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激突
大軍
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「こっちだ!
王子達はこっちにいる!!!」
後方、森の中から響く声に。
全員が一斉に、殺気帯びて振り向く。
ラステルが手を振り先を促す。
全員、即座に走り出した。
ざざざざざざっ!!!
が、進む先にあっという間に敵が雪崩れ込み、ラステルは歩を止める。
オーガスタスはゼイブンを列の中へと導き、自分は横へずれて左側面を守る体勢に入った。
ギュンターとエディエルゼも列の端へと出、右側面を守るため剣を構える。
最後尾ではスフォルツァがラフォーレンを前に出し、自分が後ろに下がった。
最前列、ラステルの後ろに居たエルデリオンは、デルデが右端に出、ギュンターの前に出て右側面を守る一翼となり、反対横のローフィスが斜め前と出て行って、前方と左側面を護りに入るのを見た。
エルデリオンの背後。
ミラーシェンの右横にはテリュスが小弓を下げて立ち、その後ろにはレジィリアンス。
エリューンが左、エウロペが右横に立ち、レジィリアンスを挟んで両横から護りに入る。
その背後に、シュアンを背に抱えるロットバルトが、周囲を見回していた。
ノルデュラス公爵はラウールをミラーシェンの横へと押し出すと、後ろに下がって左側面を守るオーガスタスの、斜め後ろに陣を取った。
ゼイブンは促されてオーガスタスの背後に居たものの、オーガスタスと先頭ラステルの間がぽっかり開いてるのを見、進んだものかどうか思案してる間に。
ローフィスが進み出、穴を埋めてくれて内心
「(流石デキる男!)」
と、自分に代わって重責を引き受けてくれる、ローフィスを褒め称えた。
直ぐラステルとローフィスの短剣が飛び、前を囲む敵の布陣を崩しにかかる。
デルデは横から突っ込んで来る敵に剣を振り切って斬り捨て、オーガスタスは二本の剣で一気に飛び込んで来る敵、三人を斬り殺す。
ざしっ!!!
ずざっっ!!!
最後尾のスフォルツァは、背後から来る大軍を見
「もっと前へ行け!!!」
とラフォーレンを促す。
それを見たノルデュラス公爵は、後方から来る敵の多さに目を見開くと、瞬時に最後尾へと下がり、スフォルツァの横に並んで一緒に襲い来る敵に、剣を振り始める。
ざぁっ!!!
ずしゃっ!!!
右側面では、待ってられないとばかり、とっくにエディエルゼが突進し。
敵が襲い来る前に先制攻撃を仕掛け、一気に五人を斬り捨てる。
俊敏に足場を移し、敵の剣は掠りもせず。
振った剣は敵を一撃で仕留め、銀の髪を振って敵の剣をすり抜け様、ぶった斬る。
飛び込んで来る、一群を全て斬り殺した後。
襲い来る敵が途絶えた事に、エディエルゼは気づいて立ち上がる。
目前の敵は一斉に歩を止め、彼の様子を伺っていた。
どの顔も
“突っ込めば一瞬で斬られる!”
そんな緊迫した表情を浮かべて。
前方、右側面に立つデルデはもう、がっし!と敵の振り被る剣を剣で止め、瞬時に止めた剣を外し、一気に斜め下から斬り捨てた。
ずばっ!!!
ギュンターは前方から押し寄せ、デルデの横をすり抜けてラステルの横へと忍び寄る敵を見つけ
「ミラーシェンを任せて良いか?!」
と叫び、直ぐテリュスの
「エウロペも居る!」
の返答に、ラステルへ走り寄る敵に剣を振り切りながらも
「分かりにくい!」
ずばっ!
