16 / 120
第十六話 雷
しおりを挟む
「おや、起きましたか」
「あ、学園長……っ!」
ツカツカと入口からやってくるのは、入学式よりもいくらかラフな格好をした学園長だった。
私が起きているのを確認すると、突然私の腕を掴み、そのあと「ふむふむ」と頷きながら瞳を覗き込んでくる。
「あ、あの……?」
「おや、失敬。突然では不躾でしたね。魔力が安定しているかどうか確かめていましたが、落ち着いたようでよかったです」
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
「いえいえ、気になさらないでください。それよりもこんなに魔力の強い生徒が入学してくれたことが何よりも誇らしい! マルティーニさん、貴女は今まで入学してきた生徒の中でも一、二を争うほどの魔法力の持ち主です。これからが楽しみですねぇ」
立て板に水を流すように一気に捲し立てるような勢いで喋りかけてくる学園長。
入学式のときとの話し方とは違って、早口で情報量も多いために起きたての頭にはつらいものがあった。
「は、はぁ……?」
「しかも、なんとも美しい! エルフか妖精のハーフです? 今まで出会った人の中でこんなに美しい人間を初めて見ました!! ぜひとも広報としてその美を我が校の宣伝に役立て……いってぇ!!」
「!?」
「……学園長。何をなさってるんです?」
学園長が喋ってる途中で突然、スパーンと彼に雷が落ちたかと思えば、学園長の背後には青筋を立てた白衣を着た女性が仁王立ちで立っていた。
「し、シーラくん。突然雷を落とすなんて酷いじゃないですか」
「それはこっちのセリフです! 先程まで寝込んでた生徒に何迫ってるんですか! しかも口説いてるし! 教職員ともあろう人がまだ年端もいかない生徒を誑かそうとしてるなんて、NMAの学園長としての品位をお考えください!」
「いやっ、違っ、誤解ですよ!」
「黙らっしゃい!!」
「痛ーーーーーっ!!!」
再び雷が学園長に落ちる。
それを口をあんぐりとさせながら、私とマリアンヌは傍観していると、シーラと呼ばれた女性はこちらに気づいたようで「はっ」と驚いた表情をしたあと「ほほほほ」と口元に手をおいて笑い始めた。
「見苦しいものを見せてしまってごめんなさいね」
「い、いえ」
「とりあえず、ここにいても落ち着かないでしょう? 体調が戻ったのなら寮に戻りなさい。ってあぁ、寮の場所とかわからないわよね」
「あ、私はわかります」
「そう? じゃあ、デルトロさん、よろしくね。マルティーニさんは、もしまた体調が悪くなったらすぐに医務室へ来ること。このバカ……んん、失礼。学園長は私が責任持って処理するから気にしないで」
「わ、わかりました」
なんとなく力関係が見えたような気がしたが、気づかないフリをして私はお礼を言うと、そそくさとマリアンヌと共に医務室を出るのだった。
「あ、学園長……っ!」
ツカツカと入口からやってくるのは、入学式よりもいくらかラフな格好をした学園長だった。
私が起きているのを確認すると、突然私の腕を掴み、そのあと「ふむふむ」と頷きながら瞳を覗き込んでくる。
「あ、あの……?」
「おや、失敬。突然では不躾でしたね。魔力が安定しているかどうか確かめていましたが、落ち着いたようでよかったです」
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
「いえいえ、気になさらないでください。それよりもこんなに魔力の強い生徒が入学してくれたことが何よりも誇らしい! マルティーニさん、貴女は今まで入学してきた生徒の中でも一、二を争うほどの魔法力の持ち主です。これからが楽しみですねぇ」
立て板に水を流すように一気に捲し立てるような勢いで喋りかけてくる学園長。
入学式のときとの話し方とは違って、早口で情報量も多いために起きたての頭にはつらいものがあった。
「は、はぁ……?」
「しかも、なんとも美しい! エルフか妖精のハーフです? 今まで出会った人の中でこんなに美しい人間を初めて見ました!! ぜひとも広報としてその美を我が校の宣伝に役立て……いってぇ!!」
「!?」
