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第五十五話 反動
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「「グルー!?」」
呆れた声が聞こえてバッとそちらを向けば、目を半開きでこちらを見るグルーがいた。
「いたならもうちょっと存在感出してよ!」
「そうだぞ! びっくりするじゃないか!!」
「最初からおったが、シオンとヴィルが盛り上がってたもんじゃから、ワシが口出しするのも野暮じゃと大人しくしとったってのに、お主達と来たら……」
「いや、だから私とヴィルはそういうんじゃないってば。ねぇ、ヴィル?」
「あ、あぁ、そうだぞ。オレとシオンは別にただのパートナーというか、相棒というか」
「ま、そういうことにしてやってもいいがのう。で、シオン。体調はどうなんじゃ?」
「絶不調よ。全身痛いし、身体は熱いし、今にも死にそう」
「うむ。それだけ文句言えれば元気じゃな。ちなみにじゃが今の状況を簡単に言えば、魔力枯渇による副作用じゃ。魔力が元に戻るまで安静にしていることじゃな」
グルー曰く、私は先日のシュド=メル討伐で魔力を使い果たしたことによる反動でぶっ倒れたらしい。今まですっからかんになるまで魔力を使ったことがなかったので知らなかったが、魔力がなくなると大抵の人は今回の私のように体調を崩すそうだ。
特に私の場合は元々魔力が多かったせいで反動もそのぶん大きかったようで、こうして全身に痛みがあったり発熱したりと人よりも重症化してしまったらしい。
「なるほど。確かに心当たりが……」
「だから言ったじゃろう? 無理はするなと」
「いやぁ、まぁ、うん。正直自分でもそこまで頑張るつもりはなかったんだけど、変に意地になっちゃったっていうか」
「それがお主の悪いクセじゃな。シオンは万能ではないということじゃ」
「反省してます」
「そうじゃ、もっと反省せい。ヴィルは毎日毎日お主が目を覚ますまで世話をしてくれたんじゃからな。それはもう、甲斐甲斐しく……」
「グルー! そういうことは言わなくていい!」
グルーに暴露されたせいか、顔を真っ赤にするヴィル。私がヴィルを向くと、さらに全身真っ赤に染まっていた。
「か、勘違いするなよ! オレはただ、シオンがいなくなったら旅が困るだろうと思って……っ」
「はいはい、わかってるわよ。別に他意がないことくらい。でも、ありがとね」
「お、おう」
照れているのか俯くヴィル。ちょっと可愛い。
「そういえば、マダシは結局どうなったの?」
「都市は崩壊して全てがグチャグチャになってしまったから、全ての責任をヴィヴリタス家に負ってもらう形で納めた」
「なるほどね。まぁ、それが順当でしょうね」
「資産もまだ隠してあるようだったしな。都市の復興が彼らの償いになるだろう。あと、父さんにもきちんとその旨は報告してある」
「ありがとう。でも、不思議よね。魔物のこと隠したいならなぜ私のことを呼んだのかしら」
「あぁ、それについては前任の聖女を呼ぶつもりだったそうじゃ。高齢の聖女の魔力を喰って完全体になろうとしたのにシオンが来たもんだから慌てて計画を変更したらしい。だが、シオンが魔法を使わなくても強かったせいで全部計画が崩れただとかどうとか」
「なるほど、そういうことだったのね」
ヴィルとグルーの説明に納得する。とりあえず、全て無事に解決できてよかったとホッとした。
「ヴィルもよかったわね、あのご令嬢に今後追いかけ回されずに済んで」
「そうだな。それに関してはシオンに感謝している」
「えー、それに関してだけ? 私結構頑張ったんですけどー?」
「そ、それも感謝はしているが、今回はさすがに無理をしすぎだと怒っているからな! それに関しては感謝しない!」
「もう、ヴィルは頑固なんだから。ま、いいけど。実際、もうここまで働くのは懲り懲りって思ったし」
ある意味自分の限界を知れたいい機会ではあったが、さすがにこれほどまでの苦痛を味わうのはもう勘弁なので、今後は極限まで頑張るのはやめようと私は心に誓ったのだった。
