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受験
第三十五話
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以前喜んでいた海に連れて行った。
「海だっ!」
「前に来た時も嬉しそうにしてたからな」
「ありがとう、先生」
「毎日勉強漬けだから今日だけは息抜きしても罰は当たらんさ」
「海風気持ちいい」
「寒いからこれ持っとけ」
保は車の中に入れておいた温かい紅茶を桃に渡した。
「ありがとう、先生」
「明日からまたがんばらなきゃいけないもんな」
「うん。がんばって二次試験も突破してみせるよ」
「微力ながら手伝わせてもらうさ」
「よろしくお願いします」
二人は顔を見合わせて笑った。
翌日から桃は保健室の隣の空き教室で二次試験対策の勉強を始めた。
分からない所は保に質問しながら。
二月に入り、桃は気負いすぎが原因で体調を崩した。
桃からメールが保のスマホに入った。
【体調崩して熱があるので、今日は学校行きません】
(やっぱりな…)
保はいつか桃が体調を崩すと思っていた。
それ程までに桃は気負いすぎていた。
見舞いをしに行くため、桜井家の執事に連絡を取る。
「久世です。桃さんが熱を出したと聞きまして、お見舞いに伺いたいのですが…」
『ありがとうございます。お待ちしております』
アポイントメントを取ると、保は街へ向かった。
前にテレビや雑誌で取り上げられていた有名な洋菓子店を訪れるためだ。
桃がちょうど店の前を車で通りかかった時食べてみたいと言っていたのを覚えていた。
(熱があるし、ケーキは胃に負担がかかるから、プリンかな…)
店の外にまで列が並んでおり、周りは若い女性の中、保は一人我慢して並んだ。
(桃のため…桃のため…桃のため…)
保にとっては拷問のような時間でも、桃の喜ぶ顔を見るために耐えた。
二十分程度並んだところで店内に入れた。
ショーケースの中にはいろんな菓子が置かれていた。
(とりあえず桃のためのプリンと、メイドや執事たちにも何か差し入れておくか…)
プリン五個とケーキを適当に二十個詰めてもらった。
そのあと有名フルーツパーラーに寄って、風邪の時でも食べられそうな果物をたくさん買い込んで桃の家に向かった。
門扉でインターホンを鳴らすと、執事が対応してくれた。
「先程電話をした久世です」
『お待ちしておりました。どうぞ中へお入りください』
敷地内に入り、エントランスに車を止めると、執事が待機していた。
『ようこそおいでくださいました、久世様』
「お邪魔します。これ、皆さんでどうぞ」
『わざわざありがとうございます』
「車、お願いします」
『畏まりました』
執事に車をお願いすると、保は桃のプリンが入った箱を片手に桃のいる離れへ行く。
離れの戸を引き、中へ入り、桃がいる部屋の襖をノックする。
「桜井、俺だ。久世だ。見舞いに来た」
「…………」
「勝手に入るぞ?」
「…………」
そっと襖を開けると、規則的な呼吸が聞こえた。
桃は寝ているようだった。
音を立てないように静かに部屋へ入る。
桃が起きた時に冷たいプリンを食べさせてやりたいので、勝手に冷蔵庫にプリンを入れさせてもらう。
冷蔵庫を開けた時、いろんな食材やら調味料が入っていた。
(本当に料理するんだな…)
冷蔵庫にプリンを入れ、桃の寝ているベッドの側へ行く。
(すげぇ女の子の部屋だな…しかもすげぇいい匂いする…)
部屋を見渡すと、ぬいぐるみやらメイク道具やら、年相応の女の子の部屋だった。
桃を見ると起きる気配がない。
桃を起こさないように額に触れる。
まだ少し熱いが、だいぶ落ち着いたのだろう。
しばらく桃の寝顔を眺めていた。
「海だっ!」
「前に来た時も嬉しそうにしてたからな」
「ありがとう、先生」
「毎日勉強漬けだから今日だけは息抜きしても罰は当たらんさ」
「海風気持ちいい」
「寒いからこれ持っとけ」
保は車の中に入れておいた温かい紅茶を桃に渡した。
「ありがとう、先生」
「明日からまたがんばらなきゃいけないもんな」
「うん。がんばって二次試験も突破してみせるよ」
「微力ながら手伝わせてもらうさ」
「よろしくお願いします」
二人は顔を見合わせて笑った。
翌日から桃は保健室の隣の空き教室で二次試験対策の勉強を始めた。
分からない所は保に質問しながら。
二月に入り、桃は気負いすぎが原因で体調を崩した。
桃からメールが保のスマホに入った。
【体調崩して熱があるので、今日は学校行きません】
(やっぱりな…)
保はいつか桃が体調を崩すと思っていた。
それ程までに桃は気負いすぎていた。
見舞いをしに行くため、桜井家の執事に連絡を取る。
「久世です。桃さんが熱を出したと聞きまして、お見舞いに伺いたいのですが…」
『ありがとうございます。お待ちしております』
アポイントメントを取ると、保は街へ向かった。
前にテレビや雑誌で取り上げられていた有名な洋菓子店を訪れるためだ。
桃がちょうど店の前を車で通りかかった時食べてみたいと言っていたのを覚えていた。
(熱があるし、ケーキは胃に負担がかかるから、プリンかな…)
店の外にまで列が並んでおり、周りは若い女性の中、保は一人我慢して並んだ。
(桃のため…桃のため…桃のため…)
保にとっては拷問のような時間でも、桃の喜ぶ顔を見るために耐えた。
二十分程度並んだところで店内に入れた。
ショーケースの中にはいろんな菓子が置かれていた。
(とりあえず桃のためのプリンと、メイドや執事たちにも何か差し入れておくか…)
プリン五個とケーキを適当に二十個詰めてもらった。
そのあと有名フルーツパーラーに寄って、風邪の時でも食べられそうな果物をたくさん買い込んで桃の家に向かった。
門扉でインターホンを鳴らすと、執事が対応してくれた。
「先程電話をした久世です」
『お待ちしておりました。どうぞ中へお入りください』
敷地内に入り、エントランスに車を止めると、執事が待機していた。
『ようこそおいでくださいました、久世様』
「お邪魔します。これ、皆さんでどうぞ」
『わざわざありがとうございます』
「車、お願いします」
『畏まりました』
執事に車をお願いすると、保は桃のプリンが入った箱を片手に桃のいる離れへ行く。
離れの戸を引き、中へ入り、桃がいる部屋の襖をノックする。
「桜井、俺だ。久世だ。見舞いに来た」
「…………」
「勝手に入るぞ?」
「…………」
そっと襖を開けると、規則的な呼吸が聞こえた。
桃は寝ているようだった。
音を立てないように静かに部屋へ入る。
桃が起きた時に冷たいプリンを食べさせてやりたいので、勝手に冷蔵庫にプリンを入れさせてもらう。
冷蔵庫を開けた時、いろんな食材やら調味料が入っていた。
(本当に料理するんだな…)
冷蔵庫にプリンを入れ、桃の寝ているベッドの側へ行く。
(すげぇ女の子の部屋だな…しかもすげぇいい匂いする…)
部屋を見渡すと、ぬいぐるみやらメイク道具やら、年相応の女の子の部屋だった。
桃を見ると起きる気配がない。
桃を起こさないように額に触れる。
まだ少し熱いが、だいぶ落ち着いたのだろう。
しばらく桃の寝顔を眺めていた。
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