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第2章
第一王子である私の話 ⑥
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閉会式が終わり、急いで貴賓室へ行くとイクはまだスカート姿で居た。
「何があったんですか?」
「じ…じつは…」
イクが言うには表彰式の直前、ルネが盛大に排泄してオムツから溢れ、スラックスと靴が汚れてしまったそうだ。子供たちの着がえは用意してあったが大人の分まで用意がなく、小柄なイクでは誰かのを借りる事も出来なくて急遽スカーフで脚を隠した、と。
「眼福でしたぁ!!」
「そんなに見えてないでしょ!?」
母上の縁者としてここへも入れるバスが付いて来ていて、大声で言うからイクが慌てて訂正する。
「ふくらはぎから続くきゅっとくびれた細い足首が白く眩しく…」
ゴン!
「づぁああああ~~~~~!!」
「止めろ馬鹿者。イクに劣情を抱けば侯爵に呪われるぞ」
母上のげんこつに悶絶するバス。
『侯爵に呪われる』は現実味があり過ぎる…。
校長と理事長は口を挟めず顔を引き攣らせて固まっている。
この日はそのまま全員が構内と寮内を見学して行ったので、それはもう大騒ぎになった。イクは侍従が大急ぎで用意した服に着替えたのでもうスカートではないのだが、理事長の説明に笑顔で頷き、目が合った野次馬にも笑顔を見せるものだからファンが増えて行く。
「これで侯爵もイクを見て勃っただけで呪うような事はできないだろ」
優勝者を守るための母上の優しさ(?)だったのか。だがこちらは笑顔に魅了されているだけだと思うが…
見学の間中、私に甘えて抱っこをねだったアリョはバスが抱っこしてやると言っても拒否し、私から離れようとしなかった。帰る頃には腕の中で寝息を立てている。
名残惜しく思いつつ、泣かれずに済んでホッとしながら乳母に渡した。
「ディートリント殿下、よろしいですか?」
剣術大会優勝者であるエックベルトが声をかけて来た。
「校内では敬称不要ですよ、エックベルト先輩」
「ありがとう、ではディート。頼みがある。友人にしてくれ」
イク目当てが分かり易すぎていっそ清々しい。
「私と友人になったからと言ってイクに会える訳ではありませんよ」
「それでも!少しでも可能性が増えるなら!」
「否定もしないんですね」
「正直な気持ちだ!」
「どうなれば友人なのか分かりかねますが、あなたを拒否はしません。ただし、イクに不埒な真似をするならば私も容赦しません。せいぜいエーレンフェルス侯爵に呪われないよう、ご注意下さい」
「分かった!」
本当に分かっているとは思えないが…
その後、生徒達の嘆願署名が功を奏し、弁論大会や研究発表会の度にイクが来るようになった。母上は出番が減って楽になったと歓迎しながら面白がっている様に見える。若い学生達が憧れの君に熱を上げる甘酸っぱさが堪らん、とは全く理解できない。
年を重ねれば理解できるようになるのだろうか?
3年、4年の中には既に孕体となった者も居て、そう言う者達は寄宿舎別館、通称「花園」に移される。孕体同士でも性行為をすれば子供が出来てしまうので監視が厳しくなるらしい。そこへイクが遊びに行くと言う。
遊びに…?
茶会と称して話を聞きたいとの事だが、母上が同行しないと聞いて少々不安になる。母上は結婚直前まで非孕体だったので「花園」で学生相手に欲情したら困るから、だそうだが、息子に何を打ち明けているのか。学生時代、孕体に大人気だったらしいので、立ち入り禁止だ。
「あろ いいこ しゅる。でぃ、おねまい しましゅ」
何故ここにアリョが?
「ディート様、孕体の子達とのお茶会で少し性的な話も出るらしいのでアリョを預かってもらえますか?」
申し訳なさそうに言うイクに快く承諾してアリョを抱き上げる。
部屋には何もないから庭を散歩でもしていようか。
「おっ、ディート!その子は誰だ?…いっ、イク様!!」
エックベルト先輩が話しかけて来た。
「あぁ、剣術大会の優勝者ですね。こんにちは」
「覚えて下さっているのですか!?光栄です!!」
「ふふふ…そんなに堅くならないで下さい。ディートとは知り合いですか?」
「はい!友人であります!!」
「ありがとうございます。ディートをよろしく…あ、今日はうちのアリョも良かったら遊んで下さい。」
「はっ、はい!」
去って行くイクを見送るエックベルトは完全なふぬけだ。
「エックベルト先輩、イクの第2子のアリョーシャです」
「おぉ!可愛いな」
「………」
「アリョ?ご挨拶は?」
「…あろ でしゅ。え…えぐ…べ?」
「エックベルトです。ベルでもルトでもお好きに」
べる、うと…べるの方が発音しやすいようだった。
「べる おねまい しましゅ」
「こんなに小さいのに、良い子だな~!!」
先輩の褒め方が気に入ったのかバスよりは気を許しているように見えた。
庭に散歩に行くと言うと先輩が何やら部屋に取りに行きたいと言うので玄関で待って居るとバスが来た。
「お!アリョが居るって事はイク様もいるのか?」
イクは「花園」だと言うとなんだぁ、とあからさまにがっかりする。でもアリョを迎えに来る事を期待して一緒に居ると言う。アリョさえ良ければ構わないが。
「何があったんですか?」
「じ…じつは…」
イクが言うには表彰式の直前、ルネが盛大に排泄してオムツから溢れ、スラックスと靴が汚れてしまったそうだ。子供たちの着がえは用意してあったが大人の分まで用意がなく、小柄なイクでは誰かのを借りる事も出来なくて急遽スカーフで脚を隠した、と。
「眼福でしたぁ!!」
「そんなに見えてないでしょ!?」
母上の縁者としてここへも入れるバスが付いて来ていて、大声で言うからイクが慌てて訂正する。
「ふくらはぎから続くきゅっとくびれた細い足首が白く眩しく…」
ゴン!
「づぁああああ~~~~~!!」
「止めろ馬鹿者。イクに劣情を抱けば侯爵に呪われるぞ」
母上のげんこつに悶絶するバス。
『侯爵に呪われる』は現実味があり過ぎる…。
校長と理事長は口を挟めず顔を引き攣らせて固まっている。
この日はそのまま全員が構内と寮内を見学して行ったので、それはもう大騒ぎになった。イクは侍従が大急ぎで用意した服に着替えたのでもうスカートではないのだが、理事長の説明に笑顔で頷き、目が合った野次馬にも笑顔を見せるものだからファンが増えて行く。
「これで侯爵もイクを見て勃っただけで呪うような事はできないだろ」
優勝者を守るための母上の優しさ(?)だったのか。だがこちらは笑顔に魅了されているだけだと思うが…
見学の間中、私に甘えて抱っこをねだったアリョはバスが抱っこしてやると言っても拒否し、私から離れようとしなかった。帰る頃には腕の中で寝息を立てている。
名残惜しく思いつつ、泣かれずに済んでホッとしながら乳母に渡した。
「ディートリント殿下、よろしいですか?」
剣術大会優勝者であるエックベルトが声をかけて来た。
「校内では敬称不要ですよ、エックベルト先輩」
「ありがとう、ではディート。頼みがある。友人にしてくれ」
イク目当てが分かり易すぎていっそ清々しい。
「私と友人になったからと言ってイクに会える訳ではありませんよ」
「それでも!少しでも可能性が増えるなら!」
「否定もしないんですね」
「正直な気持ちだ!」
「どうなれば友人なのか分かりかねますが、あなたを拒否はしません。ただし、イクに不埒な真似をするならば私も容赦しません。せいぜいエーレンフェルス侯爵に呪われないよう、ご注意下さい」
「分かった!」
本当に分かっているとは思えないが…
その後、生徒達の嘆願署名が功を奏し、弁論大会や研究発表会の度にイクが来るようになった。母上は出番が減って楽になったと歓迎しながら面白がっている様に見える。若い学生達が憧れの君に熱を上げる甘酸っぱさが堪らん、とは全く理解できない。
年を重ねれば理解できるようになるのだろうか?
3年、4年の中には既に孕体となった者も居て、そう言う者達は寄宿舎別館、通称「花園」に移される。孕体同士でも性行為をすれば子供が出来てしまうので監視が厳しくなるらしい。そこへイクが遊びに行くと言う。
遊びに…?
茶会と称して話を聞きたいとの事だが、母上が同行しないと聞いて少々不安になる。母上は結婚直前まで非孕体だったので「花園」で学生相手に欲情したら困るから、だそうだが、息子に何を打ち明けているのか。学生時代、孕体に大人気だったらしいので、立ち入り禁止だ。
「あろ いいこ しゅる。でぃ、おねまい しましゅ」
何故ここにアリョが?
「ディート様、孕体の子達とのお茶会で少し性的な話も出るらしいのでアリョを預かってもらえますか?」
申し訳なさそうに言うイクに快く承諾してアリョを抱き上げる。
部屋には何もないから庭を散歩でもしていようか。
「おっ、ディート!その子は誰だ?…いっ、イク様!!」
エックベルト先輩が話しかけて来た。
「あぁ、剣術大会の優勝者ですね。こんにちは」
「覚えて下さっているのですか!?光栄です!!」
「ふふふ…そんなに堅くならないで下さい。ディートとは知り合いですか?」
「はい!友人であります!!」
「ありがとうございます。ディートをよろしく…あ、今日はうちのアリョも良かったら遊んで下さい。」
「はっ、はい!」
去って行くイクを見送るエックベルトは完全なふぬけだ。
「エックベルト先輩、イクの第2子のアリョーシャです」
「おぉ!可愛いな」
「………」
「アリョ?ご挨拶は?」
「…あろ でしゅ。え…えぐ…べ?」
「エックベルトです。ベルでもルトでもお好きに」
べる、うと…べるの方が発音しやすいようだった。
「べる おねまい しましゅ」
「こんなに小さいのに、良い子だな~!!」
先輩の褒め方が気に入ったのかバスよりは気を許しているように見えた。
庭に散歩に行くと言うと先輩が何やら部屋に取りに行きたいと言うので玄関で待って居るとバスが来た。
「お!アリョが居るって事はイク様もいるのか?」
イクは「花園」だと言うとなんだぁ、とあからさまにがっかりする。でもアリョを迎えに来る事を期待して一緒に居ると言う。アリョさえ良ければ構わないが。
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