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ディングレー、ギュンター、ローフィスとオーガスタス それぞれの事情

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 ディングレーは、ハウリィを迎えて凄く嬉しそうなアスランが、真っ直ぐの黒髪に囲まれた白い頬をピンクに染め、愛らしい茶色の瞳を輝かせてるのを見た。

ハウリィはふんわりとした明るい栗色巻き毛を振って、やっぱり嬉しそうにアスランにブルーの瞳を向けてる。
そうしてると、少女が二人いるようだった。
二人の側に立つマレーは一番理知的に見え、栗色の縦ロールの髪を少し揺らし、ヘイゼルの瞳を二人に向け、アスランに話しかけられて人形のような綺麗な顔を傾け、頷いてる。

ハウリィはマレーにも頷かれて、やっと緊張がほぐれた様子。

ディングレーは心から、小柄な三人の一年美少年らが寛ぐ姿を見て、ほっとした。

が。
グーデンは間違いなく、奪還を企むだろう。
ローフィスがまた顔を出してくれたら、一年達に預けた後、一年らは果たして三人を守り切れるのか?
の相談をしたかった。

しかし待っても、ローフィスは来ない…。
三人に宛がった部屋の寝台はとても大きかったから、余裕で三人眠れるが…。

アスランが明るい声で
「先に休ませて頂きます!」
と告げ、ハウリィの背を押して部屋の中へと、消えて行く。
マレーは入りかけて振り向き…ディングレーが
『個別の寝台にした方がいいか?』
と聞く間無く、マレーも部屋へ消えて行って、扉は閉まった。

ディングレーは居間のソファに座り込むと、デキャンターから酒を注ぎ、煽った。
ギュンターがアスランを取り戻しに、顔を出すかも。
とも思ったが、結局ギュンターは、現れず。

そのまま酒を飲み続け、『限界だ』と感じた途端立ち上がり、寝室へ入ると寝台に突っ伏した。

 ギュンターは腹が膨れた途端、眠気に襲われた。
いつの間にか、情事の後眠っちまった。
オーガスタスは起こさずに、酒代と部屋代を払い…。

返さなきゃ。
とも思ったが、眠気が酷すぎて無理。

ふきっさらしの外階段を上がる。
扉を開けて、質素な寝台に体ごと倒れ込む。
その時ようやく…リィラの柔らかく優しく甘い吐息の、赤い唇に口づけた唇の感触が、戻って来る。
白く華奢な腕が首に巻き付き、寄せられた甘い唇。
手を這わせた柔らかな彼女の肌…。

豊満な胸に触れて揉みしだくと、もう…彼女は甘い喘ぎを発したし、下に触れると濡れていたから…。
前戯もそこそこ、かなり早い段階で、挿入しちまった。

挿入して彼女に包み込まれた時、脳が快感で痺れ…そのまま連続して突き上げると、興奮に包まれて…。

彼女は立て続けに
「いいわ!そこ!
そこよ!」
と叫んでたから…大丈夫だったとは、思う。

ああそれから…イきそうだったけど、長めに保たせたつもりだし、確かに彼女も痙攣してたから…。
それに放った後は一気に意識が真っ白になるほどヨくて、口づけようと顔を倒した時、彼女の方から唇を押しつけて来た。

あれは確かに、感謝のキス…。

ギュンターは意識が眠りに奪われかける前、なぞるようにコトを思い出す。
ああでも…もう一度…と思って彼女の肩を抱いて横になって、そのまま寝ちまったのは、マズかったかもしれない…。
今度機会があったら、ちゃんと…もっと満足させて…。

そこで、ギュンターの意識は途切れ、深い眠りに落ちて行った。

 ローフィスは四年宿舎に戻る。
夕飯時なはずだが、がらんとして、人はまばら。
殆どのヤツが料理を皿に盛り付け、自室に持っていって課題と格闘してるらしく、オーガスタスの姿も無い。

ローフィスはオーガスタスの、いつも扉の開いてる部屋へと、顔を出す。
案の定、オーガスタスは机にへばりつき、夕食を皿からつまみながら、ペンを走らせていた。

「…ギュンターと出かけたって?
まだ講義がある時間に」

オーガスタスは、顔も上げず口をもぐもぐさせて唸る。
「あいつ、合同授業でローランデとやって、勝てなかったとぼやきに来た」
「…普通、勝てないだろう?」
「だが、一発も食らわなかったそうだ。
鐘で時間切れで、引き分け」

