アースルーリンドの騎士達 妖女ゼフィスの陰謀

あーす。

文字の大きさ
45 / 101
7 逆転し始める優位

レスルの部下の訪問を受けるオーガスタス

しおりを挟む



 左将軍官邸、執務室。
その前の部屋の、使者の待合室になってる準備室に、中からの声が響く。

「まだ…不在なんですか?」

レスルの部下は、居並ぶ使者達の列の最後尾に並び、その声を聞いた。

間もなく、叫んだ男が出てくると。
列を成してた使者達は。
皆、ため息交じりに、回れ右。

ぞろぞろと、部屋を出て行く。
一人がレスルの部下に
「貴方は帰らないんですか?」
と聞くから、部下は
「補佐殿は、いらっしゃるんですよね?」
と答えた。

使者は
「ああ!
補佐殿が目当てですか!
大変ですよね。
補佐官邸に出向いても、殆ど不在で。
この左将軍官邸に詰めていらっしゃるんですから。
私なんてこの間、補佐殿への使者をした時。
どちらを先に訪れようか、迷いましたよ」
と朗らかに告げる。

レスルの部下は、にっこり笑った。
「ホントですよね」

会釈して使者は姿を消し。
レスルの部下は、執務室の空いた扉へと入る。

「左将軍は不在だ!
所在も知れないから、連絡は当分…」
「貴方に。
連絡したくて」

オーガスタスは怒鳴ってる途中にそう言われて。
改めて、笑ってる地味な男を見つめる。

「アドラフレン殿に聞きました。
「左の王家」の血筋を引いてる、この男と我々は現在、敵対している。
直、拉致しようと計画しています。
が、その後の動向について、指示を仰ぎたい」

オーガスタスが、手渡された羊皮紙を手に取った所で。
頭の中に、すうっ…。
と光が射す。

「あんたの知ってる男か?」

オーガスタスの質問に、レスルの部下は言い淀む。
オーガスタスは直ぐ気づくと
「ああ、質問は君にじゃ無い」
と言うので、部下は頷いた。

「…その男を捕らえたら。
俺の所に連れて来てくれていい」

今度は、オーガスタスに顔を見て言われ、レスルの部下は、目を丸くする。
「…ですが、いつと、お約束は出来ません」

「ディアヴォロスがずっと探してた男だそうで…。
「左の王家」の血筋を、その男が強く意識した時。
ワーキュラスはその男を見つけ出せるらしいから。
その男が、俺の所に向かって来た時。
ワーキュラスが即座に、俺に知らせる。
俺は直ぐ様、ここに来て君らを待とう」

オーガスタスの真剣な真顔は、随分男前に見えるな。
と部下はオーガスタスに見つめられて、思った。

が、オーガスタスは顔を下げる。
「ああ、ワーキュラスって…」

レスルの部下は、にっこり笑った。
「大丈夫。
貴方が言われることは全て。
理解してます」

オーガスタスが、ほっとした様子で頷く。

「(…真顔の時だけか。凄く男前に見えるのって…。
崩れると、頼りになる体格の良い男に成り代わるな…)」

レスルの部下がそう思ってる時。
オーガスタスは独り言のように、呟いてた。

「…ワーキュラスを良く知る、アドラフレンと知り合いの、使者だっけ…?
この言葉を伝えてくれと言われた」

使者が頷くと、オーガスタスは少し…たどたどしく、伝え聞いた言葉を発するように、使者に告げる。
「“同じ…「左の王家」の…血を、持つ男。
ラデュークが………もし、ロスフォール大公の元を離れる決心をし……別の主を探すというのなら。
私が面倒をみたい”
…面倒見るのはワーキュラス…いや結局、ディアヴォロスだな」

言った後、オーガスタスはどこからか声を聞きとったように頷き、言い足す。
「…ディアヴォロスが。
面倒見るそうだ。
多分内部隊の配属を予定してる」



そして顔を上げ、真っ直ぐレスルの部下を見つめて言う。

「ハッキリ言って、給料はかなりいい」

部下は笑って頷き、尋ねる。
「他には?」

暫く。
オーガスタスは聞こえぬ声に聞き耳立て、その後言った。
「…もしそれでもラデュークが。
首を縦に振らなければ…。
現在支払われてる大公家の、10倍以上の給料を支払うと。
そう伝えてくれ。
だそうだ。
それで…以上だ」

「では、退出しても?」

レスルの使者に、親指で背後の扉を指され、オーガスタスは頷く。

「では」
レスルの使者は、帽子に手をやり軽く会釈して、左将軍執務室を後にした。

扉が閉まると、オーガスタスはぼやく。

「10倍の給料って…。
大公家の今現在支払ってる給料、そんなに安いのか?」

が。
頭の中でディアヴォロスとの通訳してたワーキュラスは
“ラデュークに会った時。
暇があるようなら、直接彼に聞け”