「……学園長。何をなさってるんです?」
学園長が喋ってる途中で突然、スパーンと彼に雷が落ちたかと思えば、学園長の背後には青筋を立てた白衣を着た女性が仁王立ちで立っていた。
「し、シーラくん。突然雷を落とすなんて酷いじゃないですか」
「それはこっちのセリフです! 先程まで寝込んでた生徒に何迫ってるんですか! しかも口説いてるし! 教職員ともあろう人がまだ年端もいかない生徒を誑かそうとしてるなんて、NMAの学園長としての品位をお考えください!」
「いやっ、違っ、誤解ですよ!」
「黙らっしゃい!!」
「痛ーーーーーっ!!!」
再び雷が学園長に落ちる。
それを口をあんぐりとさせながら、私とマリアンヌは傍観していると、シーラと呼ばれた女性はこちらに気づいたようで「はっ」と驚いた表情をしたあと「ほほほほ」と口元に手をおいて笑い始めた。
「見苦しいものを見せてしまってごめんなさいね」
「い、いえ」
「とりあえず、ここにいても落ち着かないでしょう? 体調が戻ったのなら寮に戻りなさい。ってあぁ、寮の場所とかわからないわよね」
「あ、私はわかります」
「そう? じゃあ、デルトロさん、よろしくね。マルティーニさんは、もしまた体調が悪くなったらすぐに医務室へ来ること。このバカ……んん、失礼。学園長は私が責任持って処理するから気にしないで」
「わ、わかりました」
なんとなく力関係が見えたような気がしたが、気づかないフリをして私はお礼を言うと、そそくさとマリアンヌと共に医務室を出るのだった。
30
あなたにおすすめの小説
【完結】殺されたくないので好みじゃないイケメン冷徹騎士と結婚します
大森 樹
恋愛
女子高生の大石杏奈は、上田健斗にストーカーのように付き纏われている。
「私あなたみたいな男性好みじゃないの」
「僕から逃げられると思っているの?」
そのまま階段から健斗に突き落とされて命を落としてしまう。
すると女神が現れて『このままでは何度人生をやり直しても、その世界のケントに殺される』と聞いた私は最強の騎士であり魔法使いでもある男に命を守ってもらうため異世界転生をした。
これで生き残れる…!なんて喜んでいたら最強の騎士は女嫌いの冷徹騎士ジルヴェスターだった!イケメンだが好みじゃないし、意地悪で口が悪い彼とは仲良くなれそうにない!
「アンナ、やはり君は私の妻に一番向いている女だ」
嫌いだと言っているのに、彼は『自分を好きにならない女』を妻にしたいと契約結婚を持ちかけて来た。
私は命を守るため。
彼は偽物の妻を得るため。
お互いの利益のための婚約生活。喧嘩ばかりしていた二人だが…少しずつ距離が近付いていく。そこに健斗ことケントが現れアンナに興味を持ってしまう。
「この命に代えても絶対にアンナを守ると誓おう」
アンナは無事生き残り、幸せになれるのか。
転生した恋を知らない女子高生×女嫌いのイケメン冷徹騎士のラブストーリー!?
ハッピーエンド保証します。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス
【完結】きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
Mimi
恋愛
若様がお戻りになる……
イングラム伯爵領に住む私設騎士団御抱え治療士デイヴの娘リデルがそれを知ったのは、王都を揺るがす第2王子魅了事件解決から半年経った頃だ。
王位継承権2位を失った第2王子殿下のご友人の栄誉に預かっていた若様のジェレマイアも後継者から外されて、領地に戻されることになったのだ。
リデルとジェレマイアは、幼い頃は交流があったが、彼が王都の貴族学院の入学前に婚約者を得たことで、それは途絶えていた。
次期領主の少年と平民の少女とでは身分が違う。
婚約も破棄となり、約束されていた輝かしい未来も失って。
再び、リデルの前に現れたジェレマイアは……
* 番外編の『最愛から2番目の恋』完結致しました
そちらの方にも、お立ち寄りいただけましたら、幸いです
プリン食べたい!婚約者が王女殿下に夢中でまったく相手にされない伯爵令嬢ベアトリス!前世を思いだした。え?乙女ゲームの世界、わたしは悪役令嬢!
