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第十九話 寝れない
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「クラリスちゃんいい匂い~」
「はぁ、癒される~」
「こら、二人とも。寝なさい、って言ったでしょう」
寝れない。
全然、寝れない。
二人にくっつかれ、匂いを嗅がれ、色々身体中をまさぐられるように触られて、どうにか寝ようと試みても寝られる状態ではなかった。
「そういえばさ、入学式のときの彼。クラリスちゃんの知り合い?」
「入学式のときの彼……?」
ハーパーに言われた人物に心当たりがなくて、オウム返しすると「え、知り合いじゃなかったの?」とオリビアの声が弾んだ。
「入学式で魔力暴走したあと、クラリスちゃんを抱き上げてくれた彼よー!」
「抱き上げ……? え?」
「そうそう。クラリスちゃんが倒れ込みそうになったのところに颯爽と現れて、ガシッと力強く抱きとめてて、まるで王子様のようだったわ!」
「ね、素敵だったわよねぇ~! ちょっと強面なのが残念だったけど」
「それを言わないの!」
何やらよくわからない話がハーパーとオリビアの二人が繰り広げられていて、助けを求めるようにマリアンヌを見つめる。
そして、「マリアンヌ、一体どういうこと?」と尋ねると「んー……」と苦笑しながら言い淀むマリアンヌ。
なぜか言うのを躊躇っているマリアンヌに、私はまた何かやらかしたのかと不安がこっそりと顔を覗かせた。
「実は、魔力暴走してクラリスが倒れそうになったとき、ノースくんが貴女を抱きとめてくれたのよ。そのおかげでどこも怪我しなかったでしょう?」
「言われてみれば……でも、え、抱き……っえ?」
「ちなみに、そのまま医務室へと運んでくれたのも彼よ」
「えぇぇ!?」
思わぬ事実に思わず大きな声を上げる。
入学式前に不可抗力とはいえ抱きつき迷惑をかけたというのに、まさか倒れたときも迷惑をかけただなんて……!
意識がなかったとはいえ、まだちゃんと面識すらないのに申し訳なさすぎると私は頭を抱えた。
「だから明日にでもお礼を言っておいたほうがいいわよ?」
「わ、わかった」
「でも、咄嗟にあーやって動けるって凄いわよねぇ」
「本当本当! 女子はみんなテンションあがってたわよね」
「……え? みんなって……」
「そりゃ新入生全員よ! みんなが注目してたもの!」
「ねー! もう彼がクラリスちゃんと一緒にホールから出た瞬間、きゃあきゃあと黄色い悲鳴が上がって、先生に怒られたくらいだし」
早くも目指してたはずの喪女生活が暗礁に乗り上げそうな危機に青ざめる。
(なぜこうも注目を浴びるようなことばかりやってしまうのか……!)
理想とは真逆の事態に泣きたくなってくる。
「あ、だったら、新入生歓迎会のパーティーは彼と出たら?」
「そうよそうよ!」
「新入生歓迎会……?」
またまた聴き慣れないワードが飛び出して混乱する。
さっきから情報が多過ぎやしないだろうか、と私は目を白黒させた。
「あぁ、そっか。クラリスちゃんは聞いてなかったのか! 早速、週末に新入生歓迎会のパーティーをするらしいわよ!」
「だからダンスのペアとか決めておけって」
「ドレス何にしようかしら~」
「あ、クラリスちゃんのドレスは私が選びたいわ」
「あ、オリビアだけズルい! 私もクラリスちゃんのドレス決めたいー!!」
その後も盛り上がるハーパーとオリビア。
私は入学式のことや歓迎会のパーティーのことで頭がいっぱいで、「どうしよう、どうしよう」と一人内心パニックになるのだった。
「はぁ、癒される~」
「こら、二人とも。寝なさい、って言ったでしょう」
寝れない。
全然、寝れない。
二人にくっつかれ、匂いを嗅がれ、色々身体中をまさぐられるように触られて、どうにか寝ようと試みても寝られる状態ではなかった。
「そういえばさ、入学式のときの彼。クラリスちゃんの知り合い?」
「入学式のときの彼……?」
ハーパーに言われた人物に心当たりがなくて、オウム返しすると「え、知り合いじゃなかったの?」とオリビアの声が弾んだ。
「入学式で魔力暴走したあと、クラリスちゃんを抱き上げてくれた彼よー!」
「抱き上げ……? え?」
「そうそう。クラリスちゃんが倒れ込みそうになったのところに颯爽と現れて、ガシッと力強く抱きとめてて、まるで王子様のようだったわ!」
「ね、素敵だったわよねぇ~! ちょっと強面なのが残念だったけど」
「それを言わないの!」
何やらよくわからない話がハーパーとオリビアの二人が繰り広げられていて、助けを求めるようにマリアンヌを見つめる。
そして、「マリアンヌ、一体どういうこと?」と尋ねると「んー……」と苦笑しながら言い淀むマリアンヌ。
なぜか言うのを躊躇っているマリアンヌに、私はまた何かやらかしたのかと不安がこっそりと顔を覗かせた。
「実は、魔力暴走してクラリスが倒れそうになったとき、ノースくんが貴女を抱きとめてくれたのよ。そのおかげでどこも怪我しなかったでしょう?」
「言われてみれば……でも、え、抱き……っえ?」
「ちなみに、そのまま医務室へと運んでくれたのも彼よ」
「えぇぇ!?」
思わぬ事実に思わず大きな声を上げる。
入学式前に不可抗力とはいえ抱きつき迷惑をかけたというのに、まさか倒れたときも迷惑をかけただなんて……!
意識がなかったとはいえ、まだちゃんと面識すらないのに申し訳なさすぎると私は頭を抱えた。
「だから明日にでもお礼を言っておいたほうがいいわよ?」
「わ、わかった」
「でも、咄嗟にあーやって動けるって凄いわよねぇ」
「本当本当! 女子はみんなテンションあがってたわよね」
「……え? みんなって……」
「そりゃ新入生全員よ! みんなが注目してたもの!」
「ねー! もう彼がクラリスちゃんと一緒にホールから出た瞬間、きゃあきゃあと黄色い悲鳴が上がって、先生に怒られたくらいだし」
早くも目指してたはずの喪女生活が暗礁に乗り上げそうな危機に青ざめる。
(なぜこうも注目を浴びるようなことばかりやってしまうのか……!)
理想とは真逆の事態に泣きたくなってくる。
「あ、だったら、新入生歓迎会のパーティーは彼と出たら?」
「そうよそうよ!」
「新入生歓迎会……?」
またまた聴き慣れないワードが飛び出して混乱する。
さっきから情報が多過ぎやしないだろうか、と私は目を白黒させた。
「あぁ、そっか。クラリスちゃんは聞いてなかったのか! 早速、週末に新入生歓迎会のパーティーをするらしいわよ!」
「だからダンスのペアとか決めておけって」
「ドレス何にしようかしら~」
「あ、クラリスちゃんのドレスは私が選びたいわ」
「あ、オリビアだけズルい! 私もクラリスちゃんのドレス決めたいー!!」
その後も盛り上がるハーパーとオリビア。
私は入学式のことや歓迎会のパーティーのことで頭がいっぱいで、「どうしよう、どうしよう」と一人内心パニックになるのだった。
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【注意点】
恋愛要素は弱め。
設定はかなりゆるめに作っています。
1人か、2人、苛立つキャラクターが出てくると思いますが、爽快なざまぁはありません。
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