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受験
第三十四話
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保の家で勉強会を開いてからというもの、桃は頻繁に保の元を訪れるようになった。
「先生、いる?」
「おう。どうした?」
「ここ、教えてほしいんだけど…」
「どれどれ…」
教科担当の教師の元へ行き教えてもらうより保に教えてもらう方が分かりやすく覚えられた。
実際保は教え上手だった。
いつの間にか桃は保健室へ通うようになった。
季節は巡り、十二月になった。
三年は自由登校になっていた。
だけど桃は毎日学校に通っていた。
保健室の隣が空き教室になっていたので、そこで毎日勉強していた。
各教室に冷暖房完備なので、勉強する環境としては悪くない。
分からない所があると、保健室へ行き、保に教えてもらう。
そんな毎日を過ごす中で、ふと保は桃に聞いた。
「何で教育学部に進もうと思ったんだ?」
「何であたしが教育学部に進みたいってこと知ってるの?」
「前に模試の結果見せてもらった時に志望校の所見たからな」
「……あっ…」
「全部教育学部だったから教師になりたいのかと思っててな」
「そうだよ。先生みたいに生徒に寄り添った先生になりたいの」
「俺みたいな?」
「そう。襲われた時もあたしが馬鹿なことしちゃった時も先生は全力であたしに寄り添ってくれた。すごく嬉しかったから。だから先生になろうと思ったの」
「そっか…。桜井ならきっといい先生になるはずだな」
「そうかな?」
「あぁ。桜井は優しいからな」
「ありがとう。まずは大学に入る所で躓いたら全部白紙になっちゃうからがんばらないとだよね」
「そうだな。無茶だけはするなよ?」
「はぁーい」
桃は保に影響されて教師の道に進もうとした。
それが保にはこれ以上ないくらいに嬉しかった。
(俺を喜ばせてどうする気だ…)
桃がいなくなって一人になった保健室で顔を真っ赤にして呟く保がいた。
一月になると、センター試験がある。
桃は一月に入ってからはそこに向けて勉強をしていた。
保は桃の体調を管理しながらサポートしていた。
「体調の方は大丈夫か?もうすぐ本番だろ?」
「大丈夫だよ。毎日超元気っ!」
「それならいいんだ」
「ん?変なの…」
「あのさ、これやる…」
「何?……お守り?」
「あぁ。学業成就で有名な神社のお守りだ。初詣に行ったついでに買ってきた」
「わざわざありがとう」
「これ持ってれば俺が付いてるって思えて落ち着けるだろ?」
「すごい自信だね…」
「まぁな。俺も入試の時同じ神社の同じお守り持って臨んだら、トップ合格だったから」
「本当に!?それならご利益あるかもしれないね。ありがと」
「もう少しだから、がんばろうな」
「うん」
桃はそこから更に力を入れて勉強した。
センター初日の土曜の朝、桃のスマホからメールの受信の音が鳴った。
(何だろう?)
