前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!

鳥柄ささみ

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第十四話 火

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「あら、さっきの彼、ノース公爵家の令息だったのね」
「ノース公爵家?」
「もう、いくら引きこもってるからって公人の情報くらいは覚えておいたほうがいいわよ? この国の魔法統括の大臣がノース公爵。彼はその息子さんってこと」
「ふぅん、そうなのね」
「高官になりたいのならそれくらいは覚えておきなさいな」
「はーい、ママ」
「全くもう、クラリスったら」

 悪びれる様子もなく返事をすると呆れるように笑うマリアンヌ。
 こうしてマリアンヌは私に甘いので、ついつい甘えてしまうのだ。

「あら、彼は火の寮ね。まぁ、ノース公爵家の息子ならそれもそうね」
「そんなにノース公爵って凄いの?」
「えぇ、歴代トップの魔法力を誇ってると言われているわ」
「それは凄い……」
「マリアンヌ・デルトロ!」
「あら、呼ばれちゃった。クラリス、行ってくるわね」
「うん、いってらっしゃい!」

 マリアンヌは舞台に上がるとゆっくりと器に手を入れる、そして「これは……火の寮ね!」と先生が判別し、マリアンヌは火の寮のグループへと入っていった。

「マリアンヌは火の寮、か。一緒がいいけど、火は嫌だなぁ……」

 火はどうしても前世で火炙りにされた記憶がチラついてしまって、どうしても敬遠してしまう。
 あの火が焔となって身体中に纏わりついて肌を焦がす感触は身震いするほどに恐ろしく、自らの肉が焼け焦げる匂いは嗅ぐだけで吐き気を催すほどだ。
 熱さと痛みで頭の中はグチャグチャで、それなのに聴衆達は囃し立てて歓喜する姿は未だに悪夢で見るくらいトラウマだった。

「クラリス・マルティーニ!!」

 名を呼ばれて、慌てて舞台に向かう。
 フードを目深に被り、手でそれを引っ張るように押さえながらひょこひょこと舞台上に上がった。

「なぜフードを被っているのです?」
「あ、これがあるほうが落ち着くので……」
「ほう? まぁ、いいでしょう。早速手をこの中に入れて」
「は、はい」

 言われて器に手を入れる。
 すると器の中の水はゆらゆらと揺めき、何かを映し出した。

「あ、あ、……っ、」

 そこに映っているのは燃え盛る焔だった。
 そしてその焔は腕を這い上がり、身体中に纏わりつく。
 熱くはない、が……あの感触が脳裏をよぎる。

 肌を舐めるように焔が纏わりついて全身に広がり、身を焦がす感触、匂い、そして痛み。
 泣き叫んでもなお止まぬ苦痛と、聴衆達の歓喜に満ちた声と自分に向けられる禍々しい悪意。

「素晴らしい火の適正だ!」
「やだ……っ、嫌……っあぁ……っ!」

 私が叫ぶと同時に、ぶわっと辺り一帯を焔が包み込む。
 あの状況と今の状況が重なって感じ、さらに私はパニックになった。

「やだ……死にたくない……っ」
「クラリス!!!」

 マリアンヌに名を呼ばれて、ハッと我に返る。
 そこで初めて自分が注目を浴びていることに気づいて頭が真っ白になった。

「は……っ、は……、はぁ……」
「大丈夫です? 体調が悪いようですが」

 学園長に顔を覗かれ、思わず反射で顔を伏せる。

「は、はい。大丈夫で……っ」

 フードを押さえながら歩き出そうと前に進む。
 だが、足元がおぼつかず、目眩がしてぐらりと身体が傾いたかと思うと私はそのまま意識を手放してしまった。
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