叫びながら、一撃で斬り捨てた。
振り向くと、エウロペは右側面後方から襲い来る敵に突進し、直ぐ二人を。
続いて三人を、ほぼ見えない程早い剣捌きで、斬り捨てていた。
ラステルはギュンターに振り向き
「ありがたいですが、私は守ってくれなくても大丈夫ですから。
ミラーシェンとレジィを守ってくれると助かります」
と笑顔で告げる。
周囲を大軍で取り囲まれてる真っ最中の、ラステルのその笑顔に。
ギュンターは彼の、姿に似合わぬ豪胆さに呆れた。
が、エディエルゼの左横、デルデの右横の、すっぽり開いた隙目指し、駆け来る敵が視界に入ると。
ギュンターも突っ込んで行って、先制攻撃に出た。
突進して来る敵二人に、斜めに一気に剣を振り切る。
一人は身を屈めすり抜け、もう一人は肩を切られ、手を添えて仰け反った。
「ぅ…がっ!」
直ぐ目前から襲い来る敵にギュンターは剣を引くと、上から思いっきり振り下ろす。
ざっっっっ!!!
「が…はっ!」
たった今斬った敵が倒れ伏す様を確認する間も無く、まだその背後から続々突進して来る敵を睨めつけ、ギュンターは尚も剣を振り被った。
ギュンター横をすり抜けた敵が駆け来る様を見、エルデリオンは咄嗟振り向き、身構える。
が、その前に
「がっ!」
胸に矢を喰らい、倒れる敵。
エルデリオンは拍子抜けし、背後のテリュスを見た。
テリュスはもう、エウロペの進む方向から駆け来る敵二人に矢を放ち、倒し。
エウロペの負担を減らしてた。
「気づいたら殺れるけど。
いっつも助けられる訳じゃない」
自分を見ないテリュスの呻き声に、エルデリオンは頷いた。
「でも、助かった」
ミラーシェンが見てると、また一人。
エウロペに向かい来る、後方の敵に矢を射ながら。
テリュスは頷き返した。
デルデは向かって来る、いかにも剛の者の図体のデカい騎士が、自分の背後、エルデリオンを眼光鋭く見つめ、奪取しようと突っ込んで来た瞬間、剣を振り被る。
デルデを
「(小物!!!)」
と突っ込みながら剣を振り切り、退かせようとする騎士の、剣を剣で受け止め、歩を止めさせる。
がっしっ!!!
ロットバルトは四方八方から凄まじい人数が押し寄せ来るのに目を見開き、じりじりしながらも。
前を護ってくれてるローフィスが短剣を投げ、目前から襲い来る敵を一人。
また一人沈め、前進する歩を止めさせてるのを見つめた。
が、それでは捌ききれないほどの数の、後続隊が後ろに控えてるのを見。
懐から紐を取り出すと、シュアンを背に括り付け始める。
ラフォーレンも後ろからそれを見、慌てて紐を取り出し、ロットバルトに習った。
ローフィスは前方から来る敵の一人が、前の仲間達が立て続けに短剣喰らい倒れるのを見、進みあぐねて一瞬、歩を止めるのを確認した後。
背後に振り向き、オーガスタスの背に守られ、ラフィーレをとっくの昔に紐で背に括り付け、オーガスタスの勇姿に見とれてる、ゼイブンに怒鳴る。
「両手空いてるんだから、手伝え!!!」
後方。
ノルデュラス公爵は左横のスフォルツァが、かなりの使い手なのに気づく。
襲い来る敵の強面騎士を相手に、怯みもせず一気に“気”の籠もった剣を、上から瞬速で
ずばっ!!!
と振り下ろし、斬り捨てるのを見た。
そして…目前から大軍引き連れてやって来た、隊長らしき男の顔を見、目を見開く。
“ガベンツァ公爵!”
一方先頭ではラステルが、進みあぐねる部下を押し分け、鎧を着けた体格の良い威厳ある騎士が姿を現すのを見、笑顔で叫ぶ。
「ヨランデル大将!!!
辺境に送られても、軍の指導力は健在のようですね?!」
オーガスタスも剣を振りながら、雑魚のような盗賊崩れの敵が、少しずつ強面で訓練された騎士に成り代わるのに、気づく。
迂闊に突っ込んでは来ず、剣を振っても射程距離ギリギリに避けられ、振られた剣を弾かれて一撃では殺せない。
最後尾のノルデュラス公爵は、最前列のラステルの声に叫び返す。
「大将の自慢の息子も、ここに居るぞ!!!」
ゴツい竜のような顔をした、黒髪の大将と違い。
後方から姿を現したガベンツァ公爵は、真っ直ぐの長い黒髪を背に流す、顔立ちの整った美男だった。
が、体格良く、女だろうが男だろうが。
父親同様、痛めつけて強姦するのが大好きな男。
この二人は大抵相手を酷く傷つけるので、ミラーシェンのような高価で貴重な相手の時は、毎度断りを入れられてた。
「…ラウールじゃないか…。
折角ファントール大公からお払い箱になって、やっと俺が可愛がってやれると、手くずね引いて待ってたのに。
が、こんなとこにいるんなら…今度こそ抱けるな!!!」
ガベンツァ公爵のその雄叫びを聞くなり、ノルデュラス公爵は横にずれ、ラウールを見つめるガベンツァ公爵の視線を遮り、睨めつける。
けどラウールは。
剣の腕だけは確かで平和な時、反逆者一味からは、もてあまされ気味だった乱暴者のその言葉に。
心配そうに公爵の背に、視線を投げた。
ガベンツァ公爵は、勝ち誇ったように怒鳴り続ける。
「…ノルデュラス公爵。
あんたのふにゃチンのお父上は…最早こうなると実権は無いも同然!
今、この反逆同盟で力を持つのは、大軍構え戦える者だからな!!!」
が、最前列のラステルは。
目前に姿を見せてる父大将が、後方の息子を怒鳴りつける咆吼を聞く。
「ここにいると言う事は、ノルデュラスは反逆者!!!
立ち塞がるんなら、遠慮無く斬れ!!!」
ガベンツァ公爵は顎を上げ、美麗な色男ノルデュラス公爵を、嘲笑い見つめ言い放つ。
「…反逆者か…。
大物の息子としていつも偉そうなツラし、気にくわなかった色男を。
ぶった斬ってもどこからも文句は、出ないんだな!!!」
その後剣を持ち上げ、ノルデュラス公爵に切っ先を突きつけ、言い切る。
「お前をぶった斬ってラウールを思い切り可愛がり、俺の下でひぃひぃ言わせてやる!!!
…お前が入れ込んでた、エルデリオンも同様だ!!!
貴様が死んだ後、貴様に成り代わり!!!
大陸一高貴な王子の、恥ずかしいケツ穴に否応なしに思い切りブチ込んで!!!
どれだけ泣き喚こうが、緩んで締まりが無くなるまで突っ込み続け、泣かせ喘がせまくってやるぜ!!!」
それを聞いたデルデは怒り狂うと、まだ剣を合わせてた手強い剛の者の剣を一瞬で外し、相手が振り切る剣を頭を下げて避け、一気に斜め下から斬りつけた。
ずばっ!!!
下げた頭を直ぐ上げ、振り向き。
ガベンツァ公爵を怒鳴りつける。
「エルデリオンが欲しければ!!!
俺を殺してからにしろ!!!」
ガベンツァ公爵はかなり前に居る、斬り様振り向くデルデロッテに視線を向け、薄ら笑う。
「そこにいたかデルデロッテ!!!
いけすかないノルデュラスを殺した後。
お前の息の根もきっちり止めてやるから、待って…ぐぅぅぅぅっ!!!」
ガベンツァ公爵が突如崩れ落ちるのを見、慌てて両側の騎士が抱き止める。
ガベンツァ公爵の胸に深々と突き刺さる、小さな矢を見。
ノルデュラス公爵も背後に振り向いたが、スフォルツァも振り向いた。
デルデはもう誰の仕業か分かって、倒れかかる背を両側の騎士に支えられ、崩れ落ちるガベンツァ公爵をため息交じりに眺める。
テリュスが上げた小弓を下げ、見つめる公爵とスフォルツァに気づき、ぼやく。
「戦ってる間にべらべら喋るなんて、アホ」
顔を下げるスフォルツァが
「あいつだけは、敵に回すまい…」
と小声で呟くのを聞き。
ノルデュラス公爵も無言で同意し、頷いた。
ミラーシェンは尊敬の眼差しで、そんなテリュスを見上げ。
ラウールもミラーシェンの向こうに立つテリュスの、不敵な無表情の可愛らしい顔を見つめ。
内心拍手を送りまくった。
王子達はこっちにいる!!!」
後方、森の中から響く声に。
全員が一斉に、殺気帯びて振り向く。
ラステルが手を振り先を促す。
全員、即座に走り出した。
ざざざざざざっ!!!
