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第二章 いじめ
いじめ②
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アズマが事務所に戻ってくると、先程まで不貞腐れていたアガツマがパッと顔を上げる。
そして、アズマの姿を見るなりギョッとした表情をした。
「どうしたの、アズマ! 随分とびしょ濡れじゃない!? 傘は持って行かなかったの?」
慌ててアガツマが気を利かせてタオルを持ちながら駆け寄ってくる。
そして、アズマに頭からタオルをかけた瞬間、アズマの腕の中でぐったりとしている少女を見つけ、またさらにアガツマの表情が驚愕で強張った。
「って、ちょ、え、それ、何……? もしかして、人間?」
「うん、拾ってきちゃった」
「は、はぁああああ!? ちょ、捨て猫拾ってきちゃいました、みたいなノリで言わないでよ! アズマ、何を考えてるの!?」
「もう、アガツマ~、しー。そんなに大声出さないでよ。この子がびっくりして起きちゃうでしょう?」
「いやいやいやいや! まずは私がびっくりだから! まだ小さい子じゃない!? え、ちょっと誘拐じゃないでしょうね? え、まさかアズマ、とうとうロリコンに目覚めたんじゃ……」
ひぇ、と真っ青な表情のまま軽蔑の眼差しでアズマを見るアガツマ。
そのなんとも言えないほど複雑な瞳に、僕はそこまで信用ないのか、とちょっとだけアズマは悲しくなった。
「アガツマ。とりあえずバカなこと言ってないで、早くこの子お風呂入れてきてあげて。風邪ひいちゃうだろうから。僕が入れてもいいけど、いくら僕に性別とかいう概念がなくてもきっとその子、僕が入れたと知ったら嫌がるだろうから」
「え、あ、そ、そうね。じゃあ、この子預かるわ。え、でも着替えの服とかどうする? 私の服じゃさすがに無理でしょう?」
アガツマに指摘されて初めて気づくアズマ。
そして、やはりアガツマはこういう細かな部分の気遣いに長けていると改めて実感する。
「うーん、すっかり失念してた。でも大丈夫、その辺は僕がどうにかするから、とりあえず入ってきて」
「そ、そうね、わかったわ。じゃあ急いで入れてくるからよろしくね」
アガツマはそう言うと少女を抱えて風呂場へと足速に向かった。
アガツマの、なんだかんだ言いつつもこういうお世話焼きなところは美点と言えるだろう。
アズマも見習いたい部分だ。
(うーん、あの子だいぶ小さかったけど、サイズ的にはどれくらいだろうか? アガツマにサイズ聞いておけばよかったなぁ)
サイズ感がわからないながらも、とにかくこんなところでぼんやりと考えていたってどうしようもないだろう。
アズマはとにかく彼女の服を見繕わなきゃいけないと、傘を片手に再び外へ向かう。
まだ雨足は強かったが、背に腹はかえられないとそのまま外へと戻るのであった。
◇
「ん、ぅ、ひゃ……っ! え、誰!?」
少女はぬくぬくと心地よさを覚えながらも、慣れない感覚にふっと意識を浮上させると、目の前には今まで見たこともないほど美しい女性が自分を抱えていて、思わずびっくりして大きくもがいた。
だが、少女がびっくりするのを既に察していたのか、美女は動揺もせずにしっかりと少女の身体を抱き締めてくれている。
おかげで少女は浴槽で溺れずに済んだのだが、少女は気が動転していてそれどころではなかった。
「あら、起きたのね。驚かせてごめんなさいね。身体が冷えているようだったからお風呂に入れているんだけど、具合は大丈夫?」
「お、お風呂……? えっと、あれ、私、死んだんじゃ……?」
見下ろすと、確かに自分が風呂に浸かっていることに驚愕する少女。
あのとき確かにビルの上から落ちたはず、と少女は回想するも、落ちたあとに誰かに抱きしめられたのは覚えているものの、それからの記憶が欠如していることに気づく。
あのときは綺麗な男性に声をかけられた気がするが、あのときの男性は何者なのだろう、と少女は思考を巡らせた。
「ごめんなさい、私は詳しく事情聞いてないからよくわからないけど、貴女は死んでないわよ。とりあえず、起きたなら頭も洗っちゃいましょう? 私が洗ってあげるから、こっちへきなさい」
「え? あ、でも……そんなご迷惑をかけるわけには……っ」
「いいのよいいの。お礼なら別の人にしてもらうから。ほらほら、だらだらしてたら風邪ひいちゃうわよ?」
「あ、はい」
女性は世話焼きらしい。
嫌な顔一つせずに少女を構うのが楽しいのか、鼻歌まじりに歩いていく。
少女は手を引かれるまま浴槽から出て周りを見回すと、まるでお風呂屋さん並みに広い浴室に思わず目を見張った。
と同時に、「ここはどこなのだろう、いかがわしいお店だったらどうしよう」とちょっと不安な気持ちも顔を出す。
「ほら、こっちこっち。って、そういえば名前聞いてなかったわよね。私はアガツマよ。貴女は?」
「あ、すみません。私は東雲です。東雲桜です」
「あら、いいお名前ね。センスある名前だと思うわ」
「あ、ありがとうございます」
アガツマと名乗った女性の美しさに目を奪われつつも、桜はされるがままに身体や髪を洗われていく。
ふと、遠い昔に母親にこうして洗ってもらったなぁ、と桜は過去を思い出すと、何だか懐かしくなってくる。
そして思い出がいくつも脳裏を過ぎると、母恋しさも募り、えも言えぬ感情が込み上げてきた桜は、アガツマに気づかれぬように静かにハラハラと涙を流すのであった。
