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6章【外交編・ブライエ国】
30 まさかの提案
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「大丈夫です?」
「ご心配なく。これくらい、どうってこと……ありませんよ!」
「ならいいですけど」
ゼェゼェはぁはぁ言いながら私達を追いかけてくるギルデル。ここまで体力なかったのか、とちょっと面食らってしまったが、自分が普通とはちょっと違うことくらいは心得ているのでそれ以上は何も言わなかった。
「この先……もう少ししたら拠点本部です」
「承知しました。では、そこを一気に攻め込みましょうか」
「奥には隊長がいるはずです。彼さえ仕留めればここは攻略できるかと。ボクよりも恐らくモットー国のことや他の拠点に詳しいと思いますよ」
「わかりました。ケリー様」
「あぁ、とりあえず生け捕りの方向で努力しよう」
周りでは先程に比べて騒音が大きくなってきている。恐らく、シオンがどうにか門を突破して侵入してきたのだろう。なんだか下も慌ただしく迎撃しようと各方面からわらわらと兵が集まってきているのが見えた。
(ちょっとだけ加勢しとこうかしら)
ゴソゴソと懐を漁って追加の煙幕を取り出すと、スリングに入れて回していく。
「リーシェ、行くぞ……って、何をやっている?」
「ちょっと加勢しようかと」
「おい、まさか先程の……!?」
「えぇ。大丈夫です、シオン達に当てないように調整しますから」
そう言って各方面にいくつも煙幕を飛ばしていく。すると至るところから聞こえる阿鼻叫喚。クエリーシェルは眉間に皺を寄せつつ、「なんだか少々気の毒に思えてきた」と小さく溢していた。
◇
「着きましたよ」
「随分と小さな建物ですね」
あれから移動し、ギルデルに本拠地まで案内してもらった。思ったよりも小さく、ただの店にしか見えない。一目でここが本拠地だと見当をつけるのは難しく、ギルデルがいなければ見つけられなかったかもしれないと思った。
「えぇ、表向きは。でも内部は複雑なのでご注意ください」
「どういうことです?」
複雑とはどういうことだろうか、と疑問に思って尋ねれば、「地下がまるで迷路のようになっているんですよ」と言われて驚く。
「地下……」
「アリの巣のように複雑な構造をしているのです。色々と罠も仕掛けられてますよ」
「なんですか、それ」
ますますヤバい、とクエリーシェルを見れば、彼もそんなことを想定していなかったようで、険しい顔をしている。
「貴様は内部構造を把握しているのか?」
「そりゃあ、まぁ、えぇ」
「だったら先に行け」
「随分な言い方ですね。もっと他にありますでしょうに。ねぇ、リーシェさん?」
そう言ってこちらをちらっと見てくるギルデル。何かよからぬことを考えているのは想像できる。この男は非常にタチが悪い、だからこそどんなことを言い出してもおかしくはなかった。
「何が望み?」
「そうですねぇ。前回のリベンジ、というのはいかがでしょうか」
「というと?」
「キス、ですよ。今回は唇に、という指定をさせていただきます。あぁ、唇で唇にですよ。マウストゥマウスです。いかがです?」
「ふざけるな!」
私が言うよりも先にクエリーシェルから怒声が出る。あまりの音量と怒りを孕んだ声に、思わず私も竦み上がってしまった。
「だったら我々だけで行く!」
「そうですか?それはそれでいいですよ。お任せします。ちなみに、途中で命を落とす可能性もありますが、それは悪しからず」
「そんなのただの脅しだろう!」
「そう捉えていただいても構いません」
クエリーシェルとギルデルが一触即発寸前の中、どうしようかと悩む。もちろんキスなどはしたくないが、この先危険が伴うのであれば回避したいのもまた事実。
キス1つで安いもの、といえばそうかもしれないが、クエリーシェルがいる状況を考えるとどれが正解かわからない。
(本音としてはここでちゃちゃっとしちゃうのもアリだけど、ケリー様いるからなぁ……)
チラッとクエリーシェルを見ると、「まさか引き受けるつもりはなかろうな?」という圧力たっぷりの目で見られて、うぐっと押し黙る。
クエリーシェルに私の考えなどお見通しなのだろう。約1年とはいえ長く一緒にいるのだ、無理もない。
(どうするべきか……)