が、進む先にあっという間に敵が雪崩れ込み、ラステルは歩を止める。
オーガスタスはゼイブンを列の中へと導き、自分は横へずれて左側面を守る体勢に入った。
ギュンターとエディエルゼも列の端へと出、右側面を守るため剣を構える。
最後尾ではスフォルツァがラフォーレンを前に出し、自分が後ろに下がった。
最前列、ラステルの後ろに居たエルデリオンは、デルデが右端に出、ギュンターの前に出て右側面を守る一翼となり、反対横のローフィスが斜め前と出て行って、前方と左側面を護りに入るのを見た。
エルデリオンの背後。
ミラーシェンの右横にはテリュスが小弓を下げて立ち、その後ろにはレジィリアンス。
エリューンが左、エウロペが右横に立ち、レジィリアンスを挟んで両横から護りに入る。
その背後に、シュアンを背に抱えるロットバルトが、周囲を見回していた。
ノルデュラス公爵はラウールをミラーシェンの横へと押し出すと、後ろに下がって左側面を守るオーガスタスの、斜め後ろに陣を取った。
ゼイブンは促されてオーガスタスの背後に居たものの、オーガスタスと先頭ラステルの間がぽっかり開いてるのを見、進んだものかどうか思案してる間に。
ローフィスが進み出、穴を埋めてくれて内心
「(流石デキる男!)」
と、自分に代わって重責を引き受けてくれる、ローフィスを褒め称えた。
直ぐラステルとローフィスの短剣が飛び、前を囲む敵の布陣を崩しにかかる。
デルデは横から突っ込んで来る敵に剣を振り切って斬り捨て、オーガスタスは二本の剣で一気に飛び込んで来る敵、三人を斬り殺す。
ざしっ!!!
ずざっっ!!!
最後尾のスフォルツァは、背後から来る大軍を見
「もっと前へ行け!!!」
とラフォーレンを促す。
それを見たノルデュラス公爵は、後方から来る敵の多さに目を見開くと、瞬時に最後尾へと下がり、スフォルツァの横に並んで一緒に襲い来る敵に、剣を振り始める。
ざぁっ!!!
ずしゃっ!!!
右側面では、待ってられないとばかり、とっくにエディエルゼが突進し。
敵が襲い来る前に先制攻撃を仕掛け、一気に五人を斬り捨てる。
俊敏に足場を移し、敵の剣は掠りもせず。
振った剣は敵を一撃で仕留め、銀の髪を振って敵の剣をすり抜け様、ぶった斬る。
飛び込んで来る、一群を全て斬り殺した後。
襲い来る敵が途絶えた事に、エディエルゼは気づいて立ち上がる。
目前の敵は一斉に歩を止め、彼の様子を伺っていた。
どの顔も
“突っ込めば一瞬で斬られる!”
そんな緊迫した表情を浮かべて。
前方、右側面に立つデルデはもう、がっし!と敵の振り被る剣を剣で止め、瞬時に止めた剣を外し、一気に斜め下から斬り捨てた。
ずばっ!!!
ギュンターは前方から押し寄せ、デルデの横をすり抜けてラステルの横へと忍び寄る敵を見つけ
「ミラーシェンを任せて良いか?!」
と叫び、直ぐテリュスの
「エウロペも居る!」
の返答に、ラステルへ走り寄る敵に剣を振り切りながらも
「分かりにくい!」
ずばっ!
叫びながら、一撃で斬り捨てた。
振り向くと、エウロペは右側面後方から襲い来る敵に突進し、直ぐ二人を。
続いて三人を、ほぼ見えない程早い剣捌きで、斬り捨てていた。
ラステルはギュンターに振り向き
「ありがたいですが、私は守ってくれなくても大丈夫ですから。
ミラーシェンとレジィを守ってくれると助かります」
と笑顔で告げる。
周囲を大軍で取り囲まれてる真っ最中の、ラステルのその笑顔に。
ギュンターは彼の、姿に似合わぬ豪胆さに呆れた。
が、エディエルゼの左横、デルデの右横の、すっぽり開いた隙目指し、駆け来る敵が視界に入ると。
ギュンターも突っ込んで行って、先制攻撃に出た。
突進して来る敵二人に、斜めに一気に剣を振り切る。
一人は身を屈めすり抜け、もう一人は肩を切られ、手を添えて仰け反った。
「ぅ…がっ!」
直ぐ目前から襲い来る敵にギュンターは剣を引くと、上から思いっきり振り下ろす。
ざっっっっ!!!
「が…はっ!」
たった今斬った敵が倒れ伏す様を確認する間も無く、まだその背後から続々突進して来る敵を睨めつけ、ギュンターは尚も剣を振り被った。
ギュンター横をすり抜けた敵が駆け来る様を見、エルデリオンは咄嗟振り向き、身構える。
が、その前に
「がっ!」
胸に矢を喰らい、倒れる敵。
エルデリオンは拍子抜けし、背後のテリュスを見た。
テリュスはもう、エウロペの進む方向から駆け来る敵二人に矢を放ち、倒し。
エウロペの負担を減らしてた。
「気づいたら殺れるけど。
いっつも助けられる訳じゃない」
自分を見ないテリュスの呻き声に、エルデリオンは頷いた。
「でも、助かった」
ミラーシェンが見てると、また一人。
エウロペに向かい来る、後方の敵に矢を射ながら。
テリュスは頷き返した。
デルデは向かって来る、いかにも剛の者の図体のデカい騎士が、自分の背後、エルデリオンを眼光鋭く見つめ、奪取しようと突っ込んで来た瞬間、剣を振り被る。
デルデを
「(小物!!!)」
と突っ込みながら剣を振り切り、退かせようとする騎士の、剣を剣で受け止め、歩を止めさせる。
がっしっ!!!
ロットバルトは四方八方から凄まじい人数が押し寄せ来るのに目を見開き、じりじりしながらも。
前を護ってくれてるローフィスが短剣を投げ、目前から襲い来る敵を一人。
また一人沈め、前進する歩を止めさせてるのを見つめた。
が、それでは捌ききれないほどの数の、後続隊が後ろに控えてるのを見。
懐から紐を取り出すと、シュアンを背に括り付け始める。
ラフォーレンも後ろからそれを見、慌てて紐を取り出し、ロットバルトに習った。
ローフィスは前方から来る敵の一人が、前の仲間達が立て続けに短剣喰らい倒れるのを見、進みあぐねて一瞬、歩を止めるのを確認した後。
背後に振り向き、オーガスタスの背に守られ、ラフィーレをとっくの昔に紐で背に括り付け、オーガスタスの勇姿に見とれてる、ゼイブンに怒鳴る。
「両手空いてるんだから、手伝え!!!」
後方。
ノルデュラス公爵は左横のスフォルツァが、かなりの使い手なのに気づく。
襲い来る敵の強面騎士を相手に、怯みもせず一気に“気”の籠もった剣を、上から瞬速で
ずばっ!!!
と振り下ろし、斬り捨てるのを見た。
そして…目前から大軍引き連れてやって来た、隊長らしき男の顔を見、目を見開く。
“ガベンツァ公爵!”
一方先頭ではラステルが、進みあぐねる部下を押し分け、鎧を着けた体格の良い威厳ある騎士が姿を現すのを見、笑顔で叫ぶ。
「ヨランデル大将!!!
辺境に送られても、軍の指導力は健在のようですね?!」
オーガスタスも剣を振りながら、雑魚のような盗賊崩れの敵が、少しずつ強面で訓練された騎士に成り代わるのに、気づく。
迂闊に突っ込んでは来ず、剣を振っても射程距離ギリギリに避けられ、振られた剣を弾かれて一撃では殺せない。
最後尾のノルデュラス公爵は、最前列のラステルの声に叫び返す。
「大将の自慢の息子も、ここに居るぞ!!!」
ゴツい竜のような顔をした、黒髪の大将と違い。
後方から姿を現したガベンツァ公爵は、真っ直ぐの長い黒髪を背に流す、顔立ちの整った美男だった。
が、体格良く、女だろうが男だろうが。
父親同様、痛めつけて強姦するのが大好きな男。
この二人は大抵相手を酷く傷つけるので、ミラーシェンのような高価で貴重な相手の時は、毎度断りを入れられてた。
「…ラウールじゃないか…。
折角ファントール大公からお払い箱になって、やっと俺が可愛がってやれると、手くずね引いて待ってたのに。
が、こんなとこにいるんなら…今度こそ抱けるな!!!」
ガベンツァ公爵のその雄叫びを聞くなり、ノルデュラス公爵は横にずれ、ラウールを見つめるガベンツァ公爵の視線を遮り、睨めつける。
けどラウールは。
剣の腕だけは確かで平和な時、反逆者一味からは、もてあまされ気味だった乱暴者のその言葉に。
心配そうに公爵の背に、視線を投げた。
ガベンツァ公爵は、勝ち誇ったように怒鳴り続ける。
「…ノルデュラス公爵。
あんたのふにゃチンのお父上は…最早こうなると実権は無いも同然!
今、この反逆同盟で力を持つのは、大軍構え戦える者だからな!!!」
が、最前列のラステルは。
目前に姿を見せてる父大将が、後方の息子を怒鳴りつける咆吼を聞く。
「ここにいると言う事は、ノルデュラスは反逆者!!!
立ち塞がるんなら、遠慮無く斬れ!!!」
ガベンツァ公爵は顎を上げ、美麗な色男ノルデュラス公爵を、嘲笑い見つめ言い放つ。
「…反逆者か…。
大物の息子としていつも偉そうなツラし、気にくわなかった色男を。
ぶった斬ってもどこからも文句は、出ないんだな!!!」
その後剣を持ち上げ、ノルデュラス公爵に切っ先を突きつけ、言い切る。
「お前をぶった斬ってラウールを思い切り可愛がり、俺の下でひぃひぃ言わせてやる!!!
…お前が入れ込んでた、エルデリオンも同様だ!!!
貴様が死んだ後、貴様に成り代わり!!!
大陸一高貴な王子の、恥ずかしいケツ穴に否応なしに思い切りブチ込んで!!!
どれだけ泣き喚こうが、緩んで締まりが無くなるまで突っ込み続け、泣かせ喘がせまくってやるぜ!!!」
それを聞いたデルデは怒り狂うと、まだ剣を合わせてた手強い剛の者の剣を一瞬で外し、相手が振り切る剣を頭を下げて避け、一気に斜め下から斬りつけた。
ずばっ!!!
下げた頭を直ぐ上げ、振り向き。
ガベンツァ公爵を怒鳴りつける。
「エルデリオンが欲しければ!!!
俺を殺してからにしろ!!!」
ガベンツァ公爵はかなり前に居る、斬り様振り向くデルデロッテに視線を向け、薄ら笑う。
「そこにいたかデルデロッテ!!!
いけすかないノルデュラスを殺した後。
お前の息の根もきっちり止めてやるから、待って…ぐぅぅぅぅっ!!!」
ガベンツァ公爵が突如崩れ落ちるのを見、慌てて両側の騎士が抱き止める。
ガベンツァ公爵の胸に深々と突き刺さる、小さな矢を見。
ノルデュラス公爵も背後に振り向いたが、スフォルツァも振り向いた。
デルデはもう誰の仕業か分かって、倒れかかる背を両側の騎士に支えられ、崩れ落ちるガベンツァ公爵をため息交じりに眺める。
テリュスが上げた小弓を下げ、見つめる公爵とスフォルツァに気づき、ぼやく。
「戦ってる間にべらべら喋るなんて、アホ」
顔を下げるスフォルツァが
「あいつだけは、敵に回すまい…」
と小声で呟くのを聞き。
ノルデュラス公爵も無言で同意し、頷いた。
ミラーシェンは尊敬の眼差しで、そんなテリュスを見上げ。
ラウールもミラーシェンの向こうに立つテリュスの、不敵な無表情の可愛らしい顔を見つめ。
内心拍手を送りまくった。
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