そして、アズマの姿を見るなりギョッとした表情をした。
「どうしたの、アズマ! 随分とびしょ濡れじゃない!? 傘は持って行かなかったの?」
慌ててアガツマが気を利かせてタオルを持ちながら駆け寄ってくる。
そして、アズマに頭からタオルをかけた瞬間、アズマの腕の中でぐったりとしている少女を見つけ、またさらにアガツマの表情が驚愕で強張った。
「って、ちょ、え、それ、何……? もしかして、人間?」
「うん、拾ってきちゃった」
「は、はぁああああ!? ちょ、捨て猫拾ってきちゃいました、みたいなノリで言わないでよ! アズマ、何を考えてるの!?」
「もう、アガツマ~、しー。そんなに大声出さないでよ。この子がびっくりして起きちゃうでしょう?」
「いやいやいやいや! まずは私がびっくりだから! まだ小さい子じゃない!? え、ちょっと誘拐じゃないでしょうね? え、まさかアズマ、とうとうロリコンに目覚めたんじゃ……」
ひぇ、と真っ青な表情のまま軽蔑の眼差しでアズマを見るアガツマ。
そのなんとも言えないほど複雑な瞳に、僕はそこまで信用ないのか、とちょっとだけアズマは悲しくなった。
「アガツマ。とりあえずバカなこと言ってないで、早くこの子お風呂入れてきてあげて。風邪ひいちゃうだろうから。僕が入れてもいいけど、いくら僕に性別とかいう概念がなくてもきっとその子、僕が入れたと知ったら嫌がるだろうから」
「え、あ、そ、そうね。じゃあ、この子預かるわ。え、でも着替えの服とかどうする? 私の服じゃさすがに無理でしょう?」
アガツマに指摘されて初めて気づくアズマ。
そして、やはりアガツマはこういう細かな部分の気遣いに長けていると改めて実感する。
「うーん、すっかり失念してた。でも大丈夫、その辺は僕がどうにかするから、とりあえず入ってきて」
「そ、そうね、わかったわ。じゃあ急いで入れてくるからよろしくね」
アガツマはそう言うと少女を抱えて風呂場へと足速に向かった。
アガツマの、なんだかんだ言いつつもこういうお世話焼きなところは美点と言えるだろう。
アズマも見習いたい部分だ。
(うーん、あの子だいぶ小さかったけど、サイズ的にはどれくらいだろうか? アガツマにサイズ聞いておけばよかったなぁ)
サイズ感がわからないながらも、とにかくこんなところでぼんやりと考えていたってどうしようもないだろう。
アズマはとにかく彼女の服を見繕わなきゃいけないと、傘を片手に再び外へ向かう。
まだ雨足は強かったが、背に腹はかえられないとそのまま外へと戻るのであった。
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「ん、ぅ、ひゃ……っ! え、誰!?」
少女はぬくぬくと心地よさを覚えながらも、慣れない感覚にふっと意識を浮上させると、目の前には今まで見たこともないほど美しい女性が自分を抱えていて、思わずびっくりして大きくもがいた。
だが、少女がびっくりするのを既に察していたのか、美女は動揺もせずにしっかりと少女の身体を抱き締めてくれている。
おかげで少女は浴槽で溺れずに済んだのだが、少女は気が動転していてそれどころではなかった。
「あら、起きたのね。驚かせてごめんなさいね。身体が冷えているようだったからお風呂に入れているんだけど、具合は大丈夫?」
「お、お風呂……? えっと、あれ、私、死んだんじゃ……?」
見下ろすと、確かに自分が風呂に浸かっていることに驚愕する少女。
あのとき確かにビルの上から落ちたはず、と少女は回想するも、落ちたあとに誰かに抱きしめられたのは覚えているものの、それからの記憶が欠如していることに気づく。
あのときは綺麗な男性に声をかけられた気がするが、あのときの男性は何者なのだろう、と少女は思考を巡らせた。
「ごめんなさい、私は詳しく事情聞いてないからよくわからないけど、貴女は死んでないわよ。とりあえず、起きたなら頭も洗っちゃいましょう? 私が洗ってあげるから、こっちへきなさい」
「え? あ、でも……そんなご迷惑をかけるわけには……っ」
「いいのよいいの。お礼なら別の人にしてもらうから。ほらほら、だらだらしてたら風邪ひいちゃうわよ?」
「あ、はい」
女性は世話焼きらしい。
嫌な顔一つせずに少女を構うのが楽しいのか、鼻歌まじりに歩いていく。
少女は手を引かれるまま浴槽から出て周りを見回すと、まるでお風呂屋さん並みに広い浴室に思わず目を見張った。
と同時に、「ここはどこなのだろう、いかがわしいお店だったらどうしよう」とちょっと不安な気持ちも顔を出す。
「ほら、こっちこっち。って、そういえば名前聞いてなかったわよね。私はアガツマよ。貴女は?」
「あ、すみません。私は東雲です。東雲桜です」
「あら、いいお名前ね。センスある名前だと思うわ」
「あ、ありがとうございます」
アガツマと名乗った女性の美しさに目を奪われつつも、桜はされるがままに身体や髪を洗われていく。
ふと、遠い昔に母親にこうして洗ってもらったなぁ、と桜は過去を思い出すと、何だか懐かしくなってくる。
そして思い出がいくつも脳裏を過ぎると、母恋しさも募り、えも言えぬ感情が込み上げてきた桜は、アガツマに気づかれぬように静かにハラハラと涙を流すのであった。
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