こんなことで長く悩んでいる場合ではない。さっさと決断して進まなければ。そして私は決断した。
「ご心配なく。これくらい、どうってこと……ありませんよ!」
「ならいいですけど」
ゼェゼェはぁはぁ言いながら私達を追いかけてくるギルデル。ここまで体力なかったのか、とちょっと面食らってしまったが、自分が普通とはちょっと違うことくらいは心得ているのでそれ以上は何も言わなかった。
「この先……もう少ししたら拠点本部です」
「承知しました。では、そこを一気に攻め込みましょうか」
「奥には隊長がいるはずです。彼さえ仕留めればここは攻略できるかと。ボクよりも恐らくモットー国のことや他の拠点に詳しいと思いますよ」
「わかりました。ケリー様」
「あぁ、とりあえず生け捕りの方向で努力しよう」
周りでは先程に比べて騒音が大きくなってきている。恐らく、シオンがどうにか門を突破して侵入してきたのだろう。なんだか下も慌ただしく迎撃しようと各方面からわらわらと兵が集まってきているのが見えた。
(ちょっとだけ加勢しとこうかしら)
ゴソゴソと懐を漁って追加の煙幕を取り出すと、スリングに入れて回していく。
「リーシェ、行くぞ……って、何をやっている?」
「ちょっと加勢しようかと」
「おい、まさか先程の……!?」
「えぇ。大丈夫です、シオン達に当てないように調整しますから」
そう言って各方面にいくつも煙幕を飛ばしていく。すると至るところから聞こえる阿鼻叫喚。クエリーシェルは眉間に皺を寄せつつ、「なんだか少々気の毒に思えてきた」と小さく溢していた。
◇
「着きましたよ」
「随分と小さな建物ですね」
あれから移動し、ギルデルに本拠地まで案内してもらった。思ったよりも小さく、ただの店にしか見えない。一目でここが本拠地だと見当をつけるのは難しく、ギルデルがいなければ見つけられなかったかもしれないと思った。
「えぇ、表向きは。でも内部は複雑なのでご注意ください」
「どういうことです?」
複雑とはどういうことだろうか、と疑問に思って尋ねれば、「地下がまるで迷路のようになっているんですよ」と言われて驚く。
「地下……」
「アリの巣のように複雑な構造をしているのです。色々と罠も仕掛けられてますよ」
「なんですか、それ」
ますますヤバい、とクエリーシェルを見れば、彼もそんなことを想定していなかったようで、険しい顔をしている。
「貴様は内部構造を把握しているのか?」
「そりゃあ、まぁ、えぇ」
「だったら先に行け」
「随分な言い方ですね。もっと他にありますでしょうに。ねぇ、リーシェさん?」
そう言ってこちらをちらっと見てくるギルデル。何かよからぬことを考えているのは想像できる。この男は非常にタチが悪い、だからこそどんなことを言い出してもおかしくはなかった。
「何が望み?」
「そうですねぇ。前回のリベンジ、というのはいかがでしょうか」
「というと?」
「キス、ですよ。今回は唇に、という指定をさせていただきます。あぁ、唇で唇にですよ。マウストゥマウスです。いかがです?」
「ふざけるな!」
私が言うよりも先にクエリーシェルから怒声が出る。あまりの音量と怒りを孕んだ声に、思わず私も竦み上がってしまった。
「だったら我々だけで行く!」
「そうですか?それはそれでいいですよ。お任せします。ちなみに、途中で命を落とす可能性もありますが、それは悪しからず」
「そんなのただの脅しだろう!」
「そう捉えていただいても構いません」
クエリーシェルとギルデルが一触即発寸前の中、どうしようかと悩む。もちろんキスなどはしたくないが、この先危険が伴うのであれば回避したいのもまた事実。
キス1つで安いもの、といえばそうかもしれないが、クエリーシェルがいる状況を考えるとどれが正解かわからない。
(本音としてはここでちゃちゃっとしちゃうのもアリだけど、ケリー様いるからなぁ……)
チラッとクエリーシェルを見ると、「まさか引き受けるつもりはなかろうな?」という圧力たっぷりの目で見られて、うぐっと押し黙る。
クエリーシェルに私の考えなどお見通しなのだろう。約1年とはいえ長く一緒にいるのだ、無理もない。
(どうするべきか……)
こんなことで長く悩んでいる場合ではない。さっさと決断して進まなければ。そして私は決断した。
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