いばら姫

伊崎夢玖

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自殺未遂

第二十七話

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保が目を覚ましたのは桃が倒れて三日目の昼だった。
桃はまだ眠ったままだった。
ベッドから起き上がり桃を見ると、少し血色がよくなったように見える。
青白い顔ではなくなった。
『目が覚めたんですね。おはようございます』
夜の看護師だった。
「おはようございます。昨夜はありがとうございました」
『もう無理しないでくださいね?』
「すみません。ちゃんと休みます」
『そうしてください』
定期の見回りの時間だったようで、桃の様子を確認すると、看護師は出て行った。
寝て少し頭も冴えてきた。
ちゃんと寝てないと、桃が起きた時に立ち会えない。
「早く起きろよ」
桃の頬に触れる。
温かい。
あの冷たさがなくなった。
本当に峠を越えたようだ。
保は安心した。
その日も桃は起きることはなかった。

桃が倒れて四日目。
保は前日に昼間まで寝たせいで、夜寝られなかった。
ずっと桃の手を握って起きていた。
朝が来た。
朝日が桃の顔を照らす。
その時だった。
桃の眉間に皺が寄り、嫌がる素振りをした。
「桃っ!!」
保は叫んだ。
それに呼応するかのように、桃は薄っすらと目を開く。
「……久世?」
桃が起きた。
保はすぐナースコールをした。
担当医や看護師が駆け付け、桃の状態の確認をする。
『もう大丈夫ですね。もう少し検査のために入院してもらいますが』
(よかった……)
「ありがとうございました」
保は担当医や看護師に頭を下げた。
担当医や看護師は確認を終えると『お大事に』と言って病室を後にした。

「もしかしなくても、あたし倒れてた?」
「お前がコレやってから四日経った」
「そんなに寝てたんだ…」
「本当に心配したんだからな…」
「ごめんなさい」
「何でコレしたか聞いてもいいか?」
桃は少しずつ話し始めた。
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