呆れた声が聞こえてバッとそちらを向けば、目を半開きでこちらを見るグルーがいた。
「いたならもうちょっと存在感出してよ!」
「そうだぞ! びっくりするじゃないか!!」
「最初からおったが、シオンとヴィルが盛り上がってたもんじゃから、ワシが口出しするのも野暮じゃと大人しくしとったってのに、お主達と来たら……」
「いや、だから私とヴィルはそういうんじゃないってば。ねぇ、ヴィル?」
「あ、あぁ、そうだぞ。オレとシオンは別にただのパートナーというか、相棒というか」
「ま、そういうことにしてやってもいいがのう。で、シオン。体調はどうなんじゃ?」
「絶不調よ。全身痛いし、身体は熱いし、今にも死にそう」
「うむ。それだけ文句言えれば元気じゃな。ちなみにじゃが今の状況を簡単に言えば、魔力枯渇による副作用じゃ。魔力が元に戻るまで安静にしていることじゃな」
グルー曰く、私は先日のシュド=メル討伐で魔力を使い果たしたことによる反動でぶっ倒れたらしい。今まですっからかんになるまで魔力を使ったことがなかったので知らなかったが、魔力がなくなると大抵の人は今回の私のように体調を崩すそうだ。
特に私の場合は元々魔力が多かったせいで反動もそのぶん大きかったようで、こうして全身に痛みがあったり発熱したりと人よりも重症化してしまったらしい。
「なるほど。確かに心当たりが……」
「だから言ったじゃろう? 無理はするなと」
「いやぁ、まぁ、うん。正直自分でもそこまで頑張るつもりはなかったんだけど、変に意地になっちゃったっていうか」
「それがお主の悪いクセじゃな。シオンは万能ではないということじゃ」
「反省してます」
「そうじゃ、もっと反省せい。ヴィルは毎日毎日お主が目を覚ますまで世話をしてくれたんじゃからな。それはもう、甲斐甲斐しく……」
「グルー! そういうことは言わなくていい!」
グルーに暴露されたせいか、顔を真っ赤にするヴィル。私がヴィルを向くと、さらに全身真っ赤に染まっていた。
「か、勘違いするなよ! オレはただ、シオンがいなくなったら旅が困るだろうと思って……っ」
「はいはい、わかってるわよ。別に他意がないことくらい。でも、ありがとね」
「お、おう」
照れているのか俯くヴィル。ちょっと可愛い。
「そういえば、マダシは結局どうなったの?」
「都市は崩壊して全てがグチャグチャになってしまったから、全ての責任をヴィヴリタス家に負ってもらう形で納めた」
「なるほどね。まぁ、それが順当でしょうね」
「資産もまだ隠してあるようだったしな。都市の復興が彼らの償いになるだろう。あと、父さんにもきちんとその旨は報告してある」
「ありがとう。でも、不思議よね。魔物のこと隠したいならなぜ私のことを呼んだのかしら」
「あぁ、それについては前任の聖女を呼ぶつもりだったそうじゃ。高齢の聖女の魔力を喰って完全体になろうとしたのにシオンが来たもんだから慌てて計画を変更したらしい。だが、シオンが魔法を使わなくても強かったせいで全部計画が崩れただとかどうとか」
「なるほど、そういうことだったのね」
ヴィルとグルーの説明に納得する。とりあえず、全て無事に解決できてよかったとホッとした。
「ヴィルもよかったわね、あのご令嬢に今後追いかけ回されずに済んで」
「そうだな。それに関してはシオンに感謝している」
「えー、それに関してだけ? 私結構頑張ったんですけどー?」
「そ、それも感謝はしているが、今回はさすがに無理をしすぎだと怒っているからな! それに関しては感謝しない!」
「もう、ヴィルは頑固なんだから。ま、いいけど。実際、もうここまで働くのは懲り懲りって思ったし」
ある意味自分の限界を知れたいい機会ではあったが、さすがにこれほどまでの苦痛を味わうのはもう勘弁なので、今後は極限まで頑張るのはやめようと私は心に誓ったのだった。
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