無双代行人アズマ

鳥柄ささみ

文字の大きさ
27 / 34
第二章 いじめ

いじめ⑧

しおりを挟む
「今日からこの学校に転校してきたアズマです。みなさんよろしくお願いします」

 アズマがにっこりと微笑むと、中学生離れした美しさにほとんどの男子と女子生徒の半数は視線が釘づけになって惚け、女子生徒の一部はその様子をやっかんだり興味がなさそうだったりと反応が別れていた。

(ふぅん、なるほど。思春期ってこういうことか。確かこのくらいの年齢の子はちょっと高嶺の花くらいの雰囲気を好む子が多い、というのは当たってはいるようだけど、反応があからさまなのは年相応といったところか)

 各々の態度に、なるほどと納得するアズマ。
 人間特有の思春期という感情を感じながら視線を桜にやると、彼女はなんとも言えない表情で静かにこちらを見ていた。
 そして先程の三人組はあからさまな敵意をアズマに向けてきていて、桜からこちらに意識が向いたことに重畳だと内心思いながら、余裕のある振る舞いをアズマは心がける。

(うーん、実際に害をなそうというレベルの敵意を向けているのはさっきの三人くらいか)

 一応アガツマに言われた通りに振る舞ってみているが、さすがというべきだろうか、彼女の言う通りの反応が返ってくる。
 もちろん全てが全てではないが、ある程度の心理操作などは必要なさそうなくらいには好意を寄せられているオーラが見て取れた。
 なぜか隣にいる教師からも無駄に好意のオーラが見える気もするが、あえてそこは気づかないフリをする。

「では、アズマさんには……東雲の隣でもいいだろうか?」
「はい、わかりました」

 彼女の普段の様子を見る上で、あえて隣の席になるように担任を誘導する。
 とはいえ、朝の出来事を見る限り大体の主犯格は特定できたが。
 今のこの光景はアガツマのところにも届いているので、恐らく憤っているであろう彼女がすぐさま先程の三人組を徹底的に調べ上げていることであろう。
 桜はアガツマがだいぶ気に入っていたことを考えると、とことん追い詰めそうだな、と思いながら席についた。

「東雲さん、よろしくね」
「あ、はい。よろしくお願いします」

 一応顔見知りだということは伏せておいたほうがいいだろう。
 桜もその辺は空気を読んだのか、あえて知らんフリをしてくれている。

(さて、様子見といきますか)

 アズマは澄まし顔で席に着くと、桜を取り巻く状況を確認するべく、ゆっくりと観察するのであった。


 ◇


(はぁ、人間の授業は退屈だなぁ)

 ふぁぁああ、と大きな欠伸をしたいのを隠しながら、肘をつきつつ周りを観察する。
 こうも長く同じ姿勢で座っていることなんてほぼなかったので、アズマにとっては退屈すぎて反吐が出そうだった。

(学校って窮屈だなぁ、考えてみたら学校に潜入捜査って初めてだったっけ)

 今まで依頼を受けたことはあれど、家庭内の問題だったり仕事場での問題だったりと学校の中で実際に学生として振る舞うというのは初めてだ。
 だからこそ、ちょっと興味本位で始めたのだが、案外学校は想像以上に窮屈で、アズマはまだ二時間授業を受けただけなのにもううんざりしていた。

(えーっと、主犯格が北原、その取り巻きが南と西沢、だっけ)

 授業中に指名された人の顔と名前を見て覚える。
 先程率先して桜をいじめていたメンバーの三人のうち、主犯格である北原が主導してクラスのメンバーをも巻き込みながらあの手この手で桜をいじめているらしい。

 ーー信じられる!? クラス全体で彼女をハブってるらしいのよ!!

 メールの文面から察するにアガツマは相当キレてるのであろう。
 怒りのままに綴られた文章が次々と送られてくる。

(クラス全体でか、なんでまた……)

 今のところ桜に訳があっていじめられているということはなさそうだった。
 そもそも桜は目立つタイプでもなく、かといって何か気に障るようなするタイプでもなく普通の平凡な少女だ。
 そんな彼女がなぜターゲットになっているかは不明である。
 とはいえ、クラス全体でハブっていると聞き、桜が誰も頼ることができなかったのはそのせいか、と納得しつつも北原にそこまで実権があるのかは甚だ疑問ではあった。
 そのため、その疑問をメールにしたためアガツマに送る。

 ーー親がいわゆるママ友間でのボスママって呼ばれるこの辺の仕切り屋らしいわよ。

 アガツマの返信に、「ボスママ、ねぇ」とアズマは小さく言葉を溢す。
 噂には聞いたことがあるが、まさか実際にその影響力を見るのは初めてだ。

(都市伝説じゃなかったんだなぁ)

 とはいえ、親同士の関係が子供の関係にまで影響するというのはどうなのだろうか、とアズマは「ふぅむ」と小さく唸った。

(とりあえず、まずは北原を潰すか)

 アズマが彼女を見れば、禍々しいオーラがとぷとぷと溢れているのが見て取れる。
 恐らくここまでだらだらと溢れ出ているのは、それだけだいぶ業を背負っているということだろう。
 早々に彼女を潰して解決するのであれば、被害もこれ以上増えることはないし、桜の今後の生活も安泰だろうしいいことづくめだ。

(となると、尻尾を出す機会をうかがわないと)

 朝からやらかしていた辺り、きっとまたすぐに桜に仕掛けてくるだろう。
 アズマはそう予測しながら、桜と北原、どちらも注視しつつも悟られぬように授業を聞くフリをしながらアガツマと連絡を取り合うのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...