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第八十七話 浄化
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「ふぅ。スッキリした」
光が薄れていくと共に辺りの風景は一変し、先程までのおどろおどろしかった魔王城とは思えないほど明るく、光り輝く城へと変貌していた。
どうやらホーリーによって、魔王城全体が浄化されたらしい。
ヘドロにまみれていた壁や床はそんなもの存在していなかったかのようにまっさらに。
ゴテゴテしていた装飾もなぜか綺麗さっぱりなくなり、ゴシック調の美しい造りに。
澱んだ空気も一掃されていて、誰もここがあの魔王城だとは思わないほど綺麗な城へと様変わりしていた。
「とうとう魔王を倒しちゃった」
先程までいたはずの魔王は消え去っていた。先程まであったはずの強大な魔力は微塵も感じない。
「お父さん、お母さん、ありがとう。手がかかる娘でごめんね」
何もいないところで呟くように言う。彼らの姿はもう見えなかった。
「それにしても、勇者だったらこれで結婚相手見つけ放題なのに、魔王を倒した聖女じゃなぁ。また婚期が遠のいちゃう……」
聖女だけでなく、勇者の力も備わっているというのはかなりレアだ。
いくら聖女は結婚できない決まりとはいえ、もし両親のことがバレたらこの能力を継承させるためにきっと王様は簡単に通例をひっくり返すだろう。そして勝手に結婚相手を見繕って、私に愛のない政略結婚させるに違いない。
そんなの絶対に嫌だー!
両親の駆け落ちのせいで八十すぎてまで聖女をやらされてる先々代の聖女には申し訳ないが、八十すぎてまで聖女をやらされるだなんて絶対に無理だ。
幸せな結婚するためにも、何が何でもこの事実を隠さないと。
「シオン!」
聞き慣れた声に名前を呼ばれて顔を上げる。
振り返れば、そこには石化したはずのヴィルが焦った様子で立っていた。
ホーリーのおかげか、魔王がいなくなったおかげか、いつのまにか石化が解けたようだ。
「ヴィル! あぁ、よかった! 石化が解けたのね!! どっか変なとこはない!? 異常あるとこはなさそう!??」
「うわ! きゅ、急に抱きつくなんて、……って、おい! 何するんだ! オレの身体をベタベタ触るんじゃない!」
「だって確認は大事でしょ! 石化してる箇所が残ってたら治さなきゃだし。ほら、違和感あるとことかない? あったら私が治すから」
「ないから! ちょ、こら……っ、どこ触ってるんだよ!」
私は駆け出してヴィルに抱きつくと、彼の身体に異常がないか触りまくって確認する。触った感じどこも異常はなさそうでよかった。
「うんうん。どこも異常はなさそうね」
「だから、さっきからそう言ってるだろ!」
「そうは言っても、念のため確認しておくに越したことはないでしょ」
「それはそうかもしれないが……だからって太腿を触ったり尻を撫で回したりしなくてもいいだろ……!」
光が薄れていくと共に辺りの風景は一変し、先程までのおどろおどろしかった魔王城とは思えないほど明るく、光り輝く城へと変貌していた。
どうやらホーリーによって、魔王城全体が浄化されたらしい。
ヘドロにまみれていた壁や床はそんなもの存在していなかったかのようにまっさらに。
ゴテゴテしていた装飾もなぜか綺麗さっぱりなくなり、ゴシック調の美しい造りに。
澱んだ空気も一掃されていて、誰もここがあの魔王城だとは思わないほど綺麗な城へと様変わりしていた。
「とうとう魔王を倒しちゃった」
先程までいたはずの魔王は消え去っていた。先程まであったはずの強大な魔力は微塵も感じない。
「お父さん、お母さん、ありがとう。手がかかる娘でごめんね」
何もいないところで呟くように言う。彼らの姿はもう見えなかった。
「それにしても、勇者だったらこれで結婚相手見つけ放題なのに、魔王を倒した聖女じゃなぁ。また婚期が遠のいちゃう……」
聖女だけでなく、勇者の力も備わっているというのはかなりレアだ。
いくら聖女は結婚できない決まりとはいえ、もし両親のことがバレたらこの能力を継承させるためにきっと王様は簡単に通例をひっくり返すだろう。そして勝手に結婚相手を見繕って、私に愛のない政略結婚させるに違いない。
そんなの絶対に嫌だー!
両親の駆け落ちのせいで八十すぎてまで聖女をやらされてる先々代の聖女には申し訳ないが、八十すぎてまで聖女をやらされるだなんて絶対に無理だ。
幸せな結婚するためにも、何が何でもこの事実を隠さないと。
「シオン!」
聞き慣れた声に名前を呼ばれて顔を上げる。
振り返れば、そこには石化したはずのヴィルが焦った様子で立っていた。
ホーリーのおかげか、魔王がいなくなったおかげか、いつのまにか石化が解けたようだ。
「ヴィル! あぁ、よかった! 石化が解けたのね!! どっか変なとこはない!? 異常あるとこはなさそう!??」
「うわ! きゅ、急に抱きつくなんて、……って、おい! 何するんだ! オレの身体をベタベタ触るんじゃない!」
「だって確認は大事でしょ! 石化してる箇所が残ってたら治さなきゃだし。ほら、違和感あるとことかない? あったら私が治すから」
「ないから! ちょ、こら……っ、どこ触ってるんだよ!」
私は駆け出してヴィルに抱きつくと、彼の身体に異常がないか触りまくって確認する。触った感じどこも異常はなさそうでよかった。
「うんうん。どこも異常はなさそうね」
「だから、さっきからそう言ってるだろ!」
「そうは言っても、念のため確認しておくに越したことはないでしょ」
「それはそうかもしれないが……だからって太腿を触ったり尻を撫で回したりしなくてもいいだろ……!」
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