桃はスマホを手に取り、画面を見る。
保からだった。
『おはよう。いよいよセンターだな。緊張してると思うけど、お守りを持ってがんばれ』
短いメールだった。
だけど、桃にはこれ以上ないエールだった。
(ありがとう、先生。がんばってくる)
センターは順調に終わった。
月曜に三年の全クラスが登校し、自己採点することになっている。
桃も登校し、自己採点した。
今までの自己採点の中でも最高得点だった。
休み時間になり、保健室に走る。
「先生っ!」
「おう。今日は登校日だったか?」
「そう。自己採点の日だから」
「どうだった?」
「すごいよ!自己最高得点だった」
「やったな!おめでとう」
「ありがとう。でも次があるからまだまだ気が抜けない」
「そうだな。あとひと月ちょっとで二次試験だもんな」
「うん。それでね、先生にお願いがあるんだけど…」
「二次試験の勉強も見ろって?」
「うん…ダメかな?」
「構わないさ。いつでも来いよ」
「ありがとう。用事はそれだけだから、クラスに戻るね」
桃は嬉しそうな顔をしてクラスに戻って行った。
(少しはお守り効果があったようでよかった…)
それまで毎日センター対策で机にかじりついていた桃を息抜きに誘った。
「先生、いる?」
「おう。どうした?」
「ここ、教えてほしいんだけど…」
「どれどれ…」
教科担当の教師の元へ行き教えてもらうより保に教えてもらう方が分かりやすく覚えられた。
実際保は教え上手だった。
いつの間にか桃は保健室へ通うようになった。
季節は巡り、十二月になった。
三年は自由登校になっていた。
だけど桃は毎日学校に通っていた。
保健室の隣が空き教室になっていたので、そこで毎日勉強していた。
各教室に冷暖房完備なので、勉強する環境としては悪くない。
分からない所があると、保健室へ行き、保に教えてもらう。
そんな毎日を過ごす中で、ふと保は桃に聞いた。
「何で教育学部に進もうと思ったんだ?」
「何であたしが教育学部に進みたいってこと知ってるの?」
「前に模試の結果見せてもらった時に志望校の所見たからな」
「……あっ…」
「全部教育学部だったから教師になりたいのかと思っててな」
「そうだよ。先生みたいに生徒に寄り添った先生になりたいの」
「俺みたいな?」
「そう。襲われた時もあたしが馬鹿なことしちゃった時も先生は全力であたしに寄り添ってくれた。すごく嬉しかったから。だから先生になろうと思ったの」
「そっか…。桜井ならきっといい先生になるはずだな」
「そうかな?」
「あぁ。桜井は優しいからな」
「ありがとう。まずは大学に入る所で躓いたら全部白紙になっちゃうからがんばらないとだよね」
「そうだな。無茶だけはするなよ?」
「はぁーい」
桃は保に影響されて教師の道に進もうとした。
それが保にはこれ以上ないくらいに嬉しかった。
(俺を喜ばせてどうする気だ…)
桃がいなくなって一人になった保健室で顔を真っ赤にして呟く保がいた。
一月になると、センター試験がある。
桃は一月に入ってからはそこに向けて勉強をしていた。
保は桃の体調を管理しながらサポートしていた。
「体調の方は大丈夫か?もうすぐ本番だろ?」
「大丈夫だよ。毎日超元気っ!」
「それならいいんだ」
「ん?変なの…」
「あのさ、これやる…」
「何?……お守り?」
「あぁ。学業成就で有名な神社のお守りだ。初詣に行ったついでに買ってきた」
「わざわざありがとう」
「これ持ってれば俺が付いてるって思えて落ち着けるだろ?」
「すごい自信だね…」
「まぁな。俺も入試の時同じ神社の同じお守り持って臨んだら、トップ合格だったから」
「本当に!?それならご利益あるかもしれないね。ありがと」
「もう少しだから、がんばろうな」
「うん」
桃はそこから更に力を入れて勉強した。
センター初日の土曜の朝、桃のスマホからメールの受信の音が鳴った。
(何だろう?)
桃はスマホを手に取り、画面を見る。
保からだった。
『おはよう。いよいよセンターだな。緊張してると思うけど、お守りを持ってがんばれ』
短いメールだった。
だけど、桃にはこれ以上ないエールだった。
(ありがとう、先生。がんばってくる)
センターは順調に終わった。
月曜に三年の全クラスが登校し、自己採点することになっている。
桃も登校し、自己採点した。
今までの自己採点の中でも最高得点だった。
休み時間になり、保健室に走る。
「先生っ!」
「おう。今日は登校日だったか?」
「そう。自己採点の日だから」
「どうだった?」
「すごいよ!自己最高得点だった」
「やったな!おめでとう」
「ありがとう。でも次があるからまだまだ気が抜けない」
「そうだな。あとひと月ちょっとで二次試験だもんな」
「うん。それでね、先生にお願いがあるんだけど…」
「二次試験の勉強も見ろって?」
「うん…ダメかな?」
「構わないさ。いつでも来いよ」
「ありがとう。用事はそれだけだから、クラスに戻るね」
桃は嬉しそうな顔をしてクラスに戻って行った。
(少しはお守り効果があったようでよかった…)
それまで毎日センター対策で机にかじりついていた桃を息抜きに誘った。
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