と言って気配を消し去るので。
オーガスタスはぷんぷん怒って、内心呟いた。

「(一方的に、言うだけ言って説明ナシか!
俺の意思なんて関係無く、俺に跨がって勝手に欲望果たした、スベタなオンナくらい、タチが悪いぞ!!!)」

けれど消えたはずのワーキュラスはその言葉を、ディアヴォロスに伝えたらしく。

暫くしてディアヴォロスの、くすくす笑いだけが頭の中に響き。
オーガスタスはげんなりした。

「…迂闊に、内心の悪態もつけないんだな?
ワーキュラス相手だと」

頭の中で笑ってるディアヴォロスが、言った気がした。

“教訓として、覚えておくんだな”

オーガスタスは、がっくり首を下げて、項垂れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)
BL
たとえ、君が覚えていなくても。たとえ、僕がすべてを忘れてしまっても。それでもまた、君に会いに行こう。きっと、きっと…… 帯刀を許された武士である弥生は宴の席で美しい面差しを持ちながら人形のようである〝ゆきや〟に出会い、彼を自分の屋敷へ引き取った。 生きる事、愛されること、あらゆる感情を教え込んだ時、雪也は弥生の屋敷から出て小さな庵に住まうことになる。 そこに集まったのは、雪也と同じ人の愛情に餓えた者たちだった。 そして彼らを見守る弥生たちにも、時代の変化は襲い掛かり……。 もう一度会いに行こう。時を超え、時代を超えて。 「男子大学生たちの愉快なルームシェア」に出てくる彼らの過去のお話です。詳しくはタグをご覧くださいませ!

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

僕がサポーターになった理由

弥生 桜香
BL
この世界には能力というものが存在する 生きている人全員に何らかの力がある 「光」「闇」「火」「水」「地」「木」「風」「雷」「氷」などの能力(ちから) でも、そんな能力にあふれる世界なのに僕ーー空野紫織(そらの しおり)は無属性だった だけど、僕には支えがあった そして、その支えによって、僕は彼を支えるサポーターを目指す 僕は弱い 弱いからこそ、ある力だけを駆使して僕は彼を支えたい だから、頑張ろうと思う…… って、えっ?何でこんな事になる訳???? ちょっと、どういう事っ! 嘘だろうっ! 幕開けは高校生入学か幼き頃か それとも前世か 僕自身も知らない、思いもよらない物語が始まった

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

徒花伐採 ~巻き戻りΩ、二度目の人生は復讐から始めます~

めがねあざらし
BL
【🕊更新予定/毎日更新(夜21〜22時)】 ※投稿時間は多少前後する場合があります 火刑台の上で、すべてを失った。 愛も、家も、生まれてくるはずだった命さえも。 王太子の婚約者として生きたセラは、裏切りと冤罪の果てに炎へと沈んだΩ。 だが――目を覚ましたとき、時間は巻き戻っていた。 この世界はもう信じない。 この命は、復讐のために使う。 かつて愛した男を自らの手で裁き、滅んだ家を取り戻す。 裏切りの王太子、歪んだ愛、運命を覆す巻き戻りΩ。 “今度こそ、誰も信じない。  ただ、すべてを終わらせるために。”

後宮に咲く美しき寵后

不来方しい
BL
フィリの故郷であるルロ国では、真っ白な肌に金色の髪を持つ人間は魔女の生まれ変わりだと伝えられていた。生まれた者は民衆の前で焚刑に処し、こうして人々の安心を得る一方、犠牲を当たり前のように受け入れている国だった。 フィリもまた雪のような肌と金髪を持って生まれ、来るべきときに備え、地下の部屋で閉じ込められて生活をしていた。第四王子として生まれても、処刑への道は免れられなかった。 そんなフィリの元に、縁談の話が舞い込んでくる。 縁談の相手はファルーハ王国の第三王子であるヴァシリス。顔も名前も知らない王子との結婚の話は、同性婚に偏見があるルロ国にとって、フィリはさらに肩身の狭い思いをする。 ファルーハ王国は砂漠地帯にある王国であり、雪国であるルロ国とは真逆だ。縁談などフィリ信じず、ついにそのときが来たと諦めの境地に至った。 情報がほとんどないファルーハ王国へ向かうと、国を上げて祝福する民衆に触れ、処刑場へ向かうものだとばかり思っていたフィリは困惑する。 狼狽するフィリの元へ現れたのは、浅黒い肌と黒髪、サファイア色の瞳を持つヴァシリスだった。彼はまだ成人にはあと二年早い子供であり、未成年と婚姻の儀を行うのかと不意を突かれた。 縁談の持ち込みから婚儀までが早く、しかも相手は未成年。そこには第二王子であるジャミルの思惑が隠されていて──。

処理中です...