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10 逆転する明暗
オーガスタスに説得され、ローランデに嫌われたくなくて珍しく我慢するギュンター
しおりを挟むギュンターがオーガスタスの住居、左将軍補佐邸に辿り着く。
ディンダーデンは既に軍務を終え、入れ替わりにサスベスの、元へ走ったと聞かされ、椅子にへたり込む。
「その様子だと、首尾を聞くまでも無いな?」
オーガスタスに、酒の入ったグラスを差し出され、ギュンターは一気に煽って呟く。
「俺の偽葬式の心配は、もうしなくていい」
オーガスタスは、大きく頷いた。
「で。
どーーーして。
ローランデの元へ、直行。
がマズいんだ?」
オーガスタスはギュンターの問いに、呆れた。
「お前、ローランデの気持ちって、考えた事あるのか?
お前の身を大層心配してるのに。
いきなり襲って、挿入?
…それで、どーーーしてローランデに愛して貰えると思ってるのか、謎だ」
ギュンターは項垂れたまま、空のグラスを揺らす。
「…ローフィスは?」
「あいつは隊長だ。
軍務会議で忙しい。
ついでに副長のディングレーは、ローフィスを下賤線の身分の若造隊長と。
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「…絶対、ディングレーはローフィスに惚れてる。
ローフィスに“気持ち悪い!”
と見捨てられるのが怖くて、言えないだけで」
オーガスタスは、ギュンターのその言葉に呆れた。
「……俺と、見解が違うな。
ディングレーは実兄がアホで非情だから。
愛せる兄貴像、そのもののローフィスに、惚れ込んでるだけで。
どう見ても、兄貴として愛してる」
ギュンターは、目線だけ上げた。
「…つまり二人も兄貴の居る、俺の見解は、間違ってると?!」
「だってお前んとこの兄貴、普通じゃないし」
オーガスタスの呟きに、ギュンターは思い切り、ため息を吐き出した。
「やっぱり…隙さえあれば、殴りかかったり斬りかかってきたりする兄貴って…ウチだけか…。
ディンダーデンとこの兄貴ですら、ディンダーデンがどれだけ挑発しても、弟には手を上げない、意気地なしだと言っていた」
オーガスタスは、くすくす笑う。
「ディンダーデンからしたら、意気地なしだろうが。
根性は、半端なくあると思うぞ?
あの、ディンダーデンの、兄貴やってるんだからな」
「違いない」
ギュンターの同意に、オーガスタスは空のグラスに二盃目を注ぎ込み、言った。
「どーせ、丸一日コマした頭領が、ローランデだったら…。
とか、儚い幻想を抱き、焦ってローランデの元へ、行こうとしたんだろう?
落ち着け。
そしてちゃんと、ローランデと話してから…口説け」
ギュンターはオーガスタスの、その意見に目線を上げる。
自分からしたら確かに。
一緒に育った兄貴達より、オーガスタスが実の兄貴だったら、どれ程いいか。
そう、思える男。
ギュンターはまた、一つため息を吐いて、酒の入ったグラスを傾け、尋ねた。
「で?
今夜行ったら、怒られるかな?
…明日の朝早くとか?」
「お前、俺の言った事、全然聞いてないな?」
ギュンターは、オーガスタスを見上げ、問うた。
「…じゃ、明日の昼」
「まだ早い」
「明後日?!
まさかだろう?!!!!」
「お前、夜中にお前の心配して、わざわざ来てくれたローランデを、いきなり寝室に連れ込んで。
隣に俺達がいるのも構わず、犯しまくったんだぞ?!」
「大袈裟だ。
たったの一回しか、挿入してない」
「たったの一回だろうが。
その一回で、ローランデにどれ程恥かかせたか。
分かってないだろう?お前。
持たないお前と違って。
ディングレーやローランデみたいな身分高い男は。
世間体が、大事なんだ!
貧民根性じゃ無く、プライドも高い。
そのプライドへし折っといて。
傷の上塗り、する気なのか?!
毎度ローランデの異論を、寝技でねじ伏せてると。
その内、絶対言われるぞ?」
「何を」
「“顔も見たくないほど、嫌いだ!”」
ギュンターは、一気にオーガスタスから顔を背け、目線を下げた。
結局ギュンターは三日の間、オーガスタスのセリフがローランデの口から出る悪夢に悩まされ…訪問を、見送り続けた。
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