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日常
第四話
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桃をいつものように生活指導室へ連行する。
個室に分かれている一室に桃を入れ、反省文を書かせる。
桃が座っている向かいの椅子に保は監視のため腰かける。
(昔はこんなじゃなかったよな…)
保の知っている荒れていない桃は、中学の頃までだった。
荒れ始めたのは、高校入学してからだろうか。
社交界で聞いた噂によると、桃はオメガ判定だったらしい。
桜井家に限らず華族は代々アルファ家系が多く、オメガが生まれることはほとんどなかった。
きっと家の中での桃の居場所がなくて、誰にも頼れないのだ。
オメガというだけで社会的地位がないに等しいのに、元華族家系ということも相まって、家の中での立場的にも辛いのだろう。
しかも、桜井家は最近家業がうまくいっておらず、業績不振が続いているそうだ。
桜井家としては、桃が十六になったらすぐにでも結婚させて、相手の家から融資してもらおうと思っているらしい。
社交界では誰が桃を貰うかという話で持ち切りである。
桃は物ではない。まるで物の売買ではないか。あまりにもひどすぎる話だった。
「おい、久世。終わった」
保がボーっと昔を思い出している間に桃は反省文を書き終えていた。
「確かに書き終えているな。これが嫌なら制服くらいちゃんと着ろ」
「あたしなりにちゃんと着てるっつーの。もう教室戻る」
「おい、待て。まだ話が…」
話の途中にもかかわらず、桃は生活指導室から退室してしまった。
いつもそうだ。
桃は保のことを嫌っている。
見つけるたびに服装についてばかり叱責しているから。
校門で、移動教室中の廊下で、授業をサボっていた屋上で…。
校内で会わなかった所はないのではないか。
他の先生からは何も言われない。いつもうるさく言ってくるのは保だけだった。
今日もいつものように桃を探して校内を歩いていると、屋上で見つけた。
今は授業中である。
それなのに、屋上にいるということは、サボリだ。
「おい、桜井」
「げっ…久世…」
「今授業中だろ?」
「授業つまんないからここで昼寝してる」
「学生の本分は学業だろ」
「別に来たくて来てるわけじゃない」
「親御さんに学費払ってもらってる立場なんだからちゃんと授業くらい出ろ」
「うるさいなっ!」
「怒るなよ」
「親のことなんて関係ないだろっ!」
「未成年なんだから仕方ないだろ」
「そうやって大人はすぐ子供扱いする」
「実際桜井は子供だしな」
「マジで久世ウザい」
「桜井に嫌われてるのは知ってるさ」
「じゃぁ構うなよっ!」
「構うさ」
「何でだよ?」
「桜井が俺の言うこと聞かないから」
「本当にマジでそういうのウザいから」
桃は怒ってどこかに行ってしまった。
保が口うるさく桃の服装について言っているのは、桃が魅力的すぎるからだ。
男子生徒が桃を性的対象として見ていることは一目瞭然だった。
短いスカート、派手なピアス、明るい色の茶髪。
男子生徒でなくても目を引く。教師の間でも桃を性的対象として見ている奴もいると聞く。
それだけ、目立っているから、少しでも肌を隠してもらいたかった。
オメガだから、いつ来るか分からない発情期。
学校で発情期が来たら、どこにいるか分からないからすぐに助けられるか分からない。
だから、なるべく目立たないように大人しくしててもらいたいのが保の本音であった。
一応、保健室には桃が通院している病院から処方されているのと同じ抑制剤を常備している。
保自身も常に持ち歩いている。保健室以外で桃の発情期に対応できるようにである。
個室に分かれている一室に桃を入れ、反省文を書かせる。
桃が座っている向かいの椅子に保は監視のため腰かける。
(昔はこんなじゃなかったよな…)
保の知っている荒れていない桃は、中学の頃までだった。
荒れ始めたのは、高校入学してからだろうか。
社交界で聞いた噂によると、桃はオメガ判定だったらしい。
桜井家に限らず華族は代々アルファ家系が多く、オメガが生まれることはほとんどなかった。
きっと家の中での桃の居場所がなくて、誰にも頼れないのだ。
オメガというだけで社会的地位がないに等しいのに、元華族家系ということも相まって、家の中での立場的にも辛いのだろう。
しかも、桜井家は最近家業がうまくいっておらず、業績不振が続いているそうだ。
桜井家としては、桃が十六になったらすぐにでも結婚させて、相手の家から融資してもらおうと思っているらしい。
社交界では誰が桃を貰うかという話で持ち切りである。
桃は物ではない。まるで物の売買ではないか。あまりにもひどすぎる話だった。
「おい、久世。終わった」
保がボーっと昔を思い出している間に桃は反省文を書き終えていた。
「確かに書き終えているな。これが嫌なら制服くらいちゃんと着ろ」
「あたしなりにちゃんと着てるっつーの。もう教室戻る」
「おい、待て。まだ話が…」
話の途中にもかかわらず、桃は生活指導室から退室してしまった。
いつもそうだ。
桃は保のことを嫌っている。
見つけるたびに服装についてばかり叱責しているから。
校門で、移動教室中の廊下で、授業をサボっていた屋上で…。
校内で会わなかった所はないのではないか。
他の先生からは何も言われない。いつもうるさく言ってくるのは保だけだった。
今日もいつものように桃を探して校内を歩いていると、屋上で見つけた。
今は授業中である。
それなのに、屋上にいるということは、サボリだ。
「おい、桜井」
「げっ…久世…」
「今授業中だろ?」
「授業つまんないからここで昼寝してる」
「学生の本分は学業だろ」
「別に来たくて来てるわけじゃない」
「親御さんに学費払ってもらってる立場なんだからちゃんと授業くらい出ろ」
「うるさいなっ!」
「怒るなよ」
「親のことなんて関係ないだろっ!」
「未成年なんだから仕方ないだろ」
「そうやって大人はすぐ子供扱いする」
「実際桜井は子供だしな」
「マジで久世ウザい」
「桜井に嫌われてるのは知ってるさ」
「じゃぁ構うなよっ!」
「構うさ」
「何でだよ?」
「桜井が俺の言うこと聞かないから」
「本当にマジでそういうのウザいから」
桃は怒ってどこかに行ってしまった。
保が口うるさく桃の服装について言っているのは、桃が魅力的すぎるからだ。
男子生徒が桃を性的対象として見ていることは一目瞭然だった。
短いスカート、派手なピアス、明るい色の茶髪。
男子生徒でなくても目を引く。教師の間でも桃を性的対象として見ている奴もいると聞く。
それだけ、目立っているから、少しでも肌を隠してもらいたかった。
オメガだから、いつ来るか分からない発情期。
学校で発情期が来たら、どこにいるか分からないからすぐに助けられるか分からない。
だから、なるべく目立たないように大人しくしててもらいたいのが保の本音であった。
一応、保健室には桃が通院している病院から処方されているのと同じ抑制剤を常備している。
保自身も常に持ち歩いている。保健室以外で桃の発情期に対応できるようにである。
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