いばら姫

伊崎夢玖

文字の大きさ
31 / 57
自殺未遂

第二十八話

しおりを挟む
二年に上がってすぐに同級生に襲われたこと。
それによって、妊娠・中絶したこと。
停学処分のこと。
文化祭で元同級生にまた襲われそうになったこと。
修学旅行で引率教師に襲われそうになったこと。
それぞれが少しずつ桃の心を傷つけていた。

「だからね、あたしの体汚いんだよ。両親もあたしがいない方がいいに決まってる」
「誰がそんなこと決めた?」
「……………………………」
「お前がいなくなって悲しむ人もいる。お前の体は汚くなんかない」
「誰の子か分からない子を妊娠したのに?」
「あぁ」
「色んな人に襲われたのに?」
「あぁ」
「本当に汚くなんかないの?」
「汚くなんかない。俺が保証する」
「……………………………」
桃の目から大粒の涙がボロボロと流れ始めた。
「ずっと怖かった。汚いって誰かに言われると思ってた」
「そんなこと言う奴はいねぇよ」
「分かんないじゃん。影で言ってるかもしれないじゃん」
「そんなこと言う奴は俺がぶっ飛ばす」
「それ、洒落になってないよ?」
「洒落じゃねぇよ」
「目がマジだよ?」
「マジもマジ。大マジだからな」
「…………ふふ」
桃は久々に笑った。
「もうこんな馬鹿な真似はしないな?」
「うん」
「約束だぞ?」
「うん。あたしと久世の約束」
「ちょっと電話してくるから休んでろ」
「うん」
保が病室から出ようとした時、桃が不意に呼び止めた。
「久世…………」
「ん?」
「起きた時側にいてくれて、ありがと…………」
それだけ言うと桃は布団をかぶってしまった。
布団からはみ出している耳が真っ赤だ。
そんな姿を見た保も顔が熱くなってくるのを感じる。
「大人しく寝とけ」
(きっと今の顔は誰にも見せられるもんじゃねぇ…)
その時の保の顔も桃に負けないくらい真っ赤であった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

義兄様と庭の秘密

結城鹿島
恋愛
もうすぐ親の決めた相手と結婚しなければならない千代子。けれど、心を占めるのは美しい義理の兄のこと。ある日、「いっそ、どこかへ逃げてしまいたい……」と零した千代子に対し、返ってきた言葉は「……そうしたいなら、そうする?」だった。

サトシ先生は美しき十代の乙女に手を出さない

白神ブナ
恋愛
高校一年一学期から三年三学期まで続く長編です。気になるサブタイトルを見つけて途中からでもお楽しみいただけます。 女子校あるあると、先生あるある、受験あるあるを描く学園恋愛ドラマ。 佐藤サトシは30歳の独身高校教師。 一度は公立高校の教師だったが心が折れて転職し、私立白金女子学園にやって来た。 一年A組の受け持つことになったサトシ先生。 その中の一人、桜井美柑はガチでサトシ先生に恋してしまった。 サトシ先生は、桜井美柑という生徒の存在を意識してしまいつつ、あくまで職務に忠実であろうと必死に適度な距離を保とうとするが……

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

処理中です...