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第四話
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「私に、縁談の話……ですか?」
ディークハルトが亡くなって一年が経った。
亡くなってから半年ほど、ライラはずっとほぼ毎日メソメソと泣き腫らす日々を過ごしていた。
けれど、ずっとこのままじゃいられないと、ライラはようやく最近になって徐々に以前通りの生活を取り戻していたのだが、そんな中、唐突に舞い込んできた縁談の話。
社交界の誘いも今まで断り、友人からのお茶会も断り、ほぼ引きこもっていたライラにいったいどうして縁談の話が来るのか、ライラは不思議で仕方がなかった。
「お相手は?」
「ディラン・スタッド。スタッド辺境伯の二男で近衛兵の兵長を務めているそうだ」
「そんな優秀な方が、なぜ私に縁談を……?」
辺境伯の二男な上に近衛兵、しかも兵長というのは相当に優秀な人物であることが推測される。本来であればもう二十五になるライラより、もっと若くて高位の令嬢との縁談を結んでもおかしくないだろう。わざわざ行き遅れのライラに縁談を持ちかける理由はない。
それなのにライラを指名してきたということは、もしかしたら見た目や性格、もしくは年齢に難ありなのかもしれないとライラは勝手に考察する。
「さぁ? だが、もうディークハルトが亡くなって一年は経った。もう喪に服す必要もないだろう。もちろん、お互いに合わなければそれまでだが、もし気が合うようならこの縁談を受けていいんじゃないか?」
優しく、ライラを気遣うように声をかける父。
その隣で母も不安そうな眼差しでライラを見つめていた。
「そう、ですね」
「ディークハルトもライラの結婚を待ち望んでいただろう? 彼が直接見ることは叶わなかったかもしれないが、きっと天国でライラのことの晴れ姿を見たかったはずだ。とにかくまずは先方に会ってみないことには話にならないから、会ってみて確かめてみなさい」
「はい。お父様」
正直あまり気乗りはしなかったものの、父の説得で頷くライラ。
ディークハルトがいなくなってからずっとライラのことを心配してくれていた両親に、これ以上心労をかけさせたくなかったからだ。
(ディラン様……どんな人なのだろう。悪い人じゃないといいけど……)
いったいどんな人物なのだろうかとライラは多少の不安を抱きながら、当日を迎えるのであった。
ディークハルトが亡くなって一年が経った。
亡くなってから半年ほど、ライラはずっとほぼ毎日メソメソと泣き腫らす日々を過ごしていた。
けれど、ずっとこのままじゃいられないと、ライラはようやく最近になって徐々に以前通りの生活を取り戻していたのだが、そんな中、唐突に舞い込んできた縁談の話。
社交界の誘いも今まで断り、友人からのお茶会も断り、ほぼ引きこもっていたライラにいったいどうして縁談の話が来るのか、ライラは不思議で仕方がなかった。
「お相手は?」
「ディラン・スタッド。スタッド辺境伯の二男で近衛兵の兵長を務めているそうだ」
「そんな優秀な方が、なぜ私に縁談を……?」
辺境伯の二男な上に近衛兵、しかも兵長というのは相当に優秀な人物であることが推測される。本来であればもう二十五になるライラより、もっと若くて高位の令嬢との縁談を結んでもおかしくないだろう。わざわざ行き遅れのライラに縁談を持ちかける理由はない。
それなのにライラを指名してきたということは、もしかしたら見た目や性格、もしくは年齢に難ありなのかもしれないとライラは勝手に考察する。
「さぁ? だが、もうディークハルトが亡くなって一年は経った。もう喪に服す必要もないだろう。もちろん、お互いに合わなければそれまでだが、もし気が合うようならこの縁談を受けていいんじゃないか?」
優しく、ライラを気遣うように声をかける父。
その隣で母も不安そうな眼差しでライラを見つめていた。
「そう、ですね」
「ディークハルトもライラの結婚を待ち望んでいただろう? 彼が直接見ることは叶わなかったかもしれないが、きっと天国でライラのことの晴れ姿を見たかったはずだ。とにかくまずは先方に会ってみないことには話にならないから、会ってみて確かめてみなさい」
「はい。お父様」
正直あまり気乗りはしなかったものの、父の説得で頷くライラ。
ディークハルトがいなくなってからずっとライラのことを心配してくれていた両親に、これ以上心労をかけさせたくなかったからだ。
(ディラン様……どんな人なのだろう。悪い人じゃないといいけど……)
いったいどんな人物なのだろうかとライラは多少の不安を抱きながら、当日を迎えるのであった。
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