「…凄いな。
ああ、で、俺今日、グーデンに犯されかけた一年を保護した」

オーガスタスが、一気に顔上げる。
「…大丈夫か?」
「まだされる前で、助けられて良かった」
「…そっちもだが…お前、一人だったんだろう?」
「相手は二年と一年だから。
俺でも捌けた」
「…だがグーデンはまた、お前に嫌がらせするな」
「間違いなくな」
「…俺の側から離れるな」

ローフィスは、そう低い声で呟いて、またペンを走らすオーガスタスを見た。
「…あのな。
俺だって、捕まってるのがシェイルじゃなきゃ、理性トバさないし、無茶もしない」
「だが、拳が腫れてる」

ローフィスは、自分の拳を見る。
「めざといな」

オーガスタスは、頭を揺らし頷く。
「理性あるお前は、信頼してる。
が、理性トバすとお前、身の危険もかえりみず、大怪我うだろう?
今、お前に怪我で寝込まれたら、困る男がどれだけ居ると思う?」

ローフィスは意図が分かって、ため息交じりにつぶやく。
「…課題提出で?」

オーガスタスはまだ、書いてる羊皮紙ようひしに視線を落としたまま、大きく頷く。
「お前の部屋の机の上。
提出前に添削てんさくして欲しい、羊皮紙の束が山積みだし、それに」

言って、オーガスタスは彼から向かって、右の山と積まれた羊皮紙の束に、首を振る。

「それ、全部に、目を通せって?」

「お前に見せず出した奴らが揃って、『やり直し』喰らって以来。
お前に見せてから提出する。
が、常識になってる」

ローフィスは、ため息吐いて俯いた。
が、オーガスタスの机の、右の山の羊皮紙を鷲掴むと、机の斜め横の、デカい寝台に腰下ろし、書かれた内容に、目を通し始めた。


 翌朝。
ディングレーは小鳥のようにさえずり、楽しげな三人を微笑ましく見つめた。
一年宿舎に送り届けるため、三人を連れて自室を出る。

が、階段を降りた平貴族大食堂でも。
宿舎を出た後でさえ。

食堂の隅、道の端の木や茂みの間から。
グーデン配下の男らが、目を光らせ、見張る姿を見かける。

「(奴ら…!
隙、狙ってやがる)」

睨み付けると、一気に顔を背ける。
が、事態に気づいた三人の美少年らは、怯えてる。

ディングレーは努めて平静な声で囁いた。
「大丈夫だ。
俺が居れば寄って来ない」

アスランが、それでもまだ、顔を見つめるので。
ディングレーは目を、見開いた。
その時、彼らの目に映る、自分の姿に気づく。

遙か上背。
体格の立派な、長い黒髪の、鋭い青の瞳の男。

アスランは、ちょっと困ったようにハウリィに視線を送る。
ハウリィに視線を向けると、彼は明らかに、自分を怖がってた。

ディングレーは俯き、マレーに囁く。
「頼む。マレー。
俺は怖く無いと。
ハウリィに、言ってくれないか?」

アスランとハウリィが見てると、マレーはくすくすっ!と凄く、可愛らしく笑った。

そしてハウリィに『ね?』と言うように、頷いて…また、くすくす笑う。
笑われて…ディングレーは決まり悪げに顔を下げる。

けれどハウリィが、しげしげと自分を見つめ…その後、目が合うと慌てて顔を背けたけど…もう、怖がってない様子で、ディングレーはほっとした。

だがそんな時ですら。
木陰から伺う、四年グーデン配下の一人と目が合う。
睨む前に、相手は顔を背けたが。

奴ら、隙を見つけこっそり奪還する気だ。
表だっては、襲って来ない。

自分も同様、影からなら、幾らでも助けられた。
が、表だってグーデンに歯向かう様は、王族の体面のため、他の生徒には見せられない。

ローフィスはその辺の事情が良く、解っていたから
「オーガスタスに、任せとけ!」
と肩を叩いてくれていた。

が、ディアヴォロスの居ない今。
自分の天下だとグーデンは皆に知らしめたいし、オーガスタスらはそれを許さないだろう………。

これだけ煮詰まった状況だと言うのに、スフォルツァは三人を送り届ける自分に、素っ気無く冷たい。

目が合うと鋭いヘイゼルの瞳で、睨んで来る。
つい、原因のアイリスに視線を送る。
が、まずい事にアイリスは、大変親しい相手にするような笑顔でにっこり自分に微笑みかけ、スフォルツァはそれを見て、ますますきつい瞳を自分に向ける。

ディングレーは大きなため息と共に、三人の背を促しやっぱり自分を睨むスフォルツァから顔を背け、ため息と共に三年宿舎へ、戻って行った。
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