山田 バルス
恋愛
王都の中央にそびえる黄金の魔塔――その頂には、選ばれし者のみが入ることを許された「王都学院」が存在する。魔法と剣の才を持つ貴族の子弟たちが集い、王国の未来を担う人材が育つこの学院に、一人の少女が通っていた。
名はベアトリス=ローデリア。金糸を編んだような髪と、透き通るような青い瞳を持つ、美しき伯爵令嬢。気品と誇りを備えた彼女は、その立ち居振る舞いひとつで周囲の目を奪う、まさに「王都の金の薔薇」と謳われる存在であった。
だが、彼女には胸に秘めた切ない想いがあった。
――婚約者、シャルル=フォンティーヌ。
同じ伯爵家の息子であり、王都学院でも才気あふれる青年として知られる彼は、ベアトリスの幼馴染であり、未来を誓い合った相手でもある。だが、学院に入ってからというもの、シャルルは王女殿下と共に生徒会での活動に没頭するようになり、ベアトリスの前に姿を見せることすら稀になっていった。
そんなある日、ベアトリスは前世を思い出した。この世界はかつて病院に入院していた時の乙女ゲームの世界だと。
そして、自分は悪役令嬢だと。ゲームのシナリオをぶち壊すために、ベアトリスは立ち上がった。
レベルを上げに励み、頂点を極めた。これでゲームシナリオはぶち壊せる。
そう思ったベアトリスに真の目的が見つかった。前世では病院食ばかりだった。好きなものを食べられずに死んでしまった。だから、この世界では美味しいものを食べたい。ベアトリスの食への欲求を満たす旅が始まろうとしていた。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
【完結】 悪役令嬢が死ぬまでにしたい10のこと
淡麗 マナ
恋愛
2022/04/07 小説ホットランキング女性向け1位に入ることができました。皆様の応援のおかげです。ありがとうございます。
第3回 一二三書房WEB小説大賞の最終選考作品です。(5,668作品のなかで45作品)
※コメント欄でネタバレしています。私のミスです。ネタバレしたくない方は読み終わったあとにコメントをご覧ください。
原因不明の病により、余命3ヶ月と診断された公爵令嬢のフェイト・アシュフォード。
よりによって今日は、王太子殿下とフェイトの婚約が発表されるパーティの日。
王太子殿下のことを考えれば、わたくしは身を引いたほうが良い。
どうやって婚約をお断りしようかと考えていると、王太子殿下の横には容姿端麗の女性が。逆に婚約破棄されて傷心するフェイト。
家に帰り、一冊の本をとりだす。それはフェイトが敬愛する、悪役令嬢とよばれた公爵令嬢ヴァイオレットが活躍する物語。そのなかに、【死ぬまでにしたい10のこと】を決める描写があり、フェイトはそれを真似してリストを作り、生きる指針とする。
1.余命のことは絶対にだれにも知られないこと。
2.悪役令嬢ヴァイオレットになりきる。あえて人から嫌われることで、自分が死んだ時の悲しみを減らす。(これは実行できなくて、後で変更することになる)
3.必ず病気の原因を突き止め、治療法を見つけだし、他の人が病気にならないようにする。
4.ノブレス・オブリージュ 公爵令嬢としての責務をいつもどおり果たす。
5.お父様と弟の問題を解決する。
それと、目に入れても痛くない、白蛇のイタムの新しい飼い主を探さねばなりませんし、恋……というものもしてみたいし、矛盾していますけれど、友達も欲しい。etc.
リストに従い、持ち前の執務能力、するどい観察眼を持って、人々の問題や悩みを解決していくフェイト。
ただし、悪役令嬢の振りをして、人から嫌われることは上手くいかない。逆に好かれてしまう! では、リストを変更しよう。わたくしの身代わりを立て、遠くに嫁いでもらうのはどうでしょう?
たとえ失敗しても10のリストを修正し、最善を尽くすフェイト。
これはフェイトが、余命3ヶ月で10のしたいことを実行する物語。皆を自らの死によって悲しませない為に足掻き、運命に立ち向かう、逆転劇。
【注意点】
恋愛要素は弱め。
設定はかなりゆるめに作っています。
1人か、2人、苛立つキャラクターが出てくると思いますが、爽快なざまぁはありません。
2章以降だいぶ殺伐として、不穏な感じになりますので、合わないと思ったら辞めることをお勧めします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる