可愛がって下さい。

香月ミツほ

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5 体験入店してみます。

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この世界に来て2週間が経った。
ぼくは今、スカウトされている。

夜の蝶を束ねるこの人は狐の獣人のタッツィーネさん。キャバクラと娼館とバーと宿屋と、つまりそっち関係を手広く商売にしている人。そんな人がぼくの噂を聞きつけて自らスカウトにやって来た。

「ぼく、娼館は絶対無理です。他のお店だってどうしたら良いか分かりませんし、今のお店が大好きなので他に行くなんて考えられません。」

営業前のマスターのお店の中で狐さんの話を聞いている。ぼくの保護者的立場のマスターが側に居てくれるのが心強い。

「お給料はここの3倍、いえ、5倍にはなるわよ!」

間に合ってます。
みんなの家に転がり込んでるし食事はここのお客さんが分けてくれるし、服もこだわりがないからそんなに要らないし。

「獣人がほとんど居ない所から来たんでしょ?うちのお店なら色んな獣人が来るわ。触って欲しくて来る人もたくさんいるから、耳や尻尾触りまくれるわよ?」

ぐぅっ!!
なんでぼくがそこを触りたがってるなんて分かるの!?このお店の唯一の不満は常連さんばかりだから迂闊にお触りできない事だ。性感帯だと言うもふもふのケモ耳や尻尾を触ったら、それこそ商売替えした事になってしまう。

「ね、まずはお客さんとして来てみない?見学って事でタダで良いから!お友達も少しなら連れて来て良いわよ!」

見に行くだけ?
行く!行きたい!!

ぼくの気持ちを察してマスターがヤマネとメルを連れて行け、って言った。



タッツィーネさんのお店に行くと、ボックス型の席がたくさんある大きな店だった。この町って割と大きな町だったのかな?マスターのお店とは反対方向にあるのでこの辺は全く来たことがなかった。

「いらっしゃい! どんな獣人が見たい?近くに座らせてあげるわよ。」

ヤマネさん達が緊張感丸出しだけど、大丈夫かな?どう言う緊張なんだろう?

「山猫さんとタヌキさんとイタチさんしか知らないので、それ以外の方が居たらお願いします!」

席に案内されて座ると、ウサギ獣人のラブさんと犬の獣人のハニーさんが来た。この2人はお店の人なので同じデザインの制服を着ている。ミニ浴衣風で袖は腕の付け根から手首に向かって広がっている。2人はヤマネさんとメルさんにしなだれかかって嬉しそうに接客をする。ぼくは放置?

「あなたは見習いだから私たちがお客さんに何をするのか見せるように、って店主に言われてるの。」

まだ見習いにもなってませんが?

「ダメ! ミッツにこのお店は向かないよ!」

メルさんが犬の獣人さんを押しのけて言う。恋人なの?って聞かれたけどどう答えたら良いんだろう…

ラブさんとハニーさんに耳や尻尾のお触りについて聞く。結構な確率で触られたがるらしい。いちゃいちゃするのが目的だから当たり前だけど、ここではお触り以上の事は禁止だって。それ以上の事がしたいなら本人の意思確認を店主がして、2階の部屋に行くそうだ。無理やりじゃないか、飲み過ぎておかしくなってないか。タッツィーネさんが店の人達を大切にしている事がうかがえる。

あ、ヤギの獣人さんだ。
隣のボックス席に来たヤギの獣人さん。角がある!確かに耳を触らせてうっとりしている。ちょっと羨ましい。

ヤマネさんもメルさんもかっこいいからラブさんもハニーさんも仕事を超えてメロメロだ。飲み物と食べ物が運ばれて来たけど、正直マスターの方が料理が美味しい。

でもウサ耳も犬耳も可愛くて触らせてもらったら2人ともヤマネさんとメルさんにしがみついて喘いで身を震わせた。

…?

感じやすいのかな?隣のヤギさんも驚いた顔で真っ赤になってる。

「ちょっと! 何をしたの!?」

タッツィーネさんが飛んで来た。
責めるような口調に慌てて口ごもるぼくのした事を、ぐったりとした2人が身を起こして説明してくれた。

「耳を触っただけ、ですって…?」

信じられないでいる店主さんに試してみろとヤマネさんが言う。

席を移動して狐耳を触らせてもらった。
ふかふかの耳毛をそろりと触り、ゆっくりと耳の付け根に指を近づける。指先で優しくつまんでやわやわと揉むとタッツィーネさんは「んんっ…」と堪え切れない小さな喘ぎ声を漏らした。

気持ちいいんだ…と思うと愛おしくって耳を撫でまくる。そして調子に乗ってしっぽも撫でると

「ふっ、あぁ…あっ、あっ…、はぁぁぁん!!」

身を強張らせた後、がっくりと弛緩する狐さんは緑色の瞳を潤ませて壮絶な色香を放っている。

「こんな事って…」

こう言う仕事をしていたら百戦錬磨だろうに耳としっぽを触られただけでイくとか、可愛すぎる。耳としっぽの性感すごすぎぃ!

「やっぱり…ミッツの手が特別なんだ!」

メルさんの感想にヤマネさんが力強く頷く。ぼくが特別なの?

隣のヤギさんがこっちを気にしてたけとど、隣の人が腕にすり寄って浮気しちゃダメ、って感じで甘えて注意を引き戻してた。

「この子、絶対うちに欲しいけど取り扱いに注意しないと危険だわ!」

ラブ&ハニーさんが着替えに行った。
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