前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!

鳥柄ささみ

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第二十六話 ダンスホール

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「凄い……」
「妖精の加護かな? 綺麗だね」

 先日の入学式とはまた違った演出に胸が躍る。
 キラキラと光の粒子が様々な色で舞い、さらに虹のようなものが人々の周りをゆっくりと周回していった。

「どんな魔法なんだろう……」
「ね? 僕も気になるなぁ」

 言いながら先程よりも近い距離にドキドキとする。

 ダンスをするのだから距離が近いのは当たり前なのだが、こうして男性と一緒にダンスをしたことは父以外初めてだったので、なんだか意識すると心臓が突然物凄いスピードで動き出した。

「あ、あの、私……ワルツしか踊れなくて」
「そうか。では、ワルツを踊ろう。エスコートは任せて。僕がリードするからクラリスはついてくるだけでいい」
「わ、わかりました。お願いします」

 曲に合わせてステップを踏む。

 やはりエディオンは良家の子息のようでダンスはとても上手く、リードも自然にしてくれて私が戸惑うことなく引っ張ってくれる。

 まるでダンスが上手くなったような錯覚をしてしまうほど彼はリードが上手で、今まで苦手だったダンスも不思議と楽しいと思えてきた。

「どうだい、僕のリードは問題ないだろうか?」
「えぇ、凄い上手でびっくり。私、こんなに踊れたのは初めて」
「それはよかった。日々ダンスの練習をしてきたかいがあったというものだ」

 気持ちが高揚する。
 久々に気持ちよく動けて楽しく、こんなにもダンスって面白いのか、と心の底から思えたときだった。

「さすがエディオン王子、ダンスが上手ね」
「そりゃ、王子の中でも最もダンスが得意と言われているしな」
「あのエディオンさまと一緒にいる女性も綺麗だけど、まさか婚約者かしら?」

(……エディオン、王子……?)

 心の中で反芻する。
 今までの周りの言動を思い出してパズルのピースがハマっていくのを感じた。

 マリアンヌがエディオンの名を聞いてびっくりしてたのも、周りの人達がエディオンを知っていたのも、エディオンが甲斐甲斐しく私のために動いていることに苦言を呈されていたのも……。

 頭の中で様々な記憶が駆け巡る。
 そして、ハッと我に返るとダンスに興じる生徒達も、それを外から眺めている生徒達も、みんなが自分達に注目しているのに気づいた。

(嫌だ。お願いだからこっちを見ないで。私のことをそんな目で見ないで……っ)

「うっ」
「大丈夫かい!?」
「だ、大丈夫です。ちょっと人酔いしてしまったのかもしれません。申し訳ありませんが私は休憩しますので、エディオンさまは他の誰かと踊ってください」

 そう言うと、私は足早にダンスホールを出て行く。

 注目されたくないのに注目されてしまう悪循環と、再び迫り上がってくるトラウマによる吐き気を催しながら、私は俯きながらとにかく人目につかないところに行こうと無我夢中で走るのだった。
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