に涙を滴らせた。
テリュスはそんなレジィを見つめた。
可愛い弟みたいにずっと一緒に居たのに…。
囚われた体験で、今は色香と艶を増し、別の存在に感じ、隔てられたように感じて、悲しかった。
言いたかった。
“ごめんな。
そいつら全部、直ぐ行って殺せなくて、ごめんな…”
ロットバルトはチラ…と顔を下げてる、テリュスを見る。
その時、ノックが聞こえ、エウロペが顔を出した。
ロットバルトが頷き、エウロペはロットバルトと場所を代わってレジィを優しく腕に抱きしめる。
「…思い出した?」
レジィはロットバルトの温もりが離れて行き、よく知ったエウロペの胸に抱かれると。
突然思い出す。
「…エウロペ…落ちてない…?
あいつ、怪我した!!!
肩から血を流して…!!!
僕…僕、エウロペのロープが切れて、落ちて死んだらどうしようって…!!!」
「大丈夫。
テリュスが矢で射た。
いつものように。
悪い奴を射たんだ」
エウロペの素早い言葉に、テリュスが振り向く。
レジィは強ばった表情がほぐれるように、微笑んだ。
「…ホント?
だってうんと高くて…風だって強かったのに?」
「…だから、殺せなかった。
肩しか当てられなかった…。
テリュスはうんと、悔しかったと思う。
いつも…一発で殺すのに。
もし殺せたら…私がロープで辿り着いた時。
君を腕に抱けていた」
レジィはようやく…エウロペの腕の中から、テリュスに視線を送る。
テリュスは俯いていたけれど、振り向いてレジィと視線を合わせ、頷いた。
「…ごめんな。
殺せなくって」
レジィは両手広げ、テリュスに突進して抱きついた。
「…あんな所で肩だけでも中てられるの、凄いよ!!!
テリュス絶対凄い!!!」
ロットバルトが寝台の横に立ってると、背後からラステルが、顔出して言った。
「全くですよ!
優秀揃いの私の部下ですら、あそこで気づいて矢を放つ者は、誰一人居なかったんですから!
エウロペ殿は絶対了承しないと思いますけど。
私の部下にスカウトしたいぐらい。
当然、報酬も弾みますし、高位の爵位も、豊穣を約束出来る土地も付けます」
エウロペはそれを聞くなり眉をひそめ
「…褒めてるついでに、本気でスカウトしてないか?」
と聞いた。
ロットバルトが振り向くと、ラステルはちゃっかり笑って、肩